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2016年11月

2016年11月24日 (木)

【平成28年11月の経済報告】

 本項は、マイクロマシン/MEMS分野を取り巻く経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信しています。

 晩秋、平成28年11月の経済報告をお届けします。業務の参考として頂ければ幸いです。内容は、以下のPDFをご参照下さい。

 

「2016.11.pdf」をダウンロード

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2016年11月23日 (水)

欧州橋梁モニタリング実態調査報告


 日本より先行して様々な活動が行われている欧州(イギリス、オランダ)における橋梁モニタリングの現状を把握するため、2016年11月15日(火)~ 11月23日(水)に下山リーダを団長とする8名の調査団(写真1、五十音順:芦塚憲一郎、伊藤寿浩、茅野茂、塩谷智基、下山勲、武田宗久、中嶋正臣、渡部一雄)を組んで、欧州橋梁モニタリングの実態調査を行った。

   写真1 調査団一同とCPSのJulieさん

 

 今回調査したのは、次の組織と橋梁である。
  • CPS及びXEIAD社(イギリス、ロンドン)
  • Queen Elizabeth II Bridge(イギリス、ロンドン)
  • Epsilon Optics社(イギリス、ロンドン)
  • Edinburgh大学(イギリス、エディンバラ)
  • Forth Bridge及びForth Road Bridge(イギリス、エディンバラ)
  • TNO(オランダ、デルフト)
  • Van-Brienenoord Bridge(オランダ、ロッテルダム)
 以下に各調査先での調査結果の概要を報告する。

(1)CPS及びXEIAD社訪問とQueen Elizabeth II Bridge調査

 イギリスでは遠望目視による一般点検の頻度は1回/2年、近接目視による主要点検の頻度は1回/6年が義務付けられ、地方は英国道路庁の基準を準用することとされている。英国道路庁は点検を管理エージェントに委託し、地方はインハウスエンジニアが実施する。

 CPS(Connect Plus Service)は、ゼネコン、コンサル会社等の4社からなるコンソーシアムであり、M25(イギリス国内の全交通量の15%を占める主要幹線道路)に関連する路線の維持管理・保守点検業務に関する30年間の契約を2009年に英国道路庁と結んでいる。

 XEIAD社は、CPSの下、ロープによるアクセス、水中ダイビング等の特殊な技能を要する点検に特化した土木コンサルタントである。

 今回の訪問では、CPSのSteve Pattrickアセットマネージャー及びXEIAD社のOlivier Garrigue CEOをはじめとするメンバーにご対応いただき、RIMSの取り組み等のご紹介やモニタリングシステムのご提案とともに、CPSの管理下にあるQueen Elizabeth II Bridgeの実態を調査した。

 Queen Elizabeth II Bridgeは、ロンドン東部においてテムズ川を渡る全長450mの斜張橋である(写真2の左)。振動、変位、温度の計測のためのセンサが2014年から一部に設置されているが、高さ30mのコンクリートの橋脚(写真2の中央)やジョイント部(写真2の右)裏側の点検は、高所でのロープアクセスによる点検が必要となっており、我々のコンセプトである設置が容易なセンサによる常時モニタリングに対して高い関心が示された。

  写真2 Queen Elizabeth II Bridge
  (左:全景、中央:橋脚、右:ジョイント部)

 

(2)Epsilon Optics社訪問

 Epsilon Optics社は、構造設計と光ファイバセンサによる計測技術を組み合わせることで、土木、海洋、航空宇宙等の様々な分野へモニタリング技術を提供していることから、同社とのミーティングをセットし、イギリスにおけるモニタリング技術の適用実態に関する情報収集と意見交換を行った。

 Epsilon Optics社は、光ファイバセンサ自体の開発は行っていないが、光ファイバセンサに対するパッチのアセンブリ(写真3)等を通して様々な分野に実装し、モニタリングに関する幅広いノウハウを有していることを強みとしている。その実績は、イギリス国内にとどまらずグローバルなもので、対象も橋梁やトンネルにおけるクラックのモニタリング、ヨットのキールや飛行機の着陸装置への負荷のモニタリング等幅広く、RIMSプロジェクトの将来のビジネスモデルとして参考となるものであった。

 写真3 Epsilon Optics社による光ファイバセンサのアセンブリ

 

(3)Edinburgh大学訪問

 Edinburgh大学では、コンクリートなどのインフラ主要構造部材を対象とした非破壊検査技術の世界的権威であるMike Forde教授の元を訪問し、RIMSの取り組み等をご紹介するとともに、Mike Forde教授に企画いただいたラボツアーに参加した。

 Mike Forde教授には、我々の取り組みに関心を持っていただき、団長の下山教授に訪問に対する感謝状が渡された(写真4)。ラボにおいては、コンクリートの崩壊を模擬するための圧縮装置にAE(Acoustic Emission)センサを取り付け、崩壊過程を解析する取り組みや(写真5)、更に医療のCTを組み込み、X線を加えた4D化を試みるといった最先端の研究紹介がなされ、橋梁モニタリングへの応用が示唆されるなど、有意義なものであった。

   写真4 Forde教授から下山団長への感謝状(左)
   写真5 ラボツアーの様子(右)


(4)Forth Bridge及びForth Road Bridge調査

 2015年に世界遺産リストに登録されたForth Bridge(写真6)は、エディンバラ近郊のフォース湾に架かる鉄道橋である。全長2530mのカンチレバートラス橋で1890年に完成している。

   写真6 Forth Bridge

 

 Forth Bridge に並行して架かるForth Road Bridgeにおいては、定期点検の結果、2004年に大規模な腐食が主懸架ケーブルを構成するストランドに発見された。これを受けて、新たな橋梁としてThe Queensferry Crossingが2016年中の開通を目指して建設が進められている(写真7)。

 写真7 Forth Road Bridge(右)とThe Queensferry Crossing(左)

 これら3橋梁にはいずれもモニタリング用のセンサが取り付けられている。例えば、Forth Bridgeにおいては、包括的な構造モニタリングシステムが2002年に実装されており、リニア変位変換器、回転ポテンショメータ、傾斜計、温度センサとひび割れ検知を含む様々なセンサが備えられ、支承可動部の動きに加え、中央タワーおよびスパン接続部の3軸方向(垂直・水平方向および回転)の変位を検知することができる。しかしながら、いずれの橋梁においても信頼性のある無線センサがないことから確実な有線センサを用いているのが現状であり、我々がターゲットとしている無線化や自立電源化に関しては、現場では未だ適用されていない状況が確認できた。

(5)TNO訪問

 TNO (オランダ応用科学研究機構(the Netherlands Organization for Applied Scientific Research) )は、オランダ議会によって1932年に設立された 欧州では最大規模を誇る中立の総合受託試験研究機関である(写真8)。今回の訪問では、インフラ関連のプログラムディレクタであるPeter-Paul van't Veen氏をはじめとする7名でご対応いただき、双方の道路インフラモニタリングの取り組みを紹介しあうとともに意見交換を行った。また、デルフト大学の一角に開設されたTNOのOptics Labも見学させていただき、光ファイバセンサのデモ等、産学連携での取り組みの一端もご紹介いただいた。

 双方の課題認識が共通していたためか、帰国後すぐにTNOから共同での継続検討についての申し入れがあるなど、RIMSの国際展開に向けての足掛かりとなる成果を残すことができた。

   写真8 TNO玄関での記念撮影

 

(6)van Brienenoord Bridge調査

 ロッテルダムのvan Brienenoord Bridge(写真9)はオランダ国内で最も交通量が多いA16高速道路の一部である。

    写真9 van Brienenoord Bridge

  ブリッジの固定部分の約30m2の領域、拡張ジョイントの近傍の低速レーンの下に、ひずみゲージに加え、16個のAEセンサがTNOにより装備されている。最初のモニタリングは、2013年7月から開始されている。センサからのデータ転送には、ここでも無線通信は用いられておらず、50mのケーブルを使用して各センサを個別に接続しており、大量のケーブルが引き回されていることが印象的であった(写真10)。

 写真10 モニタリングの様子
(左:ひずみゲージの施工、右:ロガーに集まるケーブル)


今回の調査で、欧州(イギリス、オランダ)の橋梁モニタリングの実態を把握することができた。また、下山団長から各所でRIMSの紹介をしていただき、RIMSの活動を関係者に理解いただいて広報が図れた。我々の開発している技術にも興味を持って頂き、今後欧州での実証実験、その後のビジネスにおける協業を視野にいれて、今回の訪問先とは引き続き連携を図る予定である。

(NMEMS欧州橋梁モニタリング実態調査団:芦塚憲一郎、伊藤寿浩、茅野茂、塩谷智基、下山勲、武田宗久、中嶋正臣、渡部一雄)


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2016年11月11日 (金)

北米出張報告


 2016年10月30日~11月11日の間、国際交流、および産業・技術動向調査を目的に北米(オーランド、アトランタ、サンフランシスコ、スコッツデール)を訪問したので報告する。

【IEEE Sensors(10月30日~11月2日)】

 今年のIEEE Sensorsは、米国フロリダ州オーランドで10月30日〜11月2日に開催された。本学会には3年ぶりの参加だったが、図1にポスター展示の様子を示すが、以前に比べてますます盛況になっていた。特に驚いたのは日本からの参加者が2倍近く増えていたこと、エネジーハーベスタのセッションが新たに新設されていたことである。IoT社会・トリリオンセンサ社会に向けて、自立型センサネットワークへの関心が高まってきていることのあらわれだろうか?

 一方で、上記IoT社会に向けて企業からの発表が増加していることを期待していたものの、ほとんど大学や研究機関からの発表であり、ビジネス展開については正直なところ期待外れであった。本学会の参加は技術研究組合MEMS技術研究機構として出席したので、発表内容は省略し、以下に大学訪問、およびMEMS & Sensors Executive Congressの参加報告を記載する。


図1 IEEE MEMSのポスターセッションの様子


【研究室訪問】

① フロリダ大学

 IEEE Sensors最終日に東京大学教授の鈴木雄二先生とフロリダ大学に訪問した。MISTセンター(Multi-functional Integrated System Technology)の主にRF-MEMS、および低消費電力MEMSセンサを担当されているProf. Yoon氏、およびProf. Nishida氏にMISTの紹介をいただき、クリーンルームを見学させていただいた。クリーンルームの見学では、専任の方(Dr.)に案内をしていただき(図2)、装置管理や教育体制が行き届いている印象を受け、まるで企業のクリーンルームのように感じた。見学後には、Prof. Yoon氏、鈴木先生と近くのステーキハウスで晩ご飯を食べながら楽しい一時を過ごした。(図3)

図2 MISTのクリーンルーム案内の様子 図3Yoon先生、鈴木先生との会食の                          様子

② ジョージア工科大学

・Prof. Ayazi

 ジョージア工科大学では、BAW(Bulk acoustic wave)を用いたジャイロスコープやMEMS振動発電の研究を行っているProf. Ayazi氏の研究室を訪問した。Ayazi氏とは後述するMEMS & Sensors Executive Congress の会場でもお会いし、振動発電、自立型センサ端末に向けた低消費電力のMEMSセンサ等、自立型スマートセンサに向けて多くの議論ができた(図4)。技術研究組合NMEMS技術研究機構での振動発電の取り組みを紹介したところ、エレクトレットの形成手法であるアルカリ熱酸化+高温電圧印加(BT処理)に強い関心を示された。Prof. Ayazi氏のところでは、X-Yの平面で多軸MEMSアクチュエータによる圧電方式の振動発電を研究されており、発電量は少ないものの静電誘導型でも参考となる構造であると感じた。

・Prof. Tentzeris

 また、環境RFから給電するアンビエント・エナジーハーベスタの研究をされているProf. Tentzeris氏の研究室を訪問した。無線等のRF環境がある領域において、エネルギーを取り込み、LEDを発光させるデモを見せていただいた。この発電方式は、RF環境によるところが大きいが、10μW程度までの発電が可能である。課題としては特に周波数が高い場合、電圧出力がとれないとのことである。電圧出力のとれる太陽電池や振動発電等の別のエナジーハーベスタと融合し、ハイブリッドの発電構造とするのが良いだろうとのことであった。 NMEMS技術研究機構で取り組んでいる静電エレクトレット方式の発電とのコラボレーションの話があったが、NEDOテーマであり、すぐに対応できない状況である。まずは、個別企業への技術紹介までとする。図5に実験室でのメンバと一緒に撮影した写真を示す。


 図4 Prof. Ayazi氏と会議室にて 図5 Prof. Tentzens氏と実験室にて

・見学

 両研究室の訪問の間に、Prof. Ayazi氏の研究室の研究員に約1時間ジョージア工科大学のキャンパス&クリーンルームを案内していただいた。ジョージア工科大学のクリーンルームの一部を図6に示すが、とても広く、また装置も新しい設備が多く、大学保有の研究室とは思えない規模であった。読者のみなさまも機会があれば訪問されることをお勧めする。

  図6 ジョージア工科大のクリーンルーム(一部)

③ BSAC

 スマートダストの生みの親である、カリフォルニア大学バークレー校BSACのProf. Kristofer Pister氏の研究室を訪問した。 Pister氏は短パン姿でフランクに迎えてくれた(図7)。まず、最初に当センターでの活動紹介、現在の開発テーマの紹介を行った。振動発電について、ホワイトボードを前にセンサの消費電力低減、低リークキャパシタ等今後の進展を考慮し、リチウムイオン電池2400mAhであれば、センサ端末の寿命が20年以上もつことを式で示された。振動発電をウェアラブル端末等の市場に使うにはまだまだ時間がかかるだろうが、一方で、センサ等の消費電力の大きいアプリケーション、無線頻度が高いアプリケーション、そして、インフラモニタリング等の長寿命のセンサ端末が必要なアプリケーションには、まだまだ振動発電デバイスの必要性があるだとうということであった。
 また、Pister氏から、今後の取り組みとして、1cm□程度のマイクロロボットのポンチ絵を紹介してくれた。CCDとマイクロフォンを内蔵して動く昆虫形であり、6足の昆虫型やドローン構造のマイクロロボットを紹介していただいた。有害な昆虫の撃退やミツバチの代わり等、様々なアプリケーションが考えられるが、軍事用途を考えると恐ろしさを感じた次第である。

        図7 Prof. Pister氏と研究室にて


【MEMS & Sensors Executive Congress】

 本出張のメインイベントとして、MEMS & Sensors Executive Congressに国際交流およびMEMS産業動向調査の一環として参加した。この会議はMEMS & Sensors Industry Group(MSIG)が主催する会議であり、2016年は11月9日~11日にアリゾナ州スコッツデールで開催された。

 筆者は2年前にも参加したがその時には、日本からはオムロンの関口氏と筆者のみの参加であり、日本のMEMSへの関心の低さを感じていたが、今回はSPPテクノロジーズの神永氏、東北大学の田中秀治先生はじめ10人近くの出席者があった。これは、IoT社会に向けた関心の向上と、昨年度からトリリオンセンササミットをMSIGが巻き込んだことによるものではないかと考える。

 会議自体は、11月10日・11日と2日間の開催であり、講演会はMEMSやセンサ、センサ応用に関する講演が続いた。講演者はMEMS企業のトップが登壇することもあり、技術的な講演から、事業的な内容まで多岐にわたる。今回、約200名の人が参加していたが、企業トップや、投資家、研究機関などが主要な参加者であった。この会議の一番の特徴は、休憩時間や昼食では、懇親の時間がたっぷりととられており、このような場でコミュニケーションを通じて、人的ネットワークの構築を高めて、ビジネスや研究に活かしていくきっかけをつくることであることであろう。図8、9に休憩時間の様子やBanquetの様子を示す。 この会議の期間中に、InvenSense社が日本の企業に買収されるかもしれないという噂が聞こえてきたが、企業間の動きはこのような場が一つのきっかけなのかもしれないと感じた次第である。

 今年の会議の内容について、IoT(Internet of Things)への期待はこれまで同様であるが、さらに、今回は自動車関連の話題が多かった。車載用途での高性能ジャイロスコープについて、先に報告したジョージア工科大学のProf. Ayazi氏(ジョージア工科大発ベンチャーの米Qualtré社)から、バイアス不安定性の原因を取り除く独自の技術を報告されていた。また、IHSからもクリーンカー、コネクテッドカ―等の自動車動向、MEMS&センサーの動向、市場予測の報告があった。

 

図8 休憩時間の様子      図9 Banquetの様子


【所 感】

 今回、大学訪問やMEMS & Sensors Executive Congressに参加して多くの方々と会話をした。 一方で、会話する相手の方々も何らかの価値を期待しており、特に、日本の企業・大学とのコラボレーションの機会を探っていることが多かった。 事前に訪問先を国内企業に紹介して、関心のあるメンバと同行して参加する等の活動も今後必要ではないかと思う。なお、詳細は2017年1月30日に当センターで開催する海外出張報告会にて報告する予定である。


 

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2016年11月 2日 (水)

IEEE Sensors 2016 参加報告(2)

                   今年のIEEE Sensorsは、米国フロリダ州オーランドで10月30日〜11月2日に開催され、以下のようなセンサ各分野の最新の成果が発表されました。

                    •センサアプリケーション
                    •センサネットワーク
                    •センサ/アクチュエータシステム
                    •機械的および物理的センサ
                    •光学センサ
                    •化学およびガスセンサ
                    •現象、モデリング、評価

                   会場は、オーランドの南部に位置するCaribe Royale Hotelのコンベンションセンターにて開催され、42カ国からの参加がありました。                   

                  

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       図1 学会会場 

 会議は、国防総省先進研究プロジェクト庁(DARPA)のトロイ・オルソン博士からのプレナリーで始まり、博士は既存のワイヤレスセンサシステムの限界を指摘していました。また、ワイヤレスセンサの寿命を数年に延長すると期待される新しいアプローチとコンポーネント技術を実証していました。
                  
 プレナリーの後、様々なパラレルセッションとポスターセッションが行われました。バイオメディカルアプリケーション用のウェアラブルセンサへの強い関心がみられました。 2件目のプレナリーでは、シンガポール国立大学のChwee Teck Lim教授による、さまざまな身体の動きを監視し、リハビリテーションプロセスに応用するための柔軟で着用可能な液体ベースの抵抗性マイクロ流体センサについて講演が行われました。Twente大学のPaul Havinga教授は、センサネットワークとリアルタイム動物追跡によって、密猟者から動物を守る方法についての講演を行っていました。追跡センサは人間または動物に限らず、ロボットのためのさまざまな例も示されました。最も革新的だった講演の1つが、グラスゴー大学のRavinder Dahiya教授のヒューマノイドロボットと一体化した薄膜のフレキシブル電子皮膚についての講演でした。このような電子皮膚は、薄膜圧力センサのアレイから構成され、周囲の環境とロボットをより良く統合することを今後可能にしていくと予想されます。
                  
 最終日はRIMSプロジェクトで開発された、SHMのためのフレキシブルセンサーアレイに関連する成果の発表を行いました。著者のダニエルは、印刷ひずみセンサアレイの研究開発成果をポスターセッションで発表し、センサネットワークセッションでは、山下研究員が極薄PZT/Si圧電ひずみセンサアレイについての招待講演を行いました。PENフレキシブル回路基板への極薄PZT/Siの転写、配線プロセスについて解説し、高速道路橋でのリアルタイム測定のデモンストレーションも行いました。
                  
 来年は英国のグラスゴーで、再来年はインドのニューデリーで開催される予定です。
                  

                  

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図2 印刷ひずみセンサアレイのポスター発表(ダニエル発表)                   

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   図3 山下研究員による招待講演

                  

 

                  

(技術研究組合NMEMS技術研究機構 Daniel Zymelka)

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IEEE Sensors 2016参加報告(1)

 1999年に設立されたIEEE Sensors Councilが、センサ、およびその関連技術に関する最も主要な国際会議として2002年より毎年開催しているIEEE Sensors 2016に参加し、RIMSの研究開発で得られた成果を発表するとともに関連研究の動向調査を行ってきた。

 第15回となる今回は2016年10月30日(日)から11月2日(水)を会期として、アメリカ・オーランドのCaribe Royale Hotel and Convention Centerで行われた。

 投稿論文数は1049件で、これは2010年以降の同学会の中では2番目に多い数であった(1番は2010年にハワイで開催された回で1082件。今回もそうだが、リゾート地で開催されると投稿数が伸びる傾向は否めない)。採択論文数は口頭発表が198件、ポスター発表が420件で、採択率は例年と同様に6割以下であった。基調講演は、アメリカ国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency, DARPA)のTroy Olsson氏の”Event Driven Persistent Sensing: Overcoming the Energy and Lifetime Limitations in Unattended Wireless Sensors”と題した、IoTを実現するための10nW以下の超低消費電力デバイスによるネットワークシステムに関する試み、シンガポール国立大のChwee Teck Lim教授の”Highly Flexible and Wearable Microfluidic Sensors”と題した、液体状の導電性材料とエラストマーで構成されたウエアラブル向けのフレキシブルセンサに関する内容、オランダ・トゥウェンテ大のPaul Havinga教授の”Pervasive Systems, Sensor Networks, IoT – Animal monitoring and poacher detection using wireless sensor networks”と題した、センサネットワークを駆使した密猟からの動物の保護に関するアプローチの3件、招待講演は筆者の発表も含めて18件であった。

 本年も昨年に引き続き、Live Demoという試みが行われていた。これは、ポスターセッション会場に、希望した研究者がセンサなどのデモ機を持ち込んで展示するシステムであり、聴講者に対してデモ機を交えてより具体的な説明が可能となっていた。
 また、これも昨年からの引き続きで、各セッションの座長とそのセッションでの口頭発表者が朝食をとりながら打ち合わせをできる時間が毎朝設けられていた。フランクな場で事前に座長に自身の研究背景や内容の理解の助けとなる説明をできるため大変重宝した。
 さらに、本学会は複数会場でのパラレルセッションで進行されるため、聴講したい発表が同時刻に重なった場合を考慮して、発表者のスライド資料と音声は録画・録音されており、本人の承諾を得られた発表に関してはWebで有料公開している(学会参加者は、会期終了後の数日間は無料でダウンロードできる特典がある)。聴講者にとっても聞き逃し防止になるが、発表者にとっても自身の研究を広く公開できるシステムである。
 
 さて、筆者らはSensor Network, Application and IoTのセッションで”Ultra-Thin Piezoelectric Strain Sensor Array Integrated on Flexible Printed Circuit for Structural Health Monitoring”と題して、これまで開発を行ってきた極薄圧電ひずみセンサをフレキシブルシート上にアレイ状に転写して実装し、鋼橋に貼り付けて車両の通行によって発生する動ひずみのモニタリングに成功した内容を招待講演として口頭発表した。聴講者からは、圧電ひずみセンサのゲージ率はどれくらいか?という質問があったが、筆者らが使用しているセンサは圧電タイプであるためゲージ率という特性はなく、センサの感度を回答した。やはりひずみセンサとしてはひずみゲージが一般的によく用いられるためゲージ率に関する疑問が生じたのだと考えられる。しかしながら、導体の抵抗変化からひずみ量を換算するひずみゲージはその動作に電力が必要であるが、圧電タイプのひずみセンサはセンサの動作そのものには電力を必要としないという利点があるので、動作原理も含めてより広く発信していきたい。他に、導電性ペーストによる上下電極のショートを防ぐために印刷している絶縁性ペーストはどのような材料のものか?という質問もあった。本研究ではエポキシ系の樹脂を使用しているが、ファインパターン用の高粘度絶縁性ペーストはそれほど需要がないこともあって市場にあまり出回ってないことから質問があったのだと考えられる。しかしながらスクリーン印刷という低コストのプロセスで広い面積に対して一度に絶縁を取れる本手法は聴講者の興味を引くようで、他の学会でも同様の質問を受けたことがある。すでに特許化している技術であるので、このプロセスに関しても広く周知したいと考える。
 会議全体を通しては,例年の各種センサ・アプリケーションのセッションに加え、本年は特別セッションとしてフレキシブル・ウェアラブルセンサや3Dプリンテッドセンサ、エナジーハーベスティング・低消費電力センサのセッションが新設されていた。これらのキーワードから思い浮かぶのは、IoTやトリリオンセンサを実現するキーテクノロジーであるということだ。この次世代センサネットワーク技術を達成するための鍵となるこれらテーマは今後ますます重要な研究課題となるであろうことから、上記セッションも非常に盛況であった。
以下に筆者が興味を持ったいくつかの発表の概要を記載する。

 (1) イギリス・Warwick大、Simon Leigh氏の招待講演: ”Polymer Composites for 3D Printing of Functional Sensors and Transducers”

 様々な機能性材料、例えば導電性・磁性・圧電性の材料を混合した3Dプリンタ用の素材を用いて各種センサを製造する研究に関する内容。プレゼンでも特に強調されていたのは、「センサのセンシング機能の部分に機能性材料の3Dプリンティング技術を取り入れようとしているにすぎず、決して回路基板等のすべてのパーツを3Dプリンティング技術でカバーしようとしているわけではない」ということであった。すなわち、回路基板などは既存のプリント基板製造技術を使い、一部3Dプリンティング技術を活用したハイブリッド製造であるということだ。これは筆者らが作製しているセンサアレイでも同様であり、センサの部分は高感度なシリコンベースの圧電構造を用いているが、基板の部分はフレキシブル材料や印刷技術を使っている。やはりそれぞれの技術には「できること」と「できないこと」があり、もちろん「できないこと」を「できること」に進歩させることも重要な研究ではあるが、スピード感を持って新規デバイスを開発する場面ではそれぞれの技術の「できること」をいかに上手く組み合わせるかが重要であると改めて感じた。また、圧電材料の3Dプリンティング技術による超音波センサの作製についての概要が述べられていたため、筆者らのセンサアレイ製造手法として応用できるかもしれない(圧電性高分子の配向方法などについて彼らの論文等をより詳しく調査する必要があるが)。

 (2) アメリカ・Case Western Reserve 大、Steve Majerus氏の招待講演: ”Wireless Bladder Pressure Monitor for Closed-Loop Bladder Neuromodulation”

 膀胱鏡内部に入れて使用するワイヤレス無線通信機能付きの微小な圧力センサに関する内容。生体用ということもあり、基板上に搭載されたMEMS圧力センサや無線通信用の回路やアンテナ部分もすべてPDMSモールドを用いたエポキシ系樹脂の埋め込みで保護されたデバイスであった。筆者らが作製しているセンサアレイは、センサ部分は極薄構造としているため耐候性フィルムを貼ることで保護するコンセプトであるが、無線通信やアンプ部は厚さが数mm程度のチップを使用しているため、現状ではフレキシブル基板上に集積することはできていない(耐候性フィルムを貼れない)。しかしながら、今後センサアレイのより簡便な施工性を目指す上ですべてのパーツをフレキシブル基板上に集積するコンセプトは 活かしたいため、極薄のセンサ部分はこれまで通り耐候性フィルムを貼ることで保護し、厚みのあるチップ搭載箇所は耐候性フィルムと同様の樹脂材料をモールディングで埋め込む加工技術を適用できるかもしれない。また、本デバイスはRFの無線給電用コイルも形成されており、小型バッテリーを遠隔で充電できる設計となっていた。現状では無線給電はまだ汎用的に用いることのできる技術ではないため、センサネットワークを構築する際はセンサ端末をいかに低消費電力とするか、という方向の議論が主となりがちであるが、今後より指向性や充電効率の高い無線給電技術が登場すればこのバッテリー問題の解の1つとなりセンサネットワークデバイスの応用領域も広がると考えられるため、それら技術の発展に期待したい。

(3) イギリス・Glasgow大、Ravinder Dahiya氏の招待講演: ”Large Area Electronic Skin”

 ロボットの皮膚に応用するための、センサをアレイ状に搭載した大面積フレキシブル基板の製造手法に関する内容。この研究においても筆者らと同様に新規のデバイスを開発するために有機・半導体材料をミックスしたハイブリッド構造によるアプローチが試みられている。具体的には、ポリイミド基板上にSU-8をスピンコーティングで塗布し、その上にシリコンウエハ上に作製したシリコンマイクロワイヤ構造をPDMSで転写する。その後、その転写したシリコンマイクロワイヤ上に銀ペーストのマイクロスポッティング技術でSource、Drain電極を形成し、絶縁性のUV硬化性樹脂をスピンコートした上に同様に銀ペーストでGate電極を形成してTFT構造を作製し、大面積のフレキシブル触覚センサとしている。極薄のシリコン構造を転写し、銀ペーストの塗布で電極を形成している点は筆者らの研究と類似しているため、このような製造手法はシリコンベースの極薄構造とフレキシブル材料とのハイブリッドデバイスを形成する定法として定着しつつあると感じた。一方で、他の研究機関が用いてる転写のプロセスは粘着性のあるPDMS等のゴム材料に写し取る手法がほとんどである。微細な構造を一括で転写できる点は優れているが、構造1点1点をアライメントしながら転写でき、極小支持構造で支えられた形状に加工することさえ可能なら本体形状の自由度は比較的高い筆者らの手法も広く普及させたい。

 このオーランドは市近郊にディズニー・ワールド(学会のバンケットもディズニー・ワールドの4大テーマパークの1つであるEpcotで開催された)やユニバーサル・リゾートなどのいくつものテーマパークやゴルフ場を有したアメリカでも屈指のリゾート地であり、気候も良く会期中は連日晴天であった。一方で、会場周辺のホテルはすべて中にレストランやショップを有したリゾートホテルであり、ホテルと各種テーマパークや空港とを車やバス・タクシーで移動することを前提とした交通網となっていた。そのため、ホテルの外に出て徒歩で移動することを想定した街づくりはされておらず、周辺はスピードを出した巨大なトレーラーが行き交うハイウェイに近い片側4車線の幹線道路だらけであり、横断歩道はもちろん、道路脇の歩道や 歩行者用信号も一切なかった。従って、この地域で学会が行われた際は学会会場のホテルに宿泊するのが吉である(筆者は会場から少し離れたホテルに宿泊したため、連日道なき道を歩き、命がけで歩行者用信号や横断歩道のない幹線道路を横断する羽目となった)。なお余談になるが、バンケット会場でお酒を飲もうとした際に年齢を確認された(筆者は35歳である)。とかくアジア人は若く見られがちであるので、盗難防止の意味も含めて飲食の際もパスポートは持ち歩くのが賢明である。

 次回は,2017年10月29日から11月1日を会期としてイギリス・グラスゴーで開催が予定されている。今回のオーランド同様日本からは少々遠いが、今後本格的なIoTやトリリオンセンサの時代が到来すると予想される中、それら技術を実現するセンサ端末・システム・アルゴリズム・アプリケーションなどを包括的に議論できる最大規模の国際会議であるため、自身も含めてぜひ有効に活用できればと考える。

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学会会場のプールサイドで行われたウエルカムレセプション

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Troy Olsson氏の基調講演

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Epcotで行われたバンケット

 

(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 山下 崇博)

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ハイウエイテクノフェア2016出展


 2016年11月1日(火)~ 11月2日(水)に東京ビッグサイト西3・4ホールで開催されましたハイウエイテクノフェア2016に技術研究組合NMEMSが1小間出展致しました(写真1:開会式の様子、写真2:NMEMS技術研究機構の出展ブースの様子)。

Image_33_3      写真1 開会式の様子

Image2_37_2  写真2  NMEMS技術研究機構の出展ブースの様子

 ハイウエイテクノフェア2016は公益財団法人高速道路調査会が主催し、NEXCO3社が共催する高速道路を支える最先端技術を紹介する展示会です。今年は第13回目で、259の出展者が1105の新技術等を出展し、2日間で約20,300名の来場者がありました。
<https://www.express-highway.or.jp/htf2016/htf2016report.pdf>

 来場者数は昨年から2,000名以上増加するなど毎年右肩上がりで伸びており、非常に活気に溢れた展示会となっています。出展物も、安全服から最新の道路監視システム、さらには大型の湿塩散布車に至るまで、ハイウェイに関係するものならなんでもありで、非常にユニークです。

 NMEMS技術研究機構のブースでは、RIMSの概要説明として、今年のMEMS センシング&ネットワークシステム展で使用したパネル20枚を使って、以下の特徴を有するRIMSプロジェクトの広報を行いました。
 ●従来の点検技術を補完し、道路インフラの状態を常時・継続的・網羅的に
   モニタリング
 ●道路インフラのトータルな維持管理が可能
 ●高速道路の橋梁、道路付帯物、法面等を対象
 ●センサ端末は自立電源駆動
 ●新規の小型、安価、高性能、高耐久性無線センサ
 ●多種多様なセンサからのデータを収集する無線通信センサネットワーク
 ●セラミックスによる高耐久のオールインワンパッケージ
 ●モニタリングシステムを革新する原子時計

 また、新規のセンサのうち、広帯域振動センサ(SA: スーパーアコースティックセンサ)に関しては、模型の橋梁を用いた弾性波のリアルタイム位置標定のデモを行いました(写真3 デモの外観)。橋梁床版の損傷箇所から発生する弾性波は、シャープペンシルの芯を模型の橋梁上で圧折することにより模擬できるため、開発した複数のSAセンサ(写真3の橋の上にある白い立方体状のもの)を模型の橋梁に取り付け、模擬した弾性波が到達する時間差を計測することにより芯の圧折位置をリアルタイムで評定し、ディスプレイ上にその位置を表示するというものです。この位置評定結果等を利用し、橋梁床版の内部損傷を可視化できることを合わせて説明することにより、取り組みの先進性と有用性をアピールすることが出来ました。

Image3_21_2        写真3 デモの外観

 ブースにはRIMSプロジェクトに興味のある方が多数来場され、密度の濃い意見交換ができ、RIMSプロジェクトの広報も出来ました。
 次回のハイウエイテクノフェア2017は2017年11月21日(火)~11月22日(水)に東京ビッグサイト東7ホールで開催されます。

(技術研究組合 NMEMS技術研究機構 中嶋 正臣)

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