AEWG-60 参加報告
今年で60回目となる米国AE会議(AEWG: Acoustic Emission Working Group Meeting)がサウスカロライナ大学のPaul Ziehl教授のホストで開催された。本会議は、AEに特化した国際会議として、大学はもとより、企業や公的機関からもAEに関するあらゆる技術、システム、応用事例に関する報告がなされる場である。本学会に参加し、AE技術のビジネス展開に着目し、調査を行った。今回は6セッション37件の講演発表と7件の企業講演があり、56名(米国39、日本5、英国5、中国3、ドイツ3、韓国1)の参加者があった。以下に、いくつかの講演を抜粋して概要を報告する。
<開催概要>
Meeting date: Jun 19-20, 2018
Venue: Miles House Hotel, Charleston, SC, USA
Host & Program Chair: Prof. Paul Ziehl (University of South Carolina)
セッション:(括弧内は講演件数)
1) Keynote I (1)
2) Technical Session I : Infrastructure (4)
3) Technical Session II: Infrastructure (5)
4) Commercial Presentations (7)
5) Technical Session III: Aerospace & Composites (4)
6) Technical Session IV: Aerospace & Composites (3)
7) Keynote II (1)
8) Technical Session V: Sensors/Sensing/Signal Analysis/ Modeling (5)
9) Technical Session VI: Sensors/Sensing/Signal Analysis/ Modeling (4)
10) Technical Session VII: Fatigue/Fracture (5)
11) Technical Session VIII: Fatigue/Fracture (5)
■Keynote, Lee Floyd, P.E.(recently SCDOT: South Carolina Department of Transportation)
元サウスカロライナ交通局のエンジニアのLee Floyd氏による講演。管理者の立場から点検やモニタリングの現状に関する発表があった。米国ではNBIS((National Bridge Inspection Standards)と呼ばれる橋梁の点検基準があり、それに基づいた点検を実施しているが、モニタリング技術の進展によって、”Good”と”Poor”の中間領域を管理できるようになることに大きなメリットがあるとのことである。安全性を向上するだけでなく、不必要な荷重制限の緩和や、修復or架替えの判断にも役立つことが期待されるとのことであった。今後は、ロングスパンの橋梁に対するモニタリング需要が増えるだろうとのことである。
■”A Deep Learning Approach to Localization of Acoustic Emission Sources in Plate-like Structure with One Sensor,” Arvin Ebrahimkhanlou (University of Texas at Austin)
テキサス大のDeep Learningを使ったAE源位置標定に関する発表である。本発表は航空機のモニタリングをターゲットとし、複合材プレートのリベット付近からAEが発生することを想定している。従来の位置標定は、複数センサ間の時間差をもとに、位置を推定する方式が一般的であるが、本アプローチは1センサで位置標定まで行うという点で新しい発想である。プレート内のあらゆる位置からAEが発生した場合のセンサ波形の特徴を事前に学習させることで、1センサでもある程度の位置標定が可能であるという内容であった。今回のAEWGではAEの信号処理にDeep Learningを活用した事例が出てきており、今後も同様の傾向は続くとみられる。
■”Using Artificial Neural Network in a Methodical Approach to Develop Suitable Classification Systems of Acoustic Emission Data Generated in Tribological Contacts,” Knut Wantzen (Karlsruher Institute fur Technologie)
カールスルーエ工科大学からはIndustry4.0の実例ともいえる、製造工程でのAE応用事例に関する報告があった。旋盤のシャフト加工時に発生するAEを基に、製造工程の品質制御(Quality Control)を行っている。従来数量ベースでチップ交換を行っていたものを、AEによるモニタリングデータを活用し、品質ベースでの交換を行うようにした、という内容である。AEパラメータの時系列変化を学習し、品質(良/不良)を判定するニューラルネットワークを構築し、交換時期を決定している。シンプルな内容であるが、AEの特徴を上手く活用したIoTの王道とも言える事例である。
■”A Review of the Application of Acoustic Emission Testing in Composite Repair,” Fady F. Barsoum and Isabel M. McBrayer (Embry-Riddle Aeronautical University)
エンブリー・リドル航空大学から、複合材料の修繕を評価するためのテストとしての非破壊検査手法に関する包括的なレビューがあった。航空宇宙分野、船舶、自動車などで複合材料が広く使われるようになってきているが、一度損傷すると極端に強度が下がるという面がある。また、劣化予兆を検知することが難しいとのことであった。複合材料は損傷があれば交換がスタンダードで、修復は一般的ではなく、コスト高につながっているとのことである。修復と強度に関するデータベースが増えれば、積極的に修復することでコストを抑えられる。世の中の非破壊検査手法をレビューした結果、稼働中の損傷を検出できるという点でAE法には他の手法にない大きなメリットがあるとの結論であった。
次回は2019年、IIIAEとのジョイント開催でイリノイ州シカゴでの開催が予定されている。
(技術研究組合NMEMS技術研究機構 碓井隆)
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