MIPE2012参加報告(その2)
Micromechatronics for Information and Precision Equipment (MIPE2012)は、日米の機械学会の共催にて3年に一度のみ開催される、情報・知能・精密機器関連では世界最高峰の学会である。開催期間は、2012年6月18日(月)から20日(水)の3日間。”Micro/Nanosystem Science & Technology”、” Micro/Nanomechatronics”、 “Sensor Networks & Wearable Information”、”Bio-medical Equipments”などBEANSに関連するセッションを含む34のセッションで構成され、3日間で142件のオーラル発表と2件の招待講演が行われた。また、遠方にも関わらず多くの日本人が参加しており関心の高さが伺えた。
技術動向調査
発表内容はさまざまであったが、”Intelligent Machines & Brain Science”と“Sensor Networks & Wearable Information”のセッションの中から注目する2件の発表から技術情報収集を行ったので、以下の通り紹介する。
①韓国Sungkyunkwan Universityの研究グループから“DEVELOPMENT OF A FINGER-TIP TACTILE SENSOR FOR SMALL-SIZE OBJECT GRASPING”と題して、ロボットの指先用途を想定したフレキシブル静電圧力センサの研究成果報告が行われた。センサの動作メカニズムは、静電容量の変化を検出する基本的な方式であるが、センサの材料には、ロボットの指先の動きに求められる柔軟性と伸縮性を満たすために、ニトリルゴムをベースに独自に開発した誘電高分子膜を使用している。そして電極には、市販の導電性シリコーンを使用している。作製プロセスは、アルミ製のロボットの指型に誘電高分子膜と導電性シリコーンをディップコーティングによって順に成膜する。内部の導電膜層には12のエリアを形成する銅電極が形成されている。このように作製したセンサは、最後に型から剥離しロボットに装着することで完成する。著者らは、作製したセンサを用いることで、ロボットの指先で小さな球を転がすことに成功している。最後に著者らは12のエリアから得られる圧力および位置情報から物を握るための情報が得られるとしている。ここでは、ディッププロセスおよび圧力センサのアプリに注目したい。ディッププロセスは、BEANSにおいてもナノ粒子配列のテーマで検討が進められているプロセスである。目的は異なるがプロセスの簡便性については同様であり、マイクロ・ナノデバイスの形成プロセスとして今後重要となることが確認できた。また、アプリについては、近年MEMS市場で注目されるロボット関連であった。他の発表テーマでは圧力センサを用いた助産婦教育支援アプリが提案されており、ロボット、介護、健康関連は引き続き重要なトレンド分野であることを確認した。
参考文献:Program and Extended Abstracts (冊子/CD-ROM) p.231
②埼玉大学の研究グループから“PREDICTIVE MODELING OF THERMAL COMFORT BASED ON RELATIONSHIP BETWEEN OCCUPANT'S SATISFACTION AND THERMAL ASPECTS USING SENSOR NETWORK” と題して、ニューラルネットワークを用いた居住者の快適温度予測ができるセンサネットワークの研究成果報告が行われた。著者らは実際に温度センサと湿度センサを居住空間に設置しセンサネットワークを形成し、フィールド試験を行っている。居住者から温度と湿度の快適さを数値化した情報をフィードバックし、これを繰り返すことで快適温度予測が可能なニューラルネットの構築に成功している。ここでは、センサネットワークの最適化へのアプローチについて注目したい。2010年度にGdeviceで実施されたセンサネットワークシステムでは、センサモジュールの開発、搭載センサの省電力化、イベント起動スイッチの検討などハードによる最適化を目指した。このようにハード・ソフトが別々に最適化するのでは無く、連携による新の最適化の必要性を実感した。一方で、著者らのセンサネットワークにおいても多くのセンサモジュールが使用されており、実用化に向けてセンサモジュールの無線化は必須であると感じた。このようなセンサネットワークのトレンド情報は、中性粒子ビーム評価デバイスで検討中であるバンドパスフィルタの仕様に反映することができる。
参考文献:Program and Extended Abstracts (冊子/CD-ROM) p.416
技術成果報告
最後に成果発表について報告する。今回、中性粒子ビーム検証デバイスの成果として「EVALUATION OF THE RESONANCE FREQUENCY SHIFT OF VB-FET CAUSED BY JOULE HEATING AT THE CHANNEL」のタイトルで、中性粒子ビーム検証デバイスの伝熱解析結果を口頭発表した。質疑応答では、伝熱解析計算における前提条件に関する細かな質問があり、発表内容について一定の理解が得られたと考えられる。
| 固定リンク
「3D BEANS」カテゴリの記事
- MEMS2013参加報告(2013.03.01)
- AVS2012参加報告(2012.12.21)
- NANO2012参加報告(その3)(2012.09.28)
- NANO2012参加報告(その2)(2012.09.11)
- NANO2012参加報告(その1)(2012.09.06)
コメント