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2017年7月21日 (金)

IoT World 2017参加報告

 2017年5月16日-18日開催されたIoT World 2017に参加してまいりましたので、ご報告を致します。IoT World 2017は、毎年5月に米国・サンタクララで開催される米国最大級のIoTに関するイベントとなります。イベントでは、主にヘルスケア・農業・ファクトリー分野における講演、ブース展示が実施されていた他、コネクティッドカーに関する展示エリアが併設されておりました。今年は来場者数が約11000人となり、スタートアップ企業の参加も約80社となる等、会場全体で盛り上がりを見せておりました。
               
                  
                  


図 1 開催地であるシリコンバレー近辺の街並み
                  


 本イベントは講演・技術展示ブースともに米国現地企業によるものが多く、展示説明員からヒアリングを行うことでR&D段階の技術が米国のユースケースに今後どのように適用されるか把握することができ、米国のユースケース適用に関する動向調査を行ううえでも最適なイベントでした。
                  
                  
                 

 
図 2 会場入り口の様子
                  


 本イベントのブース展示は、医療制度や農業の社会問題に課題点が多い米国らしく、ファクトリーの可視化・予兆保全よりも、ヘルスケア・農業分野におけるユースケースに関わる展示が多いように感じました。また、可視化においては、デバイスマネジメントやセンサデータ表示を行うダッシュボードと呼ばれる統合管理画面におけるユーザインタフェースに力が入れられており、グラフや数値データ表を配置する従来のダッシュボードだけでなく、CADを開発するAutodesk社による3Dのダッシュボードなどが、来場者の目を引いておりました。3Dや映像データを配置するグラフィカルなダッシュボード画面は、単にレイアウトとして見やすいだけでなく、現場管理者が、火の色といったアナログな映像データを見ることで、目視確認で状況把握を即座に行えます。その後、現場管理者は、把握した状況に応じて他部門や他作業員に指示を送る際に、他部門や他作業員に行う説明を補強するための材料として数値データを用いることができます。こうしたケースでは、映像データや数値データを揃えるだけでなく、ユースケースにおけるデータの関係性が一目で把握できるレイアウトや画面遷移が鍵になると感じました。ダッシュボードは現場管理者だけが理解できる画面では意味がなく、障害発生時に原因から対策までを他部門と協力し、迅速な対応を検討するうえで必要なデータがどれだけ不足なく揃えられるかが重要です。また、映像データに関してもIoTゲートウェイやクラウドに蓄積すればよいだけではなく、確認したいタイミングで確認したい時間帯の映像データを検索できる仕組みが必要になります。今回参加した企業には、IoTゲートウェイやクラウドに転送し蓄積した映像データを必要な機会に検索できる仕組みを検討している企業も御座いました。
                  
                  
                  


図 3 講演会場の様子
                  


                  
                  


図4 各国の講演数(カンファレンス資料より算出)
                  


[講演]
 基調講演にありましたが、IBM社によりますと、クラウド等に収集されるデータの9割は直近2年以内に生成されたデータで占められているようです。

 蓄積されるデータ量は年々増加しておりますが、データ量が大きくなることで、予兆保全はおろか、可視化を行うためだけのデータ検索処理のレイテンシも無視できなくなってきます。エッジコンピューティングには、未加工のフォーマットのデータや、サンプリングされていないデータを扱える利点もあるため、IoTゲートウェイで処理を行うことで、より高度な分析処理が行える可能性がありますが、エッジコンピューティングを行うIoTゲートウェイは、クラウドよりもハードウェア性能が低いことが多く、マイクロバッチ処理のような複雑なウィンドウ集計を行う必要が出てきた際には、高い応答性能を出すことが難しくなると思われます。

[展示ブース]
 今回、動向・技術調査を実施したなかから、LbSS研究のエッジコンピューティングと関係がありそうな技術展示物1件を、ご紹介させていただきます。

 HPE社では航空機の遠隔監視に特化したユースケースにおいて、約2900機の航空機から集められたセンサデータのうち、直近の60分間のフライトデータ(高度、軌跡、等)をリアルタイムに可視化するデモを実施しておりました。こちらのデモでは、合計レコード数として約1782万件のデータから、時系列を考慮した大量のフライトデータを検索していたようです。

 直近60分間のフライトデータを可視化する場合、高度や軌跡、その他の航空機に据え付けられた数多くのセンサを分析する必要があるため、一度の検索で対象となるデータの範囲が広くなります。また、航空機の場合、障害発生時の原因調査が厳しく行われるため、航空機の時系列データは取得間隔の短く、精度の高いデータが要求されており、データ量も大きくなるため、大量のデータに対する高頻度な検索に耐えられる仕組みが必要となります。

 IoTゲートウェイの場合、センサ側のインタフェースから入力されるセンサデータ転送量が大きく、WAN側のインタフェースから出力されるセンサデータのデータ転送量が小さい場合、IoTゲートウェイでは未処理のデータをどのように管理するか考慮しなければなりません。また、センサデータを多角的に分析する場合は、特定のセンサデータを何度も検索することになりますが、大量のデータに対する読み書き処理がIoTゲートウェイのボトルネックになることで、データ欠損、処理遅延、データの矛盾、等、様々な問題が生じてきます。エッジコンピューティングでは、ストリーミング処理を高速に行うことが求められますが、ユースケースによっては性能がシステム全体に及ぼす影響も大きくなり、ミッションクリティカルな制御システムに関してはレイテンシが許容できなくなる可能性もあります。
 今回、エッジコンピューティングにおけるストリーミング処理の技術デモの展示は、この1件だけのように見受けられました。しかし、インメモリ・時系列データベース分野の技術開発により、ストリーミング処理で大量のデータを低いレイテンシで行うことが可能になってきているため、今後のIoT Worldでは、大量データをエッジコンピューティングで扱うユースケースの技術展示が一気に増えるのではないかと感じました。
                  
[全体を通して]
 今回ファクトリーの可視化・予兆保全の技術展示が少ない印象だったのですが、現地でヒアリング調査を行ったところ、米国の工場も日本と同じような課題が見えてきておりました。米国の工場でも、産業機器に接続されているPLCの出力インタフェースが古く、PLCの分析結果を取得し、クラウドで可視化を行うことは容易ではないようです。PLC内部のロジックとしては高度な統計処理が為されているため、PLCのデータをフルに活用できれば、現場作業員による目視確認以上のデバイスマネジメントが可能になるはずです。機械やセンサの相互通信に関して標準化された技術のPLCへの導入も進んできており、スマートファクトリーに参入する壁も低くなってきていることから、米国でもファクトリー分野に関する技術展示が今後増えてくるものと思われます。

[次回開催]
 今回の技術・動向調査で得られた結果はベンチマークとしてフィードバックし、研究・開発を継続してまいりたいと思います。次回のIoT World 2018は、2018年5月14日~17日で開催が予定されております。

         技術研究組合 NMEMS技術研究機構 相見 眞男
                  

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