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2019年5月23日 (木)

2019 第25回「国際マイクロマシンサミット」(中国,西安) 開催報告

マイクロマシンサミットは、年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/ナノテクノロジーに関する課題や展望につき意見交換する場です。日本の提案により1995年3月に京都で開催されたのが始まりで、以後、各国持ち回りで開催されています。
2019年は5月6日(月)から9日(木)まで中国の西安で開催されましたので報告致します。中国での開催は2006年の北京,2013年の上海に続く3回目になります。今回のトピックスは”Intelligent Manufacturing: Start from micromachine on a chip”でした。日本からは東京大学の伊藤寿浩教授を団長に、産総研の前田龍太郎先生とマイクロマシンセンターの国際交流担当として武田の3名が出席しました。今回のオーガナイザは、西北工業大学のYuan Weizheng教授でした。日本とも関係の深い古都長安(現在の西安)の西市場(現在残っています市城壁の南西角の外ではありますが、長安の時は城壁の中の西門の近くにあった国際市場)だった場所に建てられたTang Dynasty West Market Hotel(写真1:会場のホテル外観,写真2:会場前の看板)で開催されました。ちなみに東門の近くにありました国内市場だった東市場の場所は,現在は西安交通大学になっています.
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写真1 開催場所のTang Dynasty West Market Hotel外観

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写真2 会場前の看板

今回はタイが新たに加わり、22の地域から64名のデリゲートの登録がありましたが、ビザの関係でラテンアメリカ、イギリス、インド、パキスタンの4地域のデリゲートの欠席があり、デリゲートとしては60名の参加になりました。最も参加者の多かったのは開催国の中国で15名、次いでドイツの7名、イタリアの6名でした。会場での集合写真を写真3に示します。
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写真3 会場での集合写真

第1日目はYuan Weizheng教授の開会の挨拶(写真4:Yuan Weizheng教授の開会の挨拶の様子)の後、各国の現状を報告するカントリーレビューの発表がありました。オーストラリア、ベネルクス、カナダ、中国、EC、フランス、ドイツ、イベリア半島、イタリア、日本、韓国、マレーシア、オランダ、ルーマニア、スイス、米国、シンガポール、タイの順番で報告がありました。各国の産業&技術政策状況、特にIntelligent Manufacturingに関する話題提供があり、日本からは伊藤団長より経産省が進めているConnected Industries及びMEMSやIoTに関する国家プロジェクトの紹介がなされました(写真5:伊藤団長のプレゼンの様子)。また、ECからはDr. Petra Weilerより、新しい5E(Federating European Ecosystems, nano-Electronics, Electronic smart systems, flexible Electronics)プロジェクト等の紹介がありました(写真6:Dr. Weilerのプレゼンの様子)。また、おもしろかったのはスイスから5G通信の世界の話が多くなされているが、本当に5G通信が必要かどうか、4G通信だけで十分ではないかとの問題提起がなされたことでした。時計のスイスらしくCeramic X.0としてセラミックの高精度マイクロ加工によりアナログ時計部品を製造している等の紹介がありました。
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写真4  Yuan Weizheng教授の開会の挨拶の様子

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写真5 伊藤団長による日本のカントリーレビュー報告の様子

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写真6 ECの Dr. Weilerからの5E紹介プレゼンの様子

2日目、3日目は、各国、地域のデリゲートから個別話題の提供があり、計19件の発表がありました。伊藤団長は2日目の午前のセッションの議長もされました(写真7:伊藤団長の議長の様子)。日本からは武田より「Road Infrastructure Monitoring System Development Project(RIMS)」と題してRIMSプロジェクトの紹介を行いました(写真8:武田のプレゼンの様子)。イタリアからイタリアでは最近落橋事故があり、このような技術は重要であるとのコメントを頂きました。個別話題発表では大学や国立研究機関の発表が多かったですが、主要MEMS企業からはBoshとSTMicroelectronicsからの発表があり、どちらの発表でも、MEMSセンサのキートレンドは超低消費電力、高性能、知能組込みであると主張していました。IoT社会において、今後センサは単なるセンシングを行うだけではなくセンサにおいてある程度の情報処理を行ったスマートセンサとして、あらゆるところでの常時モニタリングを実現するフロントエンドとして発展していく世界がすぐそこに来ていることを強く感じました。また、BoshではMEMSデバイスの工場は中国にはつくっていないですが、ユースケース開発のために23のテクニカルセンターを中国において、2007年より中国で積極的な投資を行っているとのことでした。
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写真7 伊藤団長の議長の様子

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写真8 武田のプレゼンの様子

テクニカルツアーとしては、今回議長を務めたYuan Weizheng教授の西北工業大学と空軍の航空機管制研究所の見学がありました。西北工業大学は航空機分野で有名な大学であり、そのためMEMSデバイスの開発としても、航空機の翼に搭載して流れを制御するスマートスキン、竹の表面に氷が付かないことから竹の表面構造を模擬した翼に貼る防氷構造、オプティカルミラーを使った3次元イメージキャプチャーのデモ等を見学しました。また、銃の照準器用のIRカメラ等の開発も行っていました。セキュリティが厳しいため、写真撮影はあまり行えませんでしたが、西北工業大学のState key Laboratory of Intelligent Microsystem for Harsh Environmentsの看板の前での写真を写真9に示します。もう1箇所の訪問先は中国空軍の航空機管制研究所で西安の郊外に1年前に建設された立派な研究所でしたが、セキュリティが厳しく、スマホ等も預けて見学しましたが、研究所のビデオと航空管制コンポーネントの製品を見せられただけで、殆ど中身のないものでした。
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写真9 西北大学の看板の前での写真

マイクロマシンサミットでは、会期中の交流会で、その国の文化を理解するカルチャーイベントが楽しみですが、今回は西安で開催されましたため、有名な兵馬俑(写真11)の見学と中国劇の鑑賞がありました。兵馬俑は写真10に示すように、圧巻であり、多くの見学者が来ていました。中国劇はプロジェクションマッピングも駆使され、幻想的なものでした。また、バンケットは西安で有名な飲茶レストランで行われました。
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写真10 兵馬俑

次回の開催場所を議論するチーフデリゲート会議(ランチミーティング)は通常はチーフデリゲートだけの会議ですが、今回は4か国の欠席があったためか、これまで中国のチーフデリゲートを長年務められ、今回も名誉共同議長をされていた精華大学のZhou Zhaoying教授より創設者のMMCとして参加して欲しいとの依頼があり、参加させて頂きました(写真11:チーフデリゲート会議の様子)。イタリアのDario教授から、前回のMMS2018において候補の上がっていたルーマニアと新たにオーストラリアが候補として推薦され、議論の結果、次回はルーマニアのブカレストで、次々回はオーストラリア、その次はカナダで開催ということに決まりました。次回のMMS2020の開催月は例年通り5月に行い、オーガナイザーはNational Institute for R&D in Microtechnologies-IMT BucharestのAdrian Dinescu会長が務めることになりました。また、推奨テーマとして、気候変動に係るMEMS技術に決まりました。さらに、Dario教授より、テーマは毎回決めているが、各国のカントリーレビューでは様式が様々になっているので、様式を決めて発表しようとの提案もなされました。
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写真11 チーフデリゲート会議の様子

(MEMS協議会 国際交流担当 武田 宗久)


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