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2016年10月21日 (金)

第26回MEMS講習会 開催報告

2016年10月21日に一般財団法人マイクロマシンセンター(MMC)の新テクノサロンにおいて、第26回MEMS講習会「IoTを支えるセンシング技術、”見える化“ に取り組むIoT活用事例」を開催致しました。MEMS講習会は、MEMS協議会に所属するMEMSファンドリーネットワーク企業を中心に企画され、都内と地方都市で年に1回ずつ開催しています。

今回のテーマであるIoT(Internet of Things)は、情報機器だけでなく全てのモノがインターネットによって繋がれる世界ですが、どのような場所で、どのように利用され、どのような効果を生み出しているのか、イメージできない方も多いと思います。そこで、様々なフィールドで新たなセンシング技術による”見える化”に取り組んでいる大学や、ソリューションとしての”見える化”を提供している企業に、その活用事例をご紹介いただくことで、より多くの方々にIoT活用のヒントをお持ち帰りいただければと考えて企画いたしました。

今回の講習会には、IoTを活用した”見える化”に興味を持っている企業を中心に41名が参加し、特別講演2件、IoTソリューション企業からのご講演3件、ファンドリー企業紹介3件の8件の発表を聴講いたしました。

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               写真1 講演会場の様子

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      写真2 主催者挨拶 マイクロマシンセンター長谷川専務理事

講習会は、一般財団法人マイクロマシンセンターの長谷川専務理事による主催者挨拶のあと、本日1件目の特別講演といたしまして、東京大学の伊藤寿浩教授から「装置・人間環境を”見える化”― 低消費電力IoT端末 ― ”鹿威し”センシング技術」と題して、ご講演いただきました。無線を用いたモニタリングで課題となる電源からの帰結としてのセンサ端末のめざすべき姿など、示唆に富んだお話を伺うことができました。装置や人間環境などをモニタリングするには、ばら撒く感覚で使えるセンサ端末が必要であり、センサ端末の機能を絞り込むことで実現する低消費電力化が必須となります。前半では、鶏健康モニタリングシステムでの試みをご紹介いただきました。低消費電力化には、待機電力と通信電力の最小化が重要であり、1)片方向通信、2)イベントドリブン化、3)短通信電文化、の技術により実現されたそうです。これは、電源を持つ受信機の機能を高度化することで、センサ端末の負担を極限まで減らす戦略といえます。また、鶏など、多くのモニタリング対象物の状態変化のスパンが長いことに着目し、多数のセンサ端末からのデータがランダムに送信された時のパケット衝突がモニタリングを阻害しないことを実証し、双方向通信が必要な時刻同期を不要としています。ご講演の後半には、NEDO委託研究「ライフラインコアモニタリング技術開発プロジェクト」で開発中の鹿威しセンシングについて、ご紹介いただきました。装置の軸受け部などに振動発電端末を装着し、その発電量が一定量を超えたら信号を送信するというもので、その信号頻度から装置の状態をモニタリングするという鹿威しの水を振動による発電量に置き換えたシステムになっておりました。必要最小限の電力でモニタリングするシステムとして、その可能性を感じた方も多かったと思います。


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             写真3 特別講演1 伊藤先生

続きまして、IoTソリューション企業から3つのご講演をしていただきました。最初は、富士通株式会社の藤野克尚氏から「課題を”見える化”―IoTで価値あるデータをご提供」と題して、富士通が進めるヒューマンセントリックIoTについて、ご講演いただきました。IoTの導入には、多大なコストが掛かることから導入を躊躇するユーザーも多いと思いますが、富士通ではIoTを導入する前に効果を検証できるパイロットパックを用意しており、導入の敷居を下げてくれています。IoT活用事例として、位置測位による作業効率の最適化や、音センシングによるプライバシーに配慮した見守りなど、ユーザーの使いやすさを優先した活用事例を多数ご紹介いただいたことで、聴講者も自社で活用する際に気を付けるべきことなどをイメージできたのではないかと思います。

2件目のご講演では、みずほ情報総合株式会社の武井康浩氏に「様々な分野で進むIoT活用の試みとビジネス応用 」と題して、ご講演いただきました。IoTでは、インターネット経由でネットワーク上に蓄積した膨大なモノに関わる情報を加工・分析することで、新たな価値を創造しています。この新たな価値は、「コスト削減」や「売上拡大」などの形で、利用者に利益をもたらすとのことで、従来のモノだけの提供ではなく、価値の提供へとビジネスの拡がりが期待されます。様々な業種での活用事例をご紹介いただきましたが、活用事例の多くは、①効率化や安全性向上につながる活用、②サービス化を促進するための活用、の2つに整理できるそうです。個人的に興味を持ちました活用事例は、モノづくり企業が持つ設備の稼働状況をモニタリングすることで、その有効活用を図るスマートマッチングというものです。MEMSのように製品や装置毎にレシピが異なる状況では難しいかも知れませんが、装置が不足している企業と、装置の稼働率を上げたい企業のマッチングを図る取り組みは、とっても興味深いかと思います。

3件目のご講演では、アルプス電気株式会社の稲垣一哉氏より「現場環境を”見える化”- IoT環境の簡単構築」と題したご講演をしていただきました。アルプス電気では、センサや通信モジュールを製品として持っていたため、その組み合わせで新たな価値を生み出すセンサノードの開発に取り組まれたそうです。ただ、新規事業開拓の道程は平坦ではなく、様々な業種の企業からの引き合いが多数あるものの各ロットは小さく、ビジネスに結び付けるのは難しかったそうです。そこで、顧客毎に製品を開発するのではなく、事業開発キットの位置づけで75%のユーザーを満足させる標準的なセンサネットワークモジュールを開発し、顧客に提供することでニーズを汲み上げる戦略に切り替えられたそうです。今後は、サーバにデータを収集し、そのデータを解析することで新たな価値を創造するなどの取り組みを様々な企業との協業で進めていくとのことで、講習会の参加者の中から協業企業が生まれることを期待したいと思います。

ここでいったん休憩に入り、休憩明けには本日2件目の特別講演と致しまして、東京大学の三宅亮教授より「水を”見える化”― 地域ニーズに即したオーダーメードの小型水質検査システム」と題して、ご講演いただきました。三宅先生は、私たちの飲み水の状態を監視する水質検査装置の研究開発に長年取り組まれており、特に小型化での造詣が深い方です。電話ボックス並みの大きさがある水質検査装置にMEMS技術を適用することでA4サイズにまで小型化され、従来は浄水場や公園など、土地を確保できる場所のみに限定さえていた水質検査装置の設置場所をどこにでも設置できるようにされています。今回のご講演では、地域による水質検査への要求仕様の違いに柔軟に対応できるスマート水質モニタリングシステムについて、ご講演いただきました。このシステムでは、フィルターや濃縮器、ポンプなどを統一規格(サイズ、接続など)のブロックで作成し、同様に検査項目毎の分析ブロックも作成することで、地域のニーズに即してブロックを接続するだけで最適なシステムを構築できるようにしています。また、水質検査のような試薬を用いた分析では、様々な環境で利用いたしますと流体系への負荷が異なるため分析条件を一定に保つことが難しくなり正確な分析が阻害されます。そこで、理論的に構築した解析システムでバーチャル水質分析計をサーバ内に構築し、実機の状態を反映させて解析することで、分析結果に現れる外乱分を補正して正確な分析を実現できるようにされています。リアルな分析計とバーチャルな分析計をリンクすることで、正確な分析を実現するシステムは、他の分野への展開も期待でき、大変興味深いご講演となりました。

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            写真4 特別講演2 三宅先生

最後のコーナーでは、本講習会を企画したファンドリーサービス産業委員会から3件のご報告をさせていただきました。最初に本委員会を代表いたしまして浅野雅郎委員長より「MEMSファンドリネットワークの活動とサービス紹介」と題して、委員会の活動状況を報告いたしました。また、委員会を構成する企業からは、富士電機株式会社の鮫島友紀氏より「富士電機のMEMS技術・製品紹介」と題して、富士電機の歴史から製品化したMEMSデバイスまでを紹介させていただきました。最後は、大日本印刷株式会社の中谷武史氏より「大日本印刷 MEMSファンドリー紹介」と題しまして、大日本印刷のファンドリー技術の特徴をご紹介させていただきました。

今回の講演会では、できるだけ多くの活用事例のご紹介をお願いした関係で、どの発表も時間いっぱいを使ってのご講演となりましたため、十分な質疑応答の時間を取ることができませんでした。その影響か講演会終了後に講師の方々を囲んだ質疑応答の時間が自然に発生し、なかなか懇親会場へ移動できないという事態に至り、質疑応答の時間を十分に取れなかったことを反省した次第です。

懇親会会場に移動後も講師の方々へのお悩み相談が続いておりましたが、特に印象深かったことは、実際に販売しているセンサモジュールとスマホによるデモを見せていただけたことで、やはりモノがあると理解も捗るということを再認識いたしました。今回の講習会は、活用事例を中心に構成いたしましたが、これをきっかけに参加者の間で交流が進み、新たなビジネスチャンスに繋がれば幸いです。

 

(産業交流部 小出晃)

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