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2012年9月 6日 (木)

NANO2012参加報告(その1)

 中性粒子ビーム検証デバイスの成果として「VERTICAL VIBRATING-BODY FIELD-EFFECT TRANSISTOR FOR IMPROVED DYNAMIC PROPERTIES」のタイトルで、中性粒子ビーム検証デバイスの新型構造の提案とその効果に関する発表を実施した。また、MEMS関連のセッションでの最新の技術動向調査を行った。

研究件数と分類

 Ⅺ International Committee on Nanostructured Materials (NANO2012)は、2年に一度開催されるナノ材料およびナノ構造の世界有数の学会である。開催期間は、2012年8月26日(日)から31日(金)の6日間。” NANOELECTRONICS, NANODEVICES, NANOCSEMICONDUCTORS, AND DEVICES”、”NANOMATERIALS FOR ENERGY APPLICATIONS & GREEN NANO”、 “NANOMEDICINE, NANOBIOTECHNOLOGY ENVIRONMENT AND NANOTOXICOLOGY”、” MECHANICAL BEHAVIOR OF NANOSTRUCTURED MATERIALS”などBEANSに関連する21のテーマからなる8のセッションで構成され、6日間で6件のplenary talk、189件のinvited talk、246件のcontributed talkおよび300件のポスター発表が行われた。また、世界74カ国からの参加があり関心の高さが伺えた。

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技術動向調査

 著者は主に、“Environmental, Safety and Health (ESH) Issues of Engineered Nanomaterials”、“Nanoelectronics, Nanodevices, Nanostructured Semiconductors and Sensors (MEMS, NEMS.)”、“Nanostructured Solar Cells”の分野について技術調査を行った。発表内容はさまざまであったが、BEANSに関連するセッションの中から注目する2件の発表から技術情報収集を行ったので、以下の通り紹介する。


①Plenary Talk:アメリカのアルゴンヌ国立研究所O.Auciello氏から“SCIENCE AND TECHNOLOGY OF MULTIFUNCTIONAL ULTRANANOCRYSTALLINE DIAMOND (UNCD) FILMS AND APPLICATIONS TO A NEW GENERATION OF INDUSTRIAL, MICRO/NANOELECTRONIC, MEMS/NEMS, AND BIOMEDICAL DEVICES/SYSTEMS”と題して、超ナノ結晶ダイヤモンド(UNCD)膜を使った様々な研究成果報告が行われた。発表では、UNCD膜の作製方法およびMEMS/NEMSおよびバイオメディカル等での利用実績について紹介された。UNCD膜は、アルゴンヌ国立研究所がマイクロ・ナノデバイスへの応用を目的に開発し、特許を有する多機能薄膜である。そして、350-400℃下でAr(99%)とCH4(1%)を使用したマイクロ波プラズマCVD(MPCVD)法によって成膜され、2-5μmサイズの粒子によって構成される。現在、成膜レートは0.2-0.4μm/hourで4インチシリコンウエハ上への均一成膜が可能だが、6-8インチについては更なる開発が必要であるとしている。MEMS分野への応用例としては、ピエゾ抵抗カンチレバーによる基礎特性評価結果が示された[1]。ここでは、PZT/Pt/UNCD構造により高感度、低ノイズ、低電力駆動が可能であることが述べられ、これらを利用した振動発電とRFキャパシティブスイッチ[2]の紹介があった。RFキャパシティブスイッチでは、充放電時間がSiO2膜の場合と比較して5-6桁速くなる実験結果が示された。BEANSにおいては、MEMS表面を中性粒子ビームでトリートメントすることで特性や信頼性向上を目指している。中性粒子ビームや本研究に見られるように、奇抜な構造によるMEMS機能の発現や向上を目指すのでは無く、シンプルなMEMS構造を実用的な追加プロセスにより改善・向上するアプローチが実用化には最重要であると感じた。
〈参考文献〉
[1] S. Srinivasan et al: “Piezoelectric/ultrananocrystalline diamond heterostructures for high-performance multifunctional micro/nanoelectromechanical systems”, Appl. Phys. Lett. 90, 134101 (2007)
[2] C. Goldsmith et al: “Charging characteristics of ultra-nano-crystalline diamond in RF MEMS capacitive switches”, Microwave Symposium Digest (MTT), 2010 IEEE MTT-S International , pp.1, 23-28 May 2010

②Invited Talk:スペインのRovira i Virgili大学R. Ionescu氏から“APPLICATION OF NANOTECHNOLOGY AND CHEMICAL SENSORS FOR THE DETECTION OF MULTIPLE SCLEROSIS DISEASE BY RESPIRATORY SAMPLES”と題して、ケミカルセンサを使った呼気による多発性硬化症診断の研究成果報告が行われた。ケミカルセンサは、金ナノ粒子とカーボンナノチューブがベースとなる12種(7種類の金ナノ粒子センサと5種類のカーボンナノチューブセンサ)の交差反応性化学センサをアレイ化したものを使用した。センサは、シリコンウエハ上にフォトリソ、リフトオフ、ドロップキャスティング(AuNPセンサ:1回、PAH/SWCNTセンサ:2回)の順に行うことで作製した。実験では、20-40歳の34人の患者と17人の健康者から呼気サンプルを採取した。また、診断を複雑化させる喫煙の有無や性別も考慮した。そして、採取した呼気と真空を交互に5分サイクルでセンサアレイに曝露させた。その結果、8種類のナノセンサから得られたデータから84.3%の高い確率で、多発性硬化症を診断することに成功した。この結果から多発性硬化症診断の迅速かつ低価格な非侵襲方式が期待できるとしている。今後は、病気のフェーズによる違いや他の病気(パーキンソン病等)について検討するとしている。BEANSにおいては、ナノ粒子やカーボンナノチューブによるCO2センサの検討がなされているが、このような医療関連への展開の可能性を感じた。

成果発表

 最後に成果発表について報告する。今回、中性粒子ビーム検証デバイスの成果として「E VERTICAL VIBRATING-BODY FIELD-EFFECT TRANSISTOR FOR IMPROVED DYNAMIC PROPERTIES」のタイトルで、中性粒子ビーム検証デバイスの新型構造の提案とその効果に関するポスター発表を行った。質疑応答では、デバイスの構造、動作メカニズムおよび特性に関する細かな質問があり、発表内容について一定の理解が得られたと考えられる。また、2人の質問者とは名刺交換を行い、関連論文の送付依頼を受けた。


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