国際交流

2018年3月 2日 (金)

米国研究開発動向調査

 2018年2月25(日)~3/2(金)に東京大学情報理工学系研究科の下山教授の「空間移動時のAI融合高精度物体認識システムの研究開発」の動向調査と並行して米国西海岸の研究機関を訪問して、米国の研究開発動向の調査を行いましたので、以下にご報告致します。今回調査したのは以下の5機関です。
 1. University of California, San Diego (UCSD)
 2. University of California, Los Angeles (UCLA)
 3. California Institute of Technology (CALTEC)
 4. NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)
 5. Microsoft Research (MSR) 
以下に各訪問先での調査結果を示します。

1. University of California, San Diego (UCSD)
(1)訪問先:Albert P. Pisano (Dean, Jacobs School of Engineering)
            Miwako Waga (Director, International Outreach)
(2)訪問日:2018年2月26日(月)午前
(3)調査結果
・Pisano学部長は元UC, BerkeleyでMEMS研究を初期から牽引してこられたMEMSの大御所です。現在、UCSDのJacobs School of Engineeringの学部長を務めています。
・UCSDのJacobs School of Engineeringは 6つの学科(①Bioengineering, ②Computer Science & Engineering,③Electrical & Computer Engineering, ④Mechanical & Aerospace Engineering, ⑤Nanoengineering, ⑥Structural Engineering)から構成されDigital Futureを目指して以下のテーマに注力して研究開発を行っています。
 -Context-aware robotics
 -Nano for energy and medicine
 -5G and future of communication
 -Wearable sensing and computing systems
 -Cyber and digital security
 -Data science and machine learning
・アメリカのホットトピックスに関して意見交換を行い、以下のような意見が出ました。
 -AIに関してはIBMとUCSDでAI for Healthy Living Centerを立ち上げているとのことでした。
 -医療に関してはDigital Health, Precision Medicine, Personalized Medicineが挙げられるとのことでした。
 -構造物モニタリングに関してはUCSDではサンディエゴ市とスマートシティの一環としてBuilding Structural Monitoringを行っているとのことでした。
 -医療認証に関しては、米国のFDAは世界一厳しいとのことでした。
・Pisano学部長がおられるUCSD Jacobs Hallの入口の写真を写真1に、Pisano学部長室の前で、Pisano学部長との写真を写真2に、和賀所長、Pisano学部長との写真を写真3に示します。

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   写真1 UCSD Jacobs Hall入口     写真2学部長室の前でPisano学部長と

3_ucsd_pisano_2      写真3 学部長室の前で和賀所長、Pisano学部長と

2. University of California, Los Angeles (UCLA)
(1)訪問先:
① CJ Kim (Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
② Verronica J. Santos (Associate Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
③ Tsu-Chin Tsao (Professor, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
④ Jacob Rosen (Bionics Lab Director, Mechanical & Aerospace Engineering Department)
(2)訪問日:2018年2月26日(月)午後
(3)調査結果
① CJ Kim 教授
・CJ Kim教授はMEMS分野の権威で、Kim教授のMicro and Nano Manufacturing Labでは、特に表面張力を利用したマイクロナノデバイスの研究を積極的に行っています。
・UCLAはMedical Centerが近いので、医者との連携は容易であり、共同の研究はしていますが、初期はお金がないので、細々と進めざるを得ないとのことでした。但し、試作品が認められれば、病院は寄付によるフレキシブルな予算があるので、大きなプロジェクトにすることは可能とのことでしたが、コンセプトからは5年程度かかるとのことでした。
・CJ Kim教授室の前で、Kim教授との写真を写真4に、下山教授のKim教授への説明の様子を写真5に示します。

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   写真4 教授室の前でKim 教授と     写真5 Kim教授と下山教授

② Santos准教授
・Santos准教授は把持、触覚、義手、人工刺激、機械学習等の専門家でSantos准教授のBiomechatronics Labでは、人工触診(Artificial haptic exploration)、触覚センサ、把持等の研究開発を行っています。
・海軍の予算で義手の研究を行っているとのことでした。その他遠隔操縦や砂の中の触覚による物体認識や把持のための触覚センサ等の研究を行っていました。
・触覚センサは買い物とUniversity of Washingtonで作ってもらったものを使用しているとのことでした。
・Santos准教授室の前で、Santos准教授との写真を写真6に、写真7に遠隔操縦用双腕マニピュレータ、写真8に人工ハンド、写真9に指の触覚センサ、写真10に実験室での説明の様子を示します。

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写真6准教授室の前でSantos准教授と 写真7 遠隔操作用双腕マニュピュレータ

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    写真8 人工ハンド         写真9 指の触覚センサ

10_uccla_santos_2          写真10 実験室での説明の様子


③ Tsao教授
・Tsao教授はダイナミックシステムのモデリングと制御の専門家です。
・アメリカのホットトピックスのキーワードの一つとして、Co-Robotが挙げられるとのことでした。Co-Robotは人間とロボットとの物理的干渉に関する研究です。その場合には触覚センサが重要になるとのことでした。
・もう一つのキーワードとして、 Distributed Sensingが挙げられるとのことでした。Distributed sensingではデータ処理のためAIが必要になるとのことでした。
・アメリカでは義手・義足の研究も負傷した帰還兵のニーズが高く、保障の観点からも盛んとのことでした。
・UCLAではMedical Centerが近いので、医療応用の研究も盛んとのことでした。NIHでは手術用ロボット等治療に係るテーマは良いですが健康に関してはあまり取り上げてもらえないとのことでした。
・Tsao教授室の前で、Tsao教授との写真を写真11に示します。

11_ucla_tsao           写真11 教授室の前Tsao教授と


④ Rosen教授
・Rosen教授は医療用ロボット(手術用+リハビリ用)や遠隔操作の専門家でUCLAのBionics LabのDirectorです。
・Rosen教授に研究室を案内してもらい、アメリカのホットトピックスのキーワードについて討議しました。
・手術用ロボットでは力制御が重要であり、狭いところでも作業できるように、狭いところにマウントできる触覚センサの開発がMEMSに期待するところとのことでした。
・現状はダビンチが市販されている唯一の手術用ロボットですが、最近2社が新たに製品化をしようとしているとのことでした。UCLAではリサーチラボで使うオープンプラットフォームの手術用ロボットの研究開発をしているとのことでした。
・ダビンチはS/Wは公開されていないので、研究開発用としてH/W,S/Wともオープンソースの手術用ロボットの開発は意味があるとのことでした。
・手術用ロボットのFDA認可には、$100million必要ですが、市場は$30billionと言われており、認可にお金がかかっても十分事業として成り立つとのことでした。
・手術用フォースセンサとしては直径5mmに収める必要があるとのことでした。但し、長さ方向に制限はないとのことでした。鉗子の先端に付けるためには幅2mm、長さ2~4mmに収める必要があるとのことでした。
・鉗子は$1200で10回の使用で交換するとのことでした。これは小型のプーリー等が劣化・破損するためとのことでした。これに適用するためにはセンサのコストは安くないと使われないとのことでした。
・この分野のキーワードとしては、Automated Surgeryが挙げられるとのことでした。現状は遠隔操作ですが、場所、縫合数等を与えるだけで自動的に手術をしてくれることが最終目標とのことでした。機械学習等もこの中に含まれるとのことでした。
・現在はサブタスクレベルでのトライアルがなされているレベルであるとのことでした。
・ハンドは2本指で全作業の95%が実現できるとのことでした。3指あれば100%の作業が実現できるとのことでした。人間が5本指なのは冗長性を担保するためとのことでした。
・人間の5指は長さが違うのに、曲げるとそろうのはスライド機構が備わっているためであるとのことで、スライド機構が備わったハンドを作られていました。
・腱機構は先端部を小さくはできますがプーリー部が壊れやすいとのことでした。
・Rosen教授室の前で、Rosen教授との写真を写真12に、写真13に手術用ロボットの全景写真、写真14に手術用ロボットの手先部拡大写真、写真15に鉗子部、写真16に手術ロボット操作コンソール部、写真17に指マスター部を示します。

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  写真12教授室の前でRosen教授と    写真13 手術用ロボット全景写真

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  写真14 ロボット手先部         写真15 鉗子部

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   写真16 操作コンソール部           写真17 指マスター部

3. NASA JPL
(1)訪問先:Dr. Won Soo Kim
(2)訪問日:2018年2月27日(火)午前
(3)調査結果
・NASA JPLのWon Soo Kim博士を訪問し、von Karman Visitor Center、Space Flight Operations Facility、the Spacecraft Assembly Facility、In-situ Instrument Laboratoryを案内して頂き、火星探査車を中心に説明を受けました。
・火星探査車としては、1997年にマーズ・パスファインダーに搭載され着陸に成功したソジャーナ、2004年にマーズ・エクスプローレーション・ローバに搭載され、着陸に成功したスピリットとオポチュニティ、2012年にマーズ・サイエンス・ラボラトリーに搭載され、着陸に成功したキュリオシティがあるとのことでした。
・マーズ・エクスプローレーション・ローバまではバルーンに入れて火星に落下させましたが、マーズ・サイエンス・ラボラトリーでは重量が重いため、キュリオシティをワイヤーで吊って、地表面に到達後すぐにワイヤーを切って逆噴射でマーズ・サイエンス・ラボラトリーを遠ざける方法に変更したとのことでした。
・火星探査車には種々のセンサが搭載されているとのことでした。キュリオシティにはオポチュニティの10倍の化学探査機器が搭載されており、火星が生命を保持する可能性について調査しているとのことでした。
・ミッションを成功させるため、デバイス、コンポーネント、システムレベルでの耐久性評価を行っているとのことでした。
・写真18にオペレーションルーム入口、写真19に衛星組立て工場の入口、写真20にKim博士の居るIn-Situ Instrument Labの入口、写真21にソジャーナ(右)とオポチュニティ(左)の模型、写真22にキュリオシティの模型、写真23にキュリオシティの模型前でのKim博士と下山教授を示します。

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写真18 オペレーションルーム入口  写真19 衛星組立て工場の入口

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写真20 In-Situ Instrument Lab入口   写真21オポチュニティ(左)とソジャーナ(右)

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   写真22  キュリオシティ模型         写真23 下山教授とKim博士

4. CALTEC
(1)訪問先:Yu-Chong Tai (Executive Officer and Professor, Medical Engineering)
(2)訪問日:2018年2月27日(火)午後
(3)調査結果
・Tai教授はMEMSの大御所の一人ですが、15年くらい前からMEMSそのものの研究から医療用MEMSに研究を集中させ、役に立つMEMS の開発を行っているとのことでした。
・アメリカではNIHが医療用で大きな予算を出しており、有望なテーマとしては癌治療や心臓病にかかわるものがあるとのことでした。
・また、DARPAでは1年単位の契約で有望なものは1年単位の更新が基本ですが、NIHでは1年、2年、3年、4年、5年といった種々の枠組みがあり、成果をだせば延長可能で、Tai教授は5年ものを継続させ20年研究開発しているものもあるとのことでした。
・FDAの認可をとるのは大変でコストもかかりますが、認可されれば逆にFDAが守ってくれるので、逆にメリットになっているし、米国では医療用の市場は$400billionあり、他の分野より大きいし、また数はそれほど出さなくても利益率の高い商売ができるとのことでした。
・電気・電子の世界は、数はでますが、コストも下げられ、利益率も悪いし、60年前にトップ60に入っていた企業で今もトップ60に入っているのは3社だけですが、医療は60社がすべてそのまま生き残っているので、医療は非常に安定した業界であるとのことでした。
・VR、ARはこれから伸びるとの意見でした。また、VR、AR絡みでOptical MEMSはまたブームになる可能性はあるとのことでした。
・ビジョンに関してはプライバシーを侵害するものは受入れられないので、注意する必要があるとのことでした。グーグルグラスも当初一般用に考えていたために、撤退を余儀なくされ、最近医療用等の特定分野に限定することで復活したとのことでした。米国では法律でプライバシー保護がなされるので、プライバシーを侵害するものは注意が必要とのことでした。パーソナルユースにするか公共で使うものに関してはホームランドセキュリティにかかわるものしかダメとのことでした。
・IoTに関しては、民生品の分野で有望との見解でした。
・エネルギ分野に関しては、米国では昔はDOEから活発な国の支援が行われましたが、シェールオイルが出てきてからは、米国ではエネルギ関連の予算はほとんどなくなったとのことでした。但し、日本や台湾のようにエネルギを他国に依存しているところは別かもしれないとのことでした。
・MEMSの産業化は、信頼性、再現性等が満足されなければ、無理だとのことで、産業化を考えるにははじめからこれらを考慮する必要があるとの見解でした。
・クリーンルームの前で、Tai教授との写真を写真24に示します

24_caltec_2        写真24 クリーンルームの前で、Tai教授と

5. Microsoft Research
(1)訪問先:
Research Program Managerの公野氏にアレンジして頂き、下記4名の研究者とディスカッションを行いました。
①Yutaka Suzue, Principal Software Development Engineer
②Sing Bing Kang, Principal Researcher Interactive Visual Media
③Gang Hua, Research Manager Machine Perception and Cognition Group
④Sudipta Sinha, Researcher, Aerial Informatics and Robotics (AIR) Group
(2)訪問日:2018年2月28日(火)午後
(3)調査結果
① Dr. Yutaka Suzue
・Dr. Suzueはペッパー、HSR等のロボットを使って、エンタープライズとしてどんなことができるかのシナリオつくりが仕事とのことでした。
・CES (Consumer Electronics Show)ではスマートスピーカを中心とするホームIoTがホットだったとのことでした。
・会議室で、公野氏、鈴江氏への説明の様子を写真25に示します。

25_msr__2       写真25 会議室で公野氏、鈴江氏への説明の様子

② Dr. Sing Bing Kang
・Dr. Kangの研究テーマはエンハンストビジョンやシネマグラフです。360℃カメラの映像をある人が興味のあるものを中心に再構築して、表示させる技術等を開発していました。
・会議室で、Dr. KangとDr. Huaとの写真を写真26に、Dr. Kang、Dr. Hua、公野氏との写真を写真27に示します。

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 写真26 Dr. Kang,Dr. Huaと  写真27 Dr. Kang,Dr. Hua,公野氏と

③ Dr. Gang Hua
・Dr. HuaのグループではVision Analysis, Machine Reading, Machine Learningを研究しているとのことでした。
・Dr. HuaはStyle Transferの研究で、ある絵を別の特徴を持つ絵に変えたり、人の表情を変えたりする研究を行っていました。
・ホットトピックスのキーワードとしては、Co-Robotがあるかもしれないとのことでした。

④ Dr. Sudipta Sinha
・Dr. Sinhaは3Dコンストラクションやステレオマッチング、Mixed Reality、AR、VRの研究を行っていました。
・また、HoloLensの開発を行ったとのことでした。
・キネクトやXBox、Bing検索等がMicrosoft Researchから製品化されたとのことでした。
・会議室で、Dr. Sinhaとの写真を写真28に示します。

28_msr_sinha_2           写真28 会議室でDr. Sinhaと

          (一般財団法人マイクロマシンセンター 武田宗久)

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2018年2月16日 (金)

2018 第24回「国際マイクロマシンサミット」開催のご案内

マイクロマシンサミットは、年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/ナノテクノロジーに関する課題や展望につき意見交換する場です。日本の提案により平成7年3月に京都で開催されたのが始まりで、以後、各国持ち回りで開催されています。これまでオーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、韓国、シンガポール、スイス、台湾、イギリス、米国、ベネルクス、ノルディク、ラテンアメリカ、地中海沿岸地域の国々、およびロシアが参加し、各国のマイクロマシン/MEMSやナノテクの取組状況と課題、ならびに世界の産・学研究機関での最先端の研究成果等の発表がなされ、またその討議が行われました。

 2018年は5月14日(月)から5月16日(水)にアルゼンチンのブエノスアイレス(Buenos Aires)で開催されます。
 2014年(第20回)のブラジル・サンパウロの開催のあと南米での2回目の開催となり、今回のトピックスは、"Micro/NanoSystems and Technologies for Agro food and Environmental" です。
オーガナイザーは、FAN (Argentinean Nanotechnology Foundation) のDaniel Lupi所長となります。

2018summit_hp_9

 今回も、日本代表団を構成し、参加を予定しております。マイクロマシンセンターの会員の皆様はご参加いただけます。世界のマイクロマシン/MEMSやナノテクに関する情報収集や意見交換できるまたとない機会ですので、ぜひご参加いただきたくご案内いたします。

サミットの詳細は以下のURLを参照ください。
https://www.mms2018.org/

お問い合わせ先:
  一般財団法人マイクロマシンセンター/MEMS協議会事務局
   国際交流担当 三原 孝士
   〒101-0026東京都千代田区神田佐久間河岸67 MBR99ビル6階
   TEL: 03-5835-1870  FAX: 03-5835-1873
   e-mail:  t_mihara@mmc.or.jp

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2018年1月29日 (月)

国際会議 IEEE MEMS2018 参加報告

 2018年 1月 22日~25日の 4日間にわたり英国・北アイルランド・ベルファストで開催された、MEMS関連の主要国際会議であるIEEE MEMS2018に、センサ・MEMSデバイスの標準化のための技術調査の目的で参加しました。


会場外観(英国・北アイルランド・ベルファスト、ウォーターフロント)


会場メインホール

 学会のオープニングで公表されたデータによりますと、参加者数は600人で、投稿論文数675件、採択論文数346件、採択率51%でした。採択論文の内訳は、口頭68件、ポスター278件。採択論文の国別件数順位は、1位米国、2位日本、3位中国、4位韓国、5位台湾、6位ドイツ・オランダ、8位スイス・英国となっております。採択論文のカテゴリ別件数割合(学会が公表した簡易分別の数字)は、以下に示す表の通りでした。


採択論文のカテゴリ別件数割合(学会が公表した簡易分別の数字)

 プレナリー招待講演は以下の4件であり、いずれの講演も示唆に富んだ感銘深い内容でありました。
  • 藤田博之教授, 東大, “FROM WOW TO WORK: CYCLES OF MEMS EVOLUTION”
  • Dr. M. Steffen, IBM, “EARLY APPLICATIONS OF QUANTUM COMPUTERS”
  • J. Cooper教授, Univ. of Glasgow, “MICROSTRUCTURES TO SHAPE ACOUSTIC FIELDS AND CREATE COMPLEX MICROFLUIDIC FLOWS”
  • Dr. F. Laermer, Bosch, “MEMS AT BOSCH – INVENTED FOR LIFE”

 3日目1月24日の夜には、かの有名な英国客船タイタニック号がベルファストで造船されたことから沈没事故から100年となる2012年にベルファストにオープンしたタイタニック博物館で、学会主催のバンケットが開催されました。参加者一同がタイタニック博物館の展示を見学した後、ウエルカムドリンク、その後にバンケットにうつるという盛大な会でございました。


バンケット会場 タイタニック博物館外観


バンケットの様子

 MEMS分野における多岐の技術領域に渡る充実した内容の論文が数多く発表され、活発な議論が行われた、大変有意義な学会でありました。マイクロマシンセンターでは、「国内外技術動向調査」という取り組みとして、技術進歩が著しい国内外のマイクロマシン/MEMS分野等の研究動向、技術動向を的確に把握するため、MEMS分野の著名な国際会議等をターゲットにした定点観測的な調査を例年行っております。MEMS2018もこの調査の対象学会であり、本分野の有識者から構成される国内外技術動向調査委員会の委員の方々により、学会の発表内容の調査が行われ、報告書に纏めております。従って、今回のMEMS2018で発表された技術の詳細・分析結果については、この「国内外技術動向調査」の報告書で改めて報告するため、本ブログでは、本ブログ執筆者が今回の学会参加で調査を行ったIoT関連エネルギーハーベスティング技術に関する幾つかの論文紹介に留めさせていただきます。すなわち、エネルギーハーベスティング技術として1つの口頭セッションが設けられ、4件の発表がありましたので、その論文の内容を紹介します。

 東北大の桑野教授研究室H. H. Nguyen氏からは、“DEVELOPMENT OF HIGHLY EFFICIENT MICRO ENERGY HARVESTERS WITH MgHf-CODOPED AlN PIEZOELECTRIC FILMS”というタイトルで、AlNにMgとHfを添加したMgHfAlNにより、圧電型振動エナジーハーベスタにおけるパワー密度最高値を更新(34.9mWcm-3g-2)した結果が報告されました。

 英国ケンブリッジ大のY. Jia氏からは、“AUTOPARAMETRIC RESONANCE IN A PIEZOELECTRIC MEMS VIBRATION ENERGY HARVESTER”というタイトルで、圧電型振動エナジーハーベスタにおいて、主副カンチレバーの自動パラメトリック共振により、同一デバイスの直接共振時に比べ2倍以上の高出力を実現し、出力電力密度にて現状技術比で約1桁高いレベルが得られておりました。

 東大の鈴木雄二教授研究室の三好先生から、“LOW-PROFILE ROTATIONAL ELECTRET GENERATOR USING PRINT CIRCUIT BOARD FOR ENERGY HARVESTING FROM ARM SWING”というタイトルで、回転型エレクトレット振動発電エネルギーハーベスタの技術の発表がありました。腕に装着するエネルギーハーベスタを実際に試作し、1.45m/sの歩行速度での歩行時の腕振りで80μWの発電が得られることを実証しました。さらに、今回の口頭発表時、実際に、試作したエネルギーハーベスタを腕に装着し、発電デモを実施されていました。

 韓国Kwangwoon大のM. Salauddin氏の“A FREE MOTION DRIVEN ELECTROMAGNETIC AND TRIBOELECTRIC HYBRIDIZED NANOGENERATOR FOR SCAVENGING LOW FREQUENCY VIBRATIONS”というタイトルで、摩擦発電と電磁誘導発電のハイブリッド発電を提案、ならびに、試作結果の報告がありました。当日、代理発表されたKwangwoon大J. Park教授は、エネルギーハーベスタ分野のIEC(国際電気標準会議)国際標準化におけるキーマン(エネルギーハーベスタ分野のワーキンググループであるIEC/TC47/WG7の主査の一人)であり、2017年10月のIECプレナリー会議@ウラジオストクや2017年11月の国際会議PowerMEMS@金沢でのスクール(ショートコース)招待講演で来日された際にお会いして以来の再会でした。

 IoTセンサの自立発電動作化を実現し、センサ動作・センサ制御・そのセンサ出力の無線伝送をも、自立電源動作させるためには、各部分の低消費電力化の取り組みとともに、エネルギーハーベスティング技術は非常に重要な技術分野です。引き続き、技術の進展を追いかけていきたいと思います。

 前述のように、当センターでは、「国内外技術動向調査」の取り組みの中で、本分野の有識者から構成される委員の方々により、本学会MEMS2018での発表内容詳細の調査・分析を今後進めていきます。平成30年5月頃、発行致しますので、ご参照いただければと存じます。
         
平成30年1月29日
マイクロマシンセンター 調査研究・標準部
大中道 崇浩

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2018年1月 5日 (金)

「新年のご挨拶」

新年あけましておめでとうございます。

 本年はSociety5.0の実現を世界に打ち出していくための新たな産業・社会の在り方として、「コネクテッド・インダストリーズ」に大きな注目が集るとされています。特に、製造現場、自動走行、健康・医療・介護等の現実の「リアルデータ」を巡る競争が激しくなると予想されていますが、その「リアルデータ」を収集する最前線にMEMSを中心とする多様なセンサが位置しています。従いまして、ナノ・マイクロ技術分野における研究開発や普及促進等を長年担ってきた私どもマイクロマシンセンターの責任はさらに重くなっていくものと考えております。

 仏のヨール社によれば、世界のMEMS市場は消費者用や自動車用がけん引し、2017年の132億ドルから2022年には254億ドルと年率14%で伸びるとされています。MEMSデバイスとしては、スマホの4G/5G 化の進展によりMEMSフィルタの伸びが大きく、従来からの慣性センサ、圧力センサ、ジャイロなどを凌駕していくと見られます。

 このような中、当センターでは2000年代に注力したMEMS技術そのものの研究開発から、2010年代にはセンサネットワーク技術にシフトし、現在は道路やライフラインのインフラモニタリングに加えて、ファクトリやプラントのスマートセンシングの研究開発に注力しています。そして、昨年は経産省・NEDOがコネクテッド・インダストリーズの重点分野として推しているロボティクスや自動走行の鍵となるAI融合高精度物体認識システムの研究開発に着手しました。

 また、それらの研究開発を支えるMEMS試作ファンドリとして、7年前に開設したつくばの「マイクロナノオープンイノベーションセンター(MNOIC)」も今や中小・ベンチャーを含む40社以上からの研究や工程の受託により、フル稼働の状況にあります。さらに設備整備や技術向上に努めて、我が国のMEMS開発需要に応えてまいります。

 そして、上述の成果などを公開する場として、昨年、MEMSセンシング&ネットワークシステム展を刷新して、初めてCEATECと同時開催とし、5万人を超える来場者の方々にお出でいただくことができました。本年はさらにCEATECやAll about Photonics展とのシナジー効果を高め、IoTシステム、さらにはコネクテッド・インダストリーズの最先端技術展としてのプレゼンスを高めてまいります。

 当センターとしましては、本年もMEMS・スマートセンシング技術の開発や普及に真摯に取り組み、我が国のコネクテッド・インダストリーズの推進に微力ながらも貢献してまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。

 皆様方には以下の10大ニュースをご覧いただき、このような私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。

続きを読む "「新年のご挨拶」"

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2017年10月 9日 (月)

スマートセンシング&ネットワーク展2017」 国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム及びスマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会公開シンポジウム(2017年10月6日)の開催報告

 2017年 10月 4日(水) から6日(金)まで幕張メッセで開催された「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」は、3日間の開催期間を終え、盛況の内に閉会しました。来場された皆様方に御礼申し上げます。特に、最終日である6日(金曜日)は、午後から雨との予報にもかかわらず多くの来場者がありました。

 最終日は、国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム及びスマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会公開シンポジウムが12:30から16:40まで、国際交流委員長であり、スマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会の会長でもある下山勲教授に司会をお願いして開催され、約100名の沢山の方々にご参加頂きました。

 本報告書では、セッション1の国際セッションに限って報告致します。

Session 1 International Session   Latest Trends of IoT / MEMS
(セッション1 国際セッション IoT、MEMS分野の最新動向)

(1) Sensors and computing for a safe IoT world
(CEA LETIにおけるIoT関連技術最前線)
Dr. Marc Duranton, CEA-LETI(France), CEA Fellow, Architecture,
IC Design and Embedded Software Division


 MEMS関連の研究所としては世界最大規模の施設と、研究員を擁するフランス・グルノーブルのCEA-LETIの半導体・組み込みソフト部門のMarc Duranton博士から、CEA LETIにおけるIoT関連技術最前線と題する講演がありました。 LETIでは幅広い研究領域や産業界との共同研究案件がありますが、最近ではMEMS領域からナノテク領域へ活用範囲を広げ、かつ産業界が魅力を感じるテーマに取り組んでいます。その中の一つは数百ナノメートルのナノワイヤをセンサの検出素子として使う技術で、既に化学センサや共振器等に使われているとのことです。

(2)MEMS and NEMS Technologies for a Smart World
Dr. Mario Baum(Germany), Fraunhofer Institute for Electronic Nano Systems ENAS


 産業界のユーズに基づいた研究開発を積極的に行うことで日本の産総研のモデルにもなっている、ドイツのFraunhofer Institute、その中でもMEMSを中心に活動を行っている、ChemnitzにあるENASのMario Baum博士からMEMS and NEMS Technologies for a Smart Worldと題する講演がありました。今回の発表は、フランフォーファ研究所の紹介と、世界各地との連携、自動車や工業用スマートシステムに使われるスマートセンサ、健康・医療領域に使われるスマートセンサに関する紹介がメインでした。面白いトピックスとしては、Sens-o-Spheresと言う、直径8mmの球に、センサや信号処理、ワイヤレスバッテリ、無線通信を詰め込んで、工場の様々なプロセスコントロールに使う概念が示されました。

(3) SiTime MEMS Oscillator Technology
(SiTime社のMEMS発振器の最新技術)
Mr. Hideki Yoneda, General Manager, Corporate Strategy, Megachips-Corporation
(株)メガチップス 新事業本部 米田 秀樹


 長い間、タイミングデバイスのデファクトになっていた水晶発振器を置き換える可能性が出てきたシリコン共振器を開発・製造しているベンチャー企業・SiTimeが開発したシリコンタイミング素子に関して、M&Aを行った日本のメガチップス社の米田 秀樹氏からSiTime社のMEMS発振器の最新技術)と題する講演がありました。シリコンを用いた発振器(共振型)は材料のヤング率の温度依存性や熱膨張係数によって、周波数の強い温度依存性がありますが、それを材料&プロセス技術(構造)や、高精度に温度を計測して補正をかけることで水晶発振器を凌ぐ性能を確保し、またシリコン半導体に組み込みことも可能であることを強調されていました。

(4)Metal Oxide Gas Sensing Material and MEMS Process
Mr. Collin Twanow, Micralyne Inc.(Canada), Vice President of Technology


 カナダのアルバータ地方には一般財団法人マイクロマシンセンターと国際アフィリエートになっているナノマイクロ研究所であるACAMPや、MEMSファンドリも行っているMEMS研究開発型の企業Micralyneをはじめ、沢山のMEMS関連企業があり、既に何年にも渡って国際交流を行っています。今回はMNOICをはじめ既に何回もマイクロマシンセンターを訪問頂いている、MicralyneのCollin Twanow副社長からMetal Oxide Gas Sensing Material and MEMS Processと題する講演がありました。大気汚染や環境問題に対する解として、環境センサに注目され、特に大気中の一酸化炭素や、VOC(揮発性有機物)を高感度で検出可能なセンサが重要とされ、最近Micralyneで開発中のマイクロホットプレート型のMOS(金属酸化物)センサの紹介がありました。
国際交流担当 三原 孝士

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2017年10月 6日 (金)

「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」、盛況の内に閉幕

                  
                  

  2017年 10月 4日(水) から6日(金)まで幕張メッセで開催された「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」は、3日間の開催期間を終え、盛況の内に閉幕しました。来場された皆様方に御礼申し上げます。特に、最終日である6日(金曜日)は、午後から雨との予報にもかかわらず多くの来場者がありました。
   最終日は、国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム及びスマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会公開シンポジウムが12:30から16:40まで開催され、多くの聴衆が熱心に聞き入っておりました。
                  
   以下は、シンポジウムでご講演頂いた講師の方々です。

                  

                  CEA LETI Fellow Dr. Marc Duranton
                  
                  

                  Fraunhofer Institute Dr. Mario Baum
                  
                  

                  メガチップス 米田秀樹氏 
                  
                  

                                                     Micralyne Inc. Mr.Collin Twanow
                  
                  
                  

                  東京女子医大 村垣善浩教授
                  
                  

                  首都大東京 五箇繁善准教授
                  
                  

                  産総研 山本 淳グループ長
                  

    今回ご来場頂きました皆様に御礼申し上げます。
                  
    来年は10月17日(水)~19日(金)に今回と同様、幕張メッセにおいて、CEATEC JAPANと同時開催を予定しております。
                  
    また来年もご来場頂けますよう関係者一同お待ちしております。
                  
                  
                  

                  

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2017年5月23日 (火)

2017年 第23回「国際マイクロマシンサミット」バルセロナ・スペイン開催報告

 マイクロマシンサミットは、年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/ナノテクノロジーに関する課題や展望につき意見交換する場です。日本の提案により平成7年3月に京都で開催されたのが始まりで、以後、各国持ち回りで開催されています。

 2017年は5月15日(月)から17日(水)までスペインのバルセロナで開催されましたので速報として報告致します。今回のトピックスは、” Micro and Nano Systems for Smart Cities applications”です。スペインは、関連研究所にセンサやMEMS,無線、半導体や集積回路、物性やナノ材料と言った複数の専門分野の研究者が同居する研究所が多く、多数の専門領域の融合が進んでいるのが特徴です。今回のオーガナイザーは、CNM-CSIC(National Microelectronics Center of Barcelona)の所長Carles Cané教授でした。

 今回は、欧州での開催で参加者も多く、21の地域から64名のデレゲイト、更にスペインから8名のオブザーバ参加もあり、比較的規模が大きいと感じました。特に、今まで何年か不参加の期間があった、イギリスやカナダ、オーストラリア等の復帰、更にアイルランドや東欧の新規の参加国もあったのが特徴です。第1日目はカントリーレビューで各国のスマートシティに関する話題提供があり、日本からも再生可能エネルギーの有効利用を目指すスマートコミュニティやインフラモニタリング関係の国家プロジェクトの話題提供がありました。また1日目の夕刻はラウンドテーブルとして、スペインにてスマートモニタリングを実際に実行している公的研究者や、企業による課題の報告や議論もありました。

 2日目は、個別話題の講演会で、23件の発表とMEMS企業を中心とするスマートシステムのラウンドテーブルがありました。日本からの発表は国際標準化の重要性と各国の参加を呼び掛ける内容でした。

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 図1 サミット会場の様子

 また3日目の技術ツアではカタルーニャ・バイオエンジニアリング研究所(IBEC)と、HP(hewlett packard)の研究開発施設への訪問がありました。IBECでは、最新のナノバイオ研究の研究紹介、またHP研究所ではインクジェット方式による最新の3Dプリンター技術や製品の紹介がありました。
      (国際交流担当 三原 孝士)

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 図2 HP研究所での3Dプリンター

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 図3 IBECでのナノバイオモジュール

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2017年3月 9日 (木)

2017年 第23回「国際マイクロマシンサミット」開催のご案内

 マイクロマシンサミットは、年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/ナノテクノロジーに関する課題や展望につき意見交換する場です。日本の提案により平成7年3月に京都で開催されたのが始まりで、以後、各国持ち回りで開催されています。これまでオーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、韓国、シンガポール、スイス、台湾、イギリス、米国、ベネルクス、ノルディク、ラテンアメリカ、地中海沿岸地域の国々、およびロシアが参加し、各国のマイクロマシン/MEMSやナノテクの取組状況と課題、ならびに世界の産・学研究機関での最先端の研究成果等の発表がなされ、またその討議が行われました。昨年は東京で開催されて16ヵ国から51名のデリゲートが参加し、「高齢化社会におけるセンサ・MEMS」をテーマに、様々な話題が報告されました。
 
 2017年は5月15日(月)から17日(水)までスペインのバルセロナで開催されます。今回のトピックスは、” Micro and Nano Systems for Smart Cities applications”です。スペインは、関連研究所にセンサやMEMS,無線、半導体や集積回路、物性やナノ材料と言った複数の専門分野の研究者が同居する研究所が多く、多数の専門領域の融合が進んでいるのが特徴です。

 
 また今回のオーガナイザーは、CNM-CSIC(National Microelectronics Center of Barcelona)の所長Carles Cané教授で、サミットには通算で14回参加されている古参のお一人です。詳細は以下のURLを参照ください。
 http://mms2017.imb-cnm.csic.es/
 
 今回も、下山勲東京大学教授を団長として日本代表団を構成し、参加を予定しております。マイクロマシンセンターの会員の皆様はご参加いただけます。世界のマイクロマシン/MEMSやナノテクに関する情報収集や意見交換できるまたとない機会ですので、ぜひご参加いただきたくご案内いたします。

 お問い合わせ先
  一般財団法人マイクロマシンセンター/MEMS協議会事務局
   国際交流担当 三原 孝士
   〒101-0026東京都千代田区神田佐久間河岸67 MBR99ビル6階
   TEL: 03-5835-1870  FAX: 03-5835-1873
   e-mail:  t_mihara@mmc.or.jp



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2017年2月20日 (月)

第5回海外調査報告会を盛況に開催

   第5回MEMS協議会海外調査報告会を1月30日に新テクノサロンで開催し、約50名の方にご参加いただきました。このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の最新状況について国際交流事業の一環として報告するものです。毎年のように北米や欧州を中心に学会等のイベント、海外の大学や研究施設、関連企業の訪問見学の報告を行ってきましたが、今回は前回に引き続き、欧州の橋梁モニタリングに関連する報告を、特別報告として企画致しました。       

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写真1 会場の様子
                  

  MEMS協議会事務局長・長谷川英一からの主催者挨拶のあと、最初の報告は特別報告として「欧州における橋梁モニタリングの現状と動向」と題して技術研究組合NMEMS技術研究機構の中嶋正臣氏から、エジンバラ大学をはじめとした研究機関やConnect  Plus Serviceといったインフラ管理のコンソーシアムとの橋梁モニタリングに関するディスカッションや、Forth Bridge及びForth  Road Bridge等の橋梁での現地調査の報告がありました。最初にNMEMS技術研究機構が中心になって推進している国家プロジェクトであるRIMS:ROAD  Infrastructure Monitoring Systemの説明がありました。これは最先端MEMS技術を駆使して開発されたスーパーアコースティックセンサと言う高周波を発するアコースティックエミッションから低振動まで広い帯域を網羅するスーパセンサや、大面積センサ等の橋梁モニタに特化したセンサデバイスを使った社会インフラモニタリングを行う活動です。 今回の目的としては、日本より先行していろいろな活動が行われている欧州(イギリス、オランダ)の橋梁モニタリングの現状を把握するため、調査団を結成して現地橋梁モニタリング現場の調査を実施するとともにRIMSプロジェクトの広報を図るとのことでした。                   

 調査場所としては、イギリス、ロンドンのConnect Plus Service(CPS)とXEIAD Ltd.、道路保守点検会社であるCPSおよび土木コンサルタント(XEIAD)、M25およびQueen Elizabeth II Bridge(QE2)、光ファイバ等センシング技術、イギリスのモニタリング技術の産業化実態調査のためのEpsilon Optics Ltd調査、エジンバラ大学(イギリス、エジンバラ)にてコンクリート等のインフラ主要構造部材の非破壊検査技術の権威であるProf.  Mike Fordeとの意見交換、イギリス、エジンバラでの代表的な橋梁であるForth BridgeおよびForth Road Bridge調査、特にForth Bridgeのモニタリング実態調査、さらにオランダ、デルフト/ロッテルダムのAEセンサを用いたAE挙動の評価のためのTNOの調査、またVan-Brienenoord Bridgeのモニタリング計測橋梁調査と極めて大規模なものになっています。          

 イギリスにおける、橋梁モニタリングの手段は、光ファイバによる歪センサ計装を使ったものです。とくに英国Epsilon Optics社は、構造設計と光ファイバ計装技術を組み合わせることで、土木、海洋、航空宇宙等の様々な分野へモニタリング技術を提供しています。同社は、光ファイバセンサ自体の開発は行っていないが、光ファイバセンサに対するパッチのアセンブリ等を様々な分野に実装することで、モニタリングに関する幅広いノウハウを有していることを強みとしているようです。その実績は、イギリス国内にとどまらずグローバルなもので、対象も橋梁やトンネルにおけるクラックのモニタリング、ヨットのキールや飛行機の着陸装置への負荷のモニタリング等幅広いようです。          

 また訪問したエジンバラ大学のProf. Mike Fordeは、コンクリートなどのインフラ主要構造部材の非破壊検査技術の権威であるとともに、超音波トモグラフィ、アコースティックエミッションの世界的先駆者とのことです。Journal                   Construction and Building MaterialsのChief Editorを務めている他、RILEM(International Union of Laboratories and Experts in Construction Materials, Systems and Structures)、BINDT(British Institute of Non-Destructive Testing)とACI(American Concrete Institute)等の重要な機関で主査を務めています。                   

 視察した英国のForth Bridge(フォース鉄道橋)は、1890年に完成した全長2530mのカンチレバートラス橋であり、包括的な構造モニタリングシステムが2002年に実装され、リニア変位変換器、回転ポテンショメータ、傾斜計、温度センサとひび割れ検知を含む様々なセンサにより、支承可動部の動きに加え、中央タワーおよびスパン接続部の3軸方向(垂直・水平方向および回転)の動きを検知できるとのことです。               

 最後に中嶋氏のまとめとして、「イギリス、オランダでは幹線道路の長大橋を中心に複数のセンサを用いた常時モニタリングを実施して、メンテナンスの効率化を図っている。但し、使われているセンサは有線のセンサであり、膨大な配線が施設されていた。既存のセンサ生データをそのまま常時モニタリングしているため、データ量が膨大になる、信頼性のある無線システムがないことから確実な有線センサを用いているのが現状であり、無線化や自立電源化に関しては、現場では未だ適用されていない。日本視察団を代表して下山教授からRIMSの概要を説明したところ、RIMSプロジェクトで開発しているセンサに関しては訪問したすべての機関で非常に興味をもって頂けた。」と報告を終えました。

                   

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写真2 中嶋氏から報告
                            

 続いて、「米国のMEMS産業動向」と題してMEMS協議会 今本氏から10月31日~11月2日に米国・フロリダで開催されたIEEE Sensors 2016、また米国MEMS & Sensors Industry Group主催で、2016年11月9日(水)~11月11日(金)に米国カリフォルニア州スコッツデールにて開催されたMEMS & Sensors Executive Congressへの参加報告がありました。この会議は毎年開催され講演やパネルディスカッションといったフォーマルな行事と、休憩時間等の空き時間でのインフォーマルな会話を通して、情報交換や人的なネットワークを形成することにより、MEMS関連産業のネットワーク構築が可能であることが特徴です。研究開発そのものの発表は少なく、事業化をどう促進するかが主題の会議となっている真に産業化のために推進会議になっています。

 またこの2つの大きな会合の間に、フロリダ大学(Yoon教授)・ジョージア工科大学(Ayazi教授・Tentzeris教授)・BSAC(Pister教授)にも訪問し、専門的な領域に踏み込んだ報告になっています。                

 まずIEEE Sensors 2016 参加報告では、日本からの発表が急増し、日本からの参加人数も 2013年の8人程度から2016年では30人                   以上、特にEnergy Harvesterのセッション追加されたこと、また企業からの発表が非常に少ないと言う特徴を持っています、                   

 MEMS & Sensors Executive Congress では、Trillion Sensorを巻き込み、途中でパラレルセッションになったためか、大学や国の研究機関が増えた感じがするが、一方しか聞けないのが残念とのことです。2013年には日本から2名の参加であったが、IoTの影響か日本からの参加が年々増加しているようです。またIoT関連の話題は以前から多いが、今回自動車関連(自動運転・新興国での新たな安全性や排ガス規制)が増えたようです

                  

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写真3 今本氏から報告
     
        
 

次は「マイクロマシンサミット2016と題してMEMS協議会・国際交流担当の三原が報告しました。マイクロマシンサミットは毎年、各国のMEMS関連状況をそれぞれ報告し、意見交換する場として開催され、今回は3回目(初回:京都、第6回:広島)となる日本・東京での開催で、マイクロマシンセンターが事務局を務めました。今回のテーマは「高齢化社会におけるセンサ・MEMS」、オーガナイザーは東京大学・下山勲教授でした。参加者は16の地域,から51人のデレゲイトであり、今回のテーマである健康・医療やライフスタイル・バイオ関連に対応するマイクロシステムに関する話題が多く出されました。発表数は約47件、Delegatesの多い国は、日本14名、ドイツ 6名、イタリア 4名、スイス 4名の順でした。        

 最後は「MEMS国際標準化に関する活動状況]と題して調査研究・標準部長の坂井氏より報告がありました。最近は、センサに無線システムが搭載され、更にエネルギーハーベストに対しての取り組みも強化されており、マイクロマシンセンターでもSSN(スマートセンシング&ネットワーク)研究会を設立して、その活動を強化しています。この分野は、応用分野別にセンサ・無線・エネルギーハーベスト・電源管理、実装と言った要素デバイスや技術の評価を含む国際標準化が必要ですが、特に無線等ではデファクトスタンダードに頼っている側面もあります。このような背景からMEMSの国際標準化はIECを舞台に、更に進められるように「プロダクトアウト/プロセス重視型」のアプローチから「マーケットイン/結果重視型」へと転換が進められています。IECから発行済みのMEMS関連規格は27件で日本提案が12件、韓国提案が13件、中国1件、ドイツ1件となっており、現在審議中が7件あります。審議中の案件には日本・韓国が2件づつ、中国3件となっています。

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写真4 熱心な議論
                                 

 最後に懇親会での乾杯の挨拶 として、マイクロマシンセンター副理事長の青柳桂一氏から熱心にご参加、ご議論して頂いた方々へのお礼、また中締めのご挨拶として、毎回ご参加頂き、熱心に議論して頂いているSPPテクロノロジーズのエグゼクティブシニアアドバイザーの神永氏から国際的な視野でのコメントがありました。(MEMS協議会 国際交流担当 三原 孝士)

                  
 

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2017年1月30日 (月)

IEEE MEMS2017への参加報告


 2017年1月22日から28日まで、米国ラスベガスで開催されたMEMS2017に参加したので、その第1報を取り纏めましたので報告します。

 MEMS2017開催期間中、参加者は704名、オーラルは86件・ポスターは261件(合計367件)で、採択率40%でした。昨年のMEMS2016と比較していずれも微増にとどまっていました。参加国数は25ヶ国ありました。採択数は米国が約100件、次いで日本が約64件、中国が約46件、韓国が約38件の順でした。

 発表分野においては、エナジーハーベスタやガスセンサに関するセッションもあり、IoT関連デバイスの最新技術動向を広く把握できる学会でした。

 参加者にの傾向は、大学や研究機関が約8割と多くを占め、他が企業からの参加でした。代表的な大学や研究機関は、わが国からは東京大学・京都大学・立命館大学・神戸大学から参加しており、海外ではベルギーのIMEC、米国のMIT・Georgia Institute of Technology School・University of California, Berkeley・Stanford University・CALTEC、ドイツのFraunhofer 、スイスのCSEM・ETHZurich、韓国のKAIST、中国のShanghai University等であった。代表的な企業は、Apple・Intel・TSMC・Robert Bosch GmbH・Hitachi・Toshiba・InvenSense, Inc.・LG Electronics・Qualcomm ・Tanaka Precious Metals・Azbil Corporation・NXP・Texas Instruments・Analog Devices, Inc.等であった。IoTセンサネットワークにおけるクラウド層から、個別センサの分野まで、広範囲に渡っていた。

 Student Awardのノミネートは14件(オーラル13件、ポスター1件)あり、3件が受賞(①3D PRINTED THREE-FLOW MICROFLUIDIC CONCENTRATION GRADIENT GENERATOR FOR CLINICAL E. COLI-ANTIBIOTIC DRUG SCREENING,E.C. Sweet, J.C.-L. Chen, I. Karakurt, A.T. Long, and L. Lin, University of California, Berkeley, USA、②64-PIXEL SOLID STATE CMOS COMPATIBLE ULTRASONIC FINGERPRINT READER,J.C. Kuo, J.T. Hoople1, M. Abdelmejeed, M. Abdel-moneum, and A. Lal Cornell University, USA and Intel Corporation, USA、③ENVIRONMENTALLY ROBUST DIFFERENTIAL RESONANT ACCELEROMETER IN A WAFER-SCALE ENCAPSULATION PROCESS,D.D. Shin, C.H. Ahn, Y. Chen, D.L. Christensen, I.B. Flader, and T.W. Kenny Stanford University, USA, InvenSense Incorporated, USA, and Apple Incorporated, USA)

 IEEE Fellowsには、Christofer Hierold,ETZ Zurich, Gwo-Bin Lee,Ntional Tsing Hua University,Olav Solgaard,Stanford University,Xin Zhang Boston Universityの4名が選ばれた。

 Bosch Awardには、Clark C,-T. Nguyen,University of California ,Berkeley, USA が選ばれた。 

 次回のMEMS2018は、BELFAST、NORTHERN IRELENDにて開催。 

MEMS2017のロゴ


 赤外線アレーセンサに関する技術動向としては、オーラル1件、ポスター1件の発表があった。いずれもサーモパイル型で、新規の画素構造により高感度化している。しかしながら、従来研究と比較して感度は同等であるため、NMEMSの赤外線アレーセンサの開発において、これらの研究が脅威になる可能性は低いと思われる。


セッションの座長を務められる年吉先生


 IoTにおけるデバイスに関して、広い範囲で質の高い発表を聴講する事ができ、非常に有意義な学会であった。また、他の研究者と交流を深める事ができ、ネットワーク作りの場としても非常に有益であった。したがって、来年度もLbSSプロジェクトとして参加すべきだと思った。 




ラスベガスの街並み

             

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