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2019年12月 6日 (金)

PowerMEMS2019 参加報告

 2019年12月4日から6日にかけて、ポーランドのクラクフにおいて、第19回目となるThe 19th International Conference on Micro and Nanotechnology for Power Generation and Energy Conversion Applications(以下PowerMEMS2019)が開催され、研究発表と討議が行われました。またそれに先駆けて、122日から3日にはPowerMEMS schoolが開催され、主に学生を対象に講義等が行われました。本会議は、2000年に第1回を仙台で開催して以降、日本国内での開催が続き、2006年より北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの順に開催される現在のスタイルとなりました。今回開催のクラクフは、ポーランドの中でも最も歴史のある街の一つであり、17世紀にワルシャワへ首都が遷都するまでは、ポーランド王国の首都であったため、工業や文化の中心地として栄えており、また旧市街には、歴史的な建造物が多く残っていました。

 

 本会議では、エネルギーハーベスティング全般に関しての発表、展示があり、例年150件〜200件程度の投稿件数です。今回に関しては投稿数などの発表こそなかったものの例年と同程度の投稿数であった様です。また、これまでPowerMEMSという学会名ではあるものの、MEMSに限定したものではなく、むしろMEMS関連の発表は非常に少ない傾向がありました。ただし、今回はMEMS研究に熱心なポーランドでの開催ということもあって、MEMS関連の発表が例年に比較しても非常に多かったです。ただし、今後も増えていく、というよりは今回に限ったことでもある様に感じました。発表形式は、4件の招待講演、1件のフォーカスセッションは1会場で全員参加の形式、その他の一般講演は2会場に分かれてのパラレル形式でした。

 

 基調講演4件に関しては、宇宙開発、カーボンナノチューブ、熱電子発電、そして摩擦発電のHMI・インプラント応用に向けて、がそれぞれ発表されました。また、フォーカスセッションとしては、宇宙用マイクロデバイスに関して1件の発表がありました。また、ここで、主に振動発電の応用分野に注目して発表を整理すると、風や波といった自然現象を利用したものとして、洋上風力発電のブレードモニタリングに関しての発表が2件、波力発電に関しての発表が2件、風力発電の発表が3件ありました。また、移動体を利用したものとして、鉄道車両に関する発表が1件、タイヤに関する発表が1件、自動車排ガスに関する発表が1件でした。また、人間や動物の動きに関連したものとしては、ウェアラブルに関する発表が4件、歩行に関する発表が1件、義足に関する発表が1件、心臓ペースメーカに関する発表が1件でした。本プロジェクトでは、工場などにある産業機器の振動からの発電について、研究開発を行っていますが、同じ様な応用を考えている発表はありませんでした。これは、やはり工場の振動は前記した応用分野と比較しても、振動があまりに微小(重力加速度の1/100.1G程度)であるため、大きな発電量を得られる技術は、我々が開発しているMEMSエレクトレット方式の他にないためと考えられます。この強みを生かした製品応用ができれば、非常に優位性を持ったものになると感じました。

 全体を通しての感想としては、近年のPowerMEMSでは非常に振動発電の割合が高かったのですが、他の技術(熱電発電、電力伝送など)の発表が多くなったと感じました。一方で、やはり企業からの発表は少なく、大学からの発表が圧倒的に多いため、実用化に近い物は見当たりませんでした。ですので、我々も、現在開発中の振動発電デバイスをいち早く市場投入することができれば、非常に大きく社会貢献できると感じました。

技術研究組合NMEMS技術研究機構 主任研究員 三屋 裕幸

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