講習会・先端技術交流会

2018年2月12日 (月)

第29回MEMS講習会の報告

 2018年2月8日に福岡県において、第29回MEMS講習会を開催致しました。MEMS講習会は、MEMS協議会に所属するMEMSファンドリーネットワーク企業を中心に企画され、都内と地方都市で年に1回ずつ開催しています。  

 今回は「MEMS技術を利用した地域活性化」をテーマに、公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団との共催で、福岡地区の企業とのビジネス交流を目的として、開催いたしました。今回は、FUJICO(Fukuoka Univ. Jisso Consortium)を中核としたオープンな技術交流会であるフジコミーティングとのコラボにより、半導体実装分野とMEMS分野の双方から総勢56名の研究開発者が集まり、技術の融合による新たな可能性について議論する貴重な場となりました。


写真1 講演会場の様子


写真2 公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団
三次元半導体研究センター 野北 副センター長

 講習会では、主催者および共催者の挨拶のあと、本日の基調講演として、九州大学の都甲潔主幹教授から「生態を模倣した味覚・嗅覚センサデバイスの開発」と題して、研究開発されている味覚センサと嗅覚センサについて、ご講演いただきました。開発された味覚センサは、味を数値化することで、曖昧だった消費者のニーズ分析を可能としており、商品開発への応用も進んでいます。味覚センサの製品化は、20年以上も前になされており、蓄積されたデータも多く、うどんやコーヒーなどの好みの地域差や年齢差などの分析結果などをご紹介いただきました。この技術は、これまで官能試験などにより評価してきた商品の味を数値化することで開発効率を向上するだけでなく、将来的には商品に味覚情報を付けることで、自分好みの商品を正確に選べるようになる可能を秘めています。味覚センサの小型化にも取り組まれており、多少お高くても製品化したら購入したいと感じたのは私だけではないでしょう。

 もう一つの話題である嗅覚センサは、味覚の数桁上の感度を要求されるもので、爆薬や麻薬などの危険物を犬以上の感度で検知できます。また、空気の質や健康状態の見える化などにより、健康促進に役立つことも期待されます。味覚に比べて嗅覚は、測定対象が複雑ですが、複数の特性の異なるケモレジスタンスセンサと機械学習を組合わせたパターン認識により、分子の識別を可能にするとのことです。大変興味深いご講演で、質疑時間が15分でも不足する程でしたが、豊かな食生活や健康な日常へのご貢献が期待されるご講演でした。


写真3 基調講演 都甲先生

 続きまして、本日1件目の特別講演として、九州工業大学の坂本憲児準教授より「マイクロTASチップの医療応用」と題して、アレルギー検査チップと血液粘度測定チップについて、ご講演いただきました。九州工業大学には、半導体LSI開発の設計から製造までを可能とする国内有数の研究センターがあり、そこを活用した研究開発をされています。まず、アレルギー検査チップの背景ですが、社会問題となっている食物アレルギーの増加、特に小児では生命にかかわることが多く、小児向けの低侵襲な検査方法が求められています。そこで、広島大学医学部と連携して、好塩基球分離技術と好塩基球応答可視化技術を組合わせた高信頼で低侵襲な診断技術を確立されたそうです。検査装置はできていますが、検査チップの量産化に向け、磁性体でマイクロ流路を加工できる企業を募集中で、一日も早い製品化が待たれます。

 引き続き、生活習慣病の発症や重症化要因マーカーとして注目される血液粘度を簡便・迅速に測定する血液粘度測定チップをご紹介いただきました。従来のように粘度と流体抵抗の相関を利用するのではなく、電気伝導率との相関を利用することで、必要な血液量と処理時間を劇的に減少させることに成功しています。現在は、使い捨ての測定チップを安価に大量生産できる企業や、そのチップを用いた測定器の開発企業を募集中とのことです。どちらのチップも生活に質の向上に寄与するものであり、今回の講習会が、事業化の一助にななれればと感じさせるご講演でした。


写真4 特別講演1 坂本先生

  本日2件目の特別講演は、九州工業大学の矢吹智英准教授より、「マイクロ・ナノテクを用いた沸騰熱伝達の計測と促進」と題して、MEMS温度センサを用いた研究成果について、ご講演いただきました。スマホやパソコン、自動車など、CPUやパワーデバイスなどの高密度実装が進み、その効率的な冷却技術が求められています。そのブレークスルー技術として、沸騰熱伝達が注目されており、MEMSセンサを用いたメカニズム解明と、それに基づく冷却技術の開発に取組まれておられます。沸騰熱伝達では、伝熱面での濡れ性が重要な役割を担っており、超親水化することで、限界熱流束を3倍程度に促進できるため、その実現にMEMS加工の利用価値が高いとのことでした。消費電力削減の観点からは、CPUなどから取り去った熱の再利用も重要な課題となりますので、MEMS企業との連携によるMEMS熱発電素子などと組み合わせた冷却システムの開発など、今後の展開が期待されるご講演でした。


写真5 特別講演2 矢吹先生

 ここでいったん休憩を挟み、休憩明けからは、半導体実装の研究開発をされているフジコミーティングから4件、福岡県の企業から1件のご講演と、ファンドリーサービス産業委員会のご紹介をさせていただきました。フジコミーティングからの最初のご講演は、株式会社ピーエムティーの三宅賢治氏より、「ミニマルファブによるFOWLP試作ビジネス」と題して、チップ面積を超える広い領域に再配線層を形成するウエハレベルパッケージング技術であるFOWLPの試作ビジネスへのミニマルファブの適用についてご紹介いただきました。多額の費用と時間を要するFOWLP試作に小回りの利くミニマルファブを適用することで、コストの削減や期間を短縮する世界に唯一のビジネスモデルを実現しているとのことです。ご興味のある方は、是非、PMTミニマルファウンドリのHPにアクセスください。これまでの半導体製造からは想像できない目から鱗の世界が広がっています。


写真6 株式会社ピーエムティー 三宅氏

 次にローム・アンド・ハース電子材料株式会社の米原良氏より、「三次元配線に最適な感光性電着レジストのご紹介」と題して、ご講演いただきました。光通信の分野で、オプティカルベンチなどの三次元構造への配線形成で、スプレー塗布などの技術と供に用いられたと記憶していますが、逆テーパ部へのレジスト塗布が可能などの利点を持つことから技術開発が進んでおり、露光技術の発展と相まって、その展開が期待される技術となっているようです。MEMSデバイスも三次元構造を持つものが多く、MEMS関連企業にとっては、大変興味深いご講演となりました。


写真7 ローム・アンド・ハース電子材料株式会社 米原氏

 フジコミーティングからの3件目のご講演として、三次元半導体研究センターの八木公輔研究員より、「三次元半導体研究センターのSi加工技術」と題して、Deep-RIE技術について、ご講演いただきました。TSV形成時のシードスパッタ工程での不良原因となるスキャロップの軽減を目的として深堀レシピを開発されており、Cuの埋め込み性の改善を図られておられます。Deep-RIEで一般的に用いられるBoschプロセスの他に、非Boschプロセスにも取り組まれており、用途により組合せたり、使い分けたりすることで、多彩な形状制御を実現されています。MEMS企業も様々な形状を加工していますが、その製造レシピを公開しておりませんので、その一端を垣間見た気にさせていただけたご講演でした。


写真8 三次元半導体研究センター 八木研究員

 フジコミーティングからの最後のご講演は、三次元半導体研究センターの金山天研究員より「微細配線の高信頼化に向けた取組」と題して、再配線層の高信頼化について、ご講演いただきました。有機インターポーザーの配線の微細化とともに、配線不良が増加しており、その解決策として、Cu配線を保護するキャップメタルのピンホールレス化に取組まれております。材料の最適化や膜厚や皮膜状態の制御手法の検討により、キャップメタル厚5nmでのマイグレーション耐性が大幅に改善されており、今後の技術開発の進展が期待されるご講演でした。


写真9 三次元半導体研究センター 金山研究員

 福岡県の企業からのご講演として、アスカコーポレーション株式会社の池田昭和様より「ウエハめっき・ワンストップサービス」と題して、ご講演いただきました。NiやAg、Pd、Ni-Auなどの各種めっきライン、特に主力商品であるUBM・BMワンストップサービスについて、ご紹介いただきました。このサービスでは、表面めっきから裏面めっきまでを一貫加工することにより、短納期、コストや在庫の削減を実現しているとのことです。特徴は、アスカ独自の薄ウエハ(70μm)反り制御技術により、反りの少ない加工を実現している点です。MEMSでも成膜によるウエハの反りが量産時の課題になることが多いので、そういった技術を確立していることは、大きな強みとなると感じます。今後のMEMS企業との更なる連携を期待したいと思います。


写真10 アスカコーポレーション株式会社 池田氏

 本日の講習会の最後は、ファンドリーサービス産業委員会の浅野委員長より、「MEMSファンドリーネットワークとサービスのご紹介」と題しまして、MEMSを開発したい企業を支援する仕組みをご紹介させていただきました。また、委員会を構成する大日本印刷、富士電機、日立製作所、みずほ情報総研、メムス・コア、マイクロナノオープンイノベーションセンタのサービスの特徴や、技術支援していただいている産総研の概要をご紹介させていただいた後、別会場を移動して、委員会企業や産総研による技術相談会を開催いたしました。別会場ではありましたが、多数の参加者に足を運んでいただき、活発な議論が交わされ、半導体実装とMEMSとの技術交流を図ることができました。今後、講習会に参加された方々とMEMSファンドリーネットワークとのコラボによる技術開発や製品開発がなされることを期待したいと思います。


写真11 ファンドリーサービス産業委員会 浅野委員長

 MEMS講習会の翌日には、三次元半導体研究センターの見学会を開催いたしました。最初に、三次元半導体研究センターの野北寛太副センター長より、三次元半導体研究センターの概要について、ご紹介いただきました。プリント配線板製造技術とシリコン基板製造技術の双方から、研究・開発、試作・評価を支援できる世界で唯一の研究センターとのことで、見学会でも幅広い分野の設備が揃っていることに驚かされました。めっきラインをはじめ、大型基板向けのラミネーターや露光装置、プリント基板用穿孔機や部品実装機など、プリント基板関係の設備の他、シリコン基板向けの設備も揃っており、その試作品を評価する設備と合わせて、総合的な研究が可能な設備を見学させていただきました。これだけの設備を維持管理するのは大変なことと推察いたしますが、研究員の方々が対応されていると伺って、生産技術の伝承が危惧される中で、大変とは思いますが、恵まれた環境で研究できていると感じました。ここで地力をつけた研究者の方々が、企業との連携で、製造業の底上げをしていただけることを祈念して、今回のMEMS講習会のご報告とさえていただきたいと思います。最後に、この企画にご協力いただいたご講演者やフジコミーティングの皆様、ご参加いただいた皆様に、改めて御礼申し上げます
(産業交流部 小出晃)

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2018年1月 5日 (金)

「新年のご挨拶」

新年あけましておめでとうございます。

 本年はSociety5.0の実現を世界に打ち出していくための新たな産業・社会の在り方として、「コネクテッド・インダストリーズ」に大きな注目が集るとされています。特に、製造現場、自動走行、健康・医療・介護等の現実の「リアルデータ」を巡る競争が激しくなると予想されていますが、その「リアルデータ」を収集する最前線にMEMSを中心とする多様なセンサが位置しています。従いまして、ナノ・マイクロ技術分野における研究開発や普及促進等を長年担ってきた私どもマイクロマシンセンターの責任はさらに重くなっていくものと考えております。

 仏のヨール社によれば、世界のMEMS市場は消費者用や自動車用がけん引し、2017年の132億ドルから2022年には254億ドルと年率14%で伸びるとされています。MEMSデバイスとしては、スマホの4G/5G 化の進展によりMEMSフィルタの伸びが大きく、従来からの慣性センサ、圧力センサ、ジャイロなどを凌駕していくと見られます。

 このような中、当センターでは2000年代に注力したMEMS技術そのものの研究開発から、2010年代にはセンサネットワーク技術にシフトし、現在は道路やライフラインのインフラモニタリングに加えて、ファクトリやプラントのスマートセンシングの研究開発に注力しています。そして、昨年は経産省・NEDOがコネクテッド・インダストリーズの重点分野として推しているロボティクスや自動走行の鍵となるAI融合高精度物体認識システムの研究開発に着手しました。

 また、それらの研究開発を支えるMEMS試作ファンドリとして、7年前に開設したつくばの「マイクロナノオープンイノベーションセンター(MNOIC)」も今や中小・ベンチャーを含む40社以上からの研究や工程の受託により、フル稼働の状況にあります。さらに設備整備や技術向上に努めて、我が国のMEMS開発需要に応えてまいります。

 そして、上述の成果などを公開する場として、昨年、MEMSセンシング&ネットワークシステム展を刷新して、初めてCEATECと同時開催とし、5万人を超える来場者の方々にお出でいただくことができました。本年はさらにCEATECやAll about Photonics展とのシナジー効果を高め、IoTシステム、さらにはコネクテッド・インダストリーズの最先端技術展としてのプレゼンスを高めてまいります。

 当センターとしましては、本年もMEMS・スマートセンシング技術の開発や普及に真摯に取り組み、我が国のコネクテッド・インダストリーズの推進に微力ながらも貢献してまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。

 皆様方には以下の10大ニュースをご覧いただき、このような私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。

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2017年11月29日 (水)

第35先端技術交流会の報告

 平成29年11月29日(水)の午後、マイクロマシンセンター新テクノサロンで第35回マイクロナノ先端技術交流会を開催しました。

 今回のテーマは「RF-MEMS(BAW(Bulk Acoustic Wave)フィルタ)の最前線」として、太陽誘電モバイルテクノロジー(株) 取締役の上田正憲様からは「最近のRF-BAWデバイス(フィルタ)の進展と今後の展望」と題して、そして、早稲田大学 理工学術院 先進理工学部 准教授の柳谷 隆彦先生からは「最新のBAWデバイス材料の研究と応用」と題してご講演をいただきました。

 最初の上田氏からは、最初に近年、Broadcom社やQorvo社に見られる、BAWフィルタ市場の急成長の背景について説明いただきました。既にスマートフォンの中に数多くBAWフィルタが使用されていますが、今後4Gから5Gに向けて、マルチバンド化、そしてCA(キャリアアグリゲーション)やMIMOによる高速通信が進み、ますます市場が広がっていくようです。 次にBAWの技術についてご紹介いただきました。 BAWは大きくキャビティ構造を有するFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)と音響ミラー構造を有するSMR(Solidly Mounted Resonator)の2種類に大別されます。太陽誘電では独自のエアギャップ構造を用いるFBAR構造を採用しています。フィルタの特性向上には周波数の温度ドリフトの影響を総裁する温度補償付きのTC(Temperature Compensated)-FBARを用いて、温度特性の向上を示していました。続いて、電気機械結合係数を向上する方策として、AlNに他の材料をドープする試みを紹介いただきました。結果としてMg,Hfを一緒にドープすることで電気機械結合係数(k2)がAlN7.1%に対して、10%に向上することを示されていました。

太陽誘電 上田氏

 早稲田大学の柳谷先生からはScAlNを中心としたBAWデバイスの材料のお話をいただきました。従来の圧電材料のAlNにScを導入することで圧電定数d33が5倍向上することを産業技術研究所の秋山先生が発見したのを機に、柳谷先生がScAlNを用いた圧電トランスデユーサ、FBARの報告を世界に先駆けて報告されました。Sc組成を徐々に増やしていくとSc組成0.4ぐらいまで徐々に電気機械結合係数が上昇して、AlNではK2が6.4%だったものが、14%近くに向上することを示されていました。

 また、電気機械結合係数の小さいGaN(k2~0.4)にYbを加えることでK2が4%まで大きくなる現象を発見されました。現在、多くの研究者がScAlNの研究、実用化を進めていますが、ScAlNの成膜にはノウハウがあるようです。柳谷先生からはターゲット中のCやOの除去が重要で、ScAl合金の使用やプレスパッタを長時間行うと良いといった報告をいただきました。柳谷先生の研究室では良質の成膜ができるために、ScAlN圧膜によって18%以上の高い電気機械結合係数(K2)の実現に向けて取り込まれているようです。

早稲田大学 柳谷先生

 また、講演会後の懇親会では、ご講演いただいた先生方を囲んで、BAWフィルタの今後の展開や圧戦膜成膜についてのノウハウなど遅くまで多くの意見交換が行われていました。  

意見交換会の様子

(産学交流担当 今本 浩史)

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2017年10月 9日 (月)

スマートセンシング&ネットワーク展2017」 国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム及びスマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会公開シンポジウム(2017年10月6日)の開催報告

 2017年 10月 4日(水) から6日(金)まで幕張メッセで開催された「MEMS センシング&ネットワークシステム展 2017」は、3日間の開催期間を終え、盛況の内に閉会しました。来場された皆様方に御礼申し上げます。特に、最終日である6日(金曜日)は、午後から雨との予報にもかかわらず多くの来場者がありました。

 最終日は、国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム及びスマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会公開シンポジウムが12:30から16:40まで、国際交流委員長であり、スマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会の会長でもある下山勲教授に司会をお願いして開催され、約100名の沢山の方々にご参加頂きました。

 本報告書では、セッション1の国際セッションに限って報告致します。

Session 1 International Session   Latest Trends of IoT / MEMS
(セッション1 国際セッション IoT、MEMS分野の最新動向)

(1) Sensors and computing for a safe IoT world
(CEA LETIにおけるIoT関連技術最前線)
Dr. Marc Duranton, CEA-LETI(France), CEA Fellow, Architecture,
IC Design and Embedded Software Division


 MEMS関連の研究所としては世界最大規模の施設と、研究員を擁するフランス・グルノーブルのCEA-LETIの半導体・組み込みソフト部門のMarc Duranton博士から、CEA LETIにおけるIoT関連技術最前線と題する講演がありました。 LETIでは幅広い研究領域や産業界との共同研究案件がありますが、最近ではMEMS領域からナノテク領域へ活用範囲を広げ、かつ産業界が魅力を感じるテーマに取り組んでいます。その中の一つは数百ナノメートルのナノワイヤをセンサの検出素子として使う技術で、既に化学センサや共振器等に使われているとのことです。

(2)MEMS and NEMS Technologies for a Smart World
Dr. Mario Baum(Germany), Fraunhofer Institute for Electronic Nano Systems ENAS


 産業界のユーズに基づいた研究開発を積極的に行うことで日本の産総研のモデルにもなっている、ドイツのFraunhofer Institute、その中でもMEMSを中心に活動を行っている、ChemnitzにあるENASのMario Baum博士からMEMS and NEMS Technologies for a Smart Worldと題する講演がありました。今回の発表は、フランフォーファ研究所の紹介と、世界各地との連携、自動車や工業用スマートシステムに使われるスマートセンサ、健康・医療領域に使われるスマートセンサに関する紹介がメインでした。面白いトピックスとしては、Sens-o-Spheresと言う、直径8mmの球に、センサや信号処理、ワイヤレスバッテリ、無線通信を詰め込んで、工場の様々なプロセスコントロールに使う概念が示されました。

(3) SiTime MEMS Oscillator Technology
(SiTime社のMEMS発振器の最新技術)
Mr. Hideki Yoneda, General Manager, Corporate Strategy, Megachips-Corporation
(株)メガチップス 新事業本部 米田 秀樹


 長い間、タイミングデバイスのデファクトになっていた水晶発振器を置き換える可能性が出てきたシリコン共振器を開発・製造しているベンチャー企業・SiTimeが開発したシリコンタイミング素子に関して、M&Aを行った日本のメガチップス社の米田 秀樹氏からSiTime社のMEMS発振器の最新技術)と題する講演がありました。シリコンを用いた発振器(共振型)は材料のヤング率の温度依存性や熱膨張係数によって、周波数の強い温度依存性がありますが、それを材料&プロセス技術(構造)や、高精度に温度を計測して補正をかけることで水晶発振器を凌ぐ性能を確保し、またシリコン半導体に組み込みことも可能であることを強調されていました。

(4)Metal Oxide Gas Sensing Material and MEMS Process
Mr. Collin Twanow, Micralyne Inc.(Canada), Vice President of Technology


 カナダのアルバータ地方には一般財団法人マイクロマシンセンターと国際アフィリエートになっているナノマイクロ研究所であるACAMPや、MEMSファンドリも行っているMEMS研究開発型の企業Micralyneをはじめ、沢山のMEMS関連企業があり、既に何年にも渡って国際交流を行っています。今回はMNOICをはじめ既に何回もマイクロマシンセンターを訪問頂いている、MicralyneのCollin Twanow副社長からMetal Oxide Gas Sensing Material and MEMS Processと題する講演がありました。大気汚染や環境問題に対する解として、環境センサに注目され、特に大気中の一酸化炭素や、VOC(揮発性有機物)を高感度で検出可能なセンサが重要とされ、最近Micralyneで開発中のマイクロホットプレート型のMOS(金属酸化物)センサの紹介がありました。
国際交流担当 三原 孝士

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2017年9月 7日 (木)

第34回先端技術交流会の報告

 9月1日(金)の午後、マイクロマシンセンター新テクノサロンで第34回マイクロナノ先端技術交流会を開催しました。

 今回は「BEANSプロジェクト研究者達の新たな研究の取組み」というタイトルで開催しました。、BEANSプロジェクトは、MEMS技術とナノ・バイオ技術が融合し、自律的に機能する異分野融合型デバイスの開発を目指し、平成20年度から24年度の5年間にわたり、経済産業省の主導のもと、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から技術研究組合BEANS研究所が委託を受け、企業、大学、独立行政法人産業技術総合研究所の研究者を結集し、産学連携体制のもとで実施しました。今回の先端技術交流会はプロジェクト終了から4年を経て、研究開発を推進した研究リーダー4名の先生方をお招きし、現在の研究内容について発表していただきました。

 最初に、BEANS研究所の所長の遊佐様、副所長の東京大学藤田教授からご挨拶をいただき当時のBEANSの様子を振り返り皆さま懐かしんでおりました。

  
(遊佐さん)              (藤田先生)

 最初の講演者は東京大学先端科学技術センターの杉山正和教授です。「高効率太陽光発電と化学的エネルギー貯蔵がもたらす次世代再生可能エネルギーシステム」というタイトルで研究内容の紹介がありました。2050年までに温室効果ガスを80%削減するという我が国の目標があり、再生可能エネルギーの拡大が期待されています。太陽電池の普及を拡大するために、発電効率のさらなる向上とコスト低減について紹介いただきました。発電効率の向上に向けた取り組みとして、マルチジャンクション型セルにおいて、InGaP、Geに格子整合する1.2eVのバンドギャップを有する材料開発が必要であり、InGaAsバリア層とGaAsP井戸層からなる独自の超格子構造や、3次元の波上構造を提案されていました。また、コストダウンの一方策として、GaAs基板上にAl犠牲層を設けることによって、基板を最後で除去することによる、薄膜太陽電池を提案されていました。この構造では、太陽電池に入射した光によりフォトンリサイクリングの現象によって高効率化が期待できると同時に、基板を何度も利用できるので、GaAs基板という高価な材料コストの低減に期待が持てます。温室効果ガス排出量の低減に向けて、安価、高効率太陽電池の実現に期待が膨らみました。

   
(杉山先生)              (竹内先生)

 2番目の講演者は東京大学生産技術研究所機械・生態系部門の竹内昌治教授です。「バイオハイブリッドシステムに向けた取り組み~Life Beansのその後の展開~」というタイトルで、バイオデバイス技術を使った創薬・医療・環境センシングの研究内容について紹介がありました。最初はBEANSで取り組んでいた脂質2重膜のその後の進展についてです。分子デバイスにとして、膜タンパク質による高感度センサーです。膜タンパク質によるバイオセンサとして研究を進めておられ、蜂、蠅、そして蚊などの昆虫の嗅覚受容体を用いた汗等の匂いセンサの開発を紹介されました。すでに汗で反応するロボットも動画で紹介されており、この技術は人の匂いを検知する災害救助ロボットをはじめとした人体検出センサとして期待されています。次に血糖値センサの研究について紹介いただきました。血糖値は食事や運動などによって、時々刻々と変動するため、無意識のうちに連続して情報を読み取ることが望まれています。竹内先生のところでは、血糖値に応答して光の強度を変えるハイドロゲルビーズを実現し、マウスの耳に埋め込んで140日以上長期完全体内埋め込み可能な血糖値センサを実現していました。

 3番目の講演者は九州大学工学研究院応用化学部門兼、最先端有機光エレクトロニクス研究センターセンター長の安達千波矢教授です。安達先生からははBEANSプロジェクトの時から継続して取り組んでおられる有機EL(OLED)の研究の進展について紹介いただきました。従来蛍光材料では内部効率が25%程度しかなく、またそれまで、イリジウム等の燐光による高効率化が実現されていましたが、この貴金属は希少資源であり高価であったため実用的ではありませんでした。安達先生は熱活性化遅延蛍光(TADF)に着目し、網羅的に分子材料の開発に取り組み、2012年に内部効率100%のTADFの実現に成功しました。この成果をもとに2015年にTADFを実用化する大学発ベンチャー((株)Kyulux)が設立され、その代表取締役の安達淳治氏からも講演中にOLEDのデモをご紹介いただきました。今後、有機急拡大する有機EL市場に本技術がますます広く展開していくと感じました。

  
(安達先生)             (伊藤先生)

 最後のスピーカーは東京大学大学院・新領域科学研究科兼、産業技術総合研究所集積マイクロシステム研究センターの伊藤寿浩教授です。「トリリオンセンサ社会に向けてのセンサネットワークの取組み~牛健康モニタリング用センサネットワーク」というタイトルでBEANSプロジェクトのMacro BEANSのその後の成果について講演頂きました。伊藤先生はBEANSプロジェクトを終えた後は、グリーンセンサネットワーク開発プロジェクト、ライフラインコアモニタリング、そして今回の発表の中心の内容である、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で取り組んできた次世代農林水産業創造技術開発計画のテーマへとセンサおよぶセンサネットワークのプロジェクトで活躍されております。牛の生体内で長期間安定して駆動するセンサを開発し、センサおよびセンサネットワークによって、繁殖管理のためのセンサシステムの開発、および飼養管理のためのセンサシステムの開発に取り組んでおられます。繁殖管理に向けては小型膣内センサの開発を行っており、加速度センサを組み込み牛の活動を分析することによって発情の精度をモニタリングしております。また、飼養管理の観点ではルーメン(牛の第一胃)センサの開発内容を紹介し、胃の中のセンサから首輪の無線中継器へセンサ信号を送り、アンテナまで情報を送るシステムを紹介されました。体内からの無線の難しさ、そして胃の中での長期信頼性の確保が難しいことがわかりました。


(意見交換会)

 4名の先生方によるプレゼンテーションを終え、会場をMMC会議室に移した懇親会では、BEANSの関係者を中心に約50名も集まり、技術的な会話だけでなく、同窓会としても大変盛り上がりました。

(産学交流担当 今本 浩史)

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2017年8月28日 (月)

TIA連携大学院サマーオープンフェスティバル:第28回MEMS講習会&第1回学生・若手研究者向けMEMS講座開催の報告

 2017年8月24日、25日の両日に、国立研究開発法人産業技術総合研究所において、第28回MEMS講習会及び第1回学生・若手技術者向けMEMS講座を開催致しました。MEMS講習会は、MEMS協議会に所属するMEMSファンドリーネットワーク企業を中心に企画され、都内と地方都市で年に1回ずつ開催していますが、本年度は都内開催に替わり、TIA連携大学院サマーオープンフェスティバルの一環として、つくばで開催いたしました。また、TIA連携大学院ということで、学生・若手研究者向けMEMS講座も初めて開催し、両日で44名(学生1名)の聴講者を迎え、総勢58名が、IoT社会で求められるMEMSとは何かについて、活発に討論いたしました。

 24日の第28回MEMS講習会では、「IoT社会で求められるMEMSとは」と題して、IoT活用事例の紹介からIoT社会を支えるセンサやフィルタ、スイッチなどの部品までを網羅したプログラム構成といたしました。主催の一般財団法人マイクロマシンセンター専務理事長谷川英一の挨拶のあと、1件目の特別講演として、新世代M2Mコンソーシアム理事の木下泰三氏より、「トリリオンIoTと先端技術・事例動向」と題して、ご講演いただきました。


写真1 講演会場の様子(主催者挨拶)

 木下氏は、最近まで日立製作所に在籍されており、日立での社会インフラへのIoT活用事例を中心に、その基盤を担うセンサ・電源・通信に関する技術や規格などもご紹介いただきました。道路や鉄道、ビル、発電設備など、様々な社会インフラ分野で導入が試みられていますが、その導入が進むかは、通信費も含めたコストの低減が重要だそうです。また、現状では、IoT導入の効果の検証から始めなければならないことが、導入の障害となっており、先行する企業が検証した効果を共有化する仕組み作りが重要になると感じました。


写真2 特別講演1 木下氏

 続きまして、2件目の特別講演として、東京エレクトロンデバイス株式会社のアナログ・デバイセズ社製品セールスグループの増田祐一氏より「MEMSデバイスを鍵とするIoT社会で目指す安心/安全な社会」と題して、ご講演いただきました。ご存知の通り、アナログ・デバイセズ社は、これまでに100億個を超えるMEMSデバイスを出荷している大手であり、RFスイッチを製品化した数少ない企業としても知られています。アナログ・デバイセズ社のRFスイッチは、従来のRFリレーに対して、容積で95%、電力で90%を削減し、スイッチングスピードで30倍、寿命で10倍を達成しており、計測機器の小型化などに貢献しているとのことです。また、IoT向けのセンサとして、FFT処理をしたデータを出力する3軸加速度センサなどもご紹介いただきました。IoT社会に向け、単に計測するだけのセンサからユーザーの用途に応じたデータ処理までしてくれるセンサへと進化しているようです。これは、伝送するデータの圧縮だけでなく、IoT社会で増える技術者以外のセンサ利用者にとって、センサ利用の敷居を下げてくれるコンセプトかと思います。今後のアナログ・デバイセズ社のIoT向けセンサに注目していきたいと感じさせてくれるご講演でした。


写真3 特別講演2 増田氏

 ここでいったん休憩を挟み、休憩明けからは一般講演3件と、ファンドリーサービス産業委員会からの各社サービスを4件、ご紹介させていただきました。最初の一般講演では、太陽誘電株式会社の上田政則氏より、「無線通信システム用RF弾性波デバイスの開発」と題して、スマホなどに多数搭載されているFBAR/SAWデバイスの最新動向をご講演いただきました。現在の主流は、SAWデバイスですが、IoT社会で求められる高速・大容量通信には、ロールオフ特性に優れるFBARが適しており、その更なる性能改善に向けた圧電薄膜の研究成果など、IoT社会に向け進展する最先端の技術もご紹介いただきました。SAWデバイスを手掛ける企業は多いですが、FBARを製品化している企業は少なく、今後のIoT社会でのご活躍が期待されるご講演となりました。  


写真4 太陽誘電株式会社 上田氏

 次に東京エレクトロンデバイスの倉田伸一氏より、「低消費電力・高信頼性無線技術を応用したモニタリング事例」と題して、ご講演いただきました。IoT社会では、あらゆる物にセンサが組み込まれ、その情報を基にシステムの最適な運用を目指しますが、その中でも重要性が高いインフラストラクチャモニタリングを中心に、適用事例をご紹介いただきました。構造物のモニタリングで求められるのは、低ノイズ・低周波観測が可能な加速センサと、切れない低消費電力無線とのことです。ご紹介いただいたDustNetworksは、電池駆動できる無線メッシュネットワークで、極めて正確な時計を元にした駆動時間管理で最小消費電力にするとともに、複数の通信路を確保する空間冗長性と15chのチャンネルホッピングによる周波数冗長性、繋がるまで送信を行う時間的冗長性により、切れない通信を実現しているそうです。電池で数年間駆動できるそうですが、環境発電とバッテリーとの組合せにより駆動することも可能とのことです。現状のインフラストラクチャモニタリングは、主に有線で行われていると思われますが、低消費電力なセンサと無線技術の進展により、無線化することによる普及が待たれます。


写真5 東京エレクトロンデバイス 倉田氏

 一般講演の最後は、大阪ガス株式会社の木村浩康氏より、「大阪ガスの法人向け簡易計測・お知らせサービス」と題して、ご講演いただきました。大阪ガスでは、これまでもエネルギーの見える化サービスを展開しており、そこでの経験を基に、簡易計測・通知サービス「ekul」を立ち上げたとのことです。従来のサービスに対しては、導入してもデータ管理など運用方法がわからないなどを理由に、導入を躊躇する企業が多かったため、大阪ガスが計測からデータの見守りまでを代行するサービスとすることで、運用面だけでなくコスト的にも導入しやすいサービスとしたそうです。このサービスでは、ガス・電気のエネルギー監視だけでなく、水道や来客数など、ユーザーの要望に応じて計測項目を増やすことが可能で、そこから得られる複合データを処理することで、新たな価値創造を目指しておられるそうです。多くの企業との連携も視野に入れて取り組まれており、今後の進展に注目したいと思います。


写真6 大阪ガス株式会社 木村氏

 MEMSファンドリーネットワークからは、4件のファンドリーサービスをご紹介させていただきました。最初にファンドリーサービス産業委員会の浅野委員長より、「MEMSファンドリーネットワークとサービスのご紹介」と題しまして、MEMSを開発したい企業を支援するMEMStationなどの取り組みをご紹介いたしました。所属機関からは、最初に、産総研の設備を運用してMEMS開発を支援するMNOICについて、MNOIC開発センターの渡辺氏より、「MNOICが提供するMEMSオープンイノベーション」と題して報告し、大日本印刷株式会社の中本氏より「大日本印刷MEMSファンドリーご紹介」、株式会社メムス・コアの慶光院氏より「メムス・コアのビジネス」と題し、得意とする技術について報告いたしました。本講習会の終了後には、会場を移動して意見交換会を開催いたしました。別会場ではありましたが、多数の参加者に足を運んでいただき、講習会での質疑応答では足りなかった時間を補って余りある有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。最後まで活発な意見交換をされていた参加者には申し訳ないと思いつつ、翌日のMEMS講座に備えて、早めのお開きとさせていただきました。

 25日は、第1回目となる学生・若手技術者向けMEMS講座「企業の開発事例に学ぶMEMS」を開催いたしました。このMEMS講座では、ファンドリーサービス産業委員会に所属する企業などでのMEMSデバイスの開発事例を中心にプログラムを構成いたしました。

 まず、国立研究法人産業技術総合研究所からは、集積マイクロシステム研究センターの廣島洋センター長より、「産総研集積マイクロ獅子テム研究センターのMEMS技術」と題しまして、ご講演いただきました。集積マイクロシステム研究センターには、6つの研究組織があり、MEMSの基礎研究から実用化研究まで、幅広い研究をされています。センターには、日本のMEMS開発の中核拠点として整備された8・12インチ対応のMEMS研究設備が揃っており、その設備を企業が利用できる仕組みも整備されています。国のプロジェクトへの参画も積極的に進めており、様々なセンサの開発事例をご紹介いただきました。これまでの研究開発で培ったノウハウを基に企業支援を積極的に進めており、MEMSデバイスの研究開発を進める企業にとっては、頼もしい存在だと感じました。


写真7 国立研究開発法人産業技術総合研究所 廣島氏

次に大日本印刷株式会社の浅野雅朗氏より、「ガラス基材を用いたMEMS加工技術について」と題して、ご講演いただきました。大日本印刷は、日本のMEMSファンドリー企業の老舗的存在で、様々なMEMSデバイスの受託生産をされて経験をお持ちですが、本講演では、ガラスインターポーザ―について、ご紹介いただきました。ガラスインターポーザ―は、IoT時代の高周波デバイスに対応した技術として期待されており、今後の展開が期待されます。 
引き続き、富士電機株式会社の古田稔貴氏より、「電池駆動可能な低消費電力ガスセンサの開発」と題して、ご講演いただきました。富士電機では、コンポーネント・システムの価値を高めるセンシングの実現にMEMS技術を活用されており、特徴あるセンサの開発を進めておられます。これまでに、様々な用途に応じた仕様のセンサを開発して機器に組み込んでこられましたが、今回ご講演いただいたのは、ガス警報器への組込を目的に電池駆動を可能とする超低消費電力なガスセンサの開発事例です。これまでのガスセンサは、消費電力が大きいためにコンセントからの電力供給を受ける必要がありましたが、その消費電力を1/1000の0.06mWに低減することで、電池駆動型ガス警報器の製品化を実現したとのことです。現状では、メタンガスしか検出できませんが、この技術をベースに多成分ガス検出の可能性を見出しており、今後の技術展開から目が離せないご講演となりました。

 ここで休憩を挟み、休憩明けからは株式会社日立製作所の青野宇紀氏より、「2種類の圧力チャンバを有する1チップ複合センサの開発」と題して、ご講演いただきました。加速度と角速度センサを混載した複合センサの開発に当たり、その駆動原理から各々を異なる圧力で気密封止する必要に迫られ、技術開発に取り組まれたそうです。二つのセンサを別々に作製すれば良いのではとの質問もでましたが、高感度なセンサを角度や位置を調整して組み立てるのは難しく、こちらの方が低コストにできるそうです。接合時の温度と加圧圧力を制御することで、同一ウエハ内での2段階の気密接合を実現しており、大変興味深いご講演でした。

 次に、みずほ情報総研株式会社の岩崎拓也氏より、「MEMSデバイスの開発に最適化した設計・解析支援システムMemsONE」と題して、ご講演いただきました。MEMSデバイスの開発に、様々な企業が参入してきたことを受け、異分野の企業の技術者でも容易にMEMSデバイスを設計できるツールをコンセプトに、大学や企業など21組織が参画して総事業費16億円を投入したNEDO委託事業の成果とのことです。マルチプロセス・エミュレーターを駆使することで、MEMSのプロセスを知らなくてもMEMSデバイスの設計ができる点を特徴とし、大学やファンドリー企業などが構築したデータベースを基にデバイスの性能などを解析できるようになっています。国内のファンドリー企業も協力して開発したシステムのため、そういったところを利用する場合に、強力なツールになるのではないかとの印象を受けました。

 午前中の最後は、株式会社メムス・コアの慶光院利映氏より、「メムス・コアのビジネス」と題して、ご講演いただきました。国内では珍しく技術開発も請け負うファンドリー企業であり、その技術開発のために東北大学を始めとした様々な組織とネットワークを組まれているため、その技術範囲を把握するのが難しい企業でもあります。セット・システムメーカーを顧客とし、メムス・コアで開発するMEMSデバイスを核として、協業企業とともに顧客の要望に応じた製品を納品する体制を組まれておられます。今回のご講演では、特徴的な技術として、ステルスダイシングをご紹介いただきました。ブレードダイシングやレーザ加工と異なり、完全ドライで発塵や欠けの無い切りシロゼロのダイシングが可能で、切断後に応力が加わるようなデバイスや微小なデバイスなどに適した手法と言えます。このご講演を聴講して、MEMSには興味はあるが、その作り方が分からないといった新規参入企業には、強い味方になるという印象を受けました。

 ここで少し長めの昼休みに入り、午後からのMNOIC見学会へ備えました。午後の最初は、MNOICの原田武氏より「大面積圧電薄膜形成技術を核とした圧電薄膜MEMSの開発」と題して、ご講演いただきました。MNOICは、日本初の本格的なMEMSオープンイノベーション拠点であり、2011年より稼働しております。最高水準の設備・装置群が利用可能で、多彩な研究支援サービスを提供しており、最近では少量量産までは対応して貰えるようになりました。今回のご講演では、そのMNOICが有する技術の一つであるAlN圧電膜を利用したMEMSデバイスの開発事例をご紹介いただきました。産業機器の振動を利用して発電する圧電デバイスを利用した振動モニタリングシステムを開発しており、その感度向上のためにScを添加したScAlN膜のプロセスの確立を進めているとのことです。8インチオールドライの一貫プロセスで製作しており、振動の減衰を抑えるための真空封止をウエハレベルパッケージプロセスで実現するなど、後ろ盾として産総研が控えているだけのことはあり、技術力の高さが印象的でした。

 最後に、MNOICの見学会を実施いたしました。参加人数が多かったため、残念ながらクリーンルームに入ることはできませんでしたが、クリーンルーム内の見学コースをビデオ撮影した映像を拝見しながら説明を伺うことで、クリーンルームに入ったかのような体験をすることができました。また、8・12インチ対応の大きな設備を窓越しに見学するだけでも、その迫力を感じ取ることができたのではないでしょうか。MNOICは、研究支援だけでなく、ファンドリーサービスを実施しており、大変多忙を極めていると伺っておりますが、その中で丁寧にご対応いただいたことに感謝したいと思います。


写真8 MNOIC見学会

 最後に、2日間の全ての日程を無事に終えることができましのも、ご講演者を始め、ご参加・ご協力いただいた全ての方々のお陰であり、御礼申し上げます。

(産業交流部 小出晃)

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2017年3月13日 (月)

第27回MEMS講習会開催の報告

 2017年3月9日にまちなかキャンパス長岡において、第27回MEMS講習会を開催致しました。MEMS講習会は、MEMS協議会に所属するMEMSファンドリーネットワーク企業を中心に企画され、都内と地方都市で年に1回ずつ開催しています。                  
                  
   今回は「MEMS技術を利用した地域活性化」をテーマに、長岡地区の大学や企業と連携してMEMS産業の育成に取り組まれている新潟県総合技術研究所と、にいがたナノ基盤技術実践会、との共催で、地元企業とのビジネス交流を目的として、開催いたしました。当日は、あいにくの雪となりましたが、47名もの参加者を得て、MEMS分野で最先端の研究開発をされている研究者による特別講演と、長岡地区の企業とMEMSファンドリーネットワークの双方からの報告により、MEMS技術の事業への活用について議論する貴重な場となりました。
                  
                  
                  

                  

           写真1 講演会場の様子
                  
                  
                  

                  

   写真2 にいがたナノ基盤技術実践会(共催) 明田川会長
                  
   主催者および共催者の挨拶のあと、1件目の特別講演として、東北大学の田中秀治教授から「スマート社会5.0の鍵を握るMEMS」と題して、ご講演いただきました。IoTにより実現されるスマート社会5.0を支えるMEMS技術として、Epi-Sealプラットフォームにより生み出される様々なセンサや、音声認識やノイズカットなどでいつの間にか身近な製品に浸透しているMEMSマイクロフォンなど、様々なデバイスと、その応用例をご紹介いただきました。MEMSマイクロミラーの応用では、高速位置トラッキングやVRヘッドセットなど、様々な製品へと用途が広がっており、また、MEMSジャイロの高性能化や触覚センサなど、ロボットなど自動で動き回る機械が人と共生する上で必須となるセンサ技術や、大量のセンサを組み込んだシステムでの情報伝達のためのバスネットワークなど、スマート社会5.0を実現するための様々な技術開発が着実に進んでいることもわかりました。田中研究室では、江刺研究室時代から培われているノウハウを基に企業のデバイス開発を陰に陽に支援されており、多くの企業の事業化を実現されておられます。60分という短い時間ではありましたが、MEMS産業の発展に向けた更なるご活躍が期待されるご講演でした。
                  
                  
                  

                  

         写真3 特別講演1 田中先生
                  
                  
                  

                  

         写真4 特別講演2 河合先生
                  
   続きまして、2件目の特別講演として、長岡科学技術大学の河合晃教授より「新潟県地場産業とMEMSデバイス産業との懸け橋」と題して、ご講演いただきました。新潟県は、非鉄金属加工が盛んな工業地帯であり、MEMSデバイスの活用による産業の更なる活性化が期待される地域であることもわかりました。また、河合研究室での研究内容として、自然災害に備えた計測技術(地震計測など)や生体燃料を用いた燃料電池、植物の成長促進に向けて開発されたバイオチップ、ナノバルブの観察手法など多岐にわたる技術をご紹介いただきました。特にバイオチップで植物のpH値を適切に制御することで成長を促進する技術は、遺伝子操作や品種改良によらず食料を増産可能な技術として期待されます。河合教授は、開発した技術の事業化を支援するベンチャーを立ち上げられており、企業と連携した研究成果の事業化が期待されるご講演となりました。
                  
                   ここでいったん休憩を挟み、休憩明けからは長岡地区の企業から3件のご講演と、ファンドリーサービス産業委員会からのファンドリーサービス内容をご紹介させていただきました。長岡地区から最初のご講演は、ナミックス株式会社の榎本利章氏より、「アンダーフィルのシミュレーションから見えるもの」と題して、フリップチップパッケージを対象としたアンダーフィルの流動・応力・疲労解析技術についてご紹介いただきました。研究開発費比率が10%弱と高く、2014年にはグローバルニッチ企業100選にも選定された企業で、技術開発力の高さを垣間見るご講演でした。
                  
                  
                  

                  

        写真5 ナミックス株式会社 榎本氏
                  
   次にヘッドアップディスプレイ(HUD)で世界No1のシェアを誇る日本精機株式会社の中原剛氏より「HUDにおけるMEMS技術」と題して、ご講演いただきました。欧州の高級車を中心に搭載が進むHUDでは、液晶型が主流となっておりますが、将来的にはDMD(デジタルミラーデバイス)やMEMSミラーを用いたプロジェクションタイプにより視認性を改善する方向に技術開発が進むのではないかとのことで、MEMS関連企業にとっては、心強いご講演となりました。
                  
                  
                  

                  

        写真6 日本精機株式会社 中原氏
                  
                   長岡地区の企業からの最後のご講演は、コネクテックジャパン株式会社の小松裕司氏より「MEMSプロセスを用いた半導体基板配線狭ピッチ化」と題して、ご講演いただきました。LSIの多機能化により1チップ当たりの端子数が増えているが、現状の実装技術では端子ピッチとして40μmが限界であり、チップの小型化が進んでも端子ピッチの制約でパッケージサイズが律速されつつある現状と、この課題のブレークスルー技術として開発中の配線とバンプの一括転写技術について、ご紹介いただきました。この技術は、流体MEMSのチップ作製に用いられる厚膜レジストによる型作りと、PDMS(ポリジメチルシロキサン)への精密転写の技術を応用しており、PDMSの離形性の良さを活用してバンプと配線パターンを一括して基板上に転写することで、端子の狭ピッチ化を実現されておられます。開発中の技術とのことですが、スキージでクリームはんだを基板上に転写する印刷法に代わる技術として、実用化が待たれます。
                  
                  
                  

                  

     写真7 コネクテックジャパン株式会社 小松氏
                  
  MEMSファンドリーネットワークからは、産総研、MNOIC、大日本印刷、メムスコアからMEMSの開発支援から量産までを網羅した4件の技術紹介をいたしました。最初にファンドリーサービス産業委員会の浅野委員長より、「MEMSファンドリーネットワークとサービスのご紹介」と題しまして、MEMSを開発したい企業を支援する仕組みをご紹介させていただきました。所属機関からは、産総研の高木総括研究主幹より、集積マイクロシステム研究センターで開発してきた様々なMEMS技術について、ご紹介いただき、その産総研の設備を運用してMEMS開発を支援するMNOICの紹介をMNOIC開発センターの原田氏よりいたしました。ファンドリー企業からは、大日本印刷の中本氏より「大日本印刷MEMSファンドリーご紹介」、メムスコアの慶光院氏より「メムスコアのビジネス」、と発表が続き、本講習会の最後に部屋を移動してファンドリーサービス産業委員会の企業による技術相談会を開催いたしました。別会場ではありましたが、多数の参加者に足を運んでいただき、予定の時間を過ぎても活発な議論が交わされ、MEMSデバイスの開発を目指す企業の裾野が拡がっていくことが期待できる講習会になりました。今後、講習会に参加された方々とMEMSファンドリーネットワークとのコラボによる製品開発がなされることを期待いたします。
                  
   また翌日は、長岡技術科学大学の見学会を開催いたしました。長岡技術科学大学は、企業の人事担当者から見た大学のイメージ調査で、総合ランキング1位を獲得されており、特に学生の行動力が高く評価されているそうです。地域の高等専門学校からの編入者が多く、長期間にわたる企業での実習プログラムなどもあり、実践的な技術の開発を主眼とした教育を進めておられます。研究室の見学では、前日の講習会でご講演いただきました河合晃教授のナノマイクロ研究室と、明田川教授のピコメートル・ナノメートル研究室の見学をさせていただきました。河合教授の研究室では、デバイスの設計から試作、パッケージングまでを一貫して行える設備を揃えられており、自らの力で発想を具現化することで、実践力のある学生を育成されておられます。対象とされている分野として、原子間力顕微鏡を用いたナノスケール解析・加工技術から地震計測、燃料電池、植物育成制御用バイオチップなど、多岐にわたる技術をご紹介いただきました。研究成果の実用化に向け、企業での事業化の支援を目的としたベンチャーを設立されており、実社会への研究成果の普及に力を入れられているのが良く分かりました。また、明田川教授の研究室では、原子スケール精度の計測に取り組まれており、精度向上のための温度変動の抑制や低熱膨張率材を用いた装置など、様々な実験装置をご紹介いただきました。また、リニアスケールの格子としてグラファイト格子を利用し、その格子間隔を走査型トンネル顕微鏡で捉えたり、レーザ干渉計の波長安定化ために原子の励起周波数を利用されるなど、大変興味深い技術もご紹介いただきました。改めて、長岡技術科学大学での見学会を企画いただいた方々に感謝いたします。
                                                  (産業交流部 小出晃)

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2017年2月15日 (水)

第33回先端技術交流会の報告

 2月14日(月)の午後、マイクロマシンセンター新テクノサロンで第33回マイクロナノ先端技術交流会を開催しました。

 今回のテーマは「グリーンIoT 社会に向けたMEMS の新たな取組み」として、東北大学 多元物質科学研究所の教授 栗原一恵先生からは「ナノトライボロジーによるMEMSへの新たな期待」と題して、そして、東京工業大学 科学技術創世研究院院長である、教授 益 一哉先生からは「IoT社会に向けた、異種集積MEMS技術の新展開」と題してご講演をいただきました。
 
 最初の栗原先生からは、従来マクロスケールで議論してきた巨視的な物理現象から、ナノスケールの表面物理を考慮すると新しい可能性があることが示されていました。例えば、異種の物体の間に液体を挟んだ構造で、数nmのギャップでは斥力が極単に強くなったり、あるいは接着力になったり従来、議論されてこなかった新たな現象が現れることを示されていました。その他、イオン液体中へのシリカ分散や、化粧品の感触を決める表面状態、ナノインプリントのより精細な精密転写に向けた樹脂材料の最適化等、ナノ材料・ナノトライボロジーによって新たな可能性を示していただきました。今後のMEMSの特性改良だけ出なく、新たなデバイスの展開の繋がる可能性を示していただきました。


講演を行う栗原先生

 東京工業大学の益先生からは、IoT社会に向けたMEMSデバイス、MEMS集積技術についてご講演をいただきました。最初にAuを錘に用いた加速度センサの内容について説明をいただきました。Auは柔らかいイメージがあるが、単位体積当たりの重さが大きく、小型、低ノイズに向いている構造であることが示され、また、カンチレバーの梁を10ミクロン以上のAuで形成することで高い安定性を示されていました。Auは柔らかい材料ではあるが、MEMSの錘や梁としても設計に応じて十分良い特性が得られることが分かりました。
 そして、CMOSプロセス後にAuの錘を用いた1チップの加速度センサモジュールを示されていました。

 

講演を行う益先生

 ご講演後には両先生ともに、活発な質問が多くありました。特に印象に残ったのはIoT社会に向けての振動発電の考え方についてでした。“最適な振動発電はどれですかと良く聞かれるが、そのようなものはない。振動周波数や、加速度、あるいは連続振動やインパルス振動。環境によって使い分けが必要である。” とお考えを示されました。

 また、東京大学先端技術研究所の年吉教授も出席されており、IoT社会についてご研究の内容をもとにアドバイスをいただきました。

 また、講演会後の懇親会では、ご講演いただいた先生方を囲んで、栗原先生の回りでは、ナノトライボロジーやイオン液体について、そして、益先生の回りではIoT社会に向けたセンサ端末や自立電源について、夜遅くまで多くの意見交換が行われていました。


講演後歓談する両先生

(産学交流担当 今本 浩史)

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2016年10月21日 (金)

第26回MEMS講習会 開催報告

2016年10月21日に一般財団法人マイクロマシンセンター(MMC)の新テクノサロンにおいて、第26回MEMS講習会「IoTを支えるセンシング技術、”見える化“ に取り組むIoT活用事例」を開催致しました。MEMS講習会は、MEMS協議会に所属するMEMSファンドリーネットワーク企業を中心に企画され、都内と地方都市で年に1回ずつ開催しています。

今回のテーマであるIoT(Internet of Things)は、情報機器だけでなく全てのモノがインターネットによって繋がれる世界ですが、どのような場所で、どのように利用され、どのような効果を生み出しているのか、イメージできない方も多いと思います。そこで、様々なフィールドで新たなセンシング技術による”見える化”に取り組んでいる大学や、ソリューションとしての”見える化”を提供している企業に、その活用事例をご紹介いただくことで、より多くの方々にIoT活用のヒントをお持ち帰りいただければと考えて企画いたしました。

今回の講習会には、IoTを活用した”見える化”に興味を持っている企業を中心に41名が参加し、特別講演2件、IoTソリューション企業からのご講演3件、ファンドリー企業紹介3件の8件の発表を聴講いたしました。

         Photo_4           

               写真1 講演会場の様子

            Photo_6            

      写真2 主催者挨拶 マイクロマシンセンター長谷川専務理事

講習会は、一般財団法人マイクロマシンセンターの長谷川専務理事による主催者挨拶のあと、本日1件目の特別講演といたしまして、東京大学の伊藤寿浩教授から「装置・人間環境を”見える化”― 低消費電力IoT端末 ― ”鹿威し”センシング技術」と題して、ご講演いただきました。無線を用いたモニタリングで課題となる電源からの帰結としてのセンサ端末のめざすべき姿など、示唆に富んだお話を伺うことができました。装置や人間環境などをモニタリングするには、ばら撒く感覚で使えるセンサ端末が必要であり、センサ端末の機能を絞り込むことで実現する低消費電力化が必須となります。前半では、鶏健康モニタリングシステムでの試みをご紹介いただきました。低消費電力化には、待機電力と通信電力の最小化が重要であり、1)片方向通信、2)イベントドリブン化、3)短通信電文化、の技術により実現されたそうです。これは、電源を持つ受信機の機能を高度化することで、センサ端末の負担を極限まで減らす戦略といえます。また、鶏など、多くのモニタリング対象物の状態変化のスパンが長いことに着目し、多数のセンサ端末からのデータがランダムに送信された時のパケット衝突がモニタリングを阻害しないことを実証し、双方向通信が必要な時刻同期を不要としています。ご講演の後半には、NEDO委託研究「ライフラインコアモニタリング技術開発プロジェクト」で開発中の鹿威しセンシングについて、ご紹介いただきました。装置の軸受け部などに振動発電端末を装着し、その発電量が一定量を超えたら信号を送信するというもので、その信号頻度から装置の状態をモニタリングするという鹿威しの水を振動による発電量に置き換えたシステムになっておりました。必要最小限の電力でモニタリングするシステムとして、その可能性を感じた方も多かったと思います。


             Photo_7         

             写真3 特別講演1 伊藤先生

続きまして、IoTソリューション企業から3つのご講演をしていただきました。最初は、富士通株式会社の藤野克尚氏から「課題を”見える化”―IoTで価値あるデータをご提供」と題して、富士通が進めるヒューマンセントリックIoTについて、ご講演いただきました。IoTの導入には、多大なコストが掛かることから導入を躊躇するユーザーも多いと思いますが、富士通ではIoTを導入する前に効果を検証できるパイロットパックを用意しており、導入の敷居を下げてくれています。IoT活用事例として、位置測位による作業効率の最適化や、音センシングによるプライバシーに配慮した見守りなど、ユーザーの使いやすさを優先した活用事例を多数ご紹介いただいたことで、聴講者も自社で活用する際に気を付けるべきことなどをイメージできたのではないかと思います。

2件目のご講演では、みずほ情報総合株式会社の武井康浩氏に「様々な分野で進むIoT活用の試みとビジネス応用 」と題して、ご講演いただきました。IoTでは、インターネット経由でネットワーク上に蓄積した膨大なモノに関わる情報を加工・分析することで、新たな価値を創造しています。この新たな価値は、「コスト削減」や「売上拡大」などの形で、利用者に利益をもたらすとのことで、従来のモノだけの提供ではなく、価値の提供へとビジネスの拡がりが期待されます。様々な業種での活用事例をご紹介いただきましたが、活用事例の多くは、①効率化や安全性向上につながる活用、②サービス化を促進するための活用、の2つに整理できるそうです。個人的に興味を持ちました活用事例は、モノづくり企業が持つ設備の稼働状況をモニタリングすることで、その有効活用を図るスマートマッチングというものです。MEMSのように製品や装置毎にレシピが異なる状況では難しいかも知れませんが、装置が不足している企業と、装置の稼働率を上げたい企業のマッチングを図る取り組みは、とっても興味深いかと思います。

3件目のご講演では、アルプス電気株式会社の稲垣一哉氏より「現場環境を”見える化”- IoT環境の簡単構築」と題したご講演をしていただきました。アルプス電気では、センサや通信モジュールを製品として持っていたため、その組み合わせで新たな価値を生み出すセンサノードの開発に取り組まれたそうです。ただ、新規事業開拓の道程は平坦ではなく、様々な業種の企業からの引き合いが多数あるものの各ロットは小さく、ビジネスに結び付けるのは難しかったそうです。そこで、顧客毎に製品を開発するのではなく、事業開発キットの位置づけで75%のユーザーを満足させる標準的なセンサネットワークモジュールを開発し、顧客に提供することでニーズを汲み上げる戦略に切り替えられたそうです。今後は、サーバにデータを収集し、そのデータを解析することで新たな価値を創造するなどの取り組みを様々な企業との協業で進めていくとのことで、講習会の参加者の中から協業企業が生まれることを期待したいと思います。

ここでいったん休憩に入り、休憩明けには本日2件目の特別講演と致しまして、東京大学の三宅亮教授より「水を”見える化”― 地域ニーズに即したオーダーメードの小型水質検査システム」と題して、ご講演いただきました。三宅先生は、私たちの飲み水の状態を監視する水質検査装置の研究開発に長年取り組まれており、特に小型化での造詣が深い方です。電話ボックス並みの大きさがある水質検査装置にMEMS技術を適用することでA4サイズにまで小型化され、従来は浄水場や公園など、土地を確保できる場所のみに限定さえていた水質検査装置の設置場所をどこにでも設置できるようにされています。今回のご講演では、地域による水質検査への要求仕様の違いに柔軟に対応できるスマート水質モニタリングシステムについて、ご講演いただきました。このシステムでは、フィルターや濃縮器、ポンプなどを統一規格(サイズ、接続など)のブロックで作成し、同様に検査項目毎の分析ブロックも作成することで、地域のニーズに即してブロックを接続するだけで最適なシステムを構築できるようにしています。また、水質検査のような試薬を用いた分析では、様々な環境で利用いたしますと流体系への負荷が異なるため分析条件を一定に保つことが難しくなり正確な分析が阻害されます。そこで、理論的に構築した解析システムでバーチャル水質分析計をサーバ内に構築し、実機の状態を反映させて解析することで、分析結果に現れる外乱分を補正して正確な分析を実現できるようにされています。リアルな分析計とバーチャルな分析計をリンクすることで、正確な分析を実現するシステムは、他の分野への展開も期待でき、大変興味深いご講演となりました。

            Photo_8          

            写真4 特別講演2 三宅先生

最後のコーナーでは、本講習会を企画したファンドリーサービス産業委員会から3件のご報告をさせていただきました。最初に本委員会を代表いたしまして浅野雅郎委員長より「MEMSファンドリネットワークの活動とサービス紹介」と題して、委員会の活動状況を報告いたしました。また、委員会を構成する企業からは、富士電機株式会社の鮫島友紀氏より「富士電機のMEMS技術・製品紹介」と題して、富士電機の歴史から製品化したMEMSデバイスまでを紹介させていただきました。最後は、大日本印刷株式会社の中谷武史氏より「大日本印刷 MEMSファンドリー紹介」と題しまして、大日本印刷のファンドリー技術の特徴をご紹介させていただきました。

今回の講演会では、できるだけ多くの活用事例のご紹介をお願いした関係で、どの発表も時間いっぱいを使ってのご講演となりましたため、十分な質疑応答の時間を取ることができませんでした。その影響か講演会終了後に講師の方々を囲んだ質疑応答の時間が自然に発生し、なかなか懇親会場へ移動できないという事態に至り、質疑応答の時間を十分に取れなかったことを反省した次第です。

懇親会会場に移動後も講師の方々へのお悩み相談が続いておりましたが、特に印象深かったことは、実際に販売しているセンサモジュールとスマホによるデモを見せていただけたことで、やはりモノがあると理解も捗るということを再認識いたしました。今回の講習会は、活用事例を中心に構成いたしましたが、これをきっかけに参加者の間で交流が進み、新たなビジネスチャンスに繋がれば幸いです。

 

(産業交流部 小出晃)

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2016年9月20日 (火)

第32回先端技術交流会を開催しました(9月20日)

 9月20日(月)の午後からマイクロマシンセンター新テクノサロンで開かれたマイクロナノ先端技術交流会を開催しました。
 今回のテーマは「バイオとエレクトロニクスの融合の新展開。サブタイトルとして、「生体とデバイスのしなやかで細やかな出会い」として、人とデバイスをつなぐ最新の取組みを、東京大学生産技術研究所教授の藤田博之先生からは「MEMSとバイオの融合ナノシステムの取組み」、東京大学工学研究科教授の染谷先生からは「人と機械を調和する伸縮性エレクトロニクスの最善性」と題してご講演をいただきました。
 
  最初の藤田先生からは、バイオMEMSに関して、藤田先生の幅広いグローバルネットワークと、これまでのバイオMEMSの取組みを多くご紹介いただきました。 シリコンナノピンセットを用いて、DNAの放射線治療のダメージをリアルタイムで評価するなど、今後のがん治療や早期診断に活用できるのではないかと思うような、興味深いお話をいただきました。

 また、最後には現在NEDOのプロジェクトで取り組んでいる環境振動で発電する、高効率エナジーハーベスタについてもご紹介いただきました。染谷先生の講演にも関係しますが、環境発電は配線レス、電池交換不要という観点で今後応用が急拡大していくと感じました。
 
 東京大学の染谷先生からは、人の肌に張り付けられる伸縮性の有機デバイスを中心にご講演をいただきました。染谷先生のご講演は何年ぶりかにお聞きしましたが、技術的に大きく進展しており驚きました。 有機デバイスの厚みが数ミクロンの薄さとなり、生体にぴったりと貼りつき、身に着けていることを忘れるほどになっています。 また、伸縮性が高いと信頼性等で課題が生じるイメージがありましたが、実用に近い信頼性を確保していました。 この技術は、ウェアラブルデバイス、バイタルセンシングなど、トリリオンセンサ社会に向けて、応用範囲が急拡大していくと感じており。 実用化に向けては電源、生体適合性、無線通信等まだやることがあると思いますが、新たなビジネスとして拡大していくのではないかと感じました。

 また、講演会後の懇親会では、ご講演いただいた先生方を囲んでバイオエレクトロニクス、ウェアラブルエレクトロニクスの今後の展望について活発な意見交換が行われました。                 

<産業交流部 今本浩史>


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