産業・技術動向

2018年3月 2日 (金)

米国研究開発動向調査

 2018年2月25(日)~3/2(金)に東京大学情報理工学系研究科の下山教授の「空間移動時のAI融合高精度物体認識システムの研究開発」の動向調査と並行して米国西海岸の研究機関を訪問して、米国の研究開発動向の調査を行いましたので、以下にご報告致します。今回調査したのは以下の5機関です。
 1. University of California, San Diego (UCSD)
 2. University of California, Los Angeles (UCLA)
 3. California Institute of Technology (CALTEC)
 4. NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)
 5. Microsoft Research (MSR) 
以下に各訪問先での調査結果を示します。

1. University of California, San Diego (UCSD)
(1)訪問先:Albert P. Pisano (Dean, Jacobs School of Engineering)
            Miwako Waga (Director, International Outreach)
(2)訪問日:2018年2月26日(月)午前
(3)調査結果
・Pisano学部長は元UC, BerkeleyでMEMS研究を初期から牽引してこられたMEMSの大御所です。現在、UCSDのJacobs School of Engineeringの学部長を務めています。
・UCSDのJacobs School of Engineeringは 6つの学科(①Bioengineering, ②Computer Science & Engineering,③Electrical & Computer Engineering, ④Mechanical & Aerospace Engineering, ⑤Nanoengineering, ⑥Structural Engineering)から構成されDigital Futureを目指して以下のテーマに注力して研究開発を行っています。
 -Context-aware robotics
 -Nano for energy and medicine
 -5G and future of communication
 -Wearable sensing and computing systems
 -Cyber and digital security
 -Data science and machine learning
・アメリカのホットトピックスに関して意見交換を行い、以下のような意見が出ました。
 -AIに関してはIBMとUCSDでAI for Healthy Living Centerを立ち上げているとのことでした。
 -医療に関してはDigital Health, Precision Medicine, Personalized Medicineが挙げられるとのことでした。
 -構造物モニタリングに関してはUCSDではサンディエゴ市とスマートシティの一環としてBuilding Structural Monitoringを行っているとのことでした。
 -医療認証に関しては、米国のFDAは世界一厳しいとのことでした。
・Pisano学部長がおられるUCSD Jacobs Hallの入口の写真を写真1に、Pisano学部長室の前で、Pisano学部長との写真を写真2に、和賀所長、Pisano学部長との写真を写真3に示します。

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   写真1 UCSD Jacobs Hall入口     写真2学部長室の前でPisano学部長と

3_ucsd_pisano_2      写真3 学部長室の前で和賀所長、Pisano学部長と

2. University of California, Los Angeles (UCLA)
(1)訪問先:
① CJ Kim (Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
② Verronica J. Santos (Associate Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
③ Tsu-Chin Tsao (Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
④ Jacob Rosen (Bionics Lab Director, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
(2)訪問日:2018年2月26日(月)午後
(3)調査結果
① CJ Kim 教授
・CJ Kim教授はMEMS分野の権威で、Kim教授のMicro and Nano Manufacturing Labでは、特に表面張力を利用したマイクロナノデバイスの研究を積極的に行っています。
・UCLAはMedical Centerが近いので、医者との連携は容易であり、共同の研究はしていますが、初期はお金がないので、細々と進めざるを得ないとのことでした。但し、試作品が認められれば、病院は寄付によるフレキシブルな予算があるので、大きなプロジェクトにすることは可能とのことでしたが、コンセプトからは5年程度かかるとのことでした。
・CJ Kim教授室の前で、Kim教授との写真を写真4に、下山教授のKim教授への説明の様子を写真5に示します。

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   写真4 教授室の前でKim 教授と     写真5 Kim教授と下山教授

② Santos准教授
・Santos准教授は把持、触覚、義手、人工刺激、機械学習等の専門家でSantos准教授のBiomechatronics Labでは、人工触診(Artificial haptic exploration)、触覚センサ、把持等の研究開発を行っています。
・海軍の予算で義手の研究を行っているとのことでした。その他遠隔操縦や砂の中の触覚による物体認識や把持のための触覚センサ等の研究を行っていました。
・触覚センサは買い物とUniversity of Washingtonで作ってもらったものを使用しているとのことでした。
・Santos准教授室の前で、Santos准教授との写真を写真6に、写真7に遠隔操縦用双腕マニピュレータ、写真8に人工ハンド、写真9に指の触覚センサ、写真10に実験室での説明の様子を示します。

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写真6准教授室の前でSantos准教授と 写真7 遠隔操作用双腕マニュピュレータ

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    写真8 人工ハンド         写真9 指の触覚センサ

10_uccla_santos_2          写真10 実験室での説明の様子


③ Tsao教授
・Tsao教授はダイナミックシステムのモデリングと制御の専門家です。
・アメリカのホットトピックスのキーワードの一つとして、Co-Robotが挙げられるとのことでした。Co-Robotは人間とロボットとの物理的干渉に関する研究です。その場合には触覚センサが重要になるとのことでした。
・もう一つのキーワードとして、 Distributed Sensingが挙げられるとのことでした。Distributed sensingではデータ処理のためAIが必要になるとのことでした。
・アメリカでは義手・義足の研究も負傷した帰還兵のニーズが高く、保障の観点からも盛んとのことでした。
・UCLAではMedical Centerが近いので、医療応用の研究も盛んとのことでした。NIHでは手術用ロボット等治療に係るテーマは良いですが健康に関してはあまり取り上げてもらえないとのことでした。
・Tsao教授室の前で、Tsao教授との写真を写真11に示します。

11_ucla_tsao           写真11 教授室の前Tsao教授と


④ Rosen教授
・Rosen教授は医療用ロボット(手術用+リハビリ用)や遠隔操作の専門家でUCLAのBionics LabのDirectorです。
・Rosen教授に研究室を案内してもらい、アメリカのホットトピックスのキーワードについて討議しました。
・手術用ロボットでは力制御が重要であり、狭いところでも作業できるように、狭いところにマウントできる触覚センサの開発がMEMSに期待するところとのことでした。
・現状はダビンチが市販されている唯一の手術用ロボットですが、最近2社が新たに製品化をしようとしているとのことでした。UCLAではリサーチラボで使うオープンプラットフォームの手術用ロボットの研究開発をしているとのことでした。
・ダビンチはS/Wは公開されていないので、研究開発用としてH/W,S/Wともオープンソースの手術用ロボットの開発は意味があるとのことでした。
・手術用ロボットのFDA認可には、$100million必要ですが、市場は$30billionと言われており、認可にお金がかかっても十分事業として成り立つとのことでした。
・手術用フォースセンサとしては直径5mmに収める必要があるとのことでした。但し、長さ方向に制限はないとのことでした。鉗子の先端に付けるためには幅2mm、長さ2~4mmに収める必要があるとのことでした。
・鉗子は$1200で10回の使用で交換するとのことでした。これは小型のプーリー等が劣化・破損するためとのことでした。これに適用するためにはセンサのコストは安くないと使われないとのことでした。
・この分野のキーワードとしては、Automated Surgeryが挙げられるとのことでした。現状は遠隔操作ですが、場所、縫合数等を与えるだけで自動的に手術をしてくれることが最終目標とのことでした。機械学習等もこの中に含まれるとのことでした。
・現在はサブタスクレベルでのトライアルがなされているレベルであるとのことでした。
・ハンドは2本指で全作業の95%が実現できるとのことでした。3指あれば100%の作業が実現できるとのことでした。人間が5本指なのは冗長性を担保するためとのことでした。
・人間の5指は長さが違うのに、曲げるとそろうのはスライド機構が備わっているためであるとのことで、スライド機構が備わったハンドを作られていました。
・腱機構は先端部を小さくはできますがプーリー部が壊れやすいとのことでした。
・Rosen教授室の前で、Rosen教授との写真を写真12に、写真13に手術用ロボットの全景写真、写真14に手術用ロボットの手先部拡大写真、写真15に鉗子部、写真16に手術ロボット操作コンソール部、写真17に指マスター部を示します。

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  写真12教授室の前でRosen教授と    写真13 手術用ロボット全景写真

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  写真14 ロボット手先部         写真15 鉗子部

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   写真16 操作コンソール部           写真17 指マスター部

3. NASA JPL
(1)訪問先:Dr. Won Soo Kim
(2)訪問日:2018年2月27日(火)午前
(3)調査結果
・NASA JPLのWon Soo Kim博士を訪問し、von Karman Visitor Center、Space Flight Operations Facility、the Spacecraft Assembly Facility、In-situ Instrument Laboratoryを案内して頂き、火星探査車を中心に説明を受けました。
・火星探査車としては、1997年にマーズ・パスファインダーに搭載され着陸に成功したソジャーナ、2004年にマーズ・エクスプローレーション・ローバに搭載され、着陸に成功したスピリットとオポチュニティ、2012年にマーズ・サイエンス・ラボラトリーに搭載され、着陸に成功したキュリオシティがあるとのことでした。
・マーズ・エクスプローレーション・ローバまではバルーンに入れて火星に落下させましたが、マーズ・サイエンス・ラボラトリーでは重量が重いため、キュリオシティをワイヤーで吊って、地表面に到達後すぐにワイヤーを切って逆噴射でマーズ・サイエンス・ラボラトリーを遠ざける方法に変更したとのことでした。
・火星探査車には種々のセンサが搭載されているとのことでした。キュリオシティにはオポチュニティの10倍の化学探査機器が搭載されており、火星が生命を保持する可能性について調査しているとのことでした。
・ミッションを成功させるため、デバイス、コンポーネント、システムレベルでの耐久性評価を行っているとのことでした。
・写真18にオペレーションルーム入口、写真19に衛星組立て工場の入口、写真20にKim博士の居るIn-Situ Instrument Labの入口、写真21にソジャーナ(右)とオポチュニティ(左)の模型、写真22にキュリオシティの模型、写真23にキュリオシティの模型前でのKim博士と下山教授を示します。

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写真18 オペレーションルーム入口  写真19 衛星組立て工場の入口

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写真20 In-Situ Instrument Lab入口   写真21オポチュニティ(左)とソジャーナ(右)

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   写真22  キュリオシティ模型         写真23 下山教授とKim博士

4. CALTEC
(1)訪問先:Yu-Chong Tai (Executive Officer and Professor, Medical Engineering)
(2)訪問日:2018年2月27日(火)午後
(3)調査結果
・Tai教授はMEMSの大御所の一人ですが、15年くらい前からMEMSそのものの研究から医療用MEMSに研究を集中させ、役に立つMEMS の開発を行っているとのことでした。
・アメリカではNIHが医療用で大きな予算を出しており、有望なテーマとしては癌治療や心臓病にかかわるものがあるとのことでした。
・また、DARPAでは1年単位の契約で有望なものは1年単位の更新が基本ですが、NIHでは1年、2年、3年、4年、5年といった種々の枠組みがあり、成果をだせば延長可能で、Tai教授は5年ものを継続させ20年研究開発しているものもあるとのことでした。
・FDAの認可をとるのは大変でコストもかかりますが、認可されれば逆にFDAが守ってくれるので、逆にメリットになっているし、米国では医療用の市場は$400billionあり、他の分野より大きいし、また数はそれほど出さなくても利益率の高い商売ができるとのことでした。
・電気・電子の世界は、数はでますが、コストも下げられ、利益率も悪いし、60年前にトップ60に入っていた企業で今もトップ60に入っているのは3社だけですが、医療は60社がすべてそのまま生き残っているので、医療は非常に安定した業界であるとのことでした。
・VR、ARはこれから伸びるとの意見でした。また、VR、AR絡みでOptical MEMSはまたブームになる可能性はあるとのことでした。
・ビジョンに関してはプライバシーを侵害するものは受入れられないので、注意する必要があるとのことでした。グーグルグラスも当初一般用に考えていたために、撤退を余儀なくされ、最近医療用等の特定分野に限定することで復活したとのことでした。米国では法律でプライバシー保護がなされるので、プライバシーを侵害するものは注意が必要とのことでした。パーソナルユースにするか公共で使うものに関してはホームランドセキュリティにかかわるものしかダメとのことでした。
・IoTに関しては、民生品の分野で有望との見解でした。
・エネルギ分野に関しては、米国では昔はDOEから活発な国の支援が行われましたが、シェールオイルが出てきてからは、米国ではエネルギ関連の予算はほとんどなくなったとのことでした。但し、日本や台湾のようにエネルギを他国に依存しているところは別かもしれないとのことでした。
・MEMSの産業化は、信頼性、再現性等が満足されなければ、無理だとのことで、産業化を考えるにははじめからこれらを考慮する必要があるとの見解でした。
・クリーンルームの前で、Tai教授との写真を写真24に示します

24_caltec_2        写真24 クリーンルームの前で、Tai教授と

5. Microsoft Research
(1)訪問先:
Research Program Managerの公野氏にアレンジして頂き、下記4名の研究者とディスカッションを行いました。
①Yutaka Suzue, Principal Software Development Engineer
②Sing Bing Kang, Principal Researcher Interactive Visual Media
③Gang Hua, Research Manager Machine Perception and Cognition Group
④Sudipta Sinha, Researcher, Aerial Informatics and Robotics (AIR) Group
(2)訪問日:2018年2月28日(火)午後
(3)調査結果
① Dr. Yutaka Suzue
・Dr. Suzueはペッパー、HSR等のロボットを使って、エンタープライズとしてどんなことができるかのシナリオつくりが仕事とのことでした。
・CES (Consumer Electronics Show)ではスマートスピーカを中心とするホームIoTがホットだったとのことでした。
・会議室で、公野氏、鈴江氏への説明の様子を写真25に示します。

25_msr__2       写真25 会議室で公野氏、鈴江氏への説明の様子

② Dr. Sing Bing Kang
・Dr. Kangの研究テーマはエンハンストビジョンやシネマグラフです。360℃カメラの映像をある人が興味のあるものを中心に再構築して、表示させる技術等を開発していました。
・会議室で、Dr. KangとDr. Huaとの写真を写真26に、Dr. Kang、Dr. Hua、公野氏との写真を写真27に示します。

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 写真26 Dr. Kang,Dr. Huaと  写真27 Dr. Kang,Dr. Hua,公野氏と

③ Dr. Gang Hua
・Dr. HuaのグループではVision Analysis, Machine Reading, Machine Learningを研究しているとのことでした。
・Dr. HuaはStyle Transferの研究で、ある絵を別の特徴を持つ絵に変えたり、人の表情を変えたりする研究を行っていました。
・ホットトピックスのキーワードとしては、Co-Robotがあるかもしれないとのことでした。

④ Dr. Sudipta Sinha
・Dr. Sinhaは3Dコンストラクションやステレオマッチング、Mixed Reality、AR、VRの研究を行っていました。
・また、HoloLensの開発を行ったとのことでした。
・キネクトやXBox、Bing検索等がMicrosoft Researchから製品化されたとのことでした。
・会議室で、Dr. Sinhaとの写真を写真28に示します。

28_msr_sinha_2           写真28 会議室でDr. Sinhaと

          (一般財団法人マイクロマシンセンター 武田宗久)

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2016年11月11日 (金)

北米出張報告


 2016年10月30日~11月11日の間、国際交流、および産業・技術動向調査を目的に北米(オーランド、アトランタ、サンフランシスコ、スコッツデール)を訪問したので報告する。

【IEEE Sensors(10月30日~11月2日)】

 今年のIEEE Sensorsは、米国フロリダ州オーランドで10月30日〜11月2日に開催された。本学会には3年ぶりの参加だったが、図1にポスター展示の様子を示すが、以前に比べてますます盛況になっていた。特に驚いたのは日本からの参加者が2倍近く増えていたこと、エネジーハーベスタのセッションが新たに新設されていたことである。IoT社会・トリリオンセンサ社会に向けて、自立型センサネットワークへの関心が高まってきていることのあらわれだろうか?

 一方で、上記IoT社会に向けて企業からの発表が増加していることを期待していたものの、ほとんど大学や研究機関からの発表であり、ビジネス展開については正直なところ期待外れであった。本学会の参加は技術研究組合MEMS技術研究機構として出席したので、発表内容は省略し、以下に大学訪問、およびMEMS & Sensors Executive Congressの参加報告を記載する。


図1 IEEE MEMSのポスターセッションの様子


【研究室訪問】

① フロリダ大学

 IEEE Sensors最終日に東京大学教授の鈴木雄二先生とフロリダ大学に訪問した。MISTセンター(Multi-functional Integrated System Technology)の主にRF-MEMS、および低消費電力MEMSセンサを担当されているProf. Yoon氏、およびProf. Nishida氏にMISTの紹介をいただき、クリーンルームを見学させていただいた。クリーンルームの見学では、専任の方(Dr.)に案内をしていただき(図2)、装置管理や教育体制が行き届いている印象を受け、まるで企業のクリーンルームのように感じた。見学後には、Prof. Yoon氏、鈴木先生と近くのステーキハウスで晩ご飯を食べながら楽しい一時を過ごした。(図3)

図2 MISTのクリーンルーム案内の様子 図3Yoon先生、鈴木先生との会食の                          様子

② ジョージア工科大学

・Prof. Ayazi

 ジョージア工科大学では、BAW(Bulk acoustic wave)を用いたジャイロスコープやMEMS振動発電の研究を行っているProf. Ayazi氏の研究室を訪問した。Ayazi氏とは後述するMEMS & Sensors Executive Congress の会場でもお会いし、振動発電、自立型センサ端末に向けた低消費電力のMEMSセンサ等、自立型スマートセンサに向けて多くの議論ができた(図4)。技術研究組合NMEMS技術研究機構での振動発電の取り組みを紹介したところ、エレクトレットの形成手法であるアルカリ熱酸化+高温電圧印加(BT処理)に強い関心を示された。Prof. Ayazi氏のところでは、X-Yの平面で多軸MEMSアクチュエータによる圧電方式の振動発電を研究されており、発電量は少ないものの静電誘導型でも参考となる構造であると感じた。

・Prof. Tentzeris

 また、環境RFから給電するアンビエント・エナジーハーベスタの研究をされているProf. Tentzeris氏の研究室を訪問した。無線等のRF環境がある領域において、エネルギーを取り込み、LEDを発光させるデモを見せていただいた。この発電方式は、RF環境によるところが大きいが、10μW程度までの発電が可能である。課題としては特に周波数が高い場合、電圧出力がとれないとのことである。電圧出力のとれる太陽電池や振動発電等の別のエナジーハーベスタと融合し、ハイブリッドの発電構造とするのが良いだろうとのことであった。 NMEMS技術研究機構で取り組んでいる静電エレクトレット方式の発電とのコラボレーションの話があったが、NEDOテーマであり、すぐに対応できない状況である。まずは、個別企業への技術紹介までとする。図5に実験室でのメンバと一緒に撮影した写真を示す。


 図4 Prof. Ayazi氏と会議室にて 図5 Prof. Tentzens氏と実験室にて

・見学

 両研究室の訪問の間に、Prof. Ayazi氏の研究室の研究員に約1時間ジョージア工科大学のキャンパス&クリーンルームを案内していただいた。ジョージア工科大学のクリーンルームの一部を図6に示すが、とても広く、また装置も新しい設備が多く、大学保有の研究室とは思えない規模であった。読者のみなさまも機会があれば訪問されることをお勧めする。

  図6 ジョージア工科大のクリーンルーム(一部)

③ BSAC

 スマートダストの生みの親である、カリフォルニア大学バークレー校BSACのProf. Kristofer Pister氏の研究室を訪問した。 Pister氏は短パン姿でフランクに迎えてくれた(図7)。まず、最初に当センターでの活動紹介、現在の開発テーマの紹介を行った。振動発電について、ホワイトボードを前にセンサの消費電力低減、低リークキャパシタ等今後の進展を考慮し、リチウムイオン電池2400mAhであれば、センサ端末の寿命が20年以上もつことを式で示された。振動発電をウェアラブル端末等の市場に使うにはまだまだ時間がかかるだろうが、一方で、センサ等の消費電力の大きいアプリケーション、無線頻度が高いアプリケーション、そして、インフラモニタリング等の長寿命のセンサ端末が必要なアプリケーションには、まだまだ振動発電デバイスの必要性があるだとうということであった。
 また、Pister氏から、今後の取り組みとして、1cm□程度のマイクロロボットのポンチ絵を紹介してくれた。CCDとマイクロフォンを内蔵して動く昆虫形であり、6足の昆虫型やドローン構造のマイクロロボットを紹介していただいた。有害な昆虫の撃退やミツバチの代わり等、様々なアプリケーションが考えられるが、軍事用途を考えると恐ろしさを感じた次第である。

        図7 Prof. Pister氏と研究室にて


【MEMS & Sensors Executive Congress】

 本出張のメインイベントとして、MEMS & Sensors Executive Congressに国際交流およびMEMS産業動向調査の一環として参加した。この会議はMEMS & Sensors Industry Group(MSIG)が主催する会議であり、2016年は11月9日~11日にアリゾナ州スコッツデールで開催された。

 筆者は2年前にも参加したがその時には、日本からはオムロンの関口氏と筆者のみの参加であり、日本のMEMSへの関心の低さを感じていたが、今回はSPPテクノロジーズの神永氏、東北大学の田中秀治先生はじめ10人近くの出席者があった。これは、IoT社会に向けた関心の向上と、昨年度からトリリオンセンササミットをMSIGが巻き込んだことによるものではないかと考える。

 会議自体は、11月10日・11日と2日間の開催であり、講演会はMEMSやセンサ、センサ応用に関する講演が続いた。講演者はMEMS企業のトップが登壇することもあり、技術的な講演から、事業的な内容まで多岐にわたる。今回、約200名の人が参加していたが、企業トップや、投資家、研究機関などが主要な参加者であった。この会議の一番の特徴は、休憩時間や昼食では、懇親の時間がたっぷりととられており、このような場でコミュニケーションを通じて、人的ネットワークの構築を高めて、ビジネスや研究に活かしていくきっかけをつくることであることであろう。図8、9に休憩時間の様子やBanquetの様子を示す。 この会議の期間中に、InvenSense社が日本の企業に買収されるかもしれないという噂が聞こえてきたが、企業間の動きはこのような場が一つのきっかけなのかもしれないと感じた次第である。

 今年の会議の内容について、IoT(Internet of Things)への期待はこれまで同様であるが、さらに、今回は自動車関連の話題が多かった。車載用途での高性能ジャイロスコープについて、先に報告したジョージア工科大学のProf. Ayazi氏(ジョージア工科大発ベンチャーの米Qualtré社)から、バイアス不安定性の原因を取り除く独自の技術を報告されていた。また、IHSからもクリーンカー、コネクテッドカ―等の自動車動向、MEMS&センサーの動向、市場予測の報告があった。

 

図8 休憩時間の様子      図9 Banquetの様子


【所 感】

 今回、大学訪問やMEMS & Sensors Executive Congressに参加して多くの方々と会話をした。 一方で、会話する相手の方々も何らかの価値を期待しており、特に、日本の企業・大学とのコラボレーションの機会を探っていることが多かった。 事前に訪問先を国内企業に紹介して、関心のあるメンバと同行して参加する等の活動も今後必要ではないかと思う。なお、詳細は2017年1月30日に当センターで開催する海外出張報告会にて報告する予定である。


 

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2016年8月 5日 (金)

平成27年度産業動向調査報告書をホームページに掲載

 平成27年度に調査を進めてきた「スマートセンシング&ネットワークの産業動向調査」の結果をまとめ、ホームページに掲載しました。賛助会員は賛助会員ページより全文をダウンロードできます。賛助会員以外の方は目次を閲覧できます。
 
 マイクロマシン/MEMS 技術は、センサ・アクチュエータなどトランスデューサデバイスの基盤技術と認識されており、例えばスマホなどの情報通信機器ではマイクロホンや高周波信号のフィルターとして、自動車産業ではGPS(Global Positioning System )を構成する加速度センサ等として、またFA(Factory Automation)産業におけるロボットの触覚センサ等々、民生品や社会生活に密着した産業分野で大きな市場を形成しつつあります。更にIoT(Internet of Things)やCPS(Cyber Physical System)の構成デバイスとしても、MEMSは中核を成す戦略技術の一つとして認知されつつあり、MEMSの応用範囲の拡がりとMEMS産業発展の加速が社会から熱望されています。
 
 マイクロマシンセンターではこのような状況認識に立って、MEMS関連産業の更なる発展を図るために必要な同産業の現状及び将来展望を把握することを目的に、平成19年度より調査研究事業委員会の下に産業動向調査委員会を設けました。
 
 これまでは、MEMS技術による高付加価値デバイス、応用される産業分野、アプリケーション機器がどのように展開していくかを把握し、MEMS産業の市場拡大に向けての道筋を明らかにするとともに、急速に発展しつつあるMEMS産業の動向を調査・分析し、MEMS産業戦略策定のために必要な基礎データをまとめてきました。しかしながら、マイクロマシン/MEMS技術の応用はここ数年の拡がりから推測すると拡大の一途であり、MEMS市場やMEMSに関わる産業の構造など、その全体像(産業像)はなかなか見えていませんでした。

 以上の背景に鑑み、平成27年度報告書は、MEMS産業の動向をまとめた後、特にMEMS産業の躍進にとって重要でありかつ日本再興戦略で重要な役割を担うIoT/CPS技術に着目し、先ずは最近における日本のIoT/CPSの施策と産業動向を俯瞰しました。引き続き、その動向を背景としてマイクロマシンセンターが立ち上げたスマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会を説明し、次に産業動向調査委員の各位がSSNに関連した社内商品例を多数詳述し、最後にSSNのプラットフォームとなるIoT端末の内容をハンドブック的に纏めました。この報告書が各方面において広くご利用頂ければ幸いです。
                         (産業交流部 松本)

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2014年12月17日 (水)

2014年度 ナノマイクロ領域での欧州産業技術調査(その2:セミコンヨーロッパ2014および国際MEMS/MST産業化フォーラム)

 2014年10月6日から9日まで、フランス・グルノーブルで開催されたセミコンユーロに参加しました。昨年まで過去数年間はドイツのドレスデンで開催されていましたが、今年からグルノーブルとドレスデンで隔年、持ち回りで開催されるとアナウンスがありました。グルノーブルはフランスアルプスの最南端にあたる山々に囲まれた天空のお城と路面電車でおなじみの古都です。ナノマイクロの関係者のとっては欧州を代表する研究所であるCEA-LETIの本拠地でもあって、多くの方は馴染みが深いと思います。この有名な都市の割には交通が結構不便で、グルノーブルに空港はあるものの、通常は北西にあるリヨンから電車、或いは高速バスで移動します。写真にもありますように意外にもリヨンへの旅客機は比較的小型のジェット機でした。単にローマからリヨンまでの便が小型機だったのかと思いましたがリヨン空港に並んでいる航空機は皆小型機で、なんだか親しみを持てる印象です。リヨン空港からグルノーブルまでは高速バスが一般的なようで1時間に1本以上の割合で出ています。グルノーブルに近くなると固有のメサ型の山が見えてきます。メサは半導体やMEMSでは馴染みのある構造なので、これもまた親近感を感じます。セミコンユーロの会場は、イゼール河のほとりのグルノーブルの古都、ダウンタウンから南に5km程度離れたALPEXPOと言う展示会場で開催されました。ALPと言う名前を冠しているのでどんなに美しい山々を望めるかと期待していたのですが、写真にあるようにちょっと期待外れでした。会期中は天気が悪かったので晴天時にはもっと遠方の美しいアルプスが見えたのかも知れません。

 昨年も同じイベントに参加しましたが、併設されている「国際MEMS/MST産業化フォーラム」は、世界有数の企業や専門企業、および産業技術を主体とする研究所から最先端のデバイス、MEMSを支える最先端の装置や材料技術、世界中のMEMS産業動向調査等が発表され、2日間で全容を理解できるフォーラムであって、私の知る限り(全世界を見渡しても)最も充実しているものと思います。

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写真1. 開催地のグルノーブル近隣のリヨン空港、小型旅客機

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写真2. グルノーブルに近いことを知らせるメサ形状の山々

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写真3. セミコンユーロの開催会場 ALPEXPO

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写真4. 会場から見えるフランスアルプス

 最初に「国際MEMS/MST産業化フォーラム」を報告します。このフォーラムはセミコンユーロ前日の6日と7日の2日間で開催され、20件の講演がありました。

 キーノート講演が最初に2件ありました。まずSEMIのHeinz Kundert氏から, MEMS産業の全体概要の講演です。引き続き高い伸び率でMEMS産業が推移していることを強調されていました。2件目は、直近のMEMSの売り上げがSTマイクロを抜いてBoschなったことを反映してと思いますが、Bosch SensortecのJeanne Forget氏からThe future of MEMS sensors in our Connected Worldと言う演題でした。自動車用MEMSからスタートしたBoschらしく、MEMSの産業推移を第一波が自動車、第二波はコンシューマシステム、そして第三の波はIOTとのことです。またIOTの前にウェアラブル機器が一般的になって沢山のMEMSが利用されると言う展開です。Boschのお得意の集積化モーションセンサーの展開が講演のかなりを占めていましたが、最後に環境センサとして湿度センサーの紹介がありました。1.8V-15μAの低パワーで、1秒の高速応答、しかも3%の精度を確保できると言う優れた性能です。技術的なことには殆ど触れていませんが、写真を見る限りポリマーを用いた静電検出と思われます。お得意の周辺回路を別のチップに作ってハイブリッド構成にしています。集積化センサー技術を知り尽くした専門企業が本気で作った自信作と言えます。

 6件目は、Fingerprint Cards 社のJan Johannesson氏です。これは最新のiPhoneに搭載されている指紋センサーの紹介でした。Fingerprint Cards 社は1997年にスウェーデンの生体認証に特化して創立された企業で、15年以上のタッチセンサーの技術を磨いています。指紋検出は、光学式や超音波式がこれまで多用されてきましたが高価であるとの課題がありましたが、静電容量方式にすることで大幅なコストダウンと大量生産を可能にしたとのことです。

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写真5. MEMS産業化フォーラムの会場

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写真6. チェアのBosh Senontec のLammel氏

 9番目の講演は東北大学の田中先生から、高速通信バスと触覚センサーの集積化の発表です。センサー部はMEMS技術による圧力センサで、個々のセンサーモジュールは薄膜CMOS基板の上にMEMSセンサーを積層した実装となっています。個々のセンサーモジュールに通信プロトコルを含む信号処理回路が含まれ、45MHzのクロックを用いて高速の通信を行うと同時に256個のセンサー信号を高速に検出・送信できる能力があります。

 10番目の講演はNasiri VenturesのSteve Nasiri氏によるMEMSベンチャーに関する講演です。Steve Nasiri氏はInvenSenseの創立者であり、ご自身で6個のベンチャーを立ち上げた強者です。今回の講演は「InvenSenseをどうやって成長させたか」でした。2003年に設立して約10年でSTマイクロやBoschと常に競合しながら売上を増やしています。成長は年率約50%です。InvenSenseは技術的には、CMOSウェハーにMEMSセンサーウェハを直接接合する他社よりも、明らかにチップサイズを小型化可能な技術で競争に打ち勝ってきたとのことです。

 12番目の講演はAlissa Fitzgerald氏で、ご自身の名前を持つAMFitzgerald社ですが、一般財団法人マイクロマシンセンターにも一度訪問されて、米国の大学の施設を用いて安価な研究開発受託サービスをされていました。今回はRocketMEMSと言う概念で、今まで18ヶ月かかっていたMEMS開発を4-5 ヶ月に飛躍的に開発期間を短縮する仕組みの紹介です。その仕組みは、センサーの仕様や性能を物理モデル化して、設計時に性能を精密に予測できるようにしたこと、標準化可能なプラットフォームやプロセスをレディメードにしたことです。最先端の設計理論や仕組むを駆使する所が米国の研究者発ベンチャーらしい取り組みです。

 17番目はオーストリア大:Alexander Nemecek氏による、マイクロホットプレートを用いた集積化ガスセンサーです。CMOS基板上に周辺回路とガスセンサー用のマイクロホットプレートを集積化するもので、大学の研究としては完成度の高いものです。このようなスマートガスセンサーは大手のセンサーデバイス企業が製品化を考えていて、質問が大変活発でした。

 最後にMEMSマーケット予測では、MEMS分野の二大調査会社であるiSuppliとYole Developmentから発表がありました。この「国際MEMS/MST産業化フォーラム」の特徴は、産業化のセミナーとして産業動向・産業技術の最新情報に加えて参加者が特に興味を持ちそうなテーマを挙げ、世界中から発表者を贅沢に集めていること、大学からの講演は少なく、殆どは企業や、産業技術に特化した研究所からの発表である点です。

S7 写真7.セミコンユーロの展示会場

 次に「セミコンユーロ」展示会です。規模としては昨年と同規模ですが、半導体関連製造装置メーカからIMECやフラウンホーファー研究所、LETIのような半導体を含めた国際連携を強力に押し進めている研究機関の広い展示面積があること、更にMEMSを中心に欧州の産業の活況、また印刷電子機器と言った新規な取り組み等の話題性は昨年と同様、多いと感じました。出展者としては、半導体やMEMS、電子デバイスの製造装置メーカ、半導体センサーやMEMS、パワー半導体、三次元実装関連の研究所や企業とバランスの良い展示がされていたと感じています。 日本の展示会と異なるのは、非常に多いベンチャー、専門企業の活力が高いこと、地域性を前面に出して地域単位で展示していることです。 引き続き欧州でのマイクロナノ分野は有望であると感じました。

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写真8. 過去の展示コーナ並べられた懐かしいタイピュータ、テープ読み取り機

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写真9. 日本製の観察顕微鏡

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写真10. イノベーションビレッジと言うベンチャーコーナ

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写真11. WiFiやZigBeeの発明者Cees Links氏

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写真12. トヨタのパーソナルモビィティ

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写真13. このパーソナルモビィティの後部座席に乗せて貰いました。

 今回の展示で新しいと感じたことは、3つあります。最初はイノベーションビレッジと言うベンチャーコーナです。このコーナには30近いベンチャーが展示をしていました。またこのベンチャーが5分程度の告知を行うエレベータピッチセミナーも同時開催されて最新のスタートアップの状況を見ることが出来ました。私の専門であるMEMSカンチレバーを用いた化学センサーのベンチャー企業もそこで巡り合い、LETIを訪問した時に企業訪問を行う約束を取り付けました。何故か?アイデアだけで出展・発表しているベンチャーもありましたが、欧州らしいと思いました。第二は過去の半導体製造装置やコンピュータの展示コーナです。ここでは4インチの研究開発・生産の世代の蒸着装置やウェハーが展示され懐かしさ一杯です。私が学生時代に使ったコンピュータ読み取り紙テープを作成するタイピュータは本当に懐かしいものでした。第三はトヨタのパーソナルモビリテイ(TOYOTA i-ROAD)の実演展示でした。会場の一部をグルグル旋回するこの小型車は、一人乗りですが、転ばない電動バイクと言った感じです。載せて欲しいと懇願しましたが、流石にそれは駄目で、後部の荷物置き場に乗せて貰って、その感覚を楽しむことが出来ました。バイクと同じで狭いですが後部に乗ることはOKのようです。

 最後のトピックスは、セミナーでWiFiやZigBeeの発明者であるCees Links氏に逢うことが出来たことです。今ではその恩恵を受けることがない人はいない、ぐらいWiFiは有名ですが、ルーセントテクノロジーに在籍していた当時は、開発しても殆ど用途はなく、Apple社がコンピュータに搭載して爆発的に広がったようです。ZigBeeはWiFiの信頼性を引き継ぎながらセンサーネットワーク用に超低消費電力を達成した無線システムです。このZigBeeは秋葉原の電子工作屋で購入できる数少ない高度な無線モジュールですが、私も最近使い始めてその性能や信頼性に感動しているこの頃です。このZigBeeの大ファンであることを告げて写真を撮らせて貰いましたが、一緒の写真を撮れなかったことを今も後悔しています。

 このナノマイクロ領域での欧州産業技術調査(セミコンヨーロッパ2014および国際MEMS/MST産業化フォーラム)と欧州の研究所の訪問、ブラジルで開催されたマイクロマシンサミット、幾つかの都市で開催されたトリリオンサミット、米国MIGコンファレンス、国際標準活動等の海外産業技術調査の報告会は、2014年度も来年の年明けすぐ、1月13日(金)に一般財団法人マイクロマシンセンター7F、テクロサロンにて開催予定です。交流会もありますので沢山の方々のご参加を期待しています。(MEMS協議会 三原孝士)

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2014年12月16日 (火)

米国のMEMS産業動向調査の報告

 米国MEMS Industry Group主催で、2014年11月6日・7日、米国アリゾナ州スコッツデールにて開催されたMEMS Executive Congressに国際交流およびMEMS産業動向調査の一環として参加しました。
 この会議は毎年この時期に開催されているもので、講演やパネルディスカッション、休憩時間等の空き時間でのインフォーマルな会話を通して、情報交換、人的なネットワークを形成するとともに、MEMS関連産業のビジネスチャンスを見つける場となっています。MEMSを中心とした研究開発そのものに関するものではなく、事業化をどう促進するかを議論していく会議であることが特徴となっています。
 昨年のカリフォルニア州ナパでの開催に続き、今回はアリゾナのリゾート地のスコッツデールを会場として企業間を中心とした交流の場として盛り上がりました。
 参加者は欧米を中心に、300名近くの方が参加されていました。日本からはオムロン株式会社マイクロデバイス事業本部長の関口氏とマイクロマシンセンターから私の2名のみの参加ということで、海外MEMS産業の元気さとは裏腹に日本のMEMS産業の寂しさを感じた次第です。
 会場に前日夕刻に到着すると早速交流会が始まっていました。講演会場の様子からも日本人が少ないことが伺えるかと思います。参加者はMEMS企業、装置企業以外にもアップルはじめMEMSを活用する企業、各国の研究機関、そして調査会社、ジャーナル紙などのMEMSを取りまく様々な関係者が参加されていました。講演は成長続けるMEMS産業の次の展開について、ウェアラブルセンサ、スマートホーム、スマートカー、スマートシティーなどいたるところにセンサが付けられてくるトリリオンセンサ社会、IoT社会に関する議論が多く、ますますビジネスのコラボレーションが重要になってくるといった話題が多くありました。

 6日の晩にはホテル内でバーベキューパーティが開催され、2次会も併せて企業間を中心に大変盛り上がっていました。日本企業は置いてきぼりになっているのではという心配が頭をよぎった次第です。

 この後、コロラド州のボルダーに移動しました。日曜は終日予定が入っていませんでしたので訪問先の場所確認を含めてホテルの自転車を借りてボルダーの周辺を散策しました。日本より寒いと聞いていたにも関わらず15℃以上の快適な気候で天気もよく、コロラド大学やロッキー山脈につながる山々がきれいに見えました。

 月曜になると気候は一転して氷点下の雪の中NISTに訪問しました。NISTへの訪問はチップスケール原子時計(CSAC)のセンサネットワークへの適用可能性などの意見・情報交換を行うことを目的としてCSACの生みの親であるキッチン博士と面談しました。実験室にも案内いただき親切丁寧に3時間以上もお付き合いを頂き多くの情報を得ることができました。

 また、火曜には移動前にコロラド大学に訪問し、次のモバイル機器への搭載が期待されているマイクロボロメータ、および液体レンズを用いたオートフォーカスについて技術紹介をいただきました。私からは、MMCの取り組み、とりわけグリーンセンサネットワークプロジェクトと社会インフラモニタリングの現行プロジェクトを紹介しました。ビクター教授をはじめ皆さん実験室にも紹介いただき、外は寒い中でしたがとても楽しく意見交換をさせていただきました。

 この後、トリリオンセンササミット(T-Sensors Summit)に参加するためにカリフォルニア州のラ・ホーヤに移動しました。こちらは上述のMEMS Executive Congressとは異なり約200名の参加者のうち日本からは20名近く参加されていました。また、会議の雰囲気も意見交換というより講演が中心となる会議であり学会に近いプログラムでした。一方で、内容については今後センサがさらに飛躍的に増えるトリリオンセンサ社会に向けて、ヘルスケア、自動車、農業・畜産といった使う側からの話もあれば、センサに関する新しい革新技術もあり、ビジネスに近いところ、そうでないところ交えて盛りだくさんな内容でした。また、初日の晩には交流会が開催されMEMS Executive Congressと同様に意見交換が盛んでした。私は12月に開催されたT-Sensors Summitでも聴講する機会がありました。米国での内容と同様のプログラム構成ではあるものの、日本での開催とあってエレクトレットの振動発電ロードマップや道路インフラモニタリングの取り組み等の特徴ある講演を多く聞くことができました。

 今回、MEMS Executive Congress、およびT-Sensors Summitに参加して感じたことですが、どちらも、トリリオンセンサ社会、IoT社会等の産業成長に関する情報収集に適した場であると思います。特にMEMS Executive Congressはビジネスに力点をおいており、センサネットワークの急速な発展に向けて、日本でのMEMS産業の課題、今後のグローバル連携等について考える良い機会と思います。関係各位も参加されることをお勧めします。

 <産業交流部 今本>

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2014年12月 9日 (火)

平成26年度 MEMS協議会・海外調査報告会 のご案内

平成27年1月13日(火)、「平成26年度 MEMS協議会・海外調査報告会」を開催致しますのでお知らせ致します。

今回は、主として国際交流事業で得た米国やアジア、南米、欧州の最先端産業技術動向や、世界の有力マイクロナノ関連研究所の訪問で得た知見を、マイクロナノ人材育成プログラムの一環として、報告致します。
また(財)マイクロマシンセンターが主導している国際標準化の活動に関しても報告致します。
皆様のご参加をお待ちしております。

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平成26年度 MEMS協議会・海外調査報告会
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開催日時: 平成27年1月13日(火) 15:00~17:00~18:00
開催場所: (財)マイクロマシンセンター 7皆会議室「新MMCテクノサロン」
          (地図: http://www.mmc.or.jp/gaiyou/map/

プログラム
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15:00~15:05
     主催者挨拶 
     (財)マイクロマシンセンター 専務理事 青柳 桂一 
 
15:05~15:50
     「米国におけるMEMS産業動向」
         ・MEMS Industry Group(MIG)国際ビジネス会議 
         (MEMS Executive Congress US in Scottsdale,
            MIG Conference in Shanghai)
         ・Trillion Sensors Summit 2014 in San Diego
     「H25年度MEMS産業動向調査報告書の完成報告とH26年度取組み」
            MEMS協議会 今本 浩史
 
15:50~16:35
      「マイクロマシンサミット2014と欧州MEMS産業技術動向」
         ・マイクロマシンサミット2014(ブラジル)報告
         ・CEA-Leti訪問 (フランス グルノーブル)
         ・Semicon/Euro2014 MEMS産業化フォーラム報告(フランス)
            MEMS協議会 三原 孝士

16:35~17:00
      「MEMS国際標準化に関する活動状況」
         ・MEMS国際標準化と日本の対応
         ・日韓中独のアドホック活動(ジュネーブ会議等)
            MEMS協議会 出井 敏夫

参加者交流会  (会場:マイクロマシンセンター6階 会議室)
   17:00~18:00  飲物・軽食の簡単な立食形式親睦会

(プログラムはやむを得ず変更になる場合がございますのでご了承下さい。)

参加費:
    ■ 一 般  1人       3,000円
    ■ MEMS協議会メンバー   無料
       (正メンバー、アソシエートメンバー、MEMSフェロー)
       ◇先着申込40名に達し次第締め切らせて頂きます。

参加申込: http://www.mmc.or.jp/cgi/form/h26kaigai/

下記ホームページもご参照ください。
   http://mmc.la.coocan.jp/business/kaigai/h26/

 MEMS協議会・海外調査報告会 担当  三原 / 酒向

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2014年11月14日 (金)

2014年度 ナノマイクロ領域での欧州産業技術調査・研究所訪問のご報告

 

MEMS協議会の事業の一つとして推進しています国際交流事業では、国際マイクロマシンサミットへの参加や、ナノマイクロビジネス展での国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムの開催、国際ビジネスワークショップの開催等に加えて、現在20機関ある国際アフィリエイトと連携した海外産業技術調査を行なっています。

 今回、フランス・グルノーブルで開催されるセミコン欧州および、国際MEMS/MST産業フォーラムへの参加に合わせて、フランス、スペインとイタリアのMEMS関連研究機関の見学と訪問Meetingを実施しましたので報告致します。

 ご存知のように、欧州ではナノテクやMEMSに対する継続的で旺盛な投資が行われ、かつ大学や研究所が所管する大型研究施設を用いて、様々な企業がMEMS事業化に向けた取り組みを強化するとともに、多くのベンチャーが当該施設によって巣立っています。またフランスやスペインではMEMSを使った環境センサーの研究開発が旺盛で、特に食品等の流通検査等を目指しています。更にイタリアは医療や健康分野にロボットを活用する取り組みを強化しています。今回はこれらの研究機関を訪問して最新の技術や取り組み状況に関する情報交換を行いました。

(1)聖アンナ大学院大学(Scuola Superiore Sant'Anna)BioRobotics Institute (Pisa市)

 最初の訪問地としてマイクロマシンサミットの最古参の一人で、先日のブラジルにて20回の開催記念に特別講演をされたイタリアの団長であるPaolo Dario教授が所長をされている、BioRobotics Instituteを訪問・見学致しました。BioRobotics Instituteは先進的ロボット工学の研究の中心であり、イタリアで最も有名な大学の1校である聖アンナ大学院大学(Scuola Superiore Sant'Anna)にあり、バイオ・ロボティクス、スマート・システムおよびマイクロエレクトロニクス分野の研究および革新的技術開発を先導されています。

 この研究所は、イタリア長靴の付け根に近い海岸沿いにあるピサ市から、長靴の内部に30kmの距離にあるポンテデーラ(Pontedera)市の駅の近くにあります。大学なのに教授の強い裁量権があるのか、極めて組織的・戦略的な運用をされていることに驚かされます。このBioRobotics Instituteは、バイオ・医療用ロボットの専用研究所で、5名の教授、3名の准教授、8名の特任教授と、90名の博士を抱える極めて大規模な組織です。また研究予算もイタリア政府からは30%のみで60%近くはEUの競争的資金で運営されています。加えて、イタリアで最も人気のある学部・研究所であって、極めて優秀な学生や研究者が集まって来るとのことでした。また産業化、企業との連携も盛んで、2011年から、近年MEMS分野で世界的な躍進を継続しているSTマイクロエレクトロニクスと共同研究を開始しています。この報道の中で「バイオ・ロボティクスとスマート・システムは、21世紀における人間社会の持続可能な開発の基盤となり、製造業、医療、スマート・ホームおよび環境保護等、あらゆる面で我々の生活の質を改善することになる」とPaolo Dario教授が発言されています。

 STマイクロ以外にも、リハビリテーション関連企業、イタリア通信企業、ヘルスケア関連企業との強力な連携をしています。更にピサ市のあるトスカーナ(Toscana)州は、The Land of Robotと言われるほど、あらゆる場面でロボットの振興を過去30年間にわたって進めていると言うから驚きです。会議室にて何人もの第一線研究者により研究紹介をして頂き、恐縮いたしました。その研究紹介は、ロボットの利用される触覚・圧力センサーや、指のような感覚で触った時の圧力分布をみるセンサーアレイ等です。またサービスロボットでは、高齢者にとってロボットが生活の役に立つにはどうすれば良いのか?と言う課題で、買い物ロボットの紹介がありました。買い物は機能が異なる複数のロボットがあって、買い物荷物が入った車両から、家の玄関まで運ぶディバリーロボットと、屋内で生活支援するロボットが相互に認証・確認しながら買い物を受け渡す場面がビデオで紹介されました。イタリアのこの地方には、介護や生活支援、街中での掃除ロボットやごみを収集するロボット等の実用化に向けた検証実験も進められています。近い未来に、トスカーナ(Toscana)州に行けば(サッカーは勿論ですが・・)街中の至る所にロボットの働いている姿を見ることが出来るかも知れません。

 研究施設の見学も、クリーンルームを始め、試作中の小型ロボットの実験室を見せて頂きました。MEMSのデバイス開発は勿論、バイオ関連、マイクロTAS、医療MEMS等々の幅広い研究をされています。その中でも強く記憶に残ったのは、10年前のマイクロマシンプロジェクトを思い起こす小型体内ロボットの研究開発です。カプセル内視鏡や、ロボットサージェリ、カテーテル、それらのアクチュエーション等の研究開発が今も脈々と進められていました。

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写真 1 聖アンナ大学院大学・BioRobotics Instituteの正面

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写真 2 会議室の様子

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写真 3 ダリオ教授とスタッフの方々

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写真 4 Meetingにご出席頂いた方々(右端がダリオ教授)

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写真 5 マイクロロボット

(2)バルセロナ大学・ナノマイクロ研究所[CNM](バルセロナ市)

 バルセロナ大学・ナノマイクロ研究所(National Centre for Microelectronic CNM)はスペイン最大のシリコンベースの半導体やMEMSの研究所です。ECのフレームワーク研究やスペインの研究開発プログラムを実行すると同時に、バルセロナ大学との連携によって多くのMEMSセンサー(バイオ・化学センサー)やマイクロ分析器の研究開発を行っています。

今回訪問したLuis A. Foseca Chacharo博士(ルイス博士)は、マイクロマシンサミットの常連的なMEMSの研究者ですが、SiNERGYと言われるエネルギーハーベスト技術と、その材料技術を中心にした取り組みをされています。材料としては、ナノワイヤー、帯電デバイス、圧電ピエゾ素子、スーパーキャパシター材料等が含まれます。

 ご存知のようにバルセロナはスペイン2番目の都市で、カタルーニャ州の州都、観光都市です。バルセロナ大学は、市中心から一つ山を越えた25km北の小高い丘の上にあります。CNMはバルセロナ大学のキャンバス内にありますが、純粋に国立研究所であって、大学の敷地内に場所を置いているのみとのことです。研究所はクリーンルームと一体化した巨大な建物でした。スペインにはマイクロシステムの研究所は地域別に3つあって、バルセロナはシリコン、マドリッドは化合物半導体、セリビアはアナログ・MixedICとのことです。年間経費は約15億円、180人の技術者・研究者と80名の設備管理者とのことです。1500m2の規模のクリーンルームを持つので研究所としては大規模と言えます。内部を見せて貰いましたが、大変良く整備された施設で、CMOSラインとMEMSラインが2系統あるものです。

 研究紹介では、スペインらしく化学センサーやバイオセンサーの熱心な研究紹介がありました。フランス、イタリア、スペインでは農業大国としてワインやオリーブの品質管理や流通管理技術に特に力を入れ、化学センサーも力を入れています。化学・バイオセンサーでは、マイクロホットプレート、共振器&カンチレバー質量センサー、赤外線光学式センサーの研究紹介がありました。また集積化MEMSやCMOS回路技術の専門家も多く、センサーネットワーク用の消費電力ICも開発され、無線チップや特殊ADC等の開発もされています。更にルイス博士の専門領域に近いあらゆる種類のエネルギーハーベスト技術も興味深いものです。特にナノ材料との組み合わせで熱電素子の研究に熱心でした。

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写真 6 ナノマイクロ研究所・CNM

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写真 7 ルイス博士のお部屋

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写真 8 スタッフの方々と一緒に

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写真 9 バルセロナのマーケット(鮮やかな色のお菓子)

(3)フランス原子力庁/電子・情報技術研究所(CEA-LETI)

 説明の必要がないくらい有名な半導体・MEMS等のフランス最大の研究所(CEA-LETI/MINATEC)であって、MEMSに限定すると欧州最大規模です。フランスのCEA(フランス原子力・代替エネルギー庁)の付属機関であり、最初は放射線の検出器を開発するのが目的であったと聞いています。そのLETIは、フランスアルプスに囲まれた大学都市グルノーブルに1967年に設立された電子情報技術研究所であって、欧州を中心に世界中の研究所や企業と連携して今日では国際的な科学研究拠点として認められています。1700 名の研究者と、270名の博士課程の学生を有し、これまで50のベンチャー企業の基礎をつくり、約370社との共同研究を行っています。研究施設は、200mmと300mmのウエハー規格に基づく、研究所としては世界最大規模のクリーンルームを所有しています。

 窓口になって頂いた、アルカモネ博士(Dr. Julien Arcamone)はフランス大使館LETI日本代表のBruno PAING様からご紹介頂いた産学コーディネータの方ですが、もともとマイクロシステムの材料の研究者でまだ若いにも関わらず、研究者からコーディネータに転身されています。最初に驚いたのは、レセプションコーナで待って出迎え頂いたあと、LETI事務所で1時間位の情報交換を行いましたが、7割以上はアルカモネ博士の質問攻めでしした。日本のMEMSの産業の業容や課題、研究開発の状況や研究所の動向等です。LETIは日本に事務所を持っていて、毎年シンポジウムを開催しているので日本のことは十分判っていると思いますが、さすがに国際的な研究開発受託をビジネスにしている熱心さが伺えました。百聞は一見にしかず・・で早速、クリーンルームを、しかも着替えをして隅から隅まで見せてくれました。私が見た研究所の施設としては世界1(クラス)です。LETIのライバルはIMECと言い切っていましたが、IMECのMEMS開発はホルストセンサーで実施しているいので、間違いなく研究拠点から言うと世界1(クラス)と思います。しかも、MEMS専用のCMOSライン(と言うよるサーフェスMEMSライン)とMEMSライン(後工程と言うよりバルクMEMSライン)があって、その施設間をクリーン着を着たまま(かなり長い)自動リフトで移動します。これは初めてで“たまげた”と言う感じです。このCMOSとMEMSのラインは特殊な規則を作ることで双方向にウェハを行き来することが出来るとのことでした。尚、ナノエレクトロニクス施設は別にあるとのことです。

 LETIを一言で言うなら由緒正しい正統派研究所と言うイメージです。IMECのような連携を重視するのではなくて、あくまでも研究所主体です。基本的にはLETIが基本技術を揃え、また研究のリーダ、研究管理も主体的に行います。その戦略の違いが特許戦略に表れていて、LETIは自ら特許を所有して、相手にライセンスする方向です。このため、これまで2200の特許を所有しています。また基本的に、当該特許もバックグランド特許も排他的な供与は行わない方針で、コア技術保有の考えが浮かびます。(ここがIMECと最も大きな差と言っていました)

 LETIの研究開発予算は、250Mユーロ、20%が政府、40%が競争的資金、40%が産業界からと産業界の比率が大変高いです。連携企業は370社、フランスが20%、他のECが40%・・またLETIの上位組織はCEAで、CEAの研究子会社はマイクロシステムのLETI、新エネルギーがLitenがグルノーブルに、ソフトのLISTがパリにあるとのことです。またLETIの活動はシリコンデバイスが50%、(デバイス)システム関連が30%、光学関連が20%とのことです。クリーンクールや装置のメンテスタッフは勿論のこと、単なるデバイスや材料開発以外にそのデバイスを用いてシステム化する技術者も多く、実用的な研究開発が行われています。また気になった研究所と産業界の人材交流ですが、①産業界との人材交流や異動は頻繁に行われ、②スタートアップ会社創立も盛んとのことです。特に②を開始する場合は、研究所への復帰権利が基本的に5年間は保証されるとのことです。

 セミコンユーロの講演会で知り合ったマイクロカンチレバーを用いた化学センサーでLETIから起業したApixanaylics社のColinet博士に、LETI訪問の後企業訪問を急遽行うことになり、LETIの内部にあるベンチャー棟に入ったApixanaylics社を訪問しました。非常に微小で多数のマイクロカンチレバーと、市販のキャピラリーカラムを用いて、分析と検出の出来るシステムで、既にプラットフォーム評価システムは販売を開始したとのことです。私もカンチレバーも用いた化学センサーの研究者でしたので、話が大変盛り上がり、この欧州調査も気持ち良く完了することが出来ました。欧州の研究所には、私一人の訪問にも関わらず、沢山の方々に時間を取って頂きました。この機会を借りて感謝したいと思います。この詳細な情報は、来年(2015年)1月にマイクロマシンセンターで開催されるMEMS海外産業技術動向調査報告会で報告致します。是非、沢山の方々のご参加をお願い致します。(MEMS協議会 三原 孝士)

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写真 10 LETIのアルカモネ博士と一緒に

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写真 11 急遽訪問させて頂いたApixanaylics社のColinet博士と

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2014年3月14日 (金)

欧米におけるAE診断に関する動向調査

欧州においてAEセンサシステムを用いた構造検査サービスを実施しているTUV Austria、および、AEセンサユニット・検査HW・SWを提供している欧州最大のベンダVallen Systems GmbHを訪問。また、AEセンサーによるモニタリングの第一人者であるUCLA小野教授にお話をお伺いし、欧米におけるAE適用事例、センサの要求仕様、検査の対象および実施内容について調査した。

[AEセンサの適用市場について]

石油タンクの腐食検査が大きな適用市場であり、欧州で数百タンクを検査している。1タンク当り50~60個のセンサを用いるのが一般的とのことである。また、一事例で数多くセンサを用いているのはオイルのパイプラインである。デンマークの例で、最大50kmのパイプラインに50mおきにセンサを設置しているという(約1000個のセンサ)。

ガスタンクへの適用事例では、球形タンクに数m間隔で30個のほどのセンサを配置し、欠陥の位置標定も行なっている。また、ガイシの製造工程検査にAEセンサを用いている事例もある。FRPとメタルの嵌合強度検査に適用している。

米国ではサンフランシスコ-オークランドベイブリッジでAEによる常時モニタリングが行われ約600個のセンサーが使用された(約4百万ドルの事業)。カナダではT社が鉄道橋のAEモニタリングを継続的に実施しており、鉄道事業者は結果を基に修繕計画を立てているという。これは商業ベースで採算が取れているケースである。ポーランド、チェコでは大型トラックを通過させたときのAEを測定し健全性を判別。AE診断結果で通行止めと判断した例もある。

一方で、航空機への適用、変圧器の絶縁不良の検知診断の要求もあるという。船(オイルタンカーなど)の検査では、腐食と疲労亀裂の両面での検査が必要となり、今後適用市場として期待されている。また、航空機等の燃料配管の漏れ検知にもAEの適用は考えられるが、この用途ではセンサの小型化・低コスト化が必要となるとのことである。

[AEセンサへの要求仕様について]

感度や周波数範囲といった基本仕様は勿論であるが、使用可能な環境温度範囲に対する要望がいずれのヒアリングにおいても議題となった。情報を総合すると、環境温度範囲は、基本的にー50℃から80℃をカバーすることが望まれている。低温側は‐50℃でほぼ全ての対象に適用できる見通しであった。高温側は80度超を要求する特殊なアプリケーション(エンジン・格納容器など)も存在する。この場合、ウェーブガイドを用いてセンサ接触面の温度を室温に近づける手法も選択されるようであった。また、耐久性も実用上の大きなポイントであり、構造物に製造工程で埋め込まれるケースでは基本的に構造物そのものの寿命と同等の寿命が要求される。

周波数帯域としては150kHzがセンサのボリュームゾーンである。但し、MHzオーダーのセンサが実現できれば、新たなアプリケーションへの適用も可能となる。一方で、10kHz、20kHz程度で感度のよいセンサーができればコンクリート構造物への適用が可能となる。

センサのコストについては、現状のセンサはインストレーションコストが高く、低コスト化により置きっぱなしに出来れば大きなメリットとなる見通しである。

[AE検査の標準化について]

欧州では、ベルギー・ブリュッセルに本拠を置く、CEN(欧州標準化委員会)によりEN(欧州規格)化が実施されており、AEに関する検査規格のEN化実績があるという。ENは規格原案のISOとの並行投票が可能とのことである。

以上、本調査では、欧州におけるAE診断の適用市場や動向、センサの要求仕様、標準化手法等において非常に有益な情報が得られた。

(NMEMS技術研究機構 笠原章裕、渡部一雄)

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2013年12月19日 (木)

米国MEMS産業動向調査の報告(2)

Image21 米国MEMS Industry Group主催で、2013年11月7日午後~11月8日、米国カリフォルニア州ナパにて開催されたMEMS Executive Congressに国際交流およびMEMS産業動向調査の一環として参加しました。
 この会議は毎年この時期に開催されているもので、講演やパネルディスカッション、休憩時間等の空き時間でのインフォーマルな会話(図3)を通して、情報交換、人的なネットワークを形成することによってMEMS関連産業のビジネスチャンスを上げることです。研究開発そのものに関するものではなく、事業化をどう促進するかに絞った会議であることが特徴となっています。
Image22Image23
 今回はワインの産地としても知られるナパを会場として、情報交流の場としてナパの名産のワインを飲みながら(図5)交流が盛り上がりました。

参加者は欧米を中心に、300名近くの方が参加されていました。日本からはオムロン株式会社マイクロデバイス事業本部長の関口氏、Yoledevelopmentの片野氏ほか数名というところで海外のMEMS産業の元気さと裏腹に日本MEMS産業の寂しさを感じた次第です。

Image24今回は主に以下のテーマについて発表がありました。
・MEMS市場動向(Yole development、 IHS)
・モバイルおよび将来の健康モニタリング
・エレベーターピッチ(短時間での新技術・事業の提案) (図4)


Image25 全体を通じて印象に残った知見として以下のようなことがありました。
・モバイルでのセンサの搭載数が急加速して増加してきているなか中で、Trillion Sensorについての関心が高かった。
・ また、モバイルの動向調査についても今後は加速度、ジャイロ、電子コンパス、マイクロフォンの発展から、さらには環境センサ、マイクロプロジェクタ、エネルギーハーベスティングデバイス等への展開が期待されてきており、さらに多くのMEMSデバイスが期待されています。
・講演でも話がありましたが、健康モニタ用途としてもウェアラブルセンサネットワークが急加速していきそうである。

 次回は、来年度は2014年3月10日、11日とドイツのミュンヘンにてMEMSExective CongressEurope2014が開催されます。
 MEMS産業、センサネットワークの急速な発展に向けて、日本でのMEMS産業の課題、今後のグローバル連携等について考える良い機会ですので、関係各位も参加されることをお勧めします。

 <産業交流部 今本>

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2013年12月13日 (金)

MEMS協議会・海外調査報告会 (2014.01.15) のご案内

一般財団法人マイクロマシンセンター・MEMS協議会では、MEMSを含むマイクロナノ領域の産業推進を目的として、研究開発活動やインフラ整備活動(MNOIC等)を行なっています。
また国内外機関と連携した人材育成や国際交流にも注力しています。
今回、マイクロナノイノベータ人材育成プログラムの一環として、主として国際交流事業で得た米国やアジア、欧州の最先端産業技術動向や、世界の有力マイクロナノ関連研究所の訪問で得た知見を、報告する会を開催致します。
また(財)マイクロマシンセンターが主導している最新の国際標準化の活動に関しても報告致します。
皆様のご参加をお待ちしております。 詳細は下記ホームページをご参照ください。
 http://mmc.la.coocan.jp/business/kaigai/

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  MEMS協議会・海外調査報告会
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開催日時: 平成26年1月15日(水) 15:00~17:00~18:00
開催場所: (財)マイクロマシンセンター 7皆会議室「新MMCテクノサロン」
      (地図: http://www.mmc.or.jp/gaiyou/map/

■プログラム
15:00~15:05 主催者挨拶
         (財)マイクロマシンセンター 専務理事 青柳 桂一

15:05~15:50 「米国・欧州におけるMEMS最先端技術と産業動向」
         ・MEMS国際ビジネス会議(MIG Executive Congress)
         ・IEEE Sensors, Baltimore(米国)
         「H24年度 MEMS産業動向調査報告書の完成報告」
            MEMS協議会 今本 浩史

15:50~16:35 「マイクロマシンサミットと中国・ロシア、北欧MEMS動向」
         ・マイクロマシンサミット2013(上海)報告
         ・中国公的研究所(国家重点実験室, 北および南分室)訪問
         ・Semicon/Euro MEMS産業化フォーラム報告(ドイツ)
         ・ロシア(RMA)、フィンランド研究所(VTT)訪問
            MEMS協議会 三原 孝士

16:35~17:00 「MEMS国際標準化に関する活動状況」
         ・MEMS国際標準化と日本の対応
         ・日韓中のアドホック活動(広州Meeting等)
            MEMS協議会 出井 敏夫
参加者交流会
17:00~18:00 簡単な立食形式 (会場:マイクロマシンセンター本部 会議室)

参加費:■ 一 般  1人       3,000円
    ■ MEMS協議会メンバー   無料
       (正メンバー、アソシエートメンバー、MEMSフェロー)
       ◇先着申込40名に達し次第締め切らせて頂きます。
参加申込: http://www.mmc.or.jp/cgi/form/h25-kaigai-rep/

問合せ:
一般財団法人マイクロマシンセンター
 MEMS協議会・海外調査報告会 担当  三原 / 酒向
E-mail:event@mmc.or.jp (参加申込・お問合せ)
                           (MEMS協議会 三原 孝士)

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