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2018年1月

2018年1月31日 (水)

第6回MEMS協議会・海外調査報告会を盛況に開催

 第6回MEMS協議会海外調査報告会を1月31日に新テクノサロンで開催し、約50名の方にご参加いただきました。このイベントはマイクロマシンセンター/MEMS協議会(MIF)が行っているMEMS関連の海外調査及び国際標準化の最新状況について国際交流事業の一環として報告するものです。毎年のように北米や欧州を中心に学会等のイベント、海外の大学や研究施設、関連企業の訪問見学の報告を行ってきましたが、今回は前回に引き、欧州の橋梁モニタリングに関連する報告を、特別報告として企画致しました。
                  
                  

                  
                   


                    写真1 会場の様子

                  
                  

                  
                   MEMS協議会事務局長・長谷川英一からの主催者挨拶のあと、最初の報告は特別報告として「海外における橋梁・大規模モニタリングの現状と動向」と題して技術研究組合NMEMS技術研究機構の武田宗久氏から、最初にオーストラリアのブリスベンコンベンションセンターにおいて開催されたアセットマネージメントの国際会議である12th World Congress on Engineering Asset Management (WCEAM2017)への参加報告、日本より先行していろいろな活動が行われている海外の橋梁・大規模インフラモニタリングの現状を把握するため、欧州各地の橋梁:van Brienenoord橋(オランダ)、Marchetti橋(イタリア)、Chillon高架橋(スイス)、Sydney Harbor橋(オーストラリア)等の長大橋、発電施設であるBéznar ダム(スペイン)、遺跡建造物であるVenaria宮殿(イタリア)やEl Giraldillo(スペイン)等の大規模インフラの現場等を訪問し、その管理、モニタリングの実態に関する報告がありました。報告者の感想では、欧州は橋梁等のインフラモニタリングは日本よりも進んでいるが、センサは既存の物であって有線接続を使っている。日本はセンサの開発や、無線応用、エネルギーハーベスタ等の技術を平行して進めており、技術的にはむしろ進んでいるとのことです。
                  
                  

                  
                   


                    写真2 武田氏から報告

                  
                  

                  
                   続いて、「IoT社会に向けたセンサ動向調査と産業動向調査報告」と題して、技術研究組合NMEMS技術研究機構および一般財団法人マイクロマシンセンターの今本浩史から報告がありました。
                   米国MEMS & Sensors Industry Group主催で、2017年11月1日~11月2日の間、米国カリフォルニア州サンノゼにて開催されたMEMS                   & Sensors Executive Congressに、IoT社会にむけたMEMS&センサの動向調査の一環として参加したものです。報告者の感想として、産業用IoTに関して様々な事例紹介があったようですが、今までの研究レベルの振動センサによって振動状態のみで故障予測を行うのは、その解釈が困難な場合が多く、他のセンサとのフュージョンが今後重要とのことです。更にバッテリを持たないセンサの発表も紹介されました。更に、産業動向調査委員会にて2025年までのMEMS産業の市場予測を行う取り組みの紹介もありました。
                  
                  

                  
                   


                    写真3 大中道氏から報告

                  
                  

                  
                   次は「マイクロマシンサミット2017」と題してMEMS協議会・国際交流担当の三原が報告しました。2017年の第23回「国際マイクロマシンサミット」は5月15日(月)から17日(水)までスペインのバルセロナで開催されました。今回のトピックスは、”Micro and Nano Systems for Smart Cities applications”です。スペインは、センサやMEMS、無線、半導体や集積回路、ナノ材料と言った複数の専門分野の研究者が同居する研究所が多く、専門領域の融合が進んでいるのが特徴ですが、今回のオーガナイザーは、CNM-CSIC(National Microelectronics Center of Barcelona)の所長Carles Cane教授でした。今回は欧州での開催で参加者も多く、21の地域から73名のデレゲイト、更にスペインからの10名程度のオブザーバの参加もあり、比較的規模が大きいものでした。今まで何年か不参加の期間があった、イギリスやカナダ、オーストラリア等の復帰、更にアイルランドや東欧の新規の参加国もあったのが特徴です。今回はパネルディスカッションとして、バルセロナで実際に中小企業を中心に行われたスマートシティ構想、すなわちエネルギーや交通と言った様々なデータをセンサで取得して、都市の省エネや生活に有効に役立てるための試行の取り組みが印象に残りました。2018年のサミットはアルデンチンのブエノスアイレスで5月14日から16日に開催されます。
                  
                   続いて「MEMS関連の国際会議報告」とのタイトルでMEMS協議会・標準部の大中道崇浩から報告がありました。2017 年 6月 18日~22日に台湾・高雄(Kaohsiung)で開催された、隔年開催の                  Transducer 技術に関する国際会議である、International Conference on Solid-State Sensors,                  Actuators and Microsystems(Transducers2017)の報告がありました。マイクロマシンセンターでは、「国内外技術動向調査」という取り組みとして、MEMS分野の著名な国際会議等をターゲットにした定点観測的な調査を例年行っており、本国際会議はその調査の対象学会です。国内外技術動向調査は、有識者から成る委員によって分析を行い例年報告書として発行しますが、今回は事務局として学会に参加し、今後の調査報告書の作成により具体的・現実的な側面で支援可能と思います。
                  
                   最後は「MEMS国際標準化に関する活動状況」と題して、同じく大中道崇浩から報告がありました。MEMS国際標準化はIEC(国際電気標準会議)で進められており、日本はMEMS分野を担当する分科委員会SC47Fの幹事国として主導的に推進しています。IECの全体会議は毎年開催され、2017年は6月に東京で、10月にロシア・ウラジオストクで開催されました。今回、これらの国際会議を通して、特性計測方法、信頼性評価、エネルギーハーベスティング、スマートセンサ等でのMEMS関連の技術分野における国際標準化の状況についての報告がありました。更に現在、一般財団法人マイクロマシンセンターを中心に取り組んでいるスマートセンサのインターフェースの関わる標準化を日本が主導する取り組みの紹介がありました。
                   MEMS協議会の会員サービスとして始めた本海外調査報告会も6回を数えるほど、長期間継続しています。本会へのご参加はリピータが多いことも特徴で、会員交流の側面も有しています。海外の状況はインターネット等で公開されているとは言っても、中々生の情報や、専門化の印象&感想を聞ける機会は少ないのが現実です。今回もSPPテクノロジーの神永様に貴重なコメントや、報告会の後に行った会員交流会でのご挨拶を頂く等、IoTの最新状況や日本の課題を議論することが出来ました。 最後のこの場を借りて、今後のMEMS協議会への積極的なご参加をお願いしたいと思います。
                  
                  

                  
                   

(MEMS協議会 国際交流担当 三原 孝士)
                   

                  

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2018年1月29日 (月)

国際会議 IEEE MEMS2018 参加報告

 2018年 1月 22日~25日の 4日間にわたり英国・北アイルランド・ベルファストで開催された、MEMS関連の主要国際会議であるIEEE MEMS2018に、センサ・MEMSデバイスの標準化のための技術調査の目的で参加しました。


会場外観(英国・北アイルランド・ベルファスト、ウォーターフロント)


会場メインホール

 学会のオープニングで公表されたデータによりますと、参加者数は600人で、投稿論文数675件、採択論文数346件、採択率51%でした。採択論文の内訳は、口頭68件、ポスター278件。採択論文の国別件数順位は、1位米国、2位日本、3位中国、4位韓国、5位台湾、6位ドイツ・オランダ、8位スイス・英国となっております。採択論文のカテゴリ別件数割合(学会が公表した簡易分別の数字)は、以下に示す表の通りでした。


採択論文のカテゴリ別件数割合(学会が公表した簡易分別の数字)

 プレナリー招待講演は以下の4件であり、いずれの講演も示唆に富んだ感銘深い内容でありました。
  • 藤田博之教授, 東大, “FROM WOW TO WORK: CYCLES OF MEMS EVOLUTION”
  • Dr. M. Steffen, IBM, “EARLY APPLICATIONS OF QUANTUM COMPUTERS”
  • J. Cooper教授, Univ. of Glasgow, “MICROSTRUCTURES TO SHAPE ACOUSTIC FIELDS AND CREATE COMPLEX MICROFLUIDIC FLOWS”
  • Dr. F. Laermer, Bosch, “MEMS AT BOSCH – INVENTED FOR LIFE”

 3日目1月24日の夜には、かの有名な英国客船タイタニック号がベルファストで造船されたことから沈没事故から100年となる2012年にベルファストにオープンしたタイタニック博物館で、学会主催のバンケットが開催されました。参加者一同がタイタニック博物館の展示を見学した後、ウエルカムドリンク、その後にバンケットにうつるという盛大な会でございました。


バンケット会場 タイタニック博物館外観


バンケットの様子

 MEMS分野における多岐の技術領域に渡る充実した内容の論文が数多く発表され、活発な議論が行われた、大変有意義な学会でありました。マイクロマシンセンターでは、「国内外技術動向調査」という取り組みとして、技術進歩が著しい国内外のマイクロマシン/MEMS分野等の研究動向、技術動向を的確に把握するため、MEMS分野の著名な国際会議等をターゲットにした定点観測的な調査を例年行っております。MEMS2018もこの調査の対象学会であり、本分野の有識者から構成される国内外技術動向調査委員会の委員の方々により、学会の発表内容の調査が行われ、報告書に纏めております。従って、今回のMEMS2018で発表された技術の詳細・分析結果については、この「国内外技術動向調査」の報告書で改めて報告するため、本ブログでは、本ブログ執筆者が今回の学会参加で調査を行ったIoT関連エネルギーハーベスティング技術に関する幾つかの論文紹介に留めさせていただきます。すなわち、エネルギーハーベスティング技術として1つの口頭セッションが設けられ、4件の発表がありましたので、その論文の内容を紹介します。

 東北大の桑野教授研究室H. H. Nguyen氏からは、“DEVELOPMENT OF HIGHLY EFFICIENT MICRO ENERGY HARVESTERS WITH MgHf-CODOPED AlN PIEZOELECTRIC FILMS”というタイトルで、AlNにMgとHfを添加したMgHfAlNにより、圧電型振動エナジーハーベスタにおけるパワー密度最高値を更新(34.9mWcm-3g-2)した結果が報告されました。

 英国ケンブリッジ大のY. Jia氏からは、“AUTOPARAMETRIC RESONANCE IN A PIEZOELECTRIC MEMS VIBRATION ENERGY HARVESTER”というタイトルで、圧電型振動エナジーハーベスタにおいて、主副カンチレバーの自動パラメトリック共振により、同一デバイスの直接共振時に比べ2倍以上の高出力を実現し、出力電力密度にて現状技術比で約1桁高いレベルが得られておりました。

 東大の鈴木雄二教授研究室の三好先生から、“LOW-PROFILE ROTATIONAL ELECTRET GENERATOR USING PRINT CIRCUIT BOARD FOR ENERGY HARVESTING FROM ARM SWING”というタイトルで、回転型エレクトレット振動発電エネルギーハーベスタの技術の発表がありました。腕に装着するエネルギーハーベスタを実際に試作し、1.45m/sの歩行速度での歩行時の腕振りで80μWの発電が得られることを実証しました。さらに、今回の口頭発表時、実際に、試作したエネルギーハーベスタを腕に装着し、発電デモを実施されていました。

 韓国Kwangwoon大のM. Salauddin氏の“A FREE MOTION DRIVEN ELECTROMAGNETIC AND TRIBOELECTRIC HYBRIDIZED NANOGENERATOR FOR SCAVENGING LOW FREQUENCY VIBRATIONS”というタイトルで、摩擦発電と電磁誘導発電のハイブリッド発電を提案、ならびに、試作結果の報告がありました。当日、代理発表されたKwangwoon大J. Park教授は、エネルギーハーベスタ分野のIEC(国際電気標準会議)国際標準化におけるキーマン(エネルギーハーベスタ分野のワーキンググループであるIEC/TC47/WG7の主査の一人)であり、2017年10月のIECプレナリー会議@ウラジオストクや2017年11月の国際会議PowerMEMS@金沢でのスクール(ショートコース)招待講演で来日された際にお会いして以来の再会でした。

 IoTセンサの自立発電動作化を実現し、センサ動作・センサ制御・そのセンサ出力の無線伝送をも、自立電源動作させるためには、各部分の低消費電力化の取り組みとともに、エネルギーハーベスティング技術は非常に重要な技術分野です。引き続き、技術の進展を追いかけていきたいと思います。

 前述のように、当センターでは、「国内外技術動向調査」の取り組みの中で、本分野の有識者から構成される委員の方々により、本学会MEMS2018での発表内容詳細の調査・分析を今後進めていきます。平成30年5月頃、発行致しますので、ご参照いただければと存じます。
         
平成30年1月29日
マイクロマシンセンター 調査研究・標準部
大中道 崇浩

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2018年1月24日 (水)

【平成30年1月の経済報告】

 本項は、マイクロマシン/MEMS分野を取り巻く経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信しています。

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 1月に入り今冬最強の寒波に襲われています。大学共通1次学力試験の頃となると、最近は雪が降ることが多くなってきています。また、シベリア地方ではマイナス65度といった気温も観測されています。まだまだ寒い時期が続きますが、、風邪、インフルエンザ等には十分ご注意下さい。今回は平成301月の経済報告をお届けします。

業務の参考として頂ければ幸いです。  

 内容は、以下のPDFをご参照下さい。

 

 

      「2018.01.pdf」をダウンロード

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2018年1月16日 (火)

平成30年ロボット関連3団体 新年賀詞交歓会、今年も盛況のうちに終了

 平成30年1月12日(金)12時から、(一社)日本ロボット工業会、(一財)製造科学技術センター及び(一財)マイクロマシンセンターの主催による「平成30年ロボット関連3団体 新年賀詞交歓会」を、東京プリンスホテル プロビデンスホールにて開催いたしました。


 開会にあたり3団体を代表しまして、(一社)日本ロボット工業会 稲葉会長が、3団体における本年の抱負や重点項目への取り組みなどについて挨拶を行い、引き続き、御来賓として多田経済産業省製造産業局長から、3団体の事業活動に対する期待を込めたご祝辞を賜りました。


(一社)日本ロボット工業会 稲葉会長 挨拶


来賓 経済産業省 多田製造産業局長 ご挨拶

 本年は、「Society5.0」の実現に向けて政府が打ち出した「コネクテッド・インダストリーズ」の推進に欠かせない、ロボット分野、マイクロマシン/MEMS分野に関心が寄せられていることもあり、昨年より100人以上多い535名もの大勢の業界関係者が参集する盛況な賀詞交歓会となり、出席者は時間の許す限り、交流・歓談に花を咲かせておりました。


 この機会をお借りしまして、ご参加いただきました多くの皆様方に御礼申し上げます。

一般財団法人マイクロマシンセンター 事務局一同

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2018年1月10日 (水)

IoTSWC2017参加報告

 昨年10月3日から5日にかけてIoT Solutions World Congress 2017(以下、IoTSWC2017)に参加してまいりましたので、そちらのご報告を致します。IoTSWCは、毎年10月にスペイン・バルセロナで開催されるインダストリアルIoT(以下、IIoT)に関するイベントとなります。本イベントにはインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(以下、IIC)が関わっており、IIoTに関するリファレンス実装等が多数のテストベッド(複数社による実運用レベルに近いユースケース検証)として報告されることから、IIoTに関する様々な仕様のデファクトスタンダード形成の場として注視しております。
                  
 現在、産業機器等から吸い上げたデータの有価情報を効率よく取り出しクラウドに送信する、超高効率データ抽出機能を有する学習型スマートセンシングシステムの研究に従事しておりますが、本研究の先端技術調査として前年度にも本イベントに参加した際には、テストベッドを有する先端企業からIIoTに関する多くのヒアリングを実施でき大変有益な機会となった為、今年度も技術動向の定点的な調査を実施して参りました。
                  
                  


図 1 バルセロナの街並み
                  


[概要]
 本年度は、来場者数は114ヶ国240社から約13000人(72%が経営幹部・上位管理職)となり、会場も昨年度比1.7倍の規模で実施されました。会場ではIoTプラットフォームに関するコンセプト展示だけでなく、農業、トランスポート、そしてインダストリ分野から、Siemens社、Intel社による油入装置監視、Analog Devices社による果樹園霜被害予兆監視等、具体的なユースケース展示が多く見受けられ、特にテストベッドの約7割がインダストリ分野からの出展となるなど、IIoT分野の盛り上がりを見せておりました。
                
                  
                  


図 2 展示会場の様子
                 


                  
                  


図 3 各国の講演数(カンファレンス資料より算出)

 

 また、今年はEdgeX Foundryのようなコンソーシアムの動きも目立っており、エッジコンピューティングに関する実装例もございました。EdgeX Foundryに参画する企業によるEdgeXゲートウェイの活用例としてのデモ展示は、OPTO社のブースで風車タービンの遠隔監視デモとしてエッジ側ゲートウェイにEdgeXゲートウェイを採用する例がありました。OPTO社の場合、サーバから、WANインタフェースとなるgroov Boxを介しFAN側コントローラであるOpto 22 SNAP PACsまでの一連のデータ送受信の環境を提供できることからシステムとしては自前で完成しておりましたが、Opto 22 SNAP PACsでは吸収しきれない将来的なプロトコル等に関して相互運用性を向上させる為に、EdgeXゲートウェイを一段仲介させることでエッジ側の抽象化を実現しておりました。クラウドにおけるUIダッシュボードからのビジネスロジックを解釈し異なる装置に対して、PLCコマンドのような制御コマンドを投入するにはエッジを抽象化するインタフェースの役割が明確にする必要がありますが、従来は管理対象ごとに作りこみを行っていたダッシュボードが発行するAPIからFAN側への制御コマンドを変換するアダプタにおいてコネクティビティを持たせる為にEdgeX Foundryが行うエッジインタフェースの標準化の取り組みは、今後きわめて重要な活動になっていくのではないかと感じております。このため、こうしたコンソーシアムの動向にも注目していきたいと思います。

 反面、相互接続性を上げていくことで古い装置に対する接続性が増し、セキュリティホールを有する古い装置を入口とした他の装置への攻撃のリスクを上げてしまうことにもなりかねません。また、ゲートウェイ側で抽象化する部分がオープンソースであることを利用しソースコードから脆弱性を類推するなどといった、プロプライエタリではないことに起因するセキュリティの脅威に対しても、相互接続性を担保しながら対策していくことが今後の課題となりそうです。
                  
                  


図 4 講演会場の様子


[講演]
 講演企業の中にはIoTプロジェクトの75%程度において期待通りの価値を提供しきれていないと感じている社もありました。これは、データ収集からデータモデル構築、そして分析を行うアルゴリズムのデプロイを行う一連のサイクルの中で、広域に据え付けられる数千単位でのデバイス・ゲートウェイに対するデプロイに、概念検証の段階では見えない課題が多数あり、実運用の段階でデータ収集力に直結するスケーラビリティに制限が課せられるケースがある為です。これまで工場の単一ラインでは、データ収集から知見獲得までをオートメーション化してきましたが、IIoTはこれに加えて、広範囲のデバイスやゲートウェイに対してセキュリティパッチや特定の状況下に適する分析アルゴリズムをあまねく導入後に継続適用していくことで全体最適を行っていく必要があります。
                  
[展示ブース]
 今回、技術動向調査を行ったなかから、LbSS研究に関係がありそうな技術展示2件、ご紹介させて頂きます。
                  
 1件目は、Intel社、BOSCH社による大気モニタリングに関する共同展示になります。ダスト排出量モニタリングによる、建設現場における大気汚染防止に関する法令の遵守度を測定する環境基準トラッキングとそれに応じた建設リソーススケジューリングが特徴です。また、CO検知センサにより、例えば無煙の熱分解等を分析することで火災報知器が検知しない火災の予兆検知にも適用可能と思われます。大気モニタリングといった汎用的な技術をビルの建築・設備運用における各フェーズのユースケースに適用することで、ビルのライフサイクルの初期からシステムを提案・導入できるメリットがある為、他社と比較し競争力のあるモニタリングシステムだと感じました。尚、建設中は本システムが屋外設置となる為、デプロイを正しく機能させることで中継器の不具合によるアップデート未実施を回避しサイバー攻撃による踏み台対策を行うだけでなく、装置そのものを盗難され物理的なメモリアクセスを介して行われるリバースエンジニアリングにも対処しなければならないと思われます。
                  
 2件目ですが、昨年度に引き続き、HPE社、NI社、およびPTC社が提供する予兆保全プラットフォームが展示されておりました。既に前年度の調査で燃料ポンプに対するキャビテーション検知を行うFlowserve社の適用例として本プラットフォームのことは把握しておりましたが、本年度はDeloitte社による振動アノーマリ検知による装置故障の予兆保全にも適用されるなど、本システムが汎用的なIoTプラットフォームとして提供可能なことが示され興味深く感じました。本予兆保全プラットフォームは、NI社の制御ハードウェアからHPE社のコンバージドIoTシステムにセンサデータを送信する際に帯域を圧迫しないよう、コンバージドIoTシステム上では全データから異常と判断されるデータの範囲が分析し、NI社の制御ハードウェアが次回以降の送信時に異常値のみを送信することで転送データの大幅な削減が可能となるデータ転送制御を実装している点が特徴です。実際には、予兆保全は10秒に1回のような頻度の閾値検知で事足りると思われますが、工場のラインではリアルタイム監視による画像データでの製品判定も行うことがあり、こうしたユースケース等ではセンサのデータ転送量が課題となることから本プラットフォームが適用される場面も多そうです。
                  
 今回、会場で見られた展示では特定のユースケースに特化したプラットフォームが多く、大量のセンサ端末やゲートウェイに対してスケーラビリティを考慮しないシステムはユースケースが個別最適になりがちでした。スケーラビリティを考慮することでゲートウェイ間での接続性も増し、従来システムとは違ったIoTプラットフォーム独自のメリットを享受できると思われます。
                  
[所感]
 日本・欧米等の産業先進国では独自の古いインタフェースを持つPLCを有する工場が未だ多いなか、こうしたインタフェースを扱う為の属人的な手順・ノウハウに頼る部分に対して汎用的なIoTプラットフォームを適用するには多くの課題が残っていると感じています。欧州における本会場でも適切な専門知識やOT知見を有する技術者の不足が聞かれており、スケーラビリティやコネクティビティを向上させることで、本来の高度な技能が必要とされる知見以外でシステムが属人化しない工夫が必要です。こうした点を踏まえたうえで、より高度な解析を行うIoTプラットフォームを構築するには、概念検証の期間にデータモデルの構築に注力する必要があり、データを即日といった短期間で収集開始できるよう、下回りはビルトインのフィルタや既製のプラットフォーム・ダッシュボードを利用するのが望ましいと考えます。
                  
[次回開催]
 今回の技術動向調査で得られた結果はベンチマークとしてフィードバックし、研究開発を継続してまいりたいと思います。次回のIoT Solutions World Congress 2018は、2018年10月16日~18日に開催が予定されております。
                  
                  

           技術研究組合 NMEMS技術研究機構 相見 眞男

                  

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2018年1月 5日 (金)

「新年のご挨拶」

新年あけましておめでとうございます。

 本年はSociety5.0の実現を世界に打ち出していくための新たな産業・社会の在り方として、「コネクテッド・インダストリーズ」に大きな注目が集るとされています。特に、製造現場、自動走行、健康・医療・介護等の現実の「リアルデータ」を巡る競争が激しくなると予想されていますが、その「リアルデータ」を収集する最前線にMEMSを中心とする多様なセンサが位置しています。従いまして、ナノ・マイクロ技術分野における研究開発や普及促進等を長年担ってきた私どもマイクロマシンセンターの責任はさらに重くなっていくものと考えております。

 仏のヨール社によれば、世界のMEMS市場は消費者用や自動車用がけん引し、2017年の132億ドルから2022年には254億ドルと年率14%で伸びるとされています。MEMSデバイスとしては、スマホの4G/5G 化の進展によりMEMSフィルタの伸びが大きく、従来からの慣性センサ、圧力センサ、ジャイロなどを凌駕していくと見られます。

 このような中、当センターでは2000年代に注力したMEMS技術そのものの研究開発から、2010年代にはセンサネットワーク技術にシフトし、現在は道路やライフラインのインフラモニタリングに加えて、ファクトリやプラントのスマートセンシングの研究開発に注力しています。そして、昨年は経産省・NEDOがコネクテッド・インダストリーズの重点分野として推しているロボティクスや自動走行の鍵となるAI融合高精度物体認識システムの研究開発に着手しました。

 また、それらの研究開発を支えるMEMS試作ファンドリとして、7年前に開設したつくばの「マイクロナノオープンイノベーションセンター(MNOIC)」も今や中小・ベンチャーを含む40社以上からの研究や工程の受託により、フル稼働の状況にあります。さらに設備整備や技術向上に努めて、我が国のMEMS開発需要に応えてまいります。

 そして、上述の成果などを公開する場として、昨年、MEMSセンシング&ネットワークシステム展を刷新して、初めてCEATECと同時開催とし、5万人を超える来場者の方々にお出でいただくことができました。本年はさらにCEATECやAll about Photonics展とのシナジー効果を高め、IoTシステム、さらにはコネクテッド・インダストリーズの最先端技術展としてのプレゼンスを高めてまいります。

 当センターとしましては、本年もMEMS・スマートセンシング技術の開発や普及に真摯に取り組み、我が国のコネクテッド・インダストリーズの推進に微力ながらも貢献してまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。

 皆様方には以下の10大ニュースをご覧いただき、このような私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。

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