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2020年2月25日 (火)

第3回SSN-WG3交流会「高精度時刻の社会実装の意義と課題」(2月5日)開催報告

 2020年2月5日(水)15:00~18:40の予定でマイクロマシンセンター会議室にて第3回SSN-WG3交流会「高精度時刻の社会実装の意義と課題」及び意見交換会を開催致しました。

 スマートセンシング&ネットワーク研究会ワーキンググループ3(SSN-WG3)では原子時計の研究開発に関する活動を行っており、2015年~2018年にNEDO道路インフラモニタリングプロジェクトの中で高精度(10ms@30カ月)と低消費電力(60mW)を両立した小型原子時計(ULPAC : Ultra-Low Power Atomic Clock)の開発を行いましたが、さらなる原子時計の高度化に向けたプロジェクト立案活動を行っており、その一環として、小型原子時計が社会実装された時に、どのような社会変革が起きるかを議論する場として本交流会「高精度時刻の社会実装の意義と課題」を開催しております。

 第3回の今回は、東京大学IoTメディアラボラトリーの後藤富雄スペシャリストから「IoT研究者の立場から「超小型原子時計への期待」」と題するご講演と筑波技術大学産業技術学部の倉田成人教授から「地震防災と社会インフラの維持管理における超小型原子時計の応用」と題するご講演を頂きました。この分野に関心のあるメーカ、ユーザ、商社、研究機関を含め36名の参加者があり、活発な議論がなされ、大盛況でした。

 先ず初めに、主催者の一般財団法人マイクロマシンセンターの長谷川専務理事より、開会の挨拶として、マイクロマシンセンターの活動の歩みの紹介の後、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」の2次募集にマイクロマシンセンターとして応募していた「量子干渉効果による小型時計用発振器の高度化の基礎研究」が2019年2月24日に採択されましたので、原子時計のさらなる高度化の研究開発を進めることが可能になったことが報告されました。本交流会は原子時計のプロジェクト化を目指した活動ではありましたが、原子時計の普及に向けた活動として、今後も年2回程度開催をしていきたい旨の報告がなされました。

 その後、東京大学IoTメディアラボラトリーの後藤富雄スペシャリストから「IoT研究者の立場から「超小型原子時計への期待」」と題するご講演が行われました。後藤氏は日本電気のPC8000、PC8800等を開発された日本のPC界のレジェンドといっても過言ではないエンジニアの方であり、現在はビルゲイツ氏の寄付による冠講座である東京大学IoTメディアラボラトリーでIoTハッカソン(ハッカーとマラソンを合わせた混成語で、ソフトウェア開発分野のプログラマ、デザイナー、設計者らが集中的に作業をするソフトウェア関連プロジェクトのイベントである)等を実施されています。ご講演ではNECでの開発事例からIoTメディアラボラトリーで実施されているUSBHubや超解像アルゴリズムとその応用開発等の研究紹介の後、超小型原子時計への期待と要望として、GPS端末の精度向上を目指した移動体やスマホに搭載できるような更なる超小型、超薄型、低消費電力の原子時計に期待しているとの要望が出されました。

 2番目の講演は、筑波技術大学の倉田成人教授の「地震防災と社会インフラの維持管理における超小型原子時計の応用」と題するご講演で、これまで倉田教授がなされてきた建物に設置した地震センサによる構造モニタリングや市販の小型原子時計(CSAC:Chip Scale Atomic Clock)を使ったIoT地震センシングシステムの紹介がありました。そのご経験から超小型原子時計は概ね100Hzのサンプリングで1m秒以内の同期精度が保たれ、できれば1年程度は同期精度を保持できるか容易な補正手段があり運用で解決できることが必要であるとともに国産の超小型原子時計の販売とサポートが受けられることを期待したいとの要望が出されました。

 講演会の後、ご講演頂いた講師の方々を囲んで、有志で意見交換会が行われ、国産原子時計開発に向け、活発な意見交換がなされました。意見交換会は、予定の18:40を大幅に延長し、20:00過ぎまで参加者間の密度の濃い議論がなされ、大いに盛り上がりました。

 次回の交流会は2020年の夏頃に開催を予定しています。

(一般財団法人マイクロマシンセンター 武田宗久)

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