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2010年7月 5日 (月)

BEANS成果発信:ASNIL2010アジアンシンポジウム

 BEANSプロジェクトの研究開発成果の一つとして、ホットプレス、もしくはスライディングローラーインプリントによって、平板モールドのパターンを繊維状基材の表面に転写する手法や装置を開発しました。これらの成果を、6月30日から7月2日まで茨城県つくば市のつくば国際会議場で開催されたThe 3rd Asian Symposium on Nano Imprint Lithography (ASNIL 2010)にて発表しました。ASNILはナノインプリント技術に対する学術的なフェーズから商品化に近いものまで様々な情報が集まる、アジア圏の代表的な国際シンポジウムです。プロセス、装置、デバイスに関わるアジア圏を中心とした研究者及び技術者が一同に会し、広く関連する分野の研究情報を交換し、総合的見地から融合の試みを推し進めることを目的として2008年に第1回会議が韓国にて、第2回会議が台湾にて開催されています。今年(2010年)は日本の茨城県つくば市にて開催されました。来年(2011年)はシンガポールで開催される予定です。


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ASNIL2010会場(つくば国際会議場)のパネル前での大友研究員(右)と筆者(左)


 さて、今回のASNIL2010での発表総数は52件であり、その内、大学や公的研究機関からの発表は45件、民間企業からは7件でありました。民間企業の研究開発内容が公になることは少ないですが、それでもASNIL2010における民間企業の発表件数が少ないと感じました。この事は、比較的ナノインプリントの実用化が進んでいるとされるアジア地域でも、ナノインプリントが未だ研究開発の領域を出ていないことを示しています。それでも、過去2回のASNILではプロセス技術そのものの研究開発が主要なテーマでしたが、今回のASNIL2010ではLED、ナノフォトニックス、バイオセンサー、反射防止膜への応用例が数多く紹介されていました。またナノインプリントはその成形方法と成形材料の違いからUVナノインプリントと熱ナノインプリントに大別できますが、ASNIL2010ではUVナノインプリントに関する発表が25件、熱ナノインプリントに関するものは14件、いずれの手法にも含まれないナノインプリントが13件ありました。なお、BEANSプロジェクトからは以下の2件の発表がありました。

Oral_presentation_by_mr_ohtomo_2

ASNIL2010にて口頭発表する大友研究員

1. 1A-11 A Reel-to-Reel Thermal Imprint System for Fiber Substrate

 繊維状デバイス向けに高速・安価にパターンを転写する装置として、リールツーリールインプリントシステムを設計した。本システムは、一方のリールに巻き取られている繊維状基材を連続又は間欠的に繰り出す機構と、他方のリールに繊維状基材を巻き取る機構、及び繊維状基材を平板モールドで上下両方向から挟み込み、加熱とプレスができる転写部から構成されている。設計上の繊維状基材の最高送り速度は40m/minである。(A. Ohtomo, et al.)

2. 1P-4 Hot Press on Plastic Optical Fiber Using Plane Mold

 円筒モールドを利用したリールツーリールインプリントでは、円筒モールドの対面に配置するバックアップローラーの存在が重要である。何故なら、バックアップローラー表面の緩衝材による弾性変形量と円筒モールドによる繊維状基材への押込み量との間には、高速転写に適したバランスが存在するためである。本発表では、平板Niモールドを用いてプラスチックファイバーにホットプレスを行い、両者の関係を調査した結果を報告した。(H. Mekaru, et al.)

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リールツーリールインプリントによって成形加工された直径250mmのプラスチック製光ファイバー


BEANSプロジェクトと関連のあるロールツーロールインプリントでは、東芝機械(株)、VTT(フィンランド)、三菱レイヨン(株)、工業技術研究院(台湾)による4件の発表がありました。いずれもUVナノインプリントをターゲットとしており、その内3件はLEDに、残り1件は反射防止膜の製造に利用することが目的でした。また、シームレス円筒モールドに関しては、国立成功大学(台湾)のグループが平板フォトマスクから円筒表面への等倍投影露光によるパターンの転写方法を紹介していました。ロールツーロールインプリントによる熱ナノインプリントの応用事例は我々の発表以外に報告例がなく、成形材料の形状もシート状基材のみでファイバーのような繊維状基材を成形ターゲットとした事例は皆無でした。BEANSプロジェクト関連の発表は多くの参加者を引き付け、特にリールツーリールプロセスによる繊維状基材表面への成膜、パターニング、表面処理の連続加工と、ウィービングプロセスによる大面積デバイス化の手法に興味を持ったようです。筆者の質疑応答時間には、最近、日本では変わった(良く言えば「夢がある」、悪く言えば「すぐには役に立たない」)研究開発プロジェクトが少ない。そのような状況下でBEANSプロジェクトは非常に面白いとのコメントを頂きました。

(銘苅春隆)

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