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2017年11月29日 (水)

第35先端技術交流会の報告

 平成29年11月29日(水)の午後、マイクロマシンセンター新テクノサロンで第35回マイクロナノ先端技術交流会を開催しました。

 今回のテーマは「RF-MEMS(BAW(Bulk Acoustic Wave)フィルタ)の最前線」として、太陽誘電モバイルテクノロジー(株) 取締役の上田正憲様からは「最近のRF-BAWデバイス(フィルタ)の進展と今後の展望」と題して、そして、早稲田大学 理工学術院 先進理工学部 准教授の柳谷 隆彦先生からは「最新のBAWデバイス材料の研究と応用」と題してご講演をいただきました。

 最初の上田氏からは、最初に近年、Broadcom社やQorvo社に見られる、BAWフィルタ市場の急成長の背景について説明いただきました。既にスマートフォンの中に数多くBAWフィルタが使用されていますが、今後4Gから5Gに向けて、マルチバンド化、そしてCA(キャリアアグリゲーション)やMIMOによる高速通信が進み、ますます市場が広がっていくようです。 次にBAWの技術についてご紹介いただきました。 BAWは大きくキャビティ構造を有するFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)と音響ミラー構造を有するSMR(Solidly Mounted Resonator)の2種類に大別されます。太陽誘電では独自のエアギャップ構造を用いるFBAR構造を採用しています。フィルタの特性向上には周波数の温度ドリフトの影響を総裁する温度補償付きのTC(Temperature Compensated)-FBARを用いて、温度特性の向上を示していました。続いて、電気機械結合係数を向上する方策として、AlNに他の材料をドープする試みを紹介いただきました。結果としてMg,Hfを一緒にドープすることで電気機械結合係数(k2)がAlN7.1%に対して、10%に向上することを示されていました。

太陽誘電 上田氏

 早稲田大学の柳谷先生からはScAlNを中心としたBAWデバイスの材料のお話をいただきました。従来の圧電材料のAlNにScを導入することで圧電定数d33が5倍向上することを産業技術研究所の秋山先生が発見したのを機に、柳谷先生がScAlNを用いた圧電トランスデユーサ、FBARの報告を世界に先駆けて報告されました。Sc組成を徐々に増やしていくとSc組成0.4ぐらいまで徐々に電気機械結合係数が上昇して、AlNではK2が6.4%だったものが、14%近くに向上することを示されていました。

 また、電気機械結合係数の小さいGaN(k2~0.4)にYbを加えることでK2が4%まで大きくなる現象を発見されました。現在、多くの研究者がScAlNの研究、実用化を進めていますが、ScAlNの成膜にはノウハウがあるようです。柳谷先生からはターゲット中のCやOの除去が重要で、ScAl合金の使用やプレスパッタを長時間行うと良いといった報告をいただきました。柳谷先生の研究室では良質の成膜ができるために、ScAlN圧膜によって18%以上の高い電気機械結合係数(K2)の実現に向けて取り込まれているようです。

早稲田大学 柳谷先生

 また、講演会後の懇親会では、ご講演いただいた先生方を囲んで、BAWフィルタの今後の展開や圧戦膜成膜についてのノウハウなど遅くまで多くの意見交換が行われていました。  

意見交換会の様子

(産学交流担当 今本 浩史)

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