新年あけましておめでとうございます。
当センターは本年1月に創立30周年を迎えます。国プロのマイクロマシンの研究開発からスタートし、これまで20ほどの国・NEDOプロを推進してまいりました。また同じく10周年となりますMNOIC(マイクロナノ・オープンイノベーションセンター)では、民間企業等のMEMS研究を支援し、工程を受託するなど、日本のMEMS技術や産業の発展に一定の貢献ができたのではないかと思っております。
本年もコロナ禍による経済の不透明感は続くと見られており、急激に需要が回復しようとする自動車や情報機器に半導体供給が追い付かないなどの状況はありますものの、国が推進しておりますグリーン成長戦略やデジタル・トランスフォーメーション(DX)において、フィジカル空間をサイバー空間に変換するためのゲートともなる各種MEMSセンサへの期待は益々高まっています。
当センターでは引き続きNEDOプロにおいて非侵襲で血中成分を計測するBaMBIプロジェクトや、防衛装備庁の委託事業で小型原子時計の基礎研究であるHS-ULPACプロジェクトなどを推進していますが、次の課題として政府のグリーン&デジタルにも応えるべく、広大な空間を測る技術と今まで測ってこなかったものを測るという技術に挑戦しようと考えています。
前者が「環境調和型MEMS(EfriM : Environment friendly MEMS)」と呼ぶもので、インフラ、防災、農業分野において、広く環境に無害なMEMSセンサを配置し、それぞれの分野の課題を解決しようというものです。
後者は人間の5感の次に来る「感情センシング」により、IoH(Internet of Human)システムを構築し、オフィスや作業環境での生産性や快適性、さらには介護分野などに資するフィードバックを与えようというものです。これらも含め当センターでは常に新たな研究開発プロジェクトの提案を目指し、さらなる検討を続けてまいります。
さて、当センターでは通算32回目にあたるマイクロナノ分野の展示会である「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2022」を1月26日から28日にかけて東京ビッグサイトで開催いたします。ここでは、MEMSの過去30年の歴史と今後20年の技術展望をテーマとした創立30周年の記念講演会を実施いたします。是非、多くの皆様にご来場いただき、今後のMEMSの発展のために当センターに対するご指導・ご支援を賜れれば幸いです。
また、皆様方には以下のマイクロマシンセンターの2021年の10大ニュースをご覧いただき、私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。
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MMC/NMEMS 2021年 10大ニュース
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1.2020年以上に厳しかった2021年のコロナ禍の中でも、業務を滞ることなく実施
2020年以上に厳しかった2021年のコロナ禍の中でも、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されるなか、当センターの業務を滞ることなく実施するため、理事会、委員会等をweb、書面により開催しました。 また、職員への感染を防止するため、基本的な感染対策を施しつつ、在宅勤務、時差通勤を実施しました。
2.LbSS、数々の成果を上げて5年半の研究開発が終了、次への展開へ向けて始動
2016年から開始した「超高効率データ抽出機能を有する学習型スマートセンシングシステムの研究開発(LbSS)」プロジェクトが、実証実験でのシステム検証を終え、9月30日をもって終了しました。 また、「NEDO IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」成果報告会では、5年半の研究成果として、13テーマの技術成果資料・デモ動画及び基調講演の公開を実施し、IoT横断プロジェクト全体の成果・普及を図ることができました。
現在は、LbSS研究成果のヒトセンシングへの展開を調査しています。
■ この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の結果得られたものです。
3.「節目の年」2022年を迎えるにあたり、イベントや記念誌を企画・制作、あわせてMEMS技術の歴史と今後20年の進展予測をまとめる
2022年にマイクロマシンセンター設立30周年、MEMS協議会15周年、MNOIC10周年という「節目の年」を迎えるにあたり、セミナーイベントや記念誌の企画・制作を行うとともに、「マイクロマシンセンター産業動向調査委員会」では、MEMS技術の進展の歴史と、今後20年のMEMS関連技術の進展を予測した調査を実施しました。
4.EfriMは開発戦略をまとめて3月に事業終了、SSN研究会「EfriM-WG」を立ち上げ、プロジェクト化に向け本格始動
一般財団法人機械システム振興協会の「令和2年度イノベーション戦略策定事業」の委託事業として実施し、昨年3月終了した「環境調和型MEMS(EfriM*)技術の研究開発に関する戦略策定」の成果を基に、SSN研究会**のWGとして「EfriM-WG」を立ち上げ、15企業、9大学、6研究機関・財団の49名の会員を集め、プロジェクト化に向けた活動を本格始動しました。
* EfriM : Environment friendly MEMS
** SSN研究会:スマートセンシング&ネットワーク
(Smart Sensing & Network)研究会
5.MNOIC設立10年で事業成熟、工程受託コースなど定期利用が定着
2011年に設立し10年経過したマイクロナノ・オープンイノベーションセンター(MNOIC)の利用件数が2021年末で1,300件を超え、産学連携によるマイクロナノ分野のイノベーション実現の場として定着しています。特に近年は、MNOICが研究支援によって開発したサンプルや技術を実用化するために、仕様書に基づいてMNOICの研究員が試作を行う、工程受託コースの利用が急増しています。
6.HS-ULPAC中間を無事終了
防衛装備庁の「令和元年度安全保障技術研究推進制度(JPJ004596)」の委託事業として実施している「量子干渉効果による小型時計用発振器の高安定化の基礎研究(HS-ULPAC*)」の中間評価審査会が11月12日に開催されました。一部新型コロナの影響で中間目標の達成が年度末に延びるものもありますが、ほとんどが中間目標を達成するとともに当初予定していなかった画期的な副次的成果が出ていることを報告し、無事に終了しました。
*HS-ULPAC : High Stability Ultra Low Power Atomic Clock
7.BaMBIが、NEDOステージゲートを受審し、来年度からのフェーズBに向けて検討を開始
NEDOの「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発」の中で、2019年度に採択され、研究開発進めてきたテーマ「血中成分の非侵襲連続超高感度計測デバイス及び行動変容促進システムの研究開発(BaMBI*)」は、この11月2日にステージゲート審査を受審しました。本事業は、フェーズAの委託3年間を経てステージゲートをクリアすれば、その後の2年間はフェーズBの助成事業として実用化に向けて加速していくことになりますが、本テーマはフェーズAの目標を全て達成できる見込みで、審査結果を待つばかりです。
*BaMBI : Non-ivasive Blood analytic Monitor for Behavior Improvement System
8.MEMS関連標準化についてオンラインで国際会議で規格案審議を推進、関係者がIEC1906賞を受賞、新標準化事業の開始など、活発に活動
コロナ禍中、オンラインながらも、5月に「IEC(国際電気標準会議)TC47(半導体分野技術委員会)/SC47E(個別半導体デバイス)WG1(半導体センサ分野)、TC47/SC47F(MEMS分野)、TC47/WG7」、10月に「IEC/TC47 国際標準化全体会議」に出席し、活発な議論を交わし、規格案審議を着実に前進させることができました。また、当センターが取り纏めている標準化活動で活躍して頂いた2名の方が、IEC1906 賞を受賞されました。標準化事業では、経済産業省の委託事業で、「薄膜圧電MEMSデバイスの寿命試験及び多方向折り曲げ信頼性法に関する国際標準化」が採択され、国際規格の開発を開始しました。
9.技術研究組合NMEMS技術研究機構の理事長に、東京都市大学の藤田教授が就任
今仲行一理事長が2021年2月に急逝されました。ご冥福をお祈り申し上げます。
組合の3月に開催された理事会において、東京都市大学の藤田博之教授が理事長にご就任されました。
10.SNIFがNEDOプロジェクトとしては終了するも、将来の実用化へ向け、今後の研究開発は着実に履行
2019年度にBaMBIとともにスタートした革新的センシングのプロジェクト「薄膜ナノ増強蛍光による経皮ガス成分の超高感度バイオ計測端末の開発(SNIF*)」として推進されてきましたが、参加企業の社内体制変更により、残念ながらNEDO受託事業としては2021年度上期までとなりました。ただ、東京医科歯科大学とNMEMS組合で2022年半ばまでフェーズAの研究開発は着実に履行し、将来の実用化への道を繋ぐこととしています。
*SNIF: Skin volatile biosensor based on Nano-Integrated Fluorometry