IEEE SENSORS2012参加報告
概要
IEEE SENSORSは、センサーならびに関連分野(材料、システム、応用)に関する世界最大規模の国際会議であり、欧州/アフリカ、アジア/太平洋地域, アメリカの3地域の持ち回りで毎年開催されています。今年は、その11回目の開催として10月28日から31日の3日間、台湾の台北にてIEEE SENSORS 2012(http://ieee-sensors2012.org/)が開催されました。世界のセンサー・MEMS専門家が多く集まる本学会にて、Macro BEANSセンターにて行っているマイクロ・ナノ構造大面積・連続製造プロセス技術開発の成果報告と、最新の技術動向の調査を行うため、今回参加を行いました。
発表
本会議は2012年10月28~31日の3日間で行われ、キーノートプレゼンテーション3件と通常セッション51件(うちポスターセッション3件)が開催されました。運営委員発表によると投稿件数は1082件で、うち580件の採択が行われたとのことです(採択率54%)。発表の内訳としては、オーラル286件、ポスター314件でした。採択された発表を国別でみると(図1)、台湾が101件(奇しくも台北のランドマークである台北101と同じ数)で最も多く、次いでアメリカ99件、日本78件、中国50件という順番でした。学会で行われたセッションの一覧を図2に示します。3日間という短い会期でしたが、連日センサーに関する盛沢山の発表が行われ、センサー分野における本学会の重要性を再認識しました。
図1 国別発表件数
図2 セッション一覧
成果発表
本出張の目的の一つである発表として、BEANSプロジェクトからは、ポスターセッションにて以下の2件の発表を行いました。
・Development of an Implantable Micro Temperature Sensor Fabricated on the Capillary for Biomedical and Microfluidic Monitoring
Zhuoqing Yang, Yi Zhang, Toshihiro Itoh
・Low Temperature Deposition of Doped Polycrystalline Silicon at Atmospheric Pressure and its Application to a Strain Gauge
Teruki Naito, Nobuaki Konno, Takashi Tokunaga, Toshihiro Itoh
図3 ポスター発表発表者の様子
技術動向調査
学会では、MacroBEANSセンターのテーマ(非真空プロセス、繊維状デバイス)に関連する報告を中心に聴講を行いました。そのうちのいくつかの報告ついて、以下に紹介します。
・Micro-Plasma Field-Effect Transistors (M. Cai, et. al, University of Utah, USA)
大気圧RFヘリウムプラズマを用いて、マイクロプラズマFET(MOPFET)を作製した結果についての報告。通常の半導体ベースのFETとは異なり、プラズマ中の電子とイオンをキャリアとして利用する。利点としては、通常のFETの適用が難しい高温下や電離放射線照射環境下でも動作できる。さらに理論上は極少数のイオンを用いたナノメートル級の電子デバイスを作製できる可能性を秘めている。MOPFET中のプラズマはRF電力源によって励起される。今回、初めて5-10 Vで動作するプラズマスイッチや増幅器が実現できたとのこと。
・Low power textile-based wearable sensor platform for pH and temperature monitoring with wireless battery recharge (M.Caldara, et. al, University of Bergamo, Italy)
ウェアラブルセンサー適用にむけた機能性繊維の開発の一つとして、pHメーターの機能を有する繊維を作製した結果についての報告。無毒で有機の酸塩基指示染料をゾルゲル法により布の上に塗布する。読み出しは、低電力の色・温度センサーを用いたセンサー回路と、無線によるデータ送受信・充電装置を用いて行われていた。応用としては、スポーツ工学、医療、環境への用途などが考えられるとのこと。
・Transverse Force Sensitivity of photonic crystal fibres (M. Karimi, et. al, City University London, UK)
複屈折特性を有するフォトニック結晶繊維を用いたせん断応力センサーについての報告。4種類の異なるフォトニック結晶について、せん断慮に対する繊維の方位と外力の影響を評価。その結果、少ない複屈折特性を持つフォトニック結晶繊維のほうが、繊維長が長くなるものの、より高い感度を示すことが判明した。PandaやBow-tie型の高複屈折率繊維に比べて、フォトニック結晶繊維は低い温度依存性を有し、温度変化が激しい環境下での測定に向いているとのこと。
・Setup and Properties of a fully Inkjet Printed Humidity Sensor on PET Substrate (Eric Starke et. al, Technische Universität Dresden, Germany)
PET基板上にインクジェット塗布によって作製した湿度センサーについての報告。導電性の銀電極を、湿度感知層を続けて形成した後、ポリマー粒子を最上層に塗布する。電極塗布条件を最適化することで、センサー領域を削減し、検知部の作製条件を最適化することで、作業性、感度、ヒステリシスともによいセンサーを作製することができたとのこと。
・Piezoelectric PDMS Films with Micro Plasma Discharge for Electromechanical Sensors (J-J Wang, et. al, ,National Tsing Hua University, Taiwan)
キャスト法、積層、表面塗布、マイクロ放電の工程を組み合わせることで、圧電性PDMSフィルムの作製を行った結果についての報告。PDMSフィルムの内部に存在しているμmサイズの空孔をPTFE薄膜により表面被覆し、続いてPDMSフィルムの両面にスパッタでAu電極を形成する。その後、電極間に電圧を印加し、空孔内にマイクロプラズマを生成する。マイクロプラズマは、周波数0.5HzのAC電界を15min印加することで生成する。放電後、PDMSフィルム内の多孔内に放電による人工誘電分極が形成され、結果として圧電定数d33=1000pC/Nもの強い圧電特性を有するPDMSフィルムを得ることができた。さらに、多孔質構造を調整することでPDMSフィルムの圧電特性を制御することが可能とのこと。
次回開催
次回開催となるIEEE SENSORS2013(http://ieee-sensors2012.org/)は、2013年11月4日(日)から6日(木)の3日間の日程で、アメリカのメリーランド州ボルティモアで開催されます。アブストラクトの締め切りは2013年4月17日となっています。
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