INDTCE2017参加報告
インフラモニタリングセンサ用エナジーハーベスタ調査の一環として、2017年11月21日(火曜日)〜23日(木曜日)にかけて、アメリカハワイのカウアイ島で開催された、Innovative
Non-Destructive Testing for Civil Engineers(INDTCE2017)に参加してまいりました。また、それとともに2017年11月20日(月曜日)にハワイ大学(オアフ島)にも訪問して来ましたので報告します。
まず、INDTCE2017については、今回初めて開催された国際学会であり、本プロジェクトのメンバーでもある京都大学の塩谷智基教授(写真1)がチェアとして中心となって立ち上げられ開催されました。また、初開催にもかかわらず、日本をはじめ、アメリカや韓国などの大学、企業の関係者も参加し、多くの発表、意見交換がされました。特に従来の国際学会と大きく異なり、土木系とともに、我々のようなエナジーハーベスティング、物理センシングを研究している電気系、物理系なども一堂に会しており、従来では難しかったそれぞれ最新の情報交換をする場が設けられました。それによって、ある分野では常識的なことが、別の分野では新鮮であったりして、非常に有意義な試みであったと感じました。

写真1 京都大学の塩谷智基教授(チェア)
初日、最初のキーノートスピーチは、「Development of AE and Visualized NDE for Maintenance of Concrete Structures」と題して、現在京都大学にいらっしゃる大津政康教授(写真2)によるものでした。内容は、コンクリート構造物は、従来ではメンテナンスフリーと一般的に考えられて来ていましたが、その頃から大津教授らは人体の健康診断と同様に、コンクリート構造物にも診断が必要だと考え、AE法(Acoustic Emission Method)をはじめとした、非破壊検査法の確立など様々な活動をして来られた、というもので、ご講演の中ではそれらの一つ一つを丁寧にご説明されていました。それゆえ、我々のような分野が異なる研究者にとっても、その歴史を垣間見ることができる素晴らしい内容であったと同時に、大津教授らのこの分野における貢献度に感服しました。

写真2 キーノートスピーチの大津政康教授
その後、午前中のひとつのセッションとして、私たちの取り組みであるインフラモニタリング用のエナジーハーベスティング技術、歪みを計測する新たな物理の創出、またそれらの商品化、製品化に向けた取り組みに関して、合計3件の発表を行いました。その中で、自分はNEDOのエネルギー・環境新技術先導プログラム/トリリオンセンサ社会を支える高効率MEMS振動発電デバイスの研究として取り組み、その後、RIMS用の振動発電デバイスとして開発している、橋梁モニタリング用のMEMSエナジーハーベスタを中心に発表をしました。内容は、実際に高速道路の橋梁で振動計測をした結果や、その結果をもとにしたエナジーハーベスタの設計コンセプト、実際に製作した高効率MEMS振動発電デバイスの実験結果、デモンストレーション動画等を紹介しました。本先導研究では、学会チェアでもある塩谷教授のグループと連携して行っていたテーマでもあり、その連携による効果などを塩谷教授が土木系の方々に補足でご説明してくれた(写真3)こともあり、期待以上に成果を訴求できたと思います。また、このセッション自体も非常に盛り上がり、セッション終了後には早速、こんなことはできないか、こんなところで使えないか、など具体的な質問、意見交換を活発に行うことができました。

写真3 エナジーハーベスタの発表(三屋、塩谷教授の補足)
2日間に渡った会議も、終始活発に同分野、異分野の垣根なく意見交換、情報交換(写真4)ができ、非常に有意義な経験になりました。また、今後実際に何件かの新たな取り組みにつながりそうな話もあり、このような機会がさらに増えると面白いのではないかと個人的には思いました。

写真4 異分野の情報・意見交換の様子
次に、INDTCE2017に先立って訪問したハワイ大学についてご報告します。ハワイ大学マノア校は州立大学であり、土地がら海洋学、火山学、天文学などの研究が活発に行われています。今回はハワイ大学のCosmochemistry研究所(写真5)で、特に隕石などに含まれるイオンなどの分析をご専門にされているNagashimaマネージャーを訪ね(写真6)、校内、研究設備等を見学させていただいた後、実際に、イオンの分析を見せていだだきながら、我々のイオン分析手法などについて意見交換を行ってまいりました。

写真5 Cosmochemistry研究所

写真6 三屋(左)、小野さん(中)、Nagashimaマネージャー(右)
同研究所では、世界でも数台しかない高感度2次元イオン検出による結像型SIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer、日本では2次イオン質量分析計)を保有しており(写真7)、その分解能はppb(parts per billion 、十億分の1)と非常に高いとのことです。また、本質量分析計の電圧や磁場は、光学顕微鏡におけるレンズの役割を担っており、細く絞ったイオンビームを試料に当ててイオン化し、その2次イオンを「レンズ」によって元の位置情報を保ったまま質量分析計の検出器へ導くことができるとのことです。また、その検出器は、独自に設計・開発したイオン撮像器で、1個~100万個の入射イオンの個数を計測出来る素子が並べられており、2次元イメージングが可能とのことでした。これにより、隕石などを分析する宇宙科学・地球科学分野において、多くの世界最先端の科学成果をあげられているとのことでした。

写真7 高感度2次元イオン検出による結像型SIMS
我々が研究しているエレクトレットも、絶縁物中にイオンを含有することで形成されておりますが、その2次元分布は観察できなかったため、どのよう分布なのかわかっておりませんでした。しかしながら、条件次第ではあるが、この装置を使用すればわかるかもしれないとのことでしたので、具体的に検討していこうということになり、非常に有意義な意見交換となりました。
今回は、(学会の分野違いと同様に、)隕石のイオン分析という、一見異分野のように感じますが、対象物が半導体と隕石と違うだけで分析方法はまさに我々と同じようなものでした。それにもかかわらず、半導体業界では知られていないが故にできないと思っていたことを、隕石の分析業界ではいとも簡単に観察されていることに非常に驚いたのと同時に、このような異分野にも目を向ける重要性を改めて実感しました。
また、ハワイという常夏の地に冬の日本から訪れ、異分野との交流をする、という非常に非日常な体験でした。しかしながら、その中で従来の延長ではない、新たな引き出しを見つけることができ、非常に有意義であるとともに、このような交流をすることの重要性を、身をもって実感いたしました。今後も是非積極的にこのような活動をしていきたいと思います。
まず、INDTCE2017については、今回初めて開催された国際学会であり、本プロジェクトのメンバーでもある京都大学の塩谷智基教授(写真1)がチェアとして中心となって立ち上げられ開催されました。また、初開催にもかかわらず、日本をはじめ、アメリカや韓国などの大学、企業の関係者も参加し、多くの発表、意見交換がされました。特に従来の国際学会と大きく異なり、土木系とともに、我々のようなエナジーハーベスティング、物理センシングを研究している電気系、物理系なども一堂に会しており、従来では難しかったそれぞれ最新の情報交換をする場が設けられました。それによって、ある分野では常識的なことが、別の分野では新鮮であったりして、非常に有意義な試みであったと感じました。

写真1 京都大学の塩谷智基教授(チェア)
初日、最初のキーノートスピーチは、「Development of AE and Visualized NDE for Maintenance of Concrete Structures」と題して、現在京都大学にいらっしゃる大津政康教授(写真2)によるものでした。内容は、コンクリート構造物は、従来ではメンテナンスフリーと一般的に考えられて来ていましたが、その頃から大津教授らは人体の健康診断と同様に、コンクリート構造物にも診断が必要だと考え、AE法(Acoustic Emission Method)をはじめとした、非破壊検査法の確立など様々な活動をして来られた、というもので、ご講演の中ではそれらの一つ一つを丁寧にご説明されていました。それゆえ、我々のような分野が異なる研究者にとっても、その歴史を垣間見ることができる素晴らしい内容であったと同時に、大津教授らのこの分野における貢献度に感服しました。

写真2 キーノートスピーチの大津政康教授
その後、午前中のひとつのセッションとして、私たちの取り組みであるインフラモニタリング用のエナジーハーベスティング技術、歪みを計測する新たな物理の創出、またそれらの商品化、製品化に向けた取り組みに関して、合計3件の発表を行いました。その中で、自分はNEDOのエネルギー・環境新技術先導プログラム/トリリオンセンサ社会を支える高効率MEMS振動発電デバイスの研究として取り組み、その後、RIMS用の振動発電デバイスとして開発している、橋梁モニタリング用のMEMSエナジーハーベスタを中心に発表をしました。内容は、実際に高速道路の橋梁で振動計測をした結果や、その結果をもとにしたエナジーハーベスタの設計コンセプト、実際に製作した高効率MEMS振動発電デバイスの実験結果、デモンストレーション動画等を紹介しました。本先導研究では、学会チェアでもある塩谷教授のグループと連携して行っていたテーマでもあり、その連携による効果などを塩谷教授が土木系の方々に補足でご説明してくれた(写真3)こともあり、期待以上に成果を訴求できたと思います。また、このセッション自体も非常に盛り上がり、セッション終了後には早速、こんなことはできないか、こんなところで使えないか、など具体的な質問、意見交換を活発に行うことができました。

写真3 エナジーハーベスタの発表(三屋、塩谷教授の補足)
2日間に渡った会議も、終始活発に同分野、異分野の垣根なく意見交換、情報交換(写真4)ができ、非常に有意義な経験になりました。また、今後実際に何件かの新たな取り組みにつながりそうな話もあり、このような機会がさらに増えると面白いのではないかと個人的には思いました。

写真4 異分野の情報・意見交換の様子
次に、INDTCE2017に先立って訪問したハワイ大学についてご報告します。ハワイ大学マノア校は州立大学であり、土地がら海洋学、火山学、天文学などの研究が活発に行われています。今回はハワイ大学のCosmochemistry研究所(写真5)で、特に隕石などに含まれるイオンなどの分析をご専門にされているNagashimaマネージャーを訪ね(写真6)、校内、研究設備等を見学させていただいた後、実際に、イオンの分析を見せていだだきながら、我々のイオン分析手法などについて意見交換を行ってまいりました。

写真5 Cosmochemistry研究所

写真6 三屋(左)、小野さん(中)、Nagashimaマネージャー(右)
同研究所では、世界でも数台しかない高感度2次元イオン検出による結像型SIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer、日本では2次イオン質量分析計)を保有しており(写真7)、その分解能はppb(parts per billion 、十億分の1)と非常に高いとのことです。また、本質量分析計の電圧や磁場は、光学顕微鏡におけるレンズの役割を担っており、細く絞ったイオンビームを試料に当ててイオン化し、その2次イオンを「レンズ」によって元の位置情報を保ったまま質量分析計の検出器へ導くことができるとのことです。また、その検出器は、独自に設計・開発したイオン撮像器で、1個~100万個の入射イオンの個数を計測出来る素子が並べられており、2次元イメージングが可能とのことでした。これにより、隕石などを分析する宇宙科学・地球科学分野において、多くの世界最先端の科学成果をあげられているとのことでした。


写真7 高感度2次元イオン検出による結像型SIMS
我々が研究しているエレクトレットも、絶縁物中にイオンを含有することで形成されておりますが、その2次元分布は観察できなかったため、どのよう分布なのかわかっておりませんでした。しかしながら、条件次第ではあるが、この装置を使用すればわかるかもしれないとのことでしたので、具体的に検討していこうということになり、非常に有意義な意見交換となりました。
今回は、(学会の分野違いと同様に、)隕石のイオン分析という、一見異分野のように感じますが、対象物が半導体と隕石と違うだけで分析方法はまさに我々と同じようなものでした。それにもかかわらず、半導体業界では知られていないが故にできないと思っていたことを、隕石の分析業界ではいとも簡単に観察されていることに非常に驚いたのと同時に、このような異分野にも目を向ける重要性を改めて実感しました。
また、ハワイという常夏の地に冬の日本から訪れ、異分野との交流をする、という非常に非日常な体験でした。しかしながら、その中で従来の延長ではない、新たな引き出しを見つけることができ、非常に有意義であるとともに、このような交流をすることの重要性を、身をもって実感いたしました。今後も是非積極的にこのような活動をしていきたいと思います。
2017年11月25日
技術研究組合NMEMS技術研究機構 三屋裕幸
技術研究組合NMEMS技術研究機構 三屋裕幸
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