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2016年10月

2016年10月27日 (木)

IoTSWC2016参加報告

IoTSWC(正式名称、IoT Solutions World Congress)は、2015年より1年に一度、スペインのバルセロナで開催されるIIC(正式名称、Industrial Internet Consortium)主催のイベントになります。本イベントは、実運用に向けた検証プラットフォームであるテストベッドが公開される場となっており、Industrial Internet of Things(以下、インダストリアルIoT)分野の最先端技術を用いたリファレンス実装や、その先の社会実装を調査するうえで最適なイベントと考えます。今年は、2016年10月25日から27日までの3日間で来場者数が70ヶ国8000人以上となり、来場者の54%が経営幹部や上位管理職の方々となったようです。また、テレビ局の取材も多数行われる等、インダストリアルIoT分野の盛り上がりを感じさせるものでした。

1 開催地バルセロナの街並み

2 講演会場の様子


[IICに関して]

 IICは米国の通信キャリア、重工業、コンサルティング、ネットワーク機器、半導体関連の企業により2014年3月に設立され、インダストリアルIoTの社会実装の検証と、標準化団体への検証結果の引き渡しを目的とした団体として活動しております。IIC自体は標準化団体ではありませんが、2016年11月時点では各国から250以上の組織が加盟する規模となっていることから、インダストリアルIoT分野におけるデファクトスタンダード形成の場として動向を注視していく必要があると考えております。

[動向調査]

 イベントは、IICに関連するテストベッド展示、一般展示の他に、ヘルスケア、製造、輸送、インフラ、先端技術、事業改革に関する講演や、パネルディスカッションが実施されました。講演した企業、団体の国別内訳では、北米と欧州で全体の9割を占めており、IICの活動に対して積極的な参加を行う北米、欧州からの講演が目立つものとなりました。(図3)

 

3 各国の講演数(カンファレンス資料より算出)


 欧州企業の講演でも特に、ドイツの板金加工機械メーカーであるトルンプ社のスマートファクトリーのリファレンス実装のデモや、自動車部品メーカーのボッシュにおける生産性能管理プロトコルの標準化活動の紹介では、具体的な活動内容が公開されていることから、研究から運用に至るまで他社を先行しているようにも思えました。

 今回の業界動向調査では、IoTゲートウェイでのデータ転送量制御の最適化技術に関連して、センサデバイス、IoTゲートウェイ、データフォーマット、の観点から企業・団体がどのような技術を有しているのか、調査を実施して参りました。

 この中で印象に残る展示としましては、HPE(Hewlett Packard Enterprise)社、NI(National Instruments)社、PTC社(Parametric Technology Corporation)の共同提案による燃料ポンプ監視システムがありました。本デモでは、燃料ポンプに取り付けられた多数のセンサデータをNI社の制御ハードウェアが集約し、HPE社のコンバージドIoTシステム上でエッジコンピューティングにより解析することで、キャビテーションを引き起こすような深刻な燃料ポンプの異常を可視化するものでした。NI社の制御ハードウェアからHPE社のコンバージドIoTシステムにセンサデータを送信する際に帯域を圧迫しないよう、コンバージドIoTシステム上では全データから異常と判断されるデータの範囲が分析され、NI社の制御ハードウェアが次回以降の送信時に異常値のみを送信することで転送データの大幅な削減が可能となるデータ転送制御を実装している点が特徴です。

 また、コンバージドIoTシステムでは、グラフィカルなダッシュボードも具備しており、燃料ポンプを構成する各パーツにおける異常データをPCモニタ上で可視化しておりました。さらに、本デモではPTC社による拡張現実(Augmented Reality)技術を用いることにより可視化結果を現実の燃料ポンプに投影でき、オペレータは燃料ポンプの監視を行いながら修復作業を行えるようです。

 このように本イベントでは、実運用レベルのユースケース検証を複数社が共同で実施し、その結果を展示していたことも非常に興味深い点でした。

[全体的な傾向]

 IICに関連するテストベッドや参考展示のほとんどが、複数社共同でのユースケース検証を目的としたものであり、一社単独の提案だけでインダストリアルIoT分野を突き進むことが難しいことを再確認致しました。イベントを通して、センサデバイス、ゲートウェイ装置、クラウド分野の米、欧州の企業や通信キャリアが共同で、IT(Information Technology)におけるデバイスの集合とOT(Operational Technology)をどのように連携させ新たな価値を生み出すか、全体論的な話し合いが活発に行われているように感じました。

[次回開催]

 次回のIoTSWCは、2017年10月3日~5日に開催が予定されております。IoTSWCで得られるインダストリアルIoT分野の動向調査の結果をベンチマークとしてフィードバックし、今後も将来を見据えた研究を継続していきたいと思います。

             技術研究組合NMEMS技術研究機構
                    相見 眞男

 

 

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2016年10月26日 (水)

「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウムにMNOICを出展・報告

 センサやMEMS関係の国内最大のシンポジウムである第33回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム(以下センサシンポと略します)が本年10月24日(月)~26日(水)、長崎県平戸市の平戸文化センターで開催されました。このシンポジウムに一般財団法人マイクロマシンセンターからMNOIC(マイクロナノ・オープンイノベーションセンター)の概要とサービスの内容について展示しましたので紹介いたします。

 平戸市は、九州本土の西北端、平戸瀬戸を隔てて南北に細長く横たわっている平戸島と、その周辺に点在する大小およそ40の島々から構成されており、北は玄界灘、西は東シナ海を望んでいます。平戸文化センターは、2000席収容の大ホールや体育館、いくつかの会議室がある本格的施設であり、参加者数は500人超と、決して交通アクセスが良いとは言えない九州の島で開催されたことを考えると、盛況であったといえます。今回のセンサシンポは「Future Technologies from HIRADO 」と題し、電気学会・E部門の部門大会であるとともに、応用物理学会集積化 MEMS 技術研究会主催「集積化 MEMS シンポジウム」が同時開催され、更に、10月24日(月)に2学会共催で,開催地にちなんだシンポジウムとして「日本・台湾国際交流シンポジウム」を開催されました。平戸市は、台湾の英雄「鄭成功(チェンチェンコウ)」の生誕地で、台湾では孫文、蒋介石とならぶ「三人の国神」の一人として尊敬されています。 また、台湾はファンドリメーカが集約し、集積化MEMS技術の研究開発も活発であるため、日台国際交流シンポ開催に至ったそうです。

 まず、「夢 持ち続け日々精進」と題し、株式会社 A and Live 代表取締役、というよりもジャパネットたかた前社長の髙田明氏(平戸市出身)の、学会の基調講演としては異色の講演がありました。講演の演題通り「夢を持ち続け、日々精進」することの大切さを強く訴えるもので「1つの目標を達成するときには、妥協はダメ。その覚悟が絶対に人生にはいる。」は、研究開発にも通じる言葉として印象に残りました。他の基調講演は「CMOSとMEMSの融合が創造する次なるIoT」 National Tsing Hua University(台湾)Weileun Fang氏、「味と匂いを測るセンサの開発」 九州大学教授 都甲潔氏、「医師がシリコンを処方する未来-新しいヘルスケアシステムの幕開け」 Imec(ベルギー)Chris Van Hoof氏 、「昆虫撮影における工夫と電子技術の応用」 栗林自然科学写真研究所 栗林 慧氏、「加速度センサを用いたパーキンソン病の早期診断と歩行支援」 東京工業大学教授 三宅美博氏の4講演が行われました。

  MNOICについては、10/24に技術プレゼンテーション(写真1)と会期中を通して技術展示を行いました(写真2)。全国的にはかなりMNOICの知名度は浸透していますが、九州地区のいくつかの企業や公設試には初めて存在を知る方々もおられ、サービス内容や、試作実績や価格、納期について詳細な問い合わせを受けました。

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                  写真1

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                  写真2

 今、社会経済にインターネット出現以上に衝撃を与えつつあるIoTですが、特に今後のIoTデバイスには、多機能かつ小型、低消費電力等が求められるので、MEMSへのニーズが大きく高まることは明らかです。この分野でMNOICのサービスの実力をさらに向上させ、オープンイノベーションを推進し、我が国のIoTデバイスをはじめとする産業の発展に貢献していきます。

               (MEMS協議会 渡辺 秀明)

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2016年10月21日 (金)

第26回MEMS講習会 開催報告

2016年10月21日に一般財団法人マイクロマシンセンター(MMC)の新テクノサロンにおいて、第26回MEMS講習会「IoTを支えるセンシング技術、”見える化“ に取り組むIoT活用事例」を開催致しました。MEMS講習会は、MEMS協議会に所属するMEMSファンドリーネットワーク企業を中心に企画され、都内と地方都市で年に1回ずつ開催しています。

今回のテーマであるIoT(Internet of Things)は、情報機器だけでなく全てのモノがインターネットによって繋がれる世界ですが、どのような場所で、どのように利用され、どのような効果を生み出しているのか、イメージできない方も多いと思います。そこで、様々なフィールドで新たなセンシング技術による”見える化”に取り組んでいる大学や、ソリューションとしての”見える化”を提供している企業に、その活用事例をご紹介いただくことで、より多くの方々にIoT活用のヒントをお持ち帰りいただければと考えて企画いたしました。

今回の講習会には、IoTを活用した”見える化”に興味を持っている企業を中心に41名が参加し、特別講演2件、IoTソリューション企業からのご講演3件、ファンドリー企業紹介3件の8件の発表を聴講いたしました。

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               写真1 講演会場の様子

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      写真2 主催者挨拶 マイクロマシンセンター長谷川専務理事

講習会は、一般財団法人マイクロマシンセンターの長谷川専務理事による主催者挨拶のあと、本日1件目の特別講演といたしまして、東京大学の伊藤寿浩教授から「装置・人間環境を”見える化”― 低消費電力IoT端末 ― ”鹿威し”センシング技術」と題して、ご講演いただきました。無線を用いたモニタリングで課題となる電源からの帰結としてのセンサ端末のめざすべき姿など、示唆に富んだお話を伺うことができました。装置や人間環境などをモニタリングするには、ばら撒く感覚で使えるセンサ端末が必要であり、センサ端末の機能を絞り込むことで実現する低消費電力化が必須となります。前半では、鶏健康モニタリングシステムでの試みをご紹介いただきました。低消費電力化には、待機電力と通信電力の最小化が重要であり、1)片方向通信、2)イベントドリブン化、3)短通信電文化、の技術により実現されたそうです。これは、電源を持つ受信機の機能を高度化することで、センサ端末の負担を極限まで減らす戦略といえます。また、鶏など、多くのモニタリング対象物の状態変化のスパンが長いことに着目し、多数のセンサ端末からのデータがランダムに送信された時のパケット衝突がモニタリングを阻害しないことを実証し、双方向通信が必要な時刻同期を不要としています。ご講演の後半には、NEDO委託研究「ライフラインコアモニタリング技術開発プロジェクト」で開発中の鹿威しセンシングについて、ご紹介いただきました。装置の軸受け部などに振動発電端末を装着し、その発電量が一定量を超えたら信号を送信するというもので、その信号頻度から装置の状態をモニタリングするという鹿威しの水を振動による発電量に置き換えたシステムになっておりました。必要最小限の電力でモニタリングするシステムとして、その可能性を感じた方も多かったと思います。


             Photo_7         

             写真3 特別講演1 伊藤先生

続きまして、IoTソリューション企業から3つのご講演をしていただきました。最初は、富士通株式会社の藤野克尚氏から「課題を”見える化”―IoTで価値あるデータをご提供」と題して、富士通が進めるヒューマンセントリックIoTについて、ご講演いただきました。IoTの導入には、多大なコストが掛かることから導入を躊躇するユーザーも多いと思いますが、富士通ではIoTを導入する前に効果を検証できるパイロットパックを用意しており、導入の敷居を下げてくれています。IoT活用事例として、位置測位による作業効率の最適化や、音センシングによるプライバシーに配慮した見守りなど、ユーザーの使いやすさを優先した活用事例を多数ご紹介いただいたことで、聴講者も自社で活用する際に気を付けるべきことなどをイメージできたのではないかと思います。

2件目のご講演では、みずほ情報総合株式会社の武井康浩氏に「様々な分野で進むIoT活用の試みとビジネス応用 」と題して、ご講演いただきました。IoTでは、インターネット経由でネットワーク上に蓄積した膨大なモノに関わる情報を加工・分析することで、新たな価値を創造しています。この新たな価値は、「コスト削減」や「売上拡大」などの形で、利用者に利益をもたらすとのことで、従来のモノだけの提供ではなく、価値の提供へとビジネスの拡がりが期待されます。様々な業種での活用事例をご紹介いただきましたが、活用事例の多くは、①効率化や安全性向上につながる活用、②サービス化を促進するための活用、の2つに整理できるそうです。個人的に興味を持ちました活用事例は、モノづくり企業が持つ設備の稼働状況をモニタリングすることで、その有効活用を図るスマートマッチングというものです。MEMSのように製品や装置毎にレシピが異なる状況では難しいかも知れませんが、装置が不足している企業と、装置の稼働率を上げたい企業のマッチングを図る取り組みは、とっても興味深いかと思います。

3件目のご講演では、アルプス電気株式会社の稲垣一哉氏より「現場環境を”見える化”- IoT環境の簡単構築」と題したご講演をしていただきました。アルプス電気では、センサや通信モジュールを製品として持っていたため、その組み合わせで新たな価値を生み出すセンサノードの開発に取り組まれたそうです。ただ、新規事業開拓の道程は平坦ではなく、様々な業種の企業からの引き合いが多数あるものの各ロットは小さく、ビジネスに結び付けるのは難しかったそうです。そこで、顧客毎に製品を開発するのではなく、事業開発キットの位置づけで75%のユーザーを満足させる標準的なセンサネットワークモジュールを開発し、顧客に提供することでニーズを汲み上げる戦略に切り替えられたそうです。今後は、サーバにデータを収集し、そのデータを解析することで新たな価値を創造するなどの取り組みを様々な企業との協業で進めていくとのことで、講習会の参加者の中から協業企業が生まれることを期待したいと思います。

ここでいったん休憩に入り、休憩明けには本日2件目の特別講演と致しまして、東京大学の三宅亮教授より「水を”見える化”― 地域ニーズに即したオーダーメードの小型水質検査システム」と題して、ご講演いただきました。三宅先生は、私たちの飲み水の状態を監視する水質検査装置の研究開発に長年取り組まれており、特に小型化での造詣が深い方です。電話ボックス並みの大きさがある水質検査装置にMEMS技術を適用することでA4サイズにまで小型化され、従来は浄水場や公園など、土地を確保できる場所のみに限定さえていた水質検査装置の設置場所をどこにでも設置できるようにされています。今回のご講演では、地域による水質検査への要求仕様の違いに柔軟に対応できるスマート水質モニタリングシステムについて、ご講演いただきました。このシステムでは、フィルターや濃縮器、ポンプなどを統一規格(サイズ、接続など)のブロックで作成し、同様に検査項目毎の分析ブロックも作成することで、地域のニーズに即してブロックを接続するだけで最適なシステムを構築できるようにしています。また、水質検査のような試薬を用いた分析では、様々な環境で利用いたしますと流体系への負荷が異なるため分析条件を一定に保つことが難しくなり正確な分析が阻害されます。そこで、理論的に構築した解析システムでバーチャル水質分析計をサーバ内に構築し、実機の状態を反映させて解析することで、分析結果に現れる外乱分を補正して正確な分析を実現できるようにされています。リアルな分析計とバーチャルな分析計をリンクすることで、正確な分析を実現するシステムは、他の分野への展開も期待でき、大変興味深いご講演となりました。

            Photo_8          

            写真4 特別講演2 三宅先生

最後のコーナーでは、本講習会を企画したファンドリーサービス産業委員会から3件のご報告をさせていただきました。最初に本委員会を代表いたしまして浅野雅郎委員長より「MEMSファンドリネットワークの活動とサービス紹介」と題して、委員会の活動状況を報告いたしました。また、委員会を構成する企業からは、富士電機株式会社の鮫島友紀氏より「富士電機のMEMS技術・製品紹介」と題して、富士電機の歴史から製品化したMEMSデバイスまでを紹介させていただきました。最後は、大日本印刷株式会社の中谷武史氏より「大日本印刷 MEMSファンドリー紹介」と題しまして、大日本印刷のファンドリー技術の特徴をご紹介させていただきました。

今回の講演会では、できるだけ多くの活用事例のご紹介をお願いした関係で、どの発表も時間いっぱいを使ってのご講演となりましたため、十分な質疑応答の時間を取ることができませんでした。その影響か講演会終了後に講師の方々を囲んだ質疑応答の時間が自然に発生し、なかなか懇親会場へ移動できないという事態に至り、質疑応答の時間を十分に取れなかったことを反省した次第です。

懇親会会場に移動後も講師の方々へのお悩み相談が続いておりましたが、特に印象深かったことは、実際に販売しているセンサモジュールとスマホによるデモを見せていただけたことで、やはりモノがあると理解も捗るということを再認識いたしました。今回の講習会は、活用事例を中心に構成いたしましたが、これをきっかけに参加者の間で交流が進み、新たなビジネスチャンスに繋がれば幸いです。

 

(産業交流部 小出晃)

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2016年10月20日 (木)

EWGAE2016参加報告

EWGAEは2年に一度ヨーロッパで開催される、AE(Acoustic Emission)に関する最大規模の国際会議である。開催回数は32回を数え、ヨーロッパを中心とした産学のAE関係者が一同に集結する。本年はチェコ非破壊検査協会との共催でプラハのCogress Centre Olympicにて開催された。ChairmanはCracow UniversityのZdenek Prevorovsky氏、Local CommitteeのChairはBrno University of TechnologyのPavel Mazal氏が務めた。参加者は160名ほどであるが、欧州のAE関連の中心的な国際会議であり、動向調査として最適な学会である。

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図1 開催地プラハの街並み

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図2 学会会場

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図3 会場内の様子

図4に各国の投稿件数を示す。最多投稿国はチェコの14人であり、以下ロシア13人、日本12人、ドイツ8人と続く。多数の投稿者を集めている国で、日本以外はほぼヨーロッパ各国であり、本会議の特色を表していると言える。

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図4 各国の投稿件数

図5にセッションの一覧および発表件数を示す。

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図5 セッション名と発表件数

[全体的な傾向]
複合材料に関するセッションが新設され、最大の講演数を集めている。複合材料の世界的な普及に従って、モニタリングにAEを用いる研究が増えているものと推測される。 社会インフラ分野への構造モニタリング適用事例は、タンク、圧力容器、クレーンなどへの適用が複数見られた。

[学会聴講]
狭義のAEの意味である、材料欠陥から発せられる超音波帯の弾性波という枠を超えて、AEを検出手法、可視化を含む計測手法の一つとして使用している例が多く見られた。一方、旧来の材料破壊やタンク・パイプラインのモニタリングなどの研究も引き続き数は多く、AEの幅が広がっていることを感じさせる内容であった。以下にインフラモニタリング関連の特徴的な発表の例を示す。

(1) The Test of Railway Steel Bridge with Defects using Acoustic Emission Method (Cracow University of Technology, Poland)
1915年供用開始のクラックが生じている鉄橋において、クラックの進展度合いとAE発生との関係を調べた内容であった。クラック長さが部材の全長、1/2、1/2+ストップホール補修ありの3種類のき裂に対して、き裂周りにAEセンサを設置し、AE発生頻度を調べている。クラックが全長に渡って発生しているものは、クラック先端ではなくクラック中央部から最も多くのAEが発生しており、クラック発生後の摩擦によるAEが原因と推定される。橋梁においてはクラック長が長い場所の計測をする際に参考となる内容である。

(2) Acoustic Emission Testing on LPG Tanks -Defect Detection Case Studies (TUV Austria)
地上設置のLPGタンクに対して、応力腐食割れによって発生するき裂検出をAEにより行った内容であった。円筒形のLPGタンクにおいて、鉄板から円筒型に成形する際に溶接した溶接線に発生する応力腐食割れをAEで検出するというものである。溶接線は円筒タンクの側面に一直線に存在するため、センサは直線の端部に2つ設置するだけで良く、加圧時に腐食部から発生したAEを一次元標定で特定している。構造物の特徴的な形状をAE計測に利用した好例であり、橋梁の接合部や溶接部などにも応用できる。

(3) AE Defect Evaluation of the Upper Anchorage Elements of a Stayed Bridge
メキシコに20年前に建造された全長204mの斜張橋であるRio Papaloapan bridgeについて、溶接不良から発生したケーブルの損傷をAEによって評価した内容であった。斜張橋のロープを上部で固定するアンカリング部にAEセンサを取り付け、供用中の13時間AE計測を行い、得られたAEから各アンカリング部のSeverity indexを算出している。 Severity indexは最も振幅の大きい50個のAEヒットの平均値に相当し、各アンカリングの相対的な損傷状態を比較するのに適している。モニタリング結果から、損傷度の大きなアンカリングを特定できたとのことであった。相対的比較ではあるものの、損傷の進展している部位を特定できるというAEの特性を利用したモニタリング手法であり、他の形式の橋梁へも応用が期待できる。

[次回開催]
次回のEWGAEは2018年にフランスにて開催される予定である。

技術研究組合NMEMS技術研究機構 大森 隆広

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2016年10月18日 (火)

【平成28年10月の経済報告】 


 本項は、マイクロマシン/MEMS分野を取り巻く経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信しています。

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 中秋、平成28年10月の経済報告をお届けします。業務の参考として頂ければ幸いです。内容は、以下のPDFをご参照下さい。

「2016.10.pdf」をダウンロード


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2016年10月 7日 (金)

IEC TC47国際標準化フランクフルト会議が開催される(10月4-7日)

 IEC/TC47技術委員会の国際会議が、10月3日から7日まで、ドイツ・フランクフルトにて開催されました。

 

 10月3日に開催されたTC47/WG6, WG7会議には27名(日本10、韓国13、中国1、ドイツ1、英国1、米国1)が出席し、昨年10月の、ベラルーシ・ミンスクでの全体会議の審議状況の報告、および現在審議中の規格案について、コンビナから報告の後、意見交換が行われました。Future workとして、東京大学 鈴木雄二教授から「低消費電力電子機器向けの力学的環境発電デバイスの試験方法」についてのプレゼンテーションと、今後の日本からの環境発電に関する提案予定が示されました。

 10月4日にはTC47/SC47F/WG’s&MTジョイント会議が開催され、28名(日本9、韓国13、中国5、ドイツ1)が出席し、ミンスクでの審議状況の報告、および現在審議中の規格案についての意見交換が行われました。その中で日本提案である「MEMSエレクトレット振動発電デバイス(PL:東京大学 鈴木雄二教授)」並びに「MEMS圧電薄膜の特性測定方法(PL:神戸大学 神野伊策教授)」がそれぞれFDIS化、CDV化が承認されました。また、Future workとして、「MEMS圧電薄膜の信頼性評価方法(神戸大学 神野教授)」、「フレキシブルMEMSデバイスにおける曲げ信頼性試験(名古屋工業大学 神谷教授)」、「スマートセンシング・インタフェースに関する標準化(マイクロマシンセンター 坂井)」の3件が日本から報告されました。

  

 10月5-7日はTC47/SC47F, TC47の本会議が開催され、各WGおよびSCにおいて決議された内容が各コンビナ及び議長から報告が行われました。

  

 次回の本会議は来年10月にロシア・ウラジオストックで開催される予定です。

            <調査研究・標準部 坂井 裕一>

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2016年10月 6日 (木)

国際標準化への貢献により磯野吉正氏(神戸大学教授)がIEC1906賞を受賞

 平成28年10月6日、都市センターホテル(東京・永田町)において、経済産業省井原政務官ご臨席のもと平成28年度工業標準化事業表彰式が行われ、神戸大学の磯野吉正教授がIEC906賞を受賞されました。



 IEC1906賞は、1906年に発足したIECの創立100年にちなんで創設された記念行事のひとつであり、IECの活動に対して多大な貢献のあった個人を表彰することを目的に、2004年以降毎年行われています。
 磯野教授は長年にわたり、IEC/TC47/SC47Fにおける国際標準化開発のプロジェクトリーダー及びエキスパートを務めてこられました。特に 、日本から提案し、IEC国際規格として発行された「IEC62047-26:マイクロトレンチ構造及びニードル構造の寸法、形状表示及び計測法」のプロジェクトリーダとして規格案作成・提案から標準化審議のフォローまで一貫してかかわってこられました。これらの功績が認められ今回の受賞となりました。

 当日は工業標準化事業として、内閣総理大臣表彰、経済産業大臣表彰(個人、組織)、国際標準化貢献者表彰、国際標準化奨励者表彰、国際標準化功労者表彰が行われました。IEC1906賞は、日本工業標準調査会(JISC)の友野宏会長より手渡されました。
               <調査研究・標準部 内田和義>

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