Pj LbSS/IoT

2017年7月21日 (金)

IoT World 2017参加報告

 2017年5月16日-18日開催されたIoT World 2017に参加してまいりましたので、ご報告を致します。IoT World 2017は、毎年5月に米国・サンタクララで開催される米国最大級のIoTに関するイベントとなります。イベントでは、主にヘルスケア・農業・ファクトリー分野における講演、ブース展示が実施されていた他、コネクティッドカーに関する展示エリアが併設されておりました。今年は来場者数が約11000人となり、スタートアップ企業の参加も約80社となる等、会場全体で盛り上がりを見せておりました。
               
                  
                  


図 1 開催地であるシリコンバレー近辺の街並み
                  


 本イベントは講演・技術展示ブースともに米国現地企業によるものが多く、展示説明員からヒアリングを行うことでR&D段階の技術が米国のユースケースに今後どのように適用されるか把握することができ、米国のユースケース適用に関する動向調査を行ううえでも最適なイベントでした。
                  
                  
                 

 
図 2 会場入り口の様子
                  


 本イベントのブース展示は、医療制度や農業の社会問題に課題点が多い米国らしく、ファクトリーの可視化・予兆保全よりも、ヘルスケア・農業分野におけるユースケースに関わる展示が多いように感じました。また、可視化においては、デバイスマネジメントやセンサデータ表示を行うダッシュボードと呼ばれる統合管理画面におけるユーザインタフェースに力が入れられており、グラフや数値データ表を配置する従来のダッシュボードだけでなく、CADを開発するAutodesk社による3Dのダッシュボードなどが、来場者の目を引いておりました。3Dや映像データを配置するグラフィカルなダッシュボード画面は、単にレイアウトとして見やすいだけでなく、現場管理者が、火の色といったアナログな映像データを見ることで、目視確認で状況把握を即座に行えます。その後、現場管理者は、把握した状況に応じて他部門や他作業員に指示を送る際に、他部門や他作業員に行う説明を補強するための材料として数値データを用いることができます。こうしたケースでは、映像データや数値データを揃えるだけでなく、ユースケースにおけるデータの関係性が一目で把握できるレイアウトや画面遷移が鍵になると感じました。ダッシュボードは現場管理者だけが理解できる画面では意味がなく、障害発生時に原因から対策までを他部門と協力し、迅速な対応を検討するうえで必要なデータがどれだけ不足なく揃えられるかが重要です。また、映像データに関してもIoTゲートウェイやクラウドに蓄積すればよいだけではなく、確認したいタイミングで確認したい時間帯の映像データを検索できる仕組みが必要になります。今回参加した企業には、IoTゲートウェイやクラウドに転送し蓄積した映像データを必要な機会に検索できる仕組みを検討している企業も御座いました。
                  
                  
                  


図 3 講演会場の様子
                  


                  
                  


図4 各国の講演数(カンファレンス資料より算出)
                  


[講演]
 基調講演にありましたが、IBM社によりますと、クラウド等に収集されるデータの9割は直近2年以内に生成されたデータで占められているようです。

 蓄積されるデータ量は年々増加しておりますが、データ量が大きくなることで、予兆保全はおろか、可視化を行うためだけのデータ検索処理のレイテンシも無視できなくなってきます。エッジコンピューティングには、未加工のフォーマットのデータや、サンプリングされていないデータを扱える利点もあるため、IoTゲートウェイで処理を行うことで、より高度な分析処理が行える可能性がありますが、エッジコンピューティングを行うIoTゲートウェイは、クラウドよりもハードウェア性能が低いことが多く、マイクロバッチ処理のような複雑なウィンドウ集計を行う必要が出てきた際には、高い応答性能を出すことが難しくなると思われます。

[展示ブース]
 今回、動向・技術調査を実施したなかから、LbSS研究のエッジコンピューティングと関係がありそうな技術展示物1件を、ご紹介させていただきます。

 HPE社では航空機の遠隔監視に特化したユースケースにおいて、約2900機の航空機から集められたセンサデータのうち、直近の60分間のフライトデータ(高度、軌跡、等)をリアルタイムに可視化するデモを実施しておりました。こちらのデモでは、合計レコード数として約1782万件のデータから、時系列を考慮した大量のフライトデータを検索していたようです。

 直近60分間のフライトデータを可視化する場合、高度や軌跡、その他の航空機に据え付けられた数多くのセンサを分析する必要があるため、一度の検索で対象となるデータの範囲が広くなります。また、航空機の場合、障害発生時の原因調査が厳しく行われるため、航空機の時系列データは取得間隔の短く、精度の高いデータが要求されており、データ量も大きくなるため、大量のデータに対する高頻度な検索に耐えられる仕組みが必要となります。

 IoTゲートウェイの場合、センサ側のインタフェースから入力されるセンサデータ転送量が大きく、WAN側のインタフェースから出力されるセンサデータのデータ転送量が小さい場合、IoTゲートウェイでは未処理のデータをどのように管理するか考慮しなければなりません。また、センサデータを多角的に分析する場合は、特定のセンサデータを何度も検索することになりますが、大量のデータに対する読み書き処理がIoTゲートウェイのボトルネックになることで、データ欠損、処理遅延、データの矛盾、等、様々な問題が生じてきます。エッジコンピューティングでは、ストリーミング処理を高速に行うことが求められますが、ユースケースによっては性能がシステム全体に及ぼす影響も大きくなり、ミッションクリティカルな制御システムに関してはレイテンシが許容できなくなる可能性もあります。
 今回、エッジコンピューティングにおけるストリーミング処理の技術デモの展示は、この1件だけのように見受けられました。しかし、インメモリ・時系列データベース分野の技術開発により、ストリーミング処理で大量のデータを低いレイテンシで行うことが可能になってきているため、今後のIoT Worldでは、大量データをエッジコンピューティングで扱うユースケースの技術展示が一気に増えるのではないかと感じました。
                  
[全体を通して]
 今回ファクトリーの可視化・予兆保全の技術展示が少ない印象だったのですが、現地でヒアリング調査を行ったところ、米国の工場も日本と同じような課題が見えてきておりました。米国の工場でも、産業機器に接続されているPLCの出力インタフェースが古く、PLCの分析結果を取得し、クラウドで可視化を行うことは容易ではないようです。PLC内部のロジックとしては高度な統計処理が為されているため、PLCのデータをフルに活用できれば、現場作業員による目視確認以上のデバイスマネジメントが可能になるはずです。機械やセンサの相互通信に関して標準化された技術のPLCへの導入も進んできており、スマートファクトリーに参入する壁も低くなってきていることから、米国でもファクトリー分野に関する技術展示が今後増えてくるものと思われます。

[次回開催]
 今回の技術・動向調査で得られた結果はベンチマークとしてフィードバックし、研究・開発を継続してまいりたいと思います。次回のIoT World 2018は、2018年5月14日~17日で開催が予定されております。

         技術研究組合 NMEMS技術研究機構 相見 眞男
                  

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2017年1月30日 (月)

IEEE MEMS2017への参加報告


 2017年1月22日から28日まで、米国ラスベガスで開催されたMEMS2017に参加したので、その第1報を取り纏めましたので報告します。

 MEMS2017開催期間中、参加者は704名、オーラルは86件・ポスターは261件(合計367件)で、採択率40%でした。昨年のMEMS2016と比較していずれも微増にとどまっていました。参加国数は25ヶ国ありました。採択数は米国が約100件、次いで日本が約64件、中国が約46件、韓国が約38件の順でした。

 発表分野においては、エナジーハーベスタやガスセンサに関するセッションもあり、IoT関連デバイスの最新技術動向を広く把握できる学会でした。

 参加者にの傾向は、大学や研究機関が約8割と多くを占め、他が企業からの参加でした。代表的な大学や研究機関は、わが国からは東京大学・京都大学・立命館大学・神戸大学から参加しており、海外ではベルギーのIMEC、米国のMIT・Georgia Institute of Technology School・University of California, Berkeley・Stanford University・CALTEC、ドイツのFraunhofer 、スイスのCSEM・ETHZurich、韓国のKAIST、中国のShanghai University等であった。代表的な企業は、Apple・Intel・TSMC・Robert Bosch GmbH・Hitachi・Toshiba・InvenSense, Inc.・LG Electronics・Qualcomm ・Tanaka Precious Metals・Azbil Corporation・NXP・Texas Instruments・Analog Devices, Inc.等であった。IoTセンサネットワークにおけるクラウド層から、個別センサの分野まで、広範囲に渡っていた。

 Student Awardのノミネートは14件(オーラル13件、ポスター1件)あり、3件が受賞(①3D PRINTED THREE-FLOW MICROFLUIDIC CONCENTRATION GRADIENT GENERATOR FOR CLINICAL E. COLI-ANTIBIOTIC DRUG SCREENING,E.C. Sweet, J.C.-L. Chen, I. Karakurt, A.T. Long, and L. Lin, University of California, Berkeley, USA、②64-PIXEL SOLID STATE CMOS COMPATIBLE ULTRASONIC FINGERPRINT READER,J.C. Kuo, J.T. Hoople1, M. Abdelmejeed, M. Abdel-moneum, and A. Lal Cornell University, USA and Intel Corporation, USA、③ENVIRONMENTALLY ROBUST DIFFERENTIAL RESONANT ACCELEROMETER IN A WAFER-SCALE ENCAPSULATION PROCESS,D.D. Shin, C.H. Ahn, Y. Chen, D.L. Christensen, I.B. Flader, and T.W. Kenny Stanford University, USA, InvenSense Incorporated, USA, and Apple Incorporated, USA)

 IEEE Fellowsには、Christofer Hierold,ETZ Zurich, Gwo-Bin Lee,Ntional Tsing Hua University,Olav Solgaard,Stanford University,Xin Zhang Boston Universityの4名が選ばれた。

 Bosch Awardには、Clark C,-T. Nguyen,University of California ,Berkeley, USA が選ばれた。 

 次回のMEMS2018は、BELFAST、NORTHERN IRELENDにて開催。 

MEMS2017のロゴ


 赤外線アレーセンサに関する技術動向としては、オーラル1件、ポスター1件の発表があった。いずれもサーモパイル型で、新規の画素構造により高感度化している。しかしながら、従来研究と比較して感度は同等であるため、NMEMSの赤外線アレーセンサの開発において、これらの研究が脅威になる可能性は低いと思われる。


セッションの座長を務められる年吉先生


 IoTにおけるデバイスに関して、広い範囲で質の高い発表を聴講する事ができ、非常に有意義な学会であった。また、他の研究者と交流を深める事ができ、ネットワーク作りの場としても非常に有益であった。したがって、来年度もLbSSプロジェクトとして参加すべきだと思った。 




ラスベガスの街並み

             

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2016年12月 9日 (金)

PowerMEMS2016 参加報告

 2016年12月6日から9日にわたって、パリで開催されたThe 16th International Conference on Micro and Nanotechnology for Power Generation and Energy Conversion Applications(PowerMEMS2016)に出席した。組織委員長は、Philippe Basset (Universite Paris-Est, France) と、Skandar Basrour (Grenoble Alpes Universite, France) が務め、Technical 論文委員長はEinar Halvorsen (University College of Southeast Norway) であった。会場はエッフェル塔のほぼ真下に当る好立地であり、行きは朝日に照らされた姿、帰りは日が暮れるのが早いのでイルミネーションをまとった美しい姿を見上げながら会議に通った。

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 付随した行事として5, 6日にはPowerMEMS school が開催された。大学院生を中心に30名ほどの参加者を集め、一日目は講義、二日目は実習があった。6日の夕刻に会議の登録とウェルカムレセプションがあり、7日から9日には研究発表と討議が行われた。招待講演は全員参加、一般講演は2会場のパラレル形式であった。会議の組織委員長がフランスの方であったためか、招待講演者はいずれもフランスから選ばれていた。その他、発表とデモンストレーションの両方を行うPowerMEMS in Actionという新企画があった。

159件のアブストラクト投稿があり、そのうち123件(77%)が採択された。口頭発表が40件、ポスター発表が83件である。トピックスとしては、環境発電が77%と大半を占める。採択された論文の数の国別分布は、フランス:22件、日本:20件、アメリカ:15件、イギリス:14件、中国:6件、等々である。また参加者は、おおよそ200名で内訳は、53%が欧州、19%がアメリカ、29%がアジアとなっていた。

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 発表に関して概括的な感想を述べると、利用に耐える大出力が発電できるものは掌サイズのやや大きなものであり、小型で新規な材料や原理を用いて発電するデバイスではあまり大きな出力が得られていない。この点で、我々(東京大学生産技術研究所・静岡大学・鷺宮製作所)が電力中央研究所の助けを借りながらNEDO先導研究で開発している、小型で大出力の静電型振動発電デバイスは、他に比べて著しい優位性があると感じた。圧電デバイスについては多くの発表があったが、その中では多孔質圧電膜やナノワイヤをポリマーに含浸したフレキシブルな圧電材料の発表が興味深かった。その他、振動発電デバイスから取り出した電流を、有効にコンデンサーに蓄積する電源回路に関する発表も興味深かった。以下、注目すべき講演の内容について、簡単に記す。

W3A02
First experimental demonstration of a Self-Oscillating Fluidic Heat Engine (SOFHE) with piezoelectric power generation
T. Monin, A. Tessier-Poirier, E. L´eveill´e, A. Juneau-Fecteau, T. Skotnicki, F. Formosa, S. Monfray and L G Fr´echette
一端を閉じたパイプに液を入れ、その端を熱くして液体を蒸発させて泡を作る。泡が成長し開口端の方にまで広がると、そこの部分は冷たいので泡の中の蒸気が液体に戻る。このため、泡の端部は温・冷の境を中心に、自励振動する。この振動を圧電膜デバイスに導いて、振動発電した。全長は20cmと大きなデバイスである。115~140℃で働いた。原理は面白いが発電量は小さい。これは、PowerMEMS in Actionの企画論文であり、発表の後の休み時間に、実際のデバイスで発電する様子を実演していた。

T1A03
A Frequency-Independent Vibrational Energy Harvester using Symmetrically
Charged Comb-Drive Electrodes with Heavily Doped Ion Electrets
H. Mitsuya, H. Ashizawa, K Ishibashi, H. Homma, M. Ataka, G. Hashiguchi, H. Fujita
and H. Toshiyoshi
本プロジェクトで得た研究成果を発表した。カリウムドープのシリコン酸化膜に、バイアス電圧を印加しながら熱処理してエレクトレットを形成した。帯電した櫛歯電極を、対称に配置することで可動電極への静電引力を相殺し、わずかの力で振動するようにしたデバイスを作った。インパルス状の振動など、幅広い周波数を持つ外部入力を効率よく電力に変換できることを示した。このため、定常的な周波数の振動に依存しない発電デバイスとして有効である。
次のような質疑応答があった。
「エレクトレットの帯電電圧はいくらまで上昇可能か」答:500Vまでである。
「寿命はどれだけか」答:真空中では劣化は見られない。
「周波数に依存しないというが、やはり振動特性はある周波数帯に限られるのではないか」
答:確かに無限の周波数に対応できるわけではない。インパルス状の振動など、幅広い周波数を持つ外部入力を効率よく電力に変換できるという意味で、このように呼んでいる。
その他「帯電電荷密度が一定とすると、ギャップ間に生じる電圧はギャップ長に依存する。実験で求めた帯電電圧を表記する時は、この点に留意すること」とのコメントがあった。

T2A04
Superhydrophobic surfaces’ influence on streaming current based energy harvester
Florent Fouch´e, Thomas Dargent, Yannick Coffinier, Anthony Treizebr´e, Alexis Vlandas and Vincent Senez
マイクロチャネルに水溶液などを満たすと、流路の表面が負に帯電し、液の方が正になる。100μm以下の高さの流路では、液を動かすと液とともに正電荷が動いてチャネル両端に電圧が出る。壁面を超撥水にすると、弱い圧力で液体の流れを作れるし、壁面での液のスリップがあって電荷が動きやすく、出力が向上する。銀ナノ粒子で加速したSiエッチングでナノワイヤの林を作り、超撥水の壁面とした。これを用いて、5nWがとれた。

FPA-1 招待講演
Thermal transistor with phase change materials and in the quantum regime
Karl Joulan
ギャップ間の熱放射による熱伝達の理論解析に関する講演である。近接場では熱放射が遠距離場に比べて格段に大きい。間隙長が10-8mで、熱伝達が~103倍になる。放射波だけでなくエバネッセント場が効いてくるからだ。誘電率の温度依存性が違う面を対向させ、近接場熱伝達を計算するとダイオード特性になる。しかし残念ながら、小さい整流効果しか得られない。大きい整流効果を生むためには、相変化材料を使うのがいい。たとえば、ある温度を境に誘電体⇔金属という相変化をするVO2を黒体と向い合せた構造が考えられる。また、超伝導体対黒体や、SiC対SiO2も考えられる。熱トランジスタでは、ゲートを相変化材料として、そこの温度を変化する場合には、0.1Hzまでの低周波では熱が制御できる計算結果となる。量子ドットなどの量子系での熱トランジスタや熱ダイオードも考えられる。磁場中でスピンを利用するデバイスを考えると、良い特性が得られるはずである。

F1B01
Novel thick-foam ferroelectret with engineered voids for energy harvesting applications
Z. Luo, J. Shi and S. P. Beeby
フェロエレクトレット材料に加熱時に発泡する化合物粒子をまぜ、成型する。その後、加熱すると化合物が発泡してスポンジ状になる。型の中で熱成型してから、泡を作って固める。この製法で、いろいろな形状のフェロエレクトレットができる。ある形状を作った後、コロナ帯電と接触帯電で、エレクトレット化できる。

F1B03
A paper-based electrostatic kinetic energy harvester with stacked multiple electret
films made of electrospun polymer nanofibers
Y. Lu, D. Amroun, Y. Leprince-Wang and Philippe Basset
2枚の紙を湾曲して重ね、その間にエレクトレット膜を挟み、押しつぶすと発電する。エレクトレット膜は、エレクトロスピニングした糸をランダムに重ねたポーラス体に、パリレンをつけたものである。これをコロナ帯電した。3枚入れた時が最も発電性能が良くて、45.6μW/16MΩ(30V)が出た。全波整流してコンデンサーに貯めると、450回押して0.72μJのエネルギーを蓄積できた(まだ、最適ではないので改善の余地がある。

                                 2016年12月9日

           技術研究組合NMEMS技術研究機構    藤田 博之

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2016年10月27日 (木)

IoTSWC2016参加報告

IoTSWC(正式名称、IoT Solutions World Congress)は、2015年より1年に一度、スペインのバルセロナで開催されるIIC(正式名称、Industrial Internet Consortium)主催のイベントになります。本イベントは、実運用に向けた検証プラットフォームであるテストベッドが公開される場となっており、Industrial Internet of Things(以下、インダストリアルIoT)分野の最先端技術を用いたリファレンス実装や、その先の社会実装を調査するうえで最適なイベントと考えます。今年は、2016年10月25日から27日までの3日間で来場者数が70ヶ国8000人以上となり、来場者の54%が経営幹部や上位管理職の方々となったようです。また、テレビ局の取材も多数行われる等、インダストリアルIoT分野の盛り上がりを感じさせるものでした。

1 開催地バルセロナの街並み

2 講演会場の様子


[IICに関して]

 IICは米国の通信キャリア、重工業、コンサルティング、ネットワーク機器、半導体関連の企業により2014年3月に設立され、インダストリアルIoTの社会実装の検証と、標準化団体への検証結果の引き渡しを目的とした団体として活動しております。IIC自体は標準化団体ではありませんが、2016年11月時点では各国から250以上の組織が加盟する規模となっていることから、インダストリアルIoT分野におけるデファクトスタンダード形成の場として動向を注視していく必要があると考えております。

[動向調査]

 イベントは、IICに関連するテストベッド展示、一般展示の他に、ヘルスケア、製造、輸送、インフラ、先端技術、事業改革に関する講演や、パネルディスカッションが実施されました。講演した企業、団体の国別内訳では、北米と欧州で全体の9割を占めており、IICの活動に対して積極的な参加を行う北米、欧州からの講演が目立つものとなりました。(図3)

 

3 各国の講演数(カンファレンス資料より算出)


 欧州企業の講演でも特に、ドイツの板金加工機械メーカーであるトルンプ社のスマートファクトリーのリファレンス実装のデモや、自動車部品メーカーのボッシュにおける生産性能管理プロトコルの標準化活動の紹介では、具体的な活動内容が公開されていることから、研究から運用に至るまで他社を先行しているようにも思えました。

 今回の業界動向調査では、IoTゲートウェイでのデータ転送量制御の最適化技術に関連して、センサデバイス、IoTゲートウェイ、データフォーマット、の観点から企業・団体がどのような技術を有しているのか、調査を実施して参りました。

 この中で印象に残る展示としましては、HPE(Hewlett Packard Enterprise)社、NI(National Instruments)社、PTC社(Parametric Technology Corporation)の共同提案による燃料ポンプ監視システムがありました。本デモでは、燃料ポンプに取り付けられた多数のセンサデータをNI社の制御ハードウェアが集約し、HPE社のコンバージドIoTシステム上でエッジコンピューティングにより解析することで、キャビテーションを引き起こすような深刻な燃料ポンプの異常を可視化するものでした。NI社の制御ハードウェアからHPE社のコンバージドIoTシステムにセンサデータを送信する際に帯域を圧迫しないよう、コンバージドIoTシステム上では全データから異常と判断されるデータの範囲が分析され、NI社の制御ハードウェアが次回以降の送信時に異常値のみを送信することで転送データの大幅な削減が可能となるデータ転送制御を実装している点が特徴です。

 また、コンバージドIoTシステムでは、グラフィカルなダッシュボードも具備しており、燃料ポンプを構成する各パーツにおける異常データをPCモニタ上で可視化しておりました。さらに、本デモではPTC社による拡張現実(Augmented Reality)技術を用いることにより可視化結果を現実の燃料ポンプに投影でき、オペレータは燃料ポンプの監視を行いながら修復作業を行えるようです。

 このように本イベントでは、実運用レベルのユースケース検証を複数社が共同で実施し、その結果を展示していたことも非常に興味深い点でした。

[全体的な傾向]

 IICに関連するテストベッドや参考展示のほとんどが、複数社共同でのユースケース検証を目的としたものであり、一社単独の提案だけでインダストリアルIoT分野を突き進むことが難しいことを再確認致しました。イベントを通して、センサデバイス、ゲートウェイ装置、クラウド分野の米、欧州の企業や通信キャリアが共同で、IT(Information Technology)におけるデバイスの集合とOT(Operational Technology)をどのように連携させ新たな価値を生み出すか、全体論的な話し合いが活発に行われているように感じました。

[次回開催]

 次回のIoTSWCは、2017年10月3日~5日に開催が予定されております。IoTSWCで得られるインダストリアルIoT分野の動向調査の結果をベンチマークとしてフィードバックし、今後も将来を見据えた研究を継続していきたいと思います。

             技術研究組合NMEMS技術研究機構
                    相見 眞男

 

 

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2016年7月29日 (金)

NEDO委託事業「超高効率データ抽出機能を有する学習型スマートセンシングシステムの研究開発」がキックオフ

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託しました「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/超高効率データ抽出機能を有する学習型スマートセンシングシステムの研究開発(LbSSプロジェクト)」の第1回会合(キックオフ会議)が7月29日(金)に新テクノサロンにて開催されました。本キックオフ会議には、経済産業省及びNEDOからの御来賓の臨席を賜り、プロジェクトに参画する各社/各機関の研究者及び事務局メンバーらが参加しました。

 

 

 【LbSSキックオフ会議の様子】

 本研究開発では、工場等の設備の稼働状況等の把握を目的とするスマートセンサモジュール、高効率MEH(Micro Energy Harvester)などの自立電源、及びスマートセンシングフロントエンド回路を開発し、動的センシング制御可能な無給電のスマートセンサ端末を実現します。さらに、同時に開発する学習型スマートコンセントレータとの連携により、従来の環境発電で収集可能な有価情報量を100倍化することを可能とする学習型スマートセンシングシステムの基盤開発と実証を行います。技術研究組合NMEMS技術研究機構には、日立製作所、ローム、富士電機、オムロン、鷺宮製作所、マイクロマシンセンター、静岡大学、東京大学、電力中央研究所および東京電力ホールディングスのユーザ企業も含めた産学10機関が結集し、2020年までの5年間にわたり研究開発・実証を進めていくことになります。このキックオフ会議では、NMEMS技術研究機構今仲行一理事長の主催者挨、経済産業省及びNEDOからの御来賓の挨拶の後、NEDO IoT推進部の奥村主査よりNEDOプロジェクトマネジメント方針の説明、プロジェクトの研究開発責任者であるNMEMS機構 スマートセンシング研究所 藤田博之所長(東京大学 生産技術研究所 教授)よりプロジェクト概要、リーダー方針の説明、研究開発テーマの本年度計画・最終目標の説明、成果最大化に向けた取り組みの説明と続きました。最後に参加者全員から自己紹介とプロジェクトへの意気込みの表明がなされました。
 
 東京大学 藤田博之教授のリーダー方針は以下の通り。
1.ユーザ機関と連携した実証実験を最重視。実証現場へのプロトタイプ端末の早期(前倒し)導入。その結果のフィードバック。
2.普及型・低コストデバイス/端末を実現。ユーザ指向の優れた使い勝手とデザインをめざし「ユーザが使いたくなる」システムを造る。
3.ニーズと技術レベル(実現性)との間の最適解を追究。(トレードオフを意識したバランスのとれた研究開発)
4.IoT横断技術としての広がりの探求。生産現場以外の適用対象の調査とそれに合致した仕様の特定。
5.適切なタイミングで効果的な(インパクトのある)情報発信(広報)。
6.オープン化戦略(各I/Fの公開や標準適用等)により、他社との相互接続や、他産業や海外への展開を促進。
 
 キックオフ会議の終了後は意見交換会を開催して、プロジェクトの研究者間で活発な意見交換・交流が行われました。今後得られました成果に関しましては、適宜発信していきたいと思っております。

 

 【LbSS意見交換会の様子】

 これで今回のキックオフ会議を皮切りに、今後5年間の超高効率データ抽出機能を有する学習型スマートセンシングシステムの研究開発(LbSSプロジェクト)」が本格始動いたします。研究開発状況、研究成果等につきましては本ブログやLbSSプロジェクトのHPサイトを通じて随時発信するとともに、研究成果報告会も定期的に開催してまいります。皆さまのご支援のほど、よろしくお願いいたします。

<NMEMS技術研究機構スマートセンシング研究所 逆水登志夫>

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2016年7月28日 (木)

IoT/LbSS研究開発が始動へ、HPサイトをリリース


 先日(7/8)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」において、「超高効率データ抽出機能を有する学習型スマートセンシングシステム(LbSS:Learning based Smart Sensing System)の研究開発」の研究テーマの採択がが決まり、NMEMS技術研究機構ユーザー企業も含めた産学10機関が結集し、2020年までの5年間にわたり研究開発・実証を進めていくことになります。本研究開発(IoT/LbSS)の始動にあたり、このたびHPサイトをリリースしました。

 IoT/LbSSにおいては、工場等の設備の稼働状況等の把握を目的とするスマートセンサモジュール、高効率MEHなどの自立電源、及びスマートセンシングフロントエンド回路を開発し、動的センシング制御可能な無給電のスマートセンサ端末を実現します。さらに、同時に開発する学習型スマートコンセントレータとの連携により、従来の環境発電で収集可能な有価情報量を100倍化することを可能とする学習型スマートセンシングシステムの基盤開発と実証を行います。

           【研究開発の全体図】


 7月29日のLbSSキックオフ会合を皮切りにLbSSプロジェクトが実質的にスタートします。今後、プロジェクトの進捗に応じてHPサイトの内容も随時更新していきます。

(青柳@NMEMS技術研究機構)


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