Pj 畜産センサー

2017年2月23日 (木)

内閣府SIP戦略的イノベーション創造プログラム(次世代農林水産業創造技術)「生体センシング技術を活用した次世代精密家畜個体管理システムの開発」平成28年度研究推進会議開催

 畜産センサ研究コンソーシアム(代表研究機関:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)動物衛生研究部門)で実施している内閣府SIP戦略的イノベーション創造プログラム(次世代農林水産業創造技術)「生体センシング技術を活用した次世代精密家畜個体管理システムの開発」の全参画研究者が集い、その年度の研究成果を報告する場である平成28年度研究推進会議が2017年2月20日(月)につくば国際会議場中会議室201において開催されました。
 参加者は内閣府、農林水産省、経済産業省等関係省庁からの来賓および外部アドバイザー(富士通(株)とオリオン機械(株)の有識者)も含め58名が参集しました(写真1:研究推進会議の様子)。

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           写真1 研究推進会議場の様子
  
 これまでの研究推進会議では各参画研究機関から詳細な成果報告と討議を行ってきましたが、今回は来賓のご挨拶の後、各課題の推進リーダから3年間の成果まとめの報告と活発な議論がなされました。製品化という観点からすると課題間で若干の温度差はありますが、各課題とも当初予定したプロトタイプのセンサが完成し、実証試験により、有用なデータが得られたとの報告がありました。そして、最後に外部アドバイザーおよび野口PDから講評を頂きました。研究推進会議の議事次第を以下に示します。

Ⅰ.挨拶
 農研機構 動物衛生研究部門 部門長
Ⅱ.来賓挨拶
 内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付
 農林水産省 農林水産技術会議事務局
Ⅲ.全体説明
 新井研究代表
Ⅳ.各課題の成果説明
 1.繁殖成績向上のための精密個体管理システムの開発
  (1) 腟内及び体表温センサを用いた受胎向上技術の開発
  (2) 高機能センサを用いた周産期管理の省力化に向けた技術開発
  (3) アニマルセンシング情報の時系列解析を基にした牛の微弱発情検知
    及び周産期疾病予防システムの開発   
 2.高度飼養管理と生産病防除のための精密個体管理システムの開発
  (1) 多機能型ルーメンセンサを用いた生産病の診断及び飼養管理技術の
    開発
  (2) 体表温センサを用いた疾病診断法及び飼養管理技術の開発
  (3) 自律神経機能の乱れからストレス状態の初期の兆候を検知する技術
    の開発
  (4) 無線式pHセンサを用いたルーメンアシドーシスの病態解析と防除
    技術の開発
 3.次世代精密家畜個体管理システムの実現に向けた調査研究
  (1) 家畜管理システムに必要なセンサの現状と動向並びにビジネスモデ
    ルの調査
Ⅴ.アドバイザーコメント
 富士通株式会社 
  オリオン機械株式会社
Ⅵ.PDコメント 
 北海道大学大学院農学研究院   野口 伸
Ⅶ.意見交換会
 マイクロマシンセンターからは11県215件のユーザアンケート結果と経済効果の調査結果を報告しました(写真2)。

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       写真2 マイクロマシンセンターの報告の様子

 ユーザアンケートからはコストが安く、導入メリットが明らかでフォローアップ体制のしっかりしたセンサシステムに仕上げれば、本プロジェクトで開発中のセンサシステムを導入したいとの声が大きく、また、直接経済効果としては繁殖成績向上により513億円、高度飼養管理により2,712億円あり、産業連関分析による間接的波及効果は20分野で2,959億円であることが分りました。残念ながら、本年度でプロジェクトは終了するため、大規模実証まで実施することはできませんが、各課題とも開発した技術を元に新たなプロジェクト予算を獲得するとともに、製品化をさらに進め、農家の方の役に立つ技術に仕上げることを約束して、散会しました。

 本研究は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術:(管理法人:農研機構生研支援センター)によって実施されました。

(一般財団法人マイクロマシンセンター 武田宗久)

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2016年8月 5日 (金)

Precision Dairy Farming関連国際会議参加報告

 2016年6月21日(火)~23日(木)にThe 1st International Conference on Precision Dairy Farming (PDF2016)が、また前日の2016年6月20日(月)~21日(火)にDairycare WG2が主催する関連ワークショップ「Activity measurement in ruminant research and beyond」がオランダのフリースランド州の州都レーワルデン(Leeuwarden)のWTC Leeuwarden(写真1)で開催されました。国際会議が開催されましたレーワルデンはスキポール国際空港から列車で2時間半くらいの距離に位置しています。オランダということもあり伝統的な風車を期待したのですが、車窓から見えたのは写真2に示すような近代的な風車ばかりで、オランダはかなり近代化が進んでいるという印象でした。レーワルデンはオランダの代表的な酪農の町で、運河が通り(写真3)、酪農製品の集散地となっている都市で、酪農の町らしく、写真4に示すような「Us mem」(「我が母」という意味)と名付けられた牛の銅像があり、写真5に示す斜塔でも有名な町です。運河に架かる橋は跳ね橋になっており、船が通るときには上がるのですが、会場の近くには写真6のような面白い形で上がる橋もありました。

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                      写真1 会場のWTC Leeuwarden

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                               写真2 近代的な風車風景

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                                写真3 会場近くの運河

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               写真4 牛の銅像(Us mem)

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              写真5 レーワルデンの斜塔

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              写真6 面白い形の跳ね橋

 PDF2016は過去3回の北アメリカでのPDF関連の会議を経て今年度第1回の国際会議として開催された記念すべきもので約350名の参加者を得て盛大に開催されました。初日はオープニング(写真7)の後2件のキーノート講演と3パラレルセッションで9セッションの講演とポスターセッション、2日目は農場見学、3日目は2件のキーノート講演と3パラレルセッションで11のセッションに分かれて計71件の口頭発表と59件のポスター発表(写真8)が行われました。

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           写真7 PDF2016オープニングの様子

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             写真8 ポスターセッションの様子

 以下に4件のキーノート講演の講演者とタイトルおよびセッション構成として20のセッションのタイトルと講演数(【】内に記載)を示します。

i) キーノート講演

○ Ynte Hein Schukken, GD Animal Health, the Netherlands: Animal health challenges on dairy farms increasing in size - are protocols and precision farming compatible?

○ James Hills, Tasmanian Institute of Agricultures Dairy Centre, Australia: Precision feeding and grazing management for temperature pasture-based dairy systems

○ Daniel Berckmans, KU Leuven, Belgium: Novel Precision Dairy Farming Technologies

○ Jeffrey Bewley, University of Kentucky, USA: Update on use of sensors on dairy farms

ii)セッション構成

 ・Session1 : Reproduction (shared session with DairyCare) 【4】
 ・Session2 : Feeding I【3】
 ・Session3 : Metabolic disorders【4】
 ・Session4 : Lameness detection【3】
 ・Session5 : Requirements for PDF【3】
 ・Session6 : Udder health and reproduction【3】
 ・Session7 : Cow traffic and AMS(Automatic milking system)【4】
 ・Session8 : Economic impact of PDF【4】
 ・Session9 : Welfare【4】
 ・Session10: New PDF technologies I : Lameness detection【3】
 ・Session11: Big data【3】
 ・Session12 : Feeding II【3】
  ・Session13: New PDF technologies II【4】
  ・Session14: Adding value to sensor data【4】
  ・Session15: AMS efficiency【4】
  ・Session16: New PDF technologies III【4】
  ・Session17: Data management【4】
  ・Session18: Performance of AMS【4】
 ・Session19: Grazing【3】
 ・Session20: Data modelling【3】

 セッション名からも分るように、畜産センサの検出対象、データ処理、新技術、経済効果まで幅広いテーマ構成となっていました。また、PDF2016で最も驚いたのは、スマホのアプリを利用したプログラム管理です。工学系の国際会議でもここまでICT化されているものはなく、すごく進んでいるという印象でした。スマホからプログラム等の情報が見られるだけでなく、講演中に講師のした質問にスマホで回答することでリアルタイムに統計結果を表示したり、質問をスマホから入力できるようになっており、司会者は事前に質問内容を把握した上で講師に質問をしたりして、参加者全員の直接的な関与が期待でき、会議の活性化が図れるものとして今後広がっていくのではないかと思いました。

 今回の会議では、スポンサーとして、以下のプラチナスポンサー7社、ゴールドスポンサー4社、シルバースポンサー6社、ブロンズスポンサー4社の計21社が協賛しており、欧州では畜産センサ、畜産機械の企業が積極的に活動していることが伺えました。ゴールドスポンサー以上は企業ブースを出展(写真9)できるとともに、プラチナスポンサーは2日目の農場見学をアレンジして、農場において、各社の製品の紹介・詳細説明を行っていました。

(プラチナスポンサー)
  ①Agis/CowManager、②CRV、③DeLaval、④GEA、⑤Lely、⑥Nedap、⑦SCR
(ゴールドスポンサー)
  ①Afimilk、②agrifirm feed、③Fullwood、④SmartBow
(シルバースポンサー)
  ①COWALERT、②Hokofarm Group SAC、③HIPRA、④SmartDairyFarming、⑤Qlip、⑥uniform agri
(ブロンズスポンサー)
  ①eCow、②GID、③MADERO、④VIRTUALVET

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              写真9 企業展示ブースの様子


農場見学はプラチナスポンサーである7企業提携の以下の7農場から3農場を選んで計5コースで5台のバス(写真10)に分かれて3農場をツアーするものでした。
① Dairy Farm “Den Hartog” (selected by Platinum Sponsor Agis/CowManager)
② Dairy Farm “Dijkveld-Stol” (selected by Platinum Sponsor SCR)
③ Dairy Farm “Boersma” (selected by Platinum Sponsor DeLaval)
④ Dairy Farm “De Deelen” (selected by Platinum Sponsor Lely)
⑤ Dairy farm “Bouma-Miedema” (selected by Platinum Sponsor CRV)
⑥ Dairy Farm “Formsma-Steenbeek” (selected by Platinum Sponsor Nedap)
⑦ Dairy Farm “Kalma” (selected by Platinum Sponsor GEA)

   私はLalyとNedapとSCRのスポンサー企業提携の農場を見学しました。Lalyスポンサーの農場De Deelen(写真11)は自分の牧草地(写真12)で刈った新鮮な牧草で約180頭の乳用牛を飼育(写真13)するとともにLelyのミルクロボット(写真14)で搾乳した牛乳の60~70%を自分の農場でチーズを作るのに使い、残りを牛乳として市場に出荷しているとのことでした。チーズ工場(写真15、写真16)は牛舎のすぐ隣にあり、新鮮な牛乳を使うことで高品質のチーズを作るとともに、作ったチーズは自分の農場で直販を行うとともに市場にも出荷しているとのことでした。(写真17)。

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               写真10 農場見学ツアーのバス

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               写真11 “De Deelen”農場入口

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            写真12 牛舎裏の広大な牧草地

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            写真13 新鮮な牧草を食べる牛

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             写真14 Lelyのミルクロボット

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               写真15 チーズ工場

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               写真16 チーズ貯蔵庫

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             写真17 チーズ直販売所の前

 Nedapスポンサーの農場“Formsma-Steenbeek”(写真18)はNedapの発情、健康モニタリングセンサシステムやLelyのミルクロボットを導入した自動化された農場で、175頭の乳牛と105頭の若齢畜が飼育されていました(写真19)。Nedapのセンサは加速度センサを足につけ立位、横臥とステップ数を測るSmarttag Legとやはり加速度センサを首に取り付けて食態を測るSmarttag Neckから成り、それらの情報から発情と健康をモニタリングするシステムが基本で、それにどの牛がどこにいるかが分る位置情報システムを追加できるのが特徴になっています。Smarttag Neckをつけた牛を写真20に、位置情報用のアンテナを写真21にコントローラを写真22にタブレット上の位置情報表示画面を写真23に示します。

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           写真18 “Formsma-Steenbeek”農場入口

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               写真19 牛舎の様子

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         写真20 Smarttag Neck(青い部分)装着牛

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             写真21 位置情報用アンテナ

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             写真22 Nedapのコントローラ

 

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           写真23 タブレットの位置情報表示画面

 SCRスポンサーの農場“Dijkveld-Stol”は少し古い農場でしたが、頭数はもっとも多く、また子牛牛舎も含めて見学できました(写真24~写真27)。写真28、写真29に首輪に付けられたSCRのセンサHEATIMEのセンサ部分および牛に装着した状態を示します。HEATIMEは加速度センサですが首の上部にしっかりと接触させて装着され、このセンサ1つで、発情、健康状態、分娩、栄養状態が分るとのことで、センサデータから各状態を検出するアルゴリズムおよびユーザーフレンドリーな表示に優れたセンサで、この分野では最もシェアを誇っているようでした。写真30にアンテナを写真31にコントローラ画面の一例を示します。

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               写真24 出産前の母牛

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            写真25 生まれて間もない子牛

 

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             写真26 少し大きくなった子牛群

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            写真27 自動掃除ロボット導入牛舎

 

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              写真28 SCRのセンサHEATIME

 

 

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              写真29 HEATIMEを装着した牛

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               写真30 SCRのアンテナ

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            写真31 HEATIMEコントローラ画面

 以上のように、今回の農場見学でそれぞれのセンサシステムの導入状況ならびに使い方を見学でき大いに役立ちました。各センサシステムは使い勝手の良いユーザインターフェースになっており、ヨーロッパでは畜産センサが積極的に使用されている状況を把握し、今後普及していくことを確信致しました。今後SIPで開発しているセンサも実用化のためには、ユーザインターフェースの良いものに仕上げる必要性を痛感しました。

 見学会の後、バーベキュー大会がDairy Campusで開催されました(写真32)。Dairy CampusはWageningen大学等複数の大学の学生等が実習をするトレーニングセンターで、ミルクパーラー(写真33)、高福祉床(写真34:ヨーロッパでは牛に優しい飼育が求められており、クッション性のあるこのような高福祉床等種々床の比較研究を行っていました)、自動給餌装置(写真35、写真36)、バイオガスシステム(写真37)等最新の設備を有するセンターで、バーベキューの後見学できたのも収穫でした。

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             写真32 Dairy Campusの入口

 

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              写真33 ミルクパーラー

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                写真34 高福祉床

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              写真35 自動給餌装置(1)

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              写真36 自動給餌装置(2)  

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             写真37 バイオガスシステム

 今回第1回だった国際会議は3年に一度開催され、次回のThe 2nd International Conference on Precision Dairy Farmingは2019年6月にアメリカのミネソタ州Rochesterで開催されます。来年は少し小規模でPrecision Dairy Farming2017として、2017年5月30日(火)~6月1日(木)にHyatt Regency Lexington,KYで開催されます。

 PDF2016の前日の2016年6月20日(月)~21日(火)に開催されました関連ワークショップ「Activity measurement in ruminant research and beyond」はEUのCOST(European Cooperation in Science and Technology)活動の一つのDairyCareの4つのワーキンググループの内の一つであるWG2が主催したワークショップで、初日はセッション1とセッション2(写真38、写真39)と10件のポスター発表(写真40)が、二日目はPDF2016との共催でPDF2016の1セッションとしてセッション3が開催されました。初日の参加者は70名程度でこぢんまりとした会議でしたが、討論の場で活発な議論がなされており、畜産センサの欧米の適用事例が把握できました。

 ○セッション1「Measuring and Analysing Social Behaviour」:招待講演2件+講演2件と討論
 ○セッション2「Automatic Phenotyping from Activity Measurements」:招待講演2件+講演2件と討論
 ○セッション3「Reproduction」:4件の講演

 次回の第4回DairyCare Conferenceは2016年10月13日(木)~14日(金)にLisbonで「Life-long Health and Welfare Sensing-Big Data and Internet of Things-」というテーマで開催されます。

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        写真38 DairyCare WG2 オープニングの様子

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            写真39  DairyCare WG2会場の様子

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             写真40 ポスター発表の様子

 本調査は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:生研センター)によって実施したものです。

                (マイクロマシンセンター 武田宗久)

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2016年7月13日 (水)

MEMSセンシング&ネットワークシステム展の開催準備進む(9月14日-16日)

 MEMS関連の技術・製品・アプリケーションを一堂に展示する「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」の開催準備が進んでいます。
 
 名称:MEMSセンシング&ネットワークシステム展
 会期:2016年9月14日(水)~16日(金)
 会場:パシフィコ横浜

 同時開催:InterOpto/LaserTech/BioOpto Japan/LED JAPAN
 URL:http://www.mems-sensing-network.com/
 
 開催内容を順次ご紹介しますが、今回は「研究開発プロジェクト成果報告会」のプログラムをお伝えします。
 
 名称:研究開発プロジェクト成果報告会
 開催日時:2016年9月15日(木)11:00-14:25
(昼休み1時間を含む)
 趣旨:
様々な社会課題解決のツールとして、センサーを活用したモニタリングシステムに期待が高まっています。本セミナーでは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や国から受託し、研究開発を進めているプロジェクトについて報告します。

第一部  発表者
11:00-
11:30
道路インフラの統合的な常時監視を実現するモニタリングシステムの研究開発
 スーパーアコースティックセンサによる橋梁センシングシステム、フレキシブル面パターンセンサによる橋梁センシングシステム、道路付帯構造物傾斜センシングシステム、法面変位センシングシステム等について 
東京大学教授
 下山 勲
11:30-
12:00
ライフライン系都市インフラのモニタリングシステムの研究開発
 公共的な施設のエネルギー供給管理システム等のライフラインのコアを対象に、無線センサネットワークを構築して、異常検知・交換時期の予測を目指して 
東京大学教授
 伊藤 寿浩
12:00-13:00 昼休み  
第二部   
13:00-
13:20
トリリオンセンサ社会を支える高効率MEMS振動発電デバイスの先導研究
 直径20mm程度の一円玉サイズの面積で発電効率を従来比2桁以上に飛躍的に高めた10mW級の振動発電素子を実現するための設計・製作・評価技術について
東京大学教授
 年吉 洋
13:20-
13:40
「完全自動化」自動車に不可欠な自車位置や周囲環境の革新認識システムの先導研究
 ①分子慣性ジャイロ:自車位置を常に厳密に把握する技術、②分光イメージャ:周辺環境を常に正確に把握する技術、③高精度認識アルゴリズム技術について 
東京大学教授
 下山 勲
13:40-
14:00
モニタリングシステムの構築・運用の革新を目指すセンサ端末同期用原子時計の研究開発
 
産総研
 柳町 真也
14:00-
14:20
牛の受胎率向上と疾病予防のためのウェアラブル生体センシング技術の研究開
 
農水省
 新井 鐘蔵
  成果については展示会ブースにおいても展示・説明を行っておりますので、お立ち寄りください。
  <成果普及部 内田和義>

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2016年2月 4日 (木)

第4回海外調査報告会を盛況に開催(1月21日)

 第4回MEMS協議会海外調査報告会を1月21日に新テクノサロンで開催し、約40名の方にご参加いただきました。このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の状況について報告するものです。毎年のように北米や欧州を中心に学会等のイベント、海外の大学や研究施設、関連企業の訪問見学を行ってきましたが、今回は特に特別報告として世界の家畜に関連する報告を企画致しました。
         
                        写真1 会場の様子
                  
  MEMS協議会事務局長・長谷川英一からの主催者挨拶のあと、最初の報告は特別報告として「欧州と豪州の畜産用センサの現状と動向」と題して技術研究組合NMEMS技術研究機構およびマイクロマシンセンターのMEMSシステム開発センター  武田宗久から、イギリス、エクスターのeCow社、オーストリア、グラーツのsmaXtec社、オーストラリア、ガトンのQueensland大学、および Sydney大学の報告がありました。最初に畜産業の産業内の位置付けとして、国内の畜産は農業生産額の31%を占める最大(2.5兆円産業)であること、世界のスマートフォンの台数が2012年に約7億台に対して、牛の数は15億頭と極めて大きな数字であるとの報告でした。また子牛の誕生、生育、乳牛、健康管理や販売に至る産業形態も説明がありました。牛用のセンサとして各種体温計(深部、耳、膣等)、発情検知(モーションセンサ)、ルーメン(胃)のPHセンサの説明と、何故センサによる牛の管理が必要であるかの説明、受胎率の向上や、生産病(肺炎やストレス)等の課題の説明もありました。また現在取組を行っている、SIP次世代農林水産産業創造技術の研究内容の紹介によって、現在の最先端の状況も判りました。
  海外の状況として、最初に英国のeCOW社は、2007年に設立、Royal Agricultural 大学のToby Mittram教授がCEOです。PHセンサに無線モジュールを付けたセンサで、既に1000台以上が出荷されているようですが、実際に稼働しているのは250台とのことです。
  またオーストリア、smaXtec社は2009年設立、製品のラインナップは広く、Phセンサに加え、気象センサ、センサステーションも含み、出荷台数は2015年に2万台とのことです。このルーメンセンサPHセンサと温度センサを搭載し、センサ内メモリに蓄積したデータを纏めて送る仕組みです。
   豪州の調査では、クイーンズランド大学とシドニー大学の調査報告がありました。この大学ではルーメンセンサや温度センサ、ストレスセンサを活用している(特に運搬時のストレス評価のため)とのことです。
                  
                           写真2 武田から報告
                  
   続いて、「米国のMEMS産業動向」についてMEMS協議会 松本 一哉からMEMS Industry Group(MIG)国際ビジネス会議 (MEMS Executive Congress US in 2015)、Stanford大学工学部・大学院Ginzton Laboratory訪問の報告がありました。
   最初にMEMS Industry Group(MIG)のKaren代表から、IoTの到来を見据え、同団体の名称をMEMS & Sensors Industry Groupに改名することを宣言、更にトリリオンセンサビジョンを2015年5月に傘下に納めた事の報告があったとのことです。またSteve Nasiri氏からベンチャー発の企業であるInvenSenseが何故ここまで成功したかを、要因分析し、実装技術を中心に常に技術で先駆的に進めていたことの報告がありました。
  市場動向として特に市場が拡大するセンサは、BAW(Bulk Acoustic Wave)フィルタで、iPhone6sで20個搭載され、今後更に搭載個数は伸びる見込み、同センサ市場は、Avago社(60%)、Qorvo社(40%)の寡占市場となるとのことです。高周波共振器のRF-MEMSは日本が従来強かったので、最近の状況は残念です。
  またMEMSマイクロフォンの性能向上も素晴らしく、マイクロフォンは、概ねスマートフォンに4つ搭載され、ノイズキャンセラとして音質向上に貢献しています。マイクロフォンの感度向上(機能改善)によって価格下落を阻止できている稀なケースです。現在マイクロフォンの感度は約60dBですが、次世代技術では75dB以上になるものと考えられるほか、Optical MEMSマイクロフォンといった新しいセンサも出てくると推測されます。この場合、82dBに性能向上が可能との事です。
  前回は日本からの参加者は2名と少なかったのですが、今年は8名とのことです。MIGに詳しいSPPの神永アドバイザーによりますと、日本からの参加や講演寄与が増えたことに、主催者が驚いていたとのことです。
                  
                            写真3 松本から報告
                  
  次は「マイクロマシンサミット2015と題してMEMS協議会・国際交流担当の三原孝士が報告しました。マイクロマシンサミットは毎年、各国のMEMS関連状況をそれぞれ報告し、意見交換する場として開催され、今回は第21回となります。今回は久しぶりに欧州のドイツでの開催であり、またテーマも「SMART SYSTEMS FOR MANUFACTURING AND FACTORY AUTOMATION」とドイツ発のインダストリ4.0の話題が共鳴し、欧州からの参加者が例年以上に多く、参加人数は70名、発表数は約60件、Delegatesの多い国は、ドイツ 12名、イタリア 11名、オーストラリア 5名、中国 5名、イベリア半島 5名、スイス 4名またUSA 4名の順でした。
  また研究所の訪問では、ベルリン近郊にあるFraunhofer研究所のIZM(マイクロエレクトロニクス信頼性研究所)でした。Fraunhofer研究所は最先端でなくても、企業にとって必要な研究開発を行う研究所として世界的に有名ですが、IZMは半導体やセンサ、電子基板モジュールの研究開発を行っています。MEMSの研究は勿論ですが、例えばフレキシブルプリント基板の研究等です。日本では論文が書けないと研究テーマは成り立たないことが多いのですが、Fraunhofer研究所では産業界が望めは継続する歴史があります。
  今年のマイクロマシンサミット2016(第22回)は久しぶりに日本で開催されます(第1回が京都、第6回が広島でした。)、場所は新宿のハイアットリージェンシー東京(新宿)で、日程は5月25日、26日です。全世界のMEMSやナノテクの産業推進状況が判ります。御参加を希望される場合は事務局までお問い合わせください。
                  
                         写真 三原から報告
                  
                        写真 坂井から報告
   最後は「MEMS国際標準化に関する活動状況」と題して調査研究・標準部長の坂井裕一より報告がありました。最近は、センサに無線システムが搭載され、更にエネルギーハーベストに対しての取組みも強化されており、マイクロマシンセンターでもSSN(スマートセンシング&ネットワーク)研究会を設立して、その活動を強化しています。この分野は、応用分野別にセンサ・無線・エネルギーハーベスト・電源管理・実装と言った要素デバイスや技術の評価を含む国際標準化が必要ですが、特に無線等ではデファクトスタンダードに頼っている側面もあります。このような背景からMEMSの国際標準化はIECを舞台に、更に進められるように「プロダクトアウト/プロセス重視型」のアプローチから「マーケットイン/結果重視型」へと転換が進められています。IECから発行済みのMEMS関連規格は24件で日本提案が11件、韓国提案が13件となっており、現在審議中が5件あります。審議中の案件には日本・韓国が2件づつ、中国とドイツがそれぞれ1件あります。
                  
   最後に閉会の挨拶 として、専務理事 青柳桂一から熱心にご参加、ご議論して頂いた方々へのお礼がありました。
                  
                           写真 熱心な議論
                  
                  
                         写真 懇親会の様子
   報告会には住友精密工業・神永様、次世代センサ協議会・大和田専務も参加いただき、コメントを頂きました。さらに報告会の終了後には懇親会に場所を移し、情報交換を行いました。(MEMS協議会 国際交流担当 三原 孝士)

                  

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2015年12月17日 (木)

海外出張報告(オーストラリアにおける畜産センシングの調査)

 畜産大国であるオーストラリアにおいて、畜産センシングの現状及び市販ルーメンセンサの適用状況を調査するとともに実用化時の海外展開の可能性を検討するため、畜産用無線センサネット(グリフィス大学)、畜産の繁殖及び健康モニタリング(クイーンズランド大学)と生産性向上のためのモニタリング(シドニー大学)の権威を訪問したので、その結果について報告する。

 今回の調査で、オーストラリアにおける畜産センサシステムの社会実装に関しては、日本とはニーズが異なることが明らかになった。日本では、放牧ではなく畜舎において繁殖管理、飼養管理をしっかりと行って、高品質の肉や乳製品を生産するために、畜産センサシステムを活用することを考えている。それに対して、オーストラリアでは、人件費が高いこと及び全飼養頭数が2,600~3,000万頭と多いため、1農家当たりの飼養頭数が多い(北オーストラリアの平均的な農家の飼養頭数は約3,000頭とのことであった)ことから、多数の牛を少人数で管理するために、畜産センサシステムやロボットを活用することを考えている。しかしながら、現在内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として、畜産センサコンソーシアム(代表機関:国立研究開発法人農研機構 動物衛生研究所[新井 鐘蔵])で研究開発している畜産センサの開発内容を紹介したところ、開発中の畜産センサはオーストラリアのニーズでも十分に使えることが分かった。従って、オーストラリアは開発畜産センサの実用化時に大きな市場となり得ることが明らかになった。以下各訪問機関での調査概要について簡単に述べる。

(1)グリフィス大学ゴールドコーストキャンパス

 グリフィス大学(英語:Griffith University)は、1971年に創立され、クイーンズランド州の州都ブリスベンと、観光都市として有名なゴールドコーストに位置する総合大学である。ブリスベンからゴールドコーストにかけて5つのキャンパスがある。今回訪問したゴールドコーストキャンパスは、最近では新しい学科が開設され、創立時キャンパスであるネイサンキャンパスよりも学生数が多くなっている。Micro and Nanotechnology Centre も2011年に新設されている。

 グリフィス大学では、MEMSセンサの権威のDr. Dzung Viet Dao(Senior Lecture)及び無線の権威のProf. David Thielを訪問し、SIPプロジェクトの概要を紹介するとともに畜産センサ用無線に関して、議論を行った。畜産用センサ無線では低消費電力化が重要であるとの認識で一致した。写真1にグリフィス大学のMicro and Nanotechnology Centre が入っているScience, Engineering, Architectureビルの写真を、写真2に訪問したDr.Dao及び伊藤先生とScience, Engineering, Architectureビルの玄関で撮った写真を示す。

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           写真1 グリフィス大学Science, Engineering, Architectureのビル

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  写真2 Dr. Dao(中央)、伊藤先生(左)とScience, Engineering, Architectureビルの玄関で

(2)クイーンズランド大学ガトンキャンパス

 クイーンズランド大学(英語: The University of Queensland)は、1909年創立のオーストラリアクイーンズランド州ブリスベン、セントルシア地区に本部キャンパスを持つ州内で最長の歴史及び最も権威ある大学である。4つのキャンパスがあるが、今回訪問したガトンキャンパスは、1897年にクイーンズランド農業大学として開校し、1990年にクイーンズランド大学の機関になったキャンパスで、農学と畜産関係の学科が集まるキャンパスである。1,068ヘクタールの広さを有する。

 クイーンズランド大学では畜産の繁殖及び健康モニタリングの権威であるProf. Michael McGowanを訪問し、SIPプロジェクトの概要を紹介するとともにオーストラリアの畜産センシングの現状を把握した。Prof. McGowanはe-Cow社のルーメンセンサを使用した経験もあり、こちらの方は、数週間は安定的に使用出来ていることが分かった。また、我々の開発するセンサに関して非常に興味を持って頂き、是非とも実証実験を行いたいとのコメントを得た。写真3にクイーンズランド大学獣医学部のビルを、写真4に今回訪問したProf. McGrown(右から2番目)及びDr David McNeill(右端)と獣医学部のビルの前で撮った写真を、写真5に奥の牛舎で暑熱対策の実験を実施しているクイーンズランド大学の牧場を示す。

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                   写真3 クイーンズランド大学獣医学部のビル

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 写真4 Prof. McGrown(右から2番目)及びDr David McNeill(右端)と獣医学部のビルの前で

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          写真5 クイーンズランド大学の牧場(奥の牛舎で暑熱対策の実験を実施)

(3)シドニー大学カムデンキャンパス

 シドニー大学(英語: The University of Sydney)は、1850年にオーストラリアのニューサウスウェールズ州(当時は植民地)の州都シドニーに設立された同国最古の名門大学である。約10のキャンパスを持つ。今回訪問したカムデンキャンパスはシドニー市街から車で2時間くらいのところに位置した獣医学部と農学部のキャンパスである。

 シドニー大学では肉牛のモニタリングの権威のAssociate Prof. Luciano A Gonzalez及び乳牛のモニタリングの権威のProf. Sergio C. Garciaを訪問し、SIPプロジェクトの概要を紹介するとともに飼育設備の見学及び畜産センシングに関する討議を行った。写真6に今回訪問したAssociate Prof. Gonzalez(左)とProf. Garcia(右)を示す。

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               写真6 Associate Prof. Gonzalez(左)とProf. Garcia(右)

 Prof. Garcia は過去にKahne社のルーメンセンサを使用した経験があり、その結果、文献に記載されている通り、コンセプトとしては密度を軽くして、第1胃の上部に浮遊させて使用し、反芻時の逆流や肛門への移動を防止するため、フレキシブルな羽根構造を持っていることが分かった。羽根構造が壊れることはなかったが、信号受信レベルは非常に悪く数時間~数日しかデータ取得が出来ず信頼性は良くないことが分かった。

 また、世界に3台しかないスウェーデン製(Delaval社)の全自動搾乳システムを保有し、センサを含めた積極的な自動化の研究開発を進めていることが分かった。全自動搾乳システムによる飼育の手順を図1に示す。牛は普段は放牧場で牧草を食べているが、乳が張ってくると自分で全自動搾乳システムのところに集まってきて、順番に全自動搾乳システムに入る。そうすると、先端にカメラのついたロボットアームが乳頭の位置を計測して、乳頭部分に洗浄液をかけて洗浄した後、その位置に吸引器を持っていって、乳頭に吸引器をセットする。全ての乳頭に吸引器をセットするが、乳頭間隔が狭いため、エラーを結構起こしていた。全ての乳頭にセット出来なかった牛は搾乳量が所定の量に達しないため、1周目では出口が開かず、2周目で再チャレンジするとのことであった。24頭の牛が回転台で1周する間に搾乳をする。搾乳量も計測・管理されており、過去の履歴等から設定された所定の搾乳量を搾乳できれば、吸引器が外され、出口の扉が開いて牛は出て行く。牛が出た後は自動で回転台の糞尿が掃除されて、入口から次の牛が入って来る。以上の動作を繰り返すものであった。全自動搾乳システムを出た牛は自動給餌機に自分で行って、搾乳量に見合った濃厚飼料を貰って食べ、濃厚飼料を食べ終わるとまた自分で放牧場に帰って行くという手順であった。ルーメンセンサを投入した牛や濃厚飼料の量や内容を変更した等の実験牛も基本的には同じように飼育されており、e-Tag情報で判別して、一括して得られたデータを解析しているとのことであった。

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                   図1 全自動搾乳システムによる飼育手順

 本調査は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:生研センター)によって実施したものである。

                                   (マイクロマシンセンター 武田宗久)

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2014年11月12日 (水)

畜産センサ研究コンソーシアムが提案した「生体センシング技術を活用した次世代精密家畜個体管理システム」がSIP(戦略イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」に採択

このたび一般財団法人マイクロマシンセンターが参画しております畜産センサ研究コンソーシアム(代表研究機関:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)動物衛生研究所)が提案した「生体センシング技術を活用した次世代精密家畜個体管理システム」が、農研機構生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)が管理法人をつとめる、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)課題「次世代農林水産業創造技術」における「(1)農業のスマート化を実現する革新的な生産システム①高品質・省力化を同時に達成するシステムiv)繁殖成績の向上や栄養管理の高度化のための次世代精密家畜個体管理システムの開発」の包括提案として採択されました。
http://www.naro.affrc.go.jp/brain/sip/files/SIP_Examination_outcome.pdf
同じく技術提案として採択されました岩手大学の2テーマを合わせて、今後畜産センサ研究コンソーシアムで次世代精密家畜個体管理システムの研究開発を進めて参ります。以下研究の概要について簡単に紹介致します。

牛の受胎率の低下や生産病の多発は、優良な子牛の生産や、肥育や搾乳などの生産性の高水準化の実現にとって大きな阻害要因となっております。この問題を解決するためには、日々変化している牛の繁殖機能や栄養・健康状態などの様々なバイタルサイン(生命情報)を連続的にモニタリングして、必要な牛の生体情報を個体ごとに見える化し、随時利活用できる技術の開発が必要となります。本研究では、必要期間連続で低侵襲に腟内モニタリングが可能な無線センサ端末や活動量をモニタリングできるインテリジェント首輪等を開発し、これを利用して発情行動が微弱化した牛においても授精適期を判定する技術を開発して受胎率の向上や分娩管理の軽減化を図ります。また、長期間連続して牛の第一胃(ルーメン)機能や体温、ストレス等の栄養生理機能を連続モニタリングできる無線センサ端末を開発し、これを利用して乳・肉の生産向上に効果的な飼養管理技術を開発するとともに、生産病(消化器病、呼吸器病など)の早期診断及び効果的な治療・予防技術を開発することを目的とします。研究イメージを図1に示します。また、図2に示しますように、リーディング22機関による産学官連携体制で研究を進めて参ります。

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                           図1 研究イメージ

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                        図2 研究実施体制

本研究で対象とする牛の生体センシング技術は、今後海外等との競争力強化に必要な農場の大規模化や、きめ細やかな高品質牛肉・乳生産を目指す地域型の中小規模農場経営のいずれにも導入可能であり、ICTを利活用した畜産分野における生産拡大に大いに寄与すると期待されています。研究期間は本年度から平成30年度までの5年間となります。今後得られました成果に関しましては、随時発表していくこととしております。  (マイクロマシンセンター 武田宗久)

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2014年11月11日 (火)

第23回MEMS講習会を山形県工業技術センターで開催しました。 

                   

 一般財団法人マイクロマシンセンター(MMC)は、MEMS 産業の裾野を広げ、その産業推進の一助となるべく、様々な活動を行っています。その一環として、MEMS                   協議会メンバー企業、特にMEMSの試作(MEMS ファンドリー)や設計ツール開発をサービスとする企業を中心に年2回実施していますMEMS 講習会を、山形県工業技術センターとの共催で、山形県高度技術研究開発センターにて平成26年10月30日(木)に開催しました。 

                  
                   

 今回は「MEMS技術を利用した地域活性化」をテーマにMEMSを重要な産業として育成されている山形県工業技術センター、およびその関連企業とのビジネス交流会を行いました。MEMS分野での研究開発をされている世界的な研究者による基調講演と、山形県、MMCの双方からの報告を中心に企画され、最先端の技術開発や地域での産業化の課題等を議論する最適な場となっています。尚、副題として「山形でMEMSがもたらす新境地」                   となっていますが、山形市にある芭蕉記念館にあやかって俳句調にしたものですが、関係者さえ気が付いて貰えませんでした(笑)。

                  
                   

 当日は主催者、共催者の挨拶のあと、【基調講演1】として東京大学・松本 潔先生から「インフラモニタリング等に使用されるネットワーク型センサーを支えるMEMSデバイス技術」がありました。ここではMEMSセンサーの代表格であるマイクロカンチレバーを用いて、様々な高感度センサーの研究事例がありましたが、特にカンチレバーの片表面を水に浸透させることで超音波やアコースティックエミッションを検出する興味深い取り組みのご紹介がありました。カンチレバセンサーは高感度に加えて超低消費電力で超小型の特徴があり、センサーネットワークへの適用が期待されています。またマイクロカンチレバーのAFM以外のセンサー応用は始まったばかりであって                   今後が期待されます。 

                   

 【基調講演2】として山形大学・峯田 貴先生から 「スマート材料を用いたMEMSデバイス:形状記憶薄膜、磁歪薄膜などの形成プロセスやデバイス・MEMSへの応用」                     がありました。形状記憶合金(SMA)やFePd磁歪合金を使ったカンチレバーやアクチュエータの研究紹介です。このような異種材料の利用は長い経験に加えて、上手い応用先を見出すことが重要ですが、峯田先生は医療から産業・計測用途まで的確なターゲットを意識されて進められていました。是非実用化に向けて山形の企業に展開して頂ければと思います。山形地区からの講演では、山形県工業技術センターの岩松氏からMEMS技術への取り組みの報告がありました。着実な技術開発をされて優れたMEMSデバイスを開発され、また半数以上は企業との実用化案件であるとのことです。またデバイスのみならず、微細加工やナノテクによる表面改質の実質的な話題がありました。また山形東亜DKKから無線伝送可能な牛の胃内部のPHを計測する興味深い実用システムの話題がありました。農業や畜産にセンサーシステムを応用する先進的な例として具体的な課題や、ノウハウが沢山あることが理解できました。このセミナーの参加者は約40名でした。

                  
                   

 翌日は、「山形県高度技術研究開発センターの、MEMSおよび微細加工の関連施設 」の見学会が開催されました。当日の見学施設は、材料やデバイスの表面分析が可能な各種分析装置、MEMS関連施設とクリーンルーム、ナノ加工関連施設でした。クリーンルームでは全員がクリーン着に着替えて施設内に入りましたが、小規模ではありますが1施設に成膜、露光、エッチング、評価と言った全ての装置が揃っているために、手頃にMEMSや関連材料の試作が出来る特長があります。またナノ加工関連では、10年以上前に展開したマイクロマシンプロジェクトを彷彿させる数々の装置群と、その応用製品があって、技術が脈々と引き継がれ、実用化・産業貢献されている様子をくみ取ることが出来ました。またセンターのロビーには世界的に有名なエコカーが詳細に分解され、山形県がエコカーの部品供給が出来るようなきっかけを得られる貴重な展示がありました。改めて山形県の産業化への熱心さに感銘を受けました。今回は山形県工業技術センターの奥山所長、岩松様を始め沢山のスタッフの方々に主導して頂いて初めて開催できたこと、心から感謝して報告をさせて頂きます。 また次回もたくさんの方々にご参加頂けるような企画にしたいと思います。(MEMS協議会 三原 孝士)

                  

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写真 1 広々とした山形駅西口(東口は賑やかです)

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写真 2 セミナー会場の様子

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写真 3 山形県工業技術センターの奥山所長

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写真 4 基調講演1 東京大学・松本先生

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写真 5 基調講演2 山形大学・峯田先生

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写真 6 見学会の様子

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写真 7 クリーンルームにて1

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写真 8 クルーンルームにて2

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写真 9 ナノ加工のデモルーム

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