Pj RIMS研究開発

2018年6月21日 (木)

AEWG-60 参加報告

今年で60回目となる米国AE会議(AEWG: Acoustic Emission Working Group Meeting)がサウスカロライナ大学のPaul Ziehl教授のホストで開催された。本会議は、AEに特化した国際会議として、大学はもとより、企業や公的機関からもAEに関するあらゆる技術、システム、応用事例に関する報告がなされる場である。本学会に参加し、AE技術のビジネス展開に着目し、調査を行った。今回は6セッション37件の講演発表と7件の企業講演があり、56名(米国39、日本5、英国5、中国3、ドイツ3、韓国1)の参加者があった。以下に、いくつかの講演を抜粋して概要を報告する。

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写真1 会場のMiles House Hotel

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写真2 会議場内の様子

<開催概要>
Meeting date: Jun 19-20, 2018
Venue: Miles House Hotel, Charleston, SC, USA
Host & Program Chair: Prof. Paul Ziehl (University of South Carolina)

セッション:(括弧内は講演件数)
1) Keynote I (1)
2) Technical Session I : Infrastructure (4)
3) Technical Session II: Infrastructure (5)
4) Commercial Presentations (7)
5) Technical Session III: Aerospace & Composites (4)
6) Technical Session IV: Aerospace & Composites (3)
7) Keynote II (1)
8) Technical Session V: Sensors/Sensing/Signal Analysis/ Modeling (5)
9) Technical Session VI: Sensors/Sensing/Signal Analysis/ Modeling (4)
10) Technical Session VII: Fatigue/Fracture (5)
11) Technical Session VIII: Fatigue/Fracture (5)

■Keynote, Lee Floyd, P.E.(recently SCDOT: South Carolina Department of Transportation)
元サウスカロライナ交通局のエンジニアのLee Floyd氏による講演。管理者の立場から点検やモニタリングの現状に関する発表があった。米国ではNBIS((National Bridge Inspection Standards)と呼ばれる橋梁の点検基準があり、それに基づいた点検を実施しているが、モニタリング技術の進展によって、”Good”と”Poor”の中間領域を管理できるようになることに大きなメリットがあるとのことである。安全性を向上するだけでなく、不必要な荷重制限の緩和や、修復or架替えの判断にも役立つことが期待されるとのことであった。今後は、ロングスパンの橋梁に対するモニタリング需要が増えるだろうとのことである。

■”A Deep Learning Approach to Localization of Acoustic Emission Sources in Plate-like Structure with One Sensor,” Arvin Ebrahimkhanlou (University of Texas at Austin)
テキサス大のDeep Learningを使ったAE源位置標定に関する発表である。本発表は航空機のモニタリングをターゲットとし、複合材プレートのリベット付近からAEが発生することを想定している。従来の位置標定は、複数センサ間の時間差をもとに、位置を推定する方式が一般的であるが、本アプローチは1センサで位置標定まで行うという点で新しい発想である。プレート内のあらゆる位置からAEが発生した場合のセンサ波形の特徴を事前に学習させることで、1センサでもある程度の位置標定が可能であるという内容であった。今回のAEWGではAEの信号処理にDeep Learningを活用した事例が出てきており、今後も同様の傾向は続くとみられる。

■”Using Artificial Neural Network in a Methodical Approach to Develop Suitable Classification Systems of Acoustic Emission Data Generated in Tribological Contacts,” Knut Wantzen (Karlsruher Institute fur Technologie)
カールスルーエ工科大学からはIndustry4.0の実例ともいえる、製造工程でのAE応用事例に関する報告があった。旋盤のシャフト加工時に発生するAEを基に、製造工程の品質制御(Quality Control)を行っている。従来数量ベースでチップ交換を行っていたものを、AEによるモニタリングデータを活用し、品質ベースでの交換を行うようにした、という内容である。AEパラメータの時系列変化を学習し、品質(良/不良)を判定するニューラルネットワークを構築し、交換時期を決定している。シンプルな内容であるが、AEの特徴を上手く活用したIoTの王道とも言える事例である。

■”A Review of the Application of Acoustic Emission Testing in Composite Repair,” Fady F. Barsoum and Isabel M. McBrayer (Embry-Riddle Aeronautical University)
エンブリー・リドル航空大学から、複合材料の修繕を評価するためのテストとしての非破壊検査手法に関する包括的なレビューがあった。航空宇宙分野、船舶、自動車などで複合材料が広く使われるようになってきているが、一度損傷すると極端に強度が下がるという面がある。また、劣化予兆を検知することが難しいとのことであった。複合材料は損傷があれば交換がスタンダードで、修復は一般的ではなく、コスト高につながっているとのことである。修復と強度に関するデータベースが増えれば、積極的に修復することでコストを抑えられる。世の中の非破壊検査手法をレビューした結果、稼働中の損傷を検出できるという点でAE法には他の手法にない大きなメリットがあるとの結論であった。

次回は2019年、IIIAEとのジョイント開催でイリノイ州シカゴでの開催が予定されている。

(技術研究組合NMEMS技術研究機構 碓井隆)

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2018年1月31日 (水)

第6回MEMS協議会・海外調査報告会を盛況に開催

 第6回MEMS協議会海外調査報告会を1月31日に新テクノサロンで開催し、約50名の方にご参加いただきました。このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の最新状況について国際交流事業の一環として報告するものです。毎年のように北米や欧州を中心に学会等のイベント、海外の大学や研究施設、関連企業の訪問見学の報告を行ってきましたが、今回は前回に引き、欧州の橋梁モニタリングに関連する報告を、特別報告として企画致しました。
                  
                  

                  
                   


                    写真1 会場の様子

                  
                  

                  
                   MEMS協議会事務局長・長谷川英一からの主催者挨拶のあと、最初の報告は特別報告として「海外における橋梁・大規模モニタリングの現状と動向」と題して技術研究組合NMEMS技術研究機構の武田宗久氏から、最初にオーストラリアのブリスベンコンベンションセンターにおいて開催されたアセットマネージメントの国際会議である12th World Congress on Engineering Asset Management (WCEAM2017)への参加報告、日本より先行していろいろな活動が行われている海外の橋梁・大規模インフラモニタリングの現状を把握するため、欧州各地の橋梁:van Brienenoord橋(オランダ)、Marchetti橋(イタリア)、Chillon高架橋(スイス)、Sydney Harbor橋(オーストラリア)等の長大橋、発電施設であるBéznar ダム(スペイン)、遺跡建造物であるVenaria宮殿(イタリア)やEl Giraldillo(スペイン)等の大規模インフラの現場等を訪問し、その管理、モニタリングの実態に関する報告がありました。報告者の感想では、欧州は橋梁等のインフラモニタリングは日本よりも進んでいるが、センサは既存の物であって有線接続を使っている。日本はセンサの開発や、無線応用、エネルギーハーベスタ等の技術を平行して進めており、技術的にはむしろ進んでいるとのことです。
                  
                  

                  
                   


                    写真2 武田氏から報告

                  
                  

                  
                   続いて、「IoT社会に向けたセンサ動向調査と産業動向調査報告」と題して、技術研究組合NMEMS技術研究機構および一般財団法人マイクロマシンセンターの今本浩史から報告がありました。
                   米国MEMS & Sensors Industry Group主催で、2017年11月1日~11月2日の間、米国カリフォルニア州サンノゼにて開催されたMEMS                   & Sensors Executive Congressに、IoT社会にむけたMEMS&センサの動向調査の一環として参加したものです。報告者の感想として、産業用IoTに関して様々な事例紹介があったようですが、今までの研究レベルの振動センサによって振動状態のみで故障予測を行うのは、その解釈が困難な場合が多く、他のセンサとのフュージョンが今後重要とのことです。更にバッテリを持たないセンサの発表も紹介されました。更に、産業動向調査委員会にて2025年までのMEMS産業の市場予測を行う取り組みの紹介もありました。
                  
                  

                  
                   


                    写真3 大中道氏から報告

                  
                  

                  
                   次は「マイクロマシンサミット2017」と題してMEMS協議会・国際交流担当の三原が報告しました。2017年の第23回「国際マイクロマシンサミット」は5月15日(月)から17日(水)までスペインのバルセロナで開催されました。今回のトピックスは、”Micro and Nano Systems for Smart Cities applications”です。スペインは、センサやMEMS、無線、半導体や集積回路、ナノ材料と言った複数の専門分野の研究者が同居する研究所が多く、専門領域の融合が進んでいるのが特徴ですが、今回のオーガナイザーは、CNM-CSIC(National Microelectronics Center of Barcelona)の所長Carles Cane教授でした。今回は欧州での開催で参加者も多く、21の地域から73名のデレゲイト、更にスペインからの10名程度のオブザーバの参加もあり、比較的規模が大きいものでした。今まで何年か不参加の期間があった、イギリスやカナダ、オーストラリア等の復帰、更にアイルランドや東欧の新規の参加国もあったのが特徴です。今回はパネルディスカッションとして、バルセロナで実際に中小企業を中心に行われたスマートシティ構想、すなわちエネルギーや交通と言った様々なデータをセンサで取得して、都市の省エネや生活に有効に役立てるための試行の取り組みが印象に残りました。2018年のサミットはアルデンチンのブエノスアイレスで5月14日から16日に開催されます。
                  
                   続いて「MEMS関連の国際会議報告」とのタイトルでMEMS協議会・標準部の大中道崇浩から報告がありました。2017 年 6月 18日~22日に台湾・高雄(Kaohsiung)で開催された、隔年開催の                  Transducer 技術に関する国際会議である、International Conference on Solid-State Sensors,                  Actuators and Microsystems(Transducers2017)の報告がありました。マイクロマシンセンターでは、「国内外技術動向調査」という取り組みとして、MEMS分野の著名な国際会議等をターゲットにした定点観測的な調査を例年行っており、本国際会議はその調査の対象学会です。国内外技術動向調査は、有識者から成る委員によって分析を行い例年報告書として発行しますが、今回は事務局として学会に参加し、今後の調査報告書の作成により具体的・現実的な側面で支援可能と思います。
                  
                   最後は「MEMS国際標準化に関する活動状況」と題して、同じく大中道崇浩から報告がありました。MEMS国際標準化はIEC(国際電気標準会議)で進められており、日本はMEMS分野を担当する分科委員会SC47Fの幹事国として主導的に推進しています。IECの全体会議は毎年開催され、2017年は6月に東京で、10月にロシア・ウラジオストクで開催されました。今回、これらの国際会議を通して、特性計測方法、信頼性評価、エネルギーハーベスティング、スマートセンサ等でのMEMS関連の技術分野における国際標準化の状況についての報告がありました。更に現在、一般財団法人マイクロマシンセンターを中心に取り組んでいるスマートセンサのインターフェースの関わる標準化を日本が主導する取り組みの紹介がありました。
                   MEMS協議会の会員サービスとして始めた本海外調査報告会も6回を数えるほど、長期間継続しています。本会へのご参加はリピータが多いことも特徴で、会員交流の側面も有しています。海外の状況はインターネット等で公開されているとは言っても、中々生の情報や、専門化の印象&感想を聞ける機会は少ないのが現実です。今回もSPPテクノロジーの神永様に貴重なコメントや、報告会の後に行った会員交流会でのご挨拶を頂く等、IoTの最新状況や日本の課題を議論することが出来ました。 最後のこの場を借りて、今後のMEMS協議会への積極的なご参加をお願いしたいと思います。
                  
                  

                  
                   

(MEMS協議会 国際交流担当 三原 孝士)
                   

                  

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2018年1月 5日 (金)

「新年のご挨拶」

新年あけましておめでとうございます。

 本年はSociety5.0の実現を世界に打ち出していくための新たな産業・社会の在り方として、「コネクテッド・インダストリーズ」に大きな注目が集るとされています。特に、製造現場、自動走行、健康・医療・介護等の現実の「リアルデータ」を巡る競争が激しくなると予想されていますが、その「リアルデータ」を収集する最前線にMEMSを中心とする多様なセンサが位置しています。従いまして、ナノ・マイクロ技術分野における研究開発や普及促進等を長年担ってきた私どもマイクロマシンセンターの責任はさらに重くなっていくものと考えております。

 仏のヨール社によれば、世界のMEMS市場は消費者用や自動車用がけん引し、2017年の132億ドルから2022年には254億ドルと年率14%で伸びるとされています。MEMSデバイスとしては、スマホの4G/5G 化の進展によりMEMSフィルタの伸びが大きく、従来からの慣性センサ、圧力センサ、ジャイロなどを凌駕していくと見られます。

 このような中、当センターでは2000年代に注力したMEMS技術そのものの研究開発から、2010年代にはセンサネットワーク技術にシフトし、現在は道路やライフラインのインフラモニタリングに加えて、ファクトリやプラントのスマートセンシングの研究開発に注力しています。そして、昨年は経産省・NEDOがコネクテッド・インダストリーズの重点分野として推しているロボティクスや自動走行の鍵となるAI融合高精度物体認識システムの研究開発に着手しました。

 また、それらの研究開発を支えるMEMS試作ファンドリとして、7年前に開設したつくばの「マイクロナノオープンイノベーションセンター(MNOIC)」も今や中小・ベンチャーを含む40社以上からの研究や工程の受託により、フル稼働の状況にあります。さらに設備整備や技術向上に努めて、我が国のMEMS開発需要に応えてまいります。

 そして、上述の成果などを公開する場として、昨年、MEMSセンシング&ネットワークシステム展を刷新して、初めてCEATECと同時開催とし、5万人を超える来場者の方々にお出でいただくことができました。本年はさらにCEATECやAll about Photonics展とのシナジー効果を高め、IoTシステム、さらにはコネクテッド・インダストリーズの最先端技術展としてのプレゼンスを高めてまいります。

 当センターとしましては、本年もMEMS・スマートセンシング技術の開発や普及に真摯に取り組み、我が国のコネクテッド・インダストリーズの推進に微力ながらも貢献してまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。

 皆様方には以下の10大ニュースをご覧いただき、このような私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。

続きを読む "「新年のご挨拶」"

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2017年11月25日 (土)

INDTCE2017参加報告

 インフラモニタリングセンサ用エナジーハーベスタ調査の一環として、2017年11月21日(火曜日)〜23日(木曜日)にかけて、アメリカハワイのカウアイ島で開催された、Innovative Non-Destructive Testing for Civil Engineers(INDTCE2017)に参加してまいりました。また、それとともに2017年11月20日(月曜日)にハワイ大学(オアフ島)にも訪問して来ましたので報告します。

 まず、INDTCE2017については、今回初めて開催された国際学会であり、本プロジェクトのメンバーでもある京都大学の塩谷智基教授(写真1)がチェアとして中心となって立ち上げられ開催されました。また、初開催にもかかわらず、日本をはじめ、アメリカや韓国などの大学、企業の関係者も参加し、多くの発表、意見交換がされました。特に従来の国際学会と大きく異なり、土木系とともに、我々のようなエナジーハーベスティング、物理センシングを研究している電気系、物理系なども一堂に会しており、従来では難しかったそれぞれ最新の情報交換をする場が設けられました。それによって、ある分野では常識的なことが、別の分野では新鮮であったりして、非常に有意義な試みであったと感じました。


写真1 京都大学の塩谷智基教授(チェア)

 初日、最初のキーノートスピーチは、「Development of AE and Visualized NDE for Maintenance of Concrete Structures」と題して、現在京都大学にいらっしゃる大津政康教授(写真2)によるものでした。内容は、コンクリート構造物は、従来ではメンテナンスフリーと一般的に考えられて来ていましたが、その頃から大津教授らは人体の健康診断と同様に、コンクリート構造物にも診断が必要だと考え、AE法(Acoustic Emission Method)をはじめとした、非破壊検査法の確立など様々な活動をして来られた、というもので、ご講演の中ではそれらの一つ一つを丁寧にご説明されていました。それゆえ、我々のような分野が異なる研究者にとっても、その歴史を垣間見ることができる素晴らしい内容であったと同時に、大津教授らのこの分野における貢献度に感服しました。


写真2 キーノートスピーチの大津政康教授

 その後、午前中のひとつのセッションとして、私たちの取り組みであるインフラモニタリング用のエナジーハーベスティング技術、歪みを計測する新たな物理の創出、またそれらの商品化、製品化に向けた取り組みに関して、合計3件の発表を行いました。その中で、自分はNEDOのエネルギー・環境新技術先導プログラム/トリリオンセンサ社会を支える高効率MEMS振動発電デバイスの研究として取り組み、その後、RIMS用の振動発電デバイスとして開発している、橋梁モニタリング用のMEMSエナジーハーベスタを中心に発表をしました。内容は、実際に高速道路の橋梁で振動計測をした結果や、その結果をもとにしたエナジーハーベスタの設計コンセプト、実際に製作した高効率MEMS振動発電デバイスの実験結果、デモンストレーション動画等を紹介しました。本先導研究では、学会チェアでもある塩谷教授のグループと連携して行っていたテーマでもあり、その連携による効果などを塩谷教授が土木系の方々に補足でご説明してくれた(写真3)こともあり、期待以上に成果を訴求できたと思います。また、このセッション自体も非常に盛り上がり、セッション終了後には早速、こんなことはできないか、こんなところで使えないか、など具体的な質問、意見交換を活発に行うことができました。


写真3 エナジーハーベスタの発表(三屋、塩谷教授の補足)

 2日間に渡った会議も、終始活発に同分野、異分野の垣根なく意見交換、情報交換(写真4)ができ、非常に有意義な経験になりました。また、今後実際に何件かの新たな取り組みにつながりそうな話もあり、このような機会がさらに増えると面白いのではないかと個人的には思いました。


写真4 異分野の情報・意見交換の様子

 次に、INDTCE2017に先立って訪問したハワイ大学についてご報告します。ハワイ大学マノア校は州立大学であり、土地がら海洋学、火山学、天文学などの研究が活発に行われています。今回はハワイ大学のCosmochemistry研究所(写真5)で、特に隕石などに含まれるイオンなどの分析をご専門にされているNagashimaマネージャーを訪ね(写真6)、校内、研究設備等を見学させていただいた後、実際に、イオンの分析を見せていだだきながら、我々のイオン分析手法などについて意見交換を行ってまいりました。


写真5  Cosmochemistry研究所


写真6 三屋(左)、小野さん(中)、Nagashimaマネージャー(右)

 同研究所では、世界でも数台しかない高感度2次元イオン検出による結像型SIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer、日本では2次イオン質量分析計)を保有しており(写真7)、その分解能はppb(parts per billion 、十億分の1)と非常に高いとのことです。また、本質量分析計の電圧や磁場は、光学顕微鏡におけるレンズの役割を担っており、細く絞ったイオンビームを試料に当ててイオン化し、その2次イオンを「レンズ」によって元の位置情報を保ったまま質量分析計の検出器へ導くことができるとのことです。また、その検出器は、独自に設計・開発したイオン撮像器で、1個~100万個の入射イオンの個数を計測出来る素子が並べられており、2次元イメージングが可能とのことでした。これにより、隕石などを分析する宇宙科学・地球科学分野において、多くの世界最先端の科学成果をあげられているとのことでした。

 
写真7 高感度2次元イオン検出による結像型SIMS

 我々が研究しているエレクトレットも、絶縁物中にイオンを含有することで形成されておりますが、その2次元分布は観察できなかったため、どのよう分布なのかわかっておりませんでした。しかしながら、条件次第ではあるが、この装置を使用すればわかるかもしれないとのことでしたので、具体的に検討していこうということになり、非常に有意義な意見交換となりました。

 今回は、(学会の分野違いと同様に、)隕石のイオン分析という、一見異分野のように感じますが、対象物が半導体と隕石と違うだけで分析方法はまさに我々と同じようなものでした。それにもかかわらず、半導体業界では知られていないが故にできないと思っていたことを、隕石の分析業界ではいとも簡単に観察されていることに非常に驚いたのと同時に、このような異分野にも目を向ける重要性を改めて実感しました。

 また、ハワイという常夏の地に冬の日本から訪れ、異分野との交流をする、という非常に非日常な体験でした。しかしながら、その中で従来の延長ではない、新たな引き出しを見つけることができ、非常に有意義であるとともに、このような交流をすることの重要性を、身をもって実感いたしました。今後も是非積極的にこのような活動をしていきたいと思います。

2017年11月25日
技術研究組合NMEMS技術研究機構 三屋裕幸

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2017年11月22日 (水)

ハイウエイテクノフェア2017出展

 2017年11月21日(火)~ 11月22日(水)に東京ビッグサイト東7・8ホールで開催されましたハイウエイテクノフェア2017に技術研究組合NMEMSが2小間出展致しました(写真1:NMEMS技術研究機構の出展ブースの様子)。

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    写真1 NMEMS技術研究機構の出展ブースの様子

 ハイウエイテクノフェア2017は公益財団法人高速道路調査会の主催、NEXCO3社の共催による高速道路を支える最先端技術を紹介する展示会です。今年は第14回目で、282の出展者が1,333の新技術等を出展し、2日間で約20,700名の来場者がありました。来場者は毎年右肩上がりで伸びており、非常に活気に溢れた展示会となっています。出展物も、ファン付の空調服から最新の道路監視システム、さらには大型のトンネル点検車に至るまで、ハイウェイに関係するものならなんでもありで、非常にユニークです。
 NMEMS技術研究機構のブースでは、今年のMEMS センシング&ネットワークシステム展で使用したパネル17枚による成果のPRに加え、新規開発のセンサ端末等の展示(写真2)とフレキシブル面パターンセンサのデモ(写真3)、さらには動画によるプロジェクトの解説により、以下の特徴を有するRIMSプロジェクトの広報を行いました。

  • 従来の点検技術を補完し、道路インフラの状態を常時モニタリング
  • 道路インフラのトータルな維持管理が可能
  • 高速道路の橋梁、道路付帯物、法面等を対象
  • センサ端末は自立電源駆動
  • 新規の小型、安価、高性能、高耐久性無線センサ
  • 多種多様なセンサからのデータを収集する無線通信センサネットワーク
  • セラミックスによる高耐久のオールインワンパッケージ
  • 粘着性を有する屋外用高耐久性機能フィルムによる端末等の容易な施工
  • 長大橋や発電所等の大規模インフラモニタリングに展開

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               写真2 展示品

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      写真3 フレキシブル面パターンセンサのデモの外観

 デモ(写真3)では、フレキシブル面パターンセンサによるひずみのリアルタイム計測を行いました。このデモは、フレキシブル面パターンセンサを貼り付けたステンレス板を押すことにより得られるひずみ量を計測し、そのひずみ量を無線通信されたノートPC上で色パターンに変換するとともに、その結果をディスプレイに表示されたセンサ画像上にリアルタイムでマッピングするというものです。ひずみを面で捉えるといったコンセプトをデモを通して分かり易くお伝えすることで、取り組みの先進性と有用性をアピールすることができました。また、フレキシブル面パターンセンサは、日本経済新聞本紙朝刊に取り上げられるなど大きな反響がありました。
 ブースにはRIMSプロジェクトに興味のある方が多数来場され、密度の濃い意見交換ができ、RIMSプロジェクトの広報もできました。
 次回のハイウエイテクノフェア2018は2018年11月28日(水)~11月29日(木)に東京ビッグサイト西3・4ホールで開催されます。
 
        (技術研究組合 NMEMS技術研究機構 中嶋 正臣)

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2017年10月25日 (水)

南欧州大規模インフラモニタリングの現地実態調査報告

 日本より先行して様々な活動が行われている南欧州(スペイン、イタリア、スイス)における大規模インフラモニタリングの現状を把握するため、2017年10月14日(土)~ 10月25日(水)に下山リーダを団長とする8名の調査団(五十音順:伊藤寿浩、奥西史伸、塩谷智基、下山勲、武田宗久、中嶋正臣、橋本勝文、渡部一雄)を組んで、南欧州大規模インフラモニタリングの現地実態調査を行いました。

 今回調査しましたのは、次の組織と大規模インフラです。
(1)LACIAID of ORITIA & BOREAS(Granada, Spain)
(2)The Béznar Dam(Granada, Spain)
(3)Structural Engineering Group, University of Sevilla
  (Sevilla, Spain)
(4)El Alamilo Bridge & La Barqueta Bridge(Sevilla, Spain)
(5)Center for Advanced Aerospace Technologies (CATEC)
  (Sevilla, Spain)
(6)Politecnico di Trino(Turin, Italy)
(7)Reggia di Venaria(Turin, Italy)
(8)Marchetti Bridge(Turin, Italy)
(9)Murisengo gypsum cave(Turin, Italy)
(10)EPFL  (Lausanne, Switzerland)
(11)Chillon Viaduct (Veytaux, Switzerland)

 以下に各調査先での調査結果の概要を報告します。

(1)LACIAID of ORITIA & BOREAS(Granada, Spain)の調査
 風工学をベースに橋梁、高層建物等の大規模インフラの解析やモニタリングを実施しているコンサルタント会社であるORITIA & BOREASを訪問しました。ORITIA & BOREASはグラナダ大学のJosé Terrés-Nícoli教授らが2010年に設立した大学スピンオフ会社です。ORITIA & BOREASが建設中(外観ができたところで、内部の水平及び垂直の風洞設備はこれから製作し、2018年完成予定)のスペイン最大の風洞設備(写真1:外観、写真2:内部、写真3:外構造を支えるヒンジ構造)があるLACIAD(LABORATORIO DE AERODINÁMICA CIVIL, INDUSTRIAL, AMBIENTAL Y DEPORTIVA: Civil, Industrial, Environmental and Sports Aerodynamics Lab)(写真4:事務所入口)を見学するとともにTerrés-Nícoli教授と議論を行いました(写真5:Terrés-Nícoli教授からの説明の様子)。大規模インフラの状態を把握するために市販のひずみゲージや加速度センサを使っており、高性能のひずみ、加速度等のモニタリング技術は大規模インフラのモニタリング及び風洞実験において重要でRIMSで開発していますセンサシステムが使えれば有難いとのコメントを得ました。現状センサは有線ですが、サーバにあげられたセンサデータはスマホ等どこでも見えるようになっていました(写真6:スマホでのデータの表示の様子)。これらのことからRIMS技術の展開として大規模インフラのモニタリングは有望である感触を得ました。

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  写真1 大型風洞設備外観       写真2 大型風洞設備内部

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写真3 外構造を支えるヒンジ構造    写真4  LACIAD事務所入口

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写真5 Terrés-Nícol教授説明の様子  写真6 スマホでのデータ表示

(2)The Béznar Dam(Granada, Spain)の調査
 大規模インフラとして、ダムのモニタリングを実施しているスペインのグラナダ近郊のBéznar ダム(写真7:ダム外観)の調査を行いました。Béznarダムは灌漑及び水力発電用のダムで、両側を重力方式の迫持台で支えられたアーチダムです。ダム頂上でのアーチ長さ213m、基礎からの中心高さは134mです。このダム周辺の地形は凝灰岩層等のはっきりした地層に分かれ(写真8:ダム監査廊内奥の地層)、また、縦に数cmから1m幅の割れ目(写真9:ダム監査廊内奥の割れ目)が多数存在しています。そのため、クラウド剤の充填等の対策を施してダムを建設していますが、その状態をモニタリングするために、6層の監査廊の中に割れ目幅計測の変位計(写真10)、加速度センサ(写真11)や振り子式電位差変位ゲージ(写真12)等種々のセンサを配置して、モニタリングを行っていました。振り子式電位変位計は写真12(左)の上部固定型と写真12(右)の下部固定型の両方を設置して精度を確保していました。なお、センサへの電源は有線でした。想像していたよりもはるかに大きい割れ目のモニタリングを実施しており、大規模インフラでの常時モニタリングの必要性を痛感しました。写真13に管理棟でのグラナダ大学Delgado教授の説明の様子、写真14に監査廊内での説明の様子、写真15にダムの前での集合写真を示します。

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           写真7  Béznarダム外観89_2
 写真8 ダム監査廊奥の断層      写真9  ダム監査廊奥の割れ目

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   写真10 割れ目幅計測変位計    写真11 監査内設置加速度計

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         写真12 振り子タイプ電位変位計
    (左:上部固定タイプ、中:拡大図、右:下部固定タイプ)

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写真13 管理棟でのDelgado教授の説明   写真14 監査廊内での説明

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     写真15  Béznarダムの前での調査団の集合写真

(3)Structural Engineering Group, University of Sevilla(Sevilla, Spain)の調査
 スペインにおいて大規模インフラのモニタリングの活発な研究を実施しているセビーリャ大学の構造エンジニアリング部門を訪問しました(写真16:セビーリャ大校舎)。セビーリャ大学は1505年に創立された大学で、65,000人の学生を有するスペインのトップクラスの大学です。Mario Solís教授からセビーリャ大学における大規模インフラのSHM(Smart Health Monitoring)研究の紹介を受けました(写真17:Solís教授講演の様子)。Solís教授のグループでは以下のような研究開発を行っていました。
①加速度センサを用いた鉄道橋梁の振動特性に着目した健全性評価手法の研究
 ・列車高速化に伴い、橋梁の共振速度と列車速度が一致したときに振動が増加することを実験(計測)と解析により明らかにしていました。
②1568年に建築された建物(El Giraldillo)の塔の損傷評価
 ・加速度センサ、傾斜センサ、歪ゲージ、温湿度計、腐食プローブ等を2005年から塔につけて、風速と関連づけた動解析、モーダルパラメータの変動等から損傷を評価していました。
③橋の実稼働モーダル解析(Operational Modal Analysis)の研究
 ・Operational Modal Analysisは、構造物の固有振動数、固有モード、モード減衰比といったモーダルパラメータ求めることを目的として、実験的に対象物を加振することなく、人の歩行、自動車の通行、風などの時間的及び空間的な外力のみからモーダルパラメータを求める手法です。セビーリャ大学の構造工学チームでは、Operational Modal Analysisの手法を開発するとともに、セビーリャ市のEl Alamillo 橋、La Barqueta橋、El Guardián del Castillo橋やLa Cartuja橋等のモーダルパラメータを求めていました。
 また、下山リーダ(写真18:下山リーダ講演の様子)及び阪神高速の奥西課長代理(写真19:奥西課長代理の講演の様子)よりRIMS及び阪神高速の概要紹介を行うとともに意見交換を行いました(写真20:意見交換会会場の様子)。また、写真21にセビーリャ大学のテラスでの集合写真を示します。

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写真16 セビーリャ大校舎        写真17  Solís教授講演

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 写真18  下山リーダ講演      写真19  奥西課長代理講演

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 写真20 意見交換会会場       写真21  テラスでの集合写真

(4)El Alamillo Bridge & La Barqueta Bridge(Sevilla, Spain)の調査
 セビーリャ大学が実稼働モーダル解析を実施した長大橋であるEl Alamillo 橋と La Barqueta 橋を調査しました。El Alamillo 橋と La Barqueta 橋は1992年のセビーリャ万博の時に建設されたセビーリャ市を代表する橋です。
 特に、El Alamillo 橋は橋長200m、塔高140mの片持ち翼桁斜張橋で、その特徴的な構造から橋梁の世界では有名な橋です。El Alamillo 橋の全景を写真22に、橋塔前での集合写真を写真23に示します。加速度センサにより計測された固有振動数は0.4~3.32Hzでした。

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  写真22  El Alamilo 橋の全景     写真23 橋塔前での集合写真

 La Barqueta 橋は橋長:198.8mのアーチ橋です。La Barqueta橋の全景を写真24に、橋の袂でSolís教授から説明を受けている様子を写真25に示します。GPS付の加速度計を16地点に設置し、モーダルパラメータを求めた結果、固有振動数は0.7~6Hzであり、El Alamillo 橋よりも固有振動数が高くなっているのが分かります。

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写真24  La Barqueta橋の全景   写真25 橋の袂でのSolís教授説明

(5)Center for Advanced Aerospace Technologies (CATEC)(Sevilla, Spain)の調査
 大規模インフラとして、航空機のモニタリングを実施しているCATECを訪問調査しました。CATEC(Center for Advanced Aerospace Technologies )(写真26:CATEC入口)はエアバス等がサポータとなっている非営利団体であるFADA(The Andalusian Foundation for Aerospace Development )の一つのセンターで、ロボット、3Dプリンタ等の付加加工、航空管制等の研究開発を行っています。航空機の非破壊検査やヘルスモニタリングの研究開発も行っています。Ms. ValderasからCATECの概要説明を受けた後(写真27:CATEC概要説明会場の様子)、実験室を見学させて頂きました。航空機体のひずみ計測のための光ファイバひずみ計測実験装置等を見学しました。写真28に玄関ロビーでの集合写真を示します。

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    写真26  CATEC入口      写真27  CATEC概要説明会場

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         写真28 CATEC玄関ロビーでの集合写真

(6)Politecnico di Trino(Turin, Italy)の調査
 イタリアにおける大規模インフラのモニタリングで活発な研究を実施しているトリノ工科大学(Politecnico di Trino)(写真29:トリノ工科大学の入口)を訪問し、大規模インフラのモニタリングに関して、幅広く意見交換を行いました(写真30:意見交換会場の様子)。トリノ工科大学は1859年に創立されたイタリアで最も古い工科大学で、33,000人の学生を有するイタリアのトップクラスの大学です。先ず、Chiaia副学長によるトリノ工科大学の紹介、Carpinterik教授による洞窟における中性子及びAE(Acoustic Emission)モニタリングによる地震予知の研究、Ventura准教授による橋梁のアクティブモニタリングの研究、Lacidogna准教授による歴史的建造物の劣化モニタリングの研究、道路保守点検会社(INFRA.TO)のCurrado本部長とCrovaプロジェクトマネージャによるトリノ市メトロの維持管理・モニタリング技術等の紹介を受け、トリノ工科大学が産業界と連携したレベルの高い研究開発を実施していることが把握できました。
 その後、下山リーダ(写真31:下山リーダ講演の様子)及び阪神高速の奥西課長代理(写真32:奥西課長代理講演の様子)よりRIMS及び阪神高速の概要紹介を行うとともに意見交換を行いました。写真33にトリノ工科大学入口での集合写真を示します。

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写真29  トリノ工科大学の入口     写真30 意見交換会場

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  写真31  下山リーダ講演       写真32 奥西課長代理講演

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        写真33 トリノ工科大学入口での集合写真

(7)Reggia di Venaria(Turin, Italy)の調査
 大規模インフラのモニタリングとして、歴史的遺産のモニタリングの可能性を調査するため、イタリアのReggia di Venaria(ヴェナリア宮殿)(写真34)を調査しました。ヴェナリア宮殿はサヴォイア家の狩猟場として16世紀末に建設されましたが、1693年にフランス軍の侵攻によって破壊されました。その後20年以上の歳月をかけ、修復され、サヴォイア家の王宮群の一つとして世界遺産登録されています。先ず、ヴェナリア宮殿保存修復センター(写真35ヴェナリア宮殿保存修復センター入口)を見学しました。ヴェナリア宮殿保存修復センターでは、彫刻の修復(写真36)、ミイラ棺の修復(写真37)、大絵画の修復(写真38)等を見学しました。大絵画の修復では大きな絵画をサポートするためテンション機構を設けていますが、絵画に大きな負荷を与えないための簡易なひずみ計測用のセンサ等のニーズがあることが分かりました。ヴェナリア宮殿保存修復センターでは過去の状態を忠実に再現するため、材料自身の基礎研究から内部の状態をモニタリングするためのX線透過装置(写真39)や形状を詳細にモニタリングする3次元変位計測装置(写真40)等の最先端計測装置を使った最先端の研究も実施していました。なお、歴史的遺産は古く、傷んでおり、材料自身がもろくなっているため、非接触・非破壊のモニタリング技術が必要とのことでした。
 ヴェナリア宮殿保存修復センター見学後、ピエモンテ州の王宮施設管理関係者と歴史的遺産の修復及び非破壊・モニタリング技術適用の可能性についての意見交換を行いました。意見交換会ではヴェナリア宮殿研修センターのMerlottiセンター長、La Mandria ParkのGrella所長、トリノ工科大学のVolpiano教授及びGrazzini博士からの講演並びに下山リーダからRIMSの紹介の後、意見交換を行いました。その結果、歴史的構造物のモニタリングの要求仕様をヴェナリア宮殿側で明らかにして頂き、トリノ工科大学の Lacidogna准教授を介して、今後連携をしていくこととしました。下山リーダの講演の様子を写真41に意見交換会後の集合写真を写真42に示します。

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    写真34  ヴェナリア宮殿    写真35 保存修復センター入口

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   写真36  彫刻の修復        写真37 ミイラ棺の修復

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   写真38  大絵画の修復        写真39  X線透過装置

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写真40 3次元変位計測装置     写真41 下山リーダの講演

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          写真42 意見交換会後の集合写真

(8)Marchetti Bridge(Turin, Italy)の調査
 イタリアでは2,000の高速道路橋梁と14,000の一般道橋梁があり、法規制により3か月毎の目視点検と1年毎の詳細点検が義務付けされており、点検コストの増大が問題となっています。この問題を解決する手法として、トリノ工科大学のVentura准教授は計算機モデルとセンサの実測データをリアルタイムで比較して異常を判断するアクティブモニタリングを提唱しています。今回イタリアにおける長大橋のモニタリングの調査として、このアクティブモニタリングの適用第1号であるMarchetti橋(写真43)の調査を行いました。
 Marchetti橋は河川(通常は殆ど水の流れなし)の洪水を機にデザイン会社SETECOが設計したアーチスパン250mのタイドアーチ橋で2015年に建設されました。法律で川底には橋脚を立てられないため、アーチスパンの長いタイドアーチ橋になっています。この橋の設計者であるSETECOのSimone Varni氏及びVentura准教授にMarchetti橋及びアクティブモニタリングシステムの説明を受けました。全てのサスペンションケーブル終端部の張力のほか、傾斜、加速度、温度、風力などを約30のセンサにより、2015年からアクティブモニタリングを行っています。センサは米国製(軍事仕様)で、現在のところ故障は一つもなく、20年程度の使用を見込んでいるということです。電源は既設の電源ラインから取られていました。サスペンションケーブル終端部に取り付けられたロードセルと傾斜計を写真44、写真45に示します。これらセンサからの信号はデータ収集装置(写真46)を経由して、橋の袂の橋梁管理室のサーバに送られ、サーバにおいて構造的挙動の解析が実施され、橋梁を視覚的に表現したユーザインタフェース(写真47:モニタ画面)にその結果が表現されるシステム構成となっています。モニタリング結果はデイリーで管理者にメールで送信されますが、日々のサマリデータを残して生データは廃棄されているとのことでした。検査路内及び橋梁管理室でのVentura准教授の説明の様子を写真48、写真49に示します。

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    写真43  Marchetti橋         写真44 ロードセル

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     写真45  傾斜計          写真46 データ収集装置

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           写真47 モニタ画面

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  写真48 検査路内での説明   写真49 橋梁管理室での説明

(9)Murisengo gypsum cave(Turin, Italy)の調査
 大規模インフラとして、鉱山のモニタリングの可能性を調査するため、Murisengo石膏採掘洞窟の調査を行いました。トリノ工科大学のCarpinterik教授のグループでは、石膏採掘場の地下約100m地点の岩盤にて主に地震検知を目的としたモニタリングを実施しています。AE、電磁波、中性子(Neutron)の3種をモニタしています。2013年に設置し、これまでに地震に伴う主振動の予兆をこれら信号により数日前から検知した実績があるとのことでした。AEの検知帯域は50kHz~800kHzで、採掘のための発破振動は50kHzよりも低域のため、モニタリングには影響しないということでした。電磁波は2MHz以上の帯域を検知していますが、地上と違い、放送や通信による妨害電波の影響を受けないため特別なノイズ除去は不要とのことでした。洞窟内計測現場と設置されたAEセンサ及びNeutron検出器を写真50に示します。各センサへの電源は既設の電源ラインからとっていました。洞窟内は暗渠で振動も少なく自立電源化は困難です。写真51に洞窟入口での集合写真を示します。

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       写真50 洞窟内計測現場と設置されたセンサ

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           写真51 洞窟入口での集合写真

(10)EPFL  (Lausanne, Switzerland)の調査
 スイスにおける大規模インフラのモニタリングで活発な研究を実施しているEPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)のBrühwiler教授を訪問し、意見交換を行いました。 EPFLは1969年に創立されたフランス語系のスイス連邦工科大学で、約10,000人の学生を有する世界有数の工科大学です。
 Brühwiler教授からEPFLにおける大規模インフラの長期モニタリングによる疲労評価とUHPFRC(Ultra-High Performance Fiber Reinforced Cement-based Composites)による補強の研究内容(写真52:Brühwiler教授の講演の様子)及びインフラ管理のコンサルタント会社であるIMDMのPutallaz社長からアセットマネージメントの事業紹介(写真53:Putallaz社長の講演の様子)を受けるとともに、武田室長からRIMSの概要を説明し、RIMSの広報を行いました(写真54:武田室長の講演の様子)。また、京都大学の橋本講師より非破壊検査の研究紹介(写真55:橋本講師の講演の様子)を行って、大規模インフラにおけるモニタリング及び非破壊検査に関して幅広い意見交換を行いました。写真56にEPFLの食堂での集合写真を示します。
 Bruhwiler教授は長期モニタリングで構造物の挙動を正確に把握して、UHPFRCで補強して橋梁の寿命及び維持費用の削減を目指すExamineering(examination engineering)という構造物の維持管理概念を提唱しており、橋梁だけでなく、風力発電のタービンなど大型の構造物に適用しています。利用しているセンサは基本的には従来型のひずみゲージであり、電源は既設の電源ラインから取っていました。橋梁の場合は鉄筋のひずみを直接測定しています。タービンはブレード、主塔、軸受などのひずみ計測を行ない、設計寿命より10倍以上持つと判断したケースもあるとのことでした。基本的な方針は既存の構造物を出来る限り長持ちさせていくというスタンスです。

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写真52  Brühwiler教授の講演      写真53  Putallaz社長の講演

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 写真54  武田室長の講演       写真55  橋本講師の講演

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           写真56  EPFLの食堂での集合写真

(11)Chillon Viaduct (Veytaux, Switzerland)の調査
 EPFLがモニタリングを実施している長大橋であるChillon高架橋(写真57)を調査しました。Chillon高架橋は1969年に建設された全長2×2,210m、スパン長92m~104mの箱桁PC橋です。EPFLが箱桁内に設置したセンサにてモニタリングを実施しています。長期(1年以上)のモニタリングで疲労の有無を判断します。疲労は基本的に鉄筋のひずみのデータから判断します。コンクリートのかぶりをはつって直接鉄筋にひずみゲージを設置(写真58)して、主鉄筋と配力筋の両方のひずみを測定します。また、道路幅方向のひずみのように、十分なひずみ値が得られないケースのために、床版下面に特別なひずみ拡大治具(橋軸方向、直行方向に2段のひずみセンサを設置する治具:写真59)を作製し、現地で実証実験も行っていました。写真60に箱桁内の計測システムを示します。サンプリングレートは100Hzです。交通荷重の影響や温度変動はノイズとして排除した上で判断します。疲労の変化曲線に応じて補修の必要の有無を判断し、その結果踏まえて、2014年~2015年にUHPFRCの補強工事を行い、引き続きモニタリングを実施していました。電源は既設の電源ラインからとっていました。
 なお、ETH(スイス連邦工科大チューリッヒ校)による加速度センサ(写真61)も設置されていました(固有振動の変化のモニタリング)。写真62に箱桁内での説明の様子、写真63に道路デッキでの集合写真を示します。

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    写真57  Chillon高架橋        写真58  ひずみゲージ

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             写真59 ひずみ拡大治具

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写真60  箱桁内の計測システム       写真61 ETH加速度センサ

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 写真62 箱桁内での説明     写真63 道路デッキでの集合写真

 今回の調査で、南欧州(スペイン、イタリア、スイス)の大規模インフラのモニタリングの実態を把握することができました。また、下山リーダから各所でRIMSの紹介をしていただき、RIMSの活動を関係者に理解頂いて広報が図れました。今回の訪問先では我々の開発している技術にも興味を持って頂いており、今後今回の訪問先とは引き続き連携を図る予定です。

NMEMS南欧州大規模インフラモニタリング実態調査団:伊藤寿浩、奥西史伸、塩谷智基、下山勲、武田宗久、中嶋正臣、橋本勝文、渡部一雄)

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2017年10月 6日 (金)

「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」最終日(3日)を迎える


                  
                  

                  

                  
   盛況開催中の「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」は本日、最終日3日目を迎えました。
   昨日2日目も初日同様、展示会場は、IoTに不可欠な技術分野ということで来場者からも関心が高く、例年にも増して多くの来場者にあふれた活気に満ちた会場風景となりました。
                  
   本日は、国際マイクロマシン・ナノシンポジウムを開催いたします。
                  
                  

                  

 最終日もよろしくお願い致します。
                  
  昨日開催した研究開発プロジェクト成果報告会では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や国から受託し、研究開発を進めているプロジェクトについて、各プロジェクトの責任者から報告がなされ、聴衆者が熱心に聞き入っていました。
                  
                  
                  


                  司会・進行を行う長谷川専務理事
                  
                  

                  特別講演を行う 経済産業省 徳増伸二参事官
                  
                  

                  LbSSの成果発表を行う 東大 藤田教授
                  
                  

                  RIMSの成果発表を行う 東大 下山教授
                  
                  

                  ULPACの成果発表を行う 産総研 柳町主任研究員
                  
                  

                  UCoMSの成果発表を行う 東大 伊藤教授
                  
                  

                  AIRsの研究開発を発表する 東大 下山教授
                  
                  

                  講評を行う NEDO 弓取ロボット・AI部長
                  

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2017年10月 5日 (木)

「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」2日目を迎える

                  

   開催中の「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」の1日目の様子をお知らせします。まず、展示会場ですが、IoTに不可欠な技術分野ということで来場者からも関心が高く、CEATECからの来場者も多く活気に満ちた会場風景となりました。

   本日は、研究開発プロジェクト成果報告会を開催します。プログラムは、以下のとおりです。本日もご来場をお待ちしております。

                  

                  

   昨日開催しましたMEMS協議会フォーラムには、多くの参加者があり盛況の内に終了しました。                   

                  
                  開会挨拶 MMC青柳副理事長
                  
                  
                  MMC調査研究・標準部長 大中道崇浩
                  
                  
                  MNOIC開発センター長 荒川雅夫
                  
                  
                  会場風景
                  
                  
                  立命館大学理工学部 教授 小西 聡
                  
                  
                  MMC産業交流部長 今本浩史

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2017年10月 4日 (水)

MEMSセンシング&ネットワークシステム展2017開幕

  本日10時、10月4日(水)から6日(金)までの3日間を会期とした「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」が開幕しました。会場は、幕張メッセ内の国際展示場7及び国際会議室302です。

   MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2017」には、早朝からの小雨にも関わらず開催時から多くの来場者が訪れ、スマートMEMS、最先端センサー&デバイス、技術開発プロジェクトが一堂に会する展示会として活況を呈しています。                  

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  今回は、『CEATEC2017』と同時開催を行っており、お互いの参加者が行き来できる環境が整っています。また、昨年と同様に国内外のフォトニクス製品・技術が集結する先端光技術の展示会である『InterOpto』と共同開催しています。いろいろな分野で、幅広い最新技術・動向も併せてご覧頂けますので、明日以降も奮ってご来場方お願い致します。(事前登録で入場料は無料となります。)    

 本日開催のMEMS協議会フォーラムのプログラムは以下のとおり。                                   Photo_2

  会場では、IoT分野の核となるMEMSセンシング&ネットワークシステム分野の未来ビジネスの核となる先端技術の紹介や、先進プロジェクトや産学連携の情報を提供致しますので、皆様のご来場をお待ちしております。

(一般財団法人マイクロマシンセンター 水島)
                  
                  
                  

                  

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2017年9月28日 (木)

道路インフラモニタリングシステムの現地実証を開始  ―幕張メッセで成果発表(10/4~6)―

 技術研究組合NMEMS技術研究機構は、環境エネルギーで稼働する小型、安価、高性能、高耐久の無線センサ端末を用いた道路インフラモニタリングシステム(RIMS : Road Infrastructure Monitoring System)をNEDO委託事業で開発し、本年度よりNEXCO等の実高速道路での現地実証(図1)を開始しました。
 詳細については10月4日~6日に幕張メッセで開催されます展示会「MEMS SENSING & NETWORK SYSTEM 2017(MSN展2017)」において、展示と講演の場で紹介します。
●「MEMS SENSING & NETWORK SYSTEM 2017(MSN展2017)」の
  開催概要
 ・会 期:2017年10月4日(水)~10月6日(金)
 ・会 場:幕張メッセ 国際展示場 7ホール 
       NMEMS技術研究機構ブース 小間番号3-B
 ・入場料:1,000円、事前登録の場合は無料
 ・公式サイト:http://www.mems-sensing-network.com/
 ・事前登録:
  http://www.mems-sensing-network.com/info_visitor.html
●プレゼンテーション(幕張メッセ 国際会議場302、
  「研究開発プロジェクト成果報告会」、聴講無料) 
 ・日時:2017年10月5日(木)13:15~14:15
 ・テーマ:「道路インフラモニタリングシステム(RIMS)の研究開発」
       成果発表
 ・発表者:NMEMS技術研究機構 インフラモニタリング研究所 所長 
       /東京大学IRT研究機構 機構長 教授 下山勲

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            図1 現地実証の様子
1.概要
 技術研究組合NMEMS技術研究機構(以降NMEMSと称す)はNEDO委託事業である「道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの研究開発」プロジェクトで開発した道路インフラモニタリングシステム(RIMS)を実高速道路に設置して、現地実証を開始しました。
 道路インフラは陸上貨物輸送量の90%以上を占め、国民の豊かな生活を支える重要な社会インフラですが、老朽化が進み、また、大型車両や過積載車両の増加、さらには近年の異常気象や地震による災害の多発により劣化が進み、社会課題になっています。このため、道路インフラの効果的かつ効率的な維持管理・更新技術の開発が求められています。
 NMEMSではこのような社会要請をうけ、2014年度から高速道路の橋梁、道路付帯物、法面を対象にして、環境エネルギーを利用した自立電源を有し、各フィールドのモニタリングに適した新規の小型、安価、高性能、高耐久性の無線センサ端末並びに各フィールドのセンシングシステムを統合して道路インフラのトータルな維持管理が可能な道路インフラモニタリングシステム(RIMS)の開発を進めてきましたが、基本的なシステム開発が完了し、本年度から本プロジェクトに参画しているNEXCO等の実高速道路での現地実証を開始致しました。

2.詳細説明
 開発したモニタリングシステム及び技術に関して、以下に簡単に説明致します。

(1)スーパーアコースティックセンサによる橋梁モニタリングシステム
  (担当:東芝、京大、東大)
 主としてコンクリート橋の内部損傷の発生位置、大きさを新規開発の広帯域(1Hz~1MHz)MEMS振動センサ(スーパーアコースティックセンサ、SAセンサ)で安価・高精度にモニタリングし、橋梁の健全性を定量的に評価する手法(特許出願中)を開発しました。展示会では、開発したSAセンサ、手のひらサイズの無線センサ端末、試作端末によるイベントドリブン計測結果(図2)、降雨により励起された弾性波を利用したコンクリート内部損傷検知結果及びイベントドリブン動作リアルタイム位置標定デモ等を紹介します。

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        図2 SAセンサによるイベントドリブン計測

(2)フレキシブル面パターンセンサによる橋梁モニタリングシステム
  (担当:大日本印刷、産総研、東大)
 主として鋼橋のクラック伸展度・方向を新規開発のフレキシブル面パターンセンサにより簡便にモニタリングする技術を開発しました(図3)。展示会では印刷タイプ、極薄PZT/Siタイプそれぞれの歪センサアレイによるフレキシブル面パターンセンサを用いた鋼橋歪分布計測デモ等を紹介します。

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    図3 フレキシブル面パターンセンサによる歪分布計測

(3)傾斜マルチセンサによる道路付帯物モニタリングシステム
  (担当:富士電機)
 道路標示板、照明柱などの経年・突発劣化診断のため、非サーボMEMSマルチセンサで固有共振周波数と傾きの変化を同時にモニタリングする技術を開発しました(図4)。展示会では、開発した傾斜マルチセンサ、集約器及び傾斜マルチセンサによる道路付帯物模擬模型を使った傾斜、振動、温度同時計測デモ等を紹介します。 

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   図4 傾斜マルチセンサの現地実証と模型によるデモの様子

(4)電波変位センサによる法面変位モニタリングシステム
  (担当:三菱電機)
 法面上の複数のセンサから放射した920MHz電波の位相差をみることで4mm/hのずれを全天候・3次元で広範囲、容易にモニタリングする技術を開発しました(図5)。展示会では、開発したセンサ端末、子受信機及び簡易型変位計測装置を用いた電波変位センサの変位計測デモ等を紹介します。

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図5 電波変位センサによる法面変位モニタリングシステム実証の様子

(5)無線通信ネットワーク共通プラットフォーム
  (担当:NTTデータ)
 多種多様なセンサからの様々なデータフォーマットやインターフェースの差異を吸収する通信仕様、設置容易性とコスト対策を目的としたコンセントレータ間の連携通信及びセキュアな情報収集に対応できる無線通信ネットワーク共通プラットフォームを開発しました。展示会では、開発したコンセントレータ及び無線通信ネットワーク共通プラットフォーム(図6)等について紹介します。

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      図6 無線通信ネットワーク共通プラットフォーム

(6)高耐久性パッケージング技術
  (担当:大日本印刷、日本ガイシ、マイクロマシンセンター、産総研)
 悪環境下で常時モニタリングを長期に保証するセンサ端末パッケージング技術、自立電源・無線モジュール・センサ・アンテナ等全ての部品を内蔵したオールインワンパッケージング技術及びパッケージやセンサを構造物に強固かつ容易に接着/接合するシート実装技術を開発しました(図7)。展示会では、アンテナ内蔵LTCCパッケージ、透光性セラミック及び粘接着シート等を紹介します。

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       図7 高耐久性パッケージとシート実装技術

(7)超低消費電力原子時計
  (担当:リコー、産総研、マイクロマシンセンター、京大、東工大、
       首都大東京)
 多数のセンサ端末からの情報を統合するための将来技術として、異地点間の時刻同期を高精度、小型、低消費電力で実現できる超低消費電力原子時計(ULPAC: Ultra-Low Power Atomic Clock)の開発を行っています。展示会では、開発しているULPACの概要及びプロトタイプ(図8)の動態デモ等を紹介します。

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           図8 ULPACプロトタイプ

(8)統合的な道路インフラモニタリングシステム
  (担当:NMEMS、NTTデータ)
 上記(1)~(4)のモニタリングシステムを統合した道路インフラモニタリングシステムを開発しました。展示会では、統合的な道路インフラモニタリングシステムのエミュレータ(図9)(Pilot-RIMS)によるデモ等を紹介します。

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    図9 道路インフラモニタリングシステムエミュレータ 

 なお、開発した技術は道路インフラだけでなく、エネルギー関連施設等の大規模インフラのモニタリングにも展開可能な技術です。

          (技術研究組合NMEMS技術研究機構 武田宗久)

 

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