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2016年12月 9日 (金)

PowerMEMS2016 参加報告

 2016年12月6日から9日にわたって、パリで開催されたThe 16th International Conference on Micro and Nanotechnology for Power Generation and Energy Conversion Applications(PowerMEMS2016)に出席した。組織委員長は、Philippe Basset (Universite Paris-Est, France) と、Skandar Basrour (Grenoble Alpes Universite, France) が務め、Technical 論文委員長はEinar Halvorsen (University College of Southeast Norway) であった。会場はエッフェル塔のほぼ真下に当る好立地であり、行きは朝日に照らされた姿、帰りは日が暮れるのが早いのでイルミネーションをまとった美しい姿を見上げながら会議に通った。

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 付随した行事として5, 6日にはPowerMEMS school が開催された。大学院生を中心に30名ほどの参加者を集め、一日目は講義、二日目は実習があった。6日の夕刻に会議の登録とウェルカムレセプションがあり、7日から9日には研究発表と討議が行われた。招待講演は全員参加、一般講演は2会場のパラレル形式であった。会議の組織委員長がフランスの方であったためか、招待講演者はいずれもフランスから選ばれていた。その他、発表とデモンストレーションの両方を行うPowerMEMS in Actionという新企画があった。

159件のアブストラクト投稿があり、そのうち123件(77%)が採択された。口頭発表が40件、ポスター発表が83件である。トピックスとしては、環境発電が77%と大半を占める。採択された論文の数の国別分布は、フランス:22件、日本:20件、アメリカ:15件、イギリス:14件、中国:6件、等々である。また参加者は、おおよそ200名で内訳は、53%が欧州、19%がアメリカ、29%がアジアとなっていた。

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 発表に関して概括的な感想を述べると、利用に耐える大出力が発電できるものは掌サイズのやや大きなものであり、小型で新規な材料や原理を用いて発電するデバイスではあまり大きな出力が得られていない。この点で、我々(東京大学生産技術研究所・静岡大学・鷺宮製作所)が電力中央研究所の助けを借りながらNEDO先導研究で開発している、小型で大出力の静電型振動発電デバイスは、他に比べて著しい優位性があると感じた。圧電デバイスについては多くの発表があったが、その中では多孔質圧電膜やナノワイヤをポリマーに含浸したフレキシブルな圧電材料の発表が興味深かった。その他、振動発電デバイスから取り出した電流を、有効にコンデンサーに蓄積する電源回路に関する発表も興味深かった。以下、注目すべき講演の内容について、簡単に記す。

W3A02
First experimental demonstration of a Self-Oscillating Fluidic Heat Engine (SOFHE) with piezoelectric power generation
T. Monin, A. Tessier-Poirier, E. L´eveill´e, A. Juneau-Fecteau, T. Skotnicki, F. Formosa, S. Monfray and L G Fr´echette
一端を閉じたパイプに液を入れ、その端を熱くして液体を蒸発させて泡を作る。泡が成長し開口端の方にまで広がると、そこの部分は冷たいので泡の中の蒸気が液体に戻る。このため、泡の端部は温・冷の境を中心に、自励振動する。この振動を圧電膜デバイスに導いて、振動発電した。全長は20cmと大きなデバイスである。115~140℃で働いた。原理は面白いが発電量は小さい。これは、PowerMEMS in Actionの企画論文であり、発表の後の休み時間に、実際のデバイスで発電する様子を実演していた。

T1A03
A Frequency-Independent Vibrational Energy Harvester using Symmetrically
Charged Comb-Drive Electrodes with Heavily Doped Ion Electrets
H. Mitsuya, H. Ashizawa, K Ishibashi, H. Homma, M. Ataka, G. Hashiguchi, H. Fujita
and H. Toshiyoshi
本プロジェクトで得た研究成果を発表した。カリウムドープのシリコン酸化膜に、バイアス電圧を印加しながら熱処理してエレクトレットを形成した。帯電した櫛歯電極を、対称に配置することで可動電極への静電引力を相殺し、わずかの力で振動するようにしたデバイスを作った。インパルス状の振動など、幅広い周波数を持つ外部入力を効率よく電力に変換できることを示した。このため、定常的な周波数の振動に依存しない発電デバイスとして有効である。
次のような質疑応答があった。
「エレクトレットの帯電電圧はいくらまで上昇可能か」答:500Vまでである。
「寿命はどれだけか」答:真空中では劣化は見られない。
「周波数に依存しないというが、やはり振動特性はある周波数帯に限られるのではないか」
答:確かに無限の周波数に対応できるわけではない。インパルス状の振動など、幅広い周波数を持つ外部入力を効率よく電力に変換できるという意味で、このように呼んでいる。
その他「帯電電荷密度が一定とすると、ギャップ間に生じる電圧はギャップ長に依存する。実験で求めた帯電電圧を表記する時は、この点に留意すること」とのコメントがあった。

T2A04
Superhydrophobic surfaces’ influence on streaming current based energy harvester
Florent Fouch´e, Thomas Dargent, Yannick Coffinier, Anthony Treizebr´e, Alexis Vlandas and Vincent Senez
マイクロチャネルに水溶液などを満たすと、流路の表面が負に帯電し、液の方が正になる。100μm以下の高さの流路では、液を動かすと液とともに正電荷が動いてチャネル両端に電圧が出る。壁面を超撥水にすると、弱い圧力で液体の流れを作れるし、壁面での液のスリップがあって電荷が動きやすく、出力が向上する。銀ナノ粒子で加速したSiエッチングでナノワイヤの林を作り、超撥水の壁面とした。これを用いて、5nWがとれた。

FPA-1 招待講演
Thermal transistor with phase change materials and in the quantum regime
Karl Joulan
ギャップ間の熱放射による熱伝達の理論解析に関する講演である。近接場では熱放射が遠距離場に比べて格段に大きい。間隙長が10-8mで、熱伝達が~103倍になる。放射波だけでなくエバネッセント場が効いてくるからだ。誘電率の温度依存性が違う面を対向させ、近接場熱伝達を計算するとダイオード特性になる。しかし残念ながら、小さい整流効果しか得られない。大きい整流効果を生むためには、相変化材料を使うのがいい。たとえば、ある温度を境に誘電体⇔金属という相変化をするVO2を黒体と向い合せた構造が考えられる。また、超伝導体対黒体や、SiC対SiO2も考えられる。熱トランジスタでは、ゲートを相変化材料として、そこの温度を変化する場合には、0.1Hzまでの低周波では熱が制御できる計算結果となる。量子ドットなどの量子系での熱トランジスタや熱ダイオードも考えられる。磁場中でスピンを利用するデバイスを考えると、良い特性が得られるはずである。

F1B01
Novel thick-foam ferroelectret with engineered voids for energy harvesting applications
Z. Luo, J. Shi and S. P. Beeby
フェロエレクトレット材料に加熱時に発泡する化合物粒子をまぜ、成型する。その後、加熱すると化合物が発泡してスポンジ状になる。型の中で熱成型してから、泡を作って固める。この製法で、いろいろな形状のフェロエレクトレットができる。ある形状を作った後、コロナ帯電と接触帯電で、エレクトレット化できる。

F1B03
A paper-based electrostatic kinetic energy harvester with stacked multiple electret
films made of electrospun polymer nanofibers
Y. Lu, D. Amroun, Y. Leprince-Wang and Philippe Basset
2枚の紙を湾曲して重ね、その間にエレクトレット膜を挟み、押しつぶすと発電する。エレクトレット膜は、エレクトロスピニングした糸をランダムに重ねたポーラス体に、パリレンをつけたものである。これをコロナ帯電した。3枚入れた時が最も発電性能が良くて、45.6μW/16MΩ(30V)が出た。全波整流してコンデンサーに貯めると、450回押して0.72μJのエネルギーを蓄積できた(まだ、最適ではないので改善の余地がある。

                                 2016年12月9日

           技術研究組合NMEMS技術研究機構    藤田 博之

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