ET-NDT6海外出張報告
■■ET-NDT6
2015年5月27日から29日にベルギーで開催されたET-NDT6(6th Conference on Emerging Technologies in Non-Destructive Testing)は、1995年に第一回の会議が開かれ、今回で6回目を迎える会議である。非破壊検査分野におけるEmerging Technologiesの発表を聞ける機会となっている。招待講演を含め講演数95件で、欧州と日本の発表が多かった。会議参加者分布を図1に示す。
会場はブリュッセル大学(写真1)で、パラレルセッション形式の発表であった。
高峯が情報処理、小職が機械系が多くなるように分担し聴講した。発表で特に興味深いものを以下に詳述する。
図1. ET-NDT6会議参加者分布
写真1. ブリュッセル大学
■Two-dimensional AE-Tomography based on ray-trace technique for anisotropic materials(Y.Kobayashi :日本大学他)
従来のAEトモグラフィーは等方性材料に限定さていたが、光線追跡法による2次元の異方性を考慮したトモグラフィーアルゴリズムを提案していた。速度異方性材料の速度場分布を等方性アルゴリズムで計算した推定速度場と異方性アルゴリズムで計算した推定速度場の比較をシミュレーションにより行い、その有効性を実証した。
CFRP等の複合材は繊維方向により速度が異なるため、このアルゴリズムはCFRP補強されたコンクリート床版の劣化モニタリングや、CFRP補強されたタンク等の社会インフラのモニタリングに有効となる可能性が高い。今後、小林教授(日本大学)と情報交換を密に行う事にした。
■Detection and localization of debonding damage in composite-masonry strengthening systems with the acoustic emission technique(E.Verstrynge :KU Leuven, Department of Architecture他)
歴史的建造物の補強に用いられているFRP(Fiber Reinforce Polymer)とSRG(Steel Reinforced Grout)の環境劣化加速試験を行い、補強材が剥離していく過程をAEセンサーによるモニタリングを行った。結果、AEセンサーで剥離状況を検知できることを実証した。ただし、FRPとSRGではAE発生パターンが異なっており、補強方法に合わせた判断基準が必要となっていた。環境加速試験では温度サイクル(1時間上昇、2時間保持、1時間下降、2時間保持の繰り返し)と繰り返しせん断試験が行われた。
この知見はコンクリート床版の鉄板による補強後のモニタリングに活用できる可能性があり興味深い。
■Innovative applications of micro-destructive cutting techniques in the field of cultural heritage(M.Teodoridou: University of Cyprus他)
押し付け力を一定に制御した状態でドリルで小さな穴をあけ、その時の振動、反力、音をモニタリングし構造物内部の組成変化をモニタリングする手法を提案していた。大理石試験片による実験での有効性を確認した。
現在コンクリート床版の土砂化はアスファルトとの界面に発生し、発見が困難な状況である。現状の確認試験は10cm程度の穴をあけて行っているが、この手法を用いれば、穴径を劇的に小さくできる為、容易に適用範囲を広げる事ができ、見逃し防止率を高めることに貢献できる可能性がある。
■■アムステルダム現地調査:
ET-NDT6の開催に先立って、隣国であるオランダのアムステルダムにて現地の橋梁の調査を行った。アムステルダムには多数の運河が流れており、非常に多くの橋梁が設置されている。
アムステルダムには多くの運河にかけられた古い橋が存在する。特にトラムが走行する橋は大きな負荷がかかるため繰り返し荷重による損傷と、塩害によるダブルの損傷が予測される。
運河にかけられた古い橋はトラムが通過する橋(写真2)と、そうでない橋(写真3)とでメンテナンス補強のレベルが異なっていた。
トラムが通過する橋は、オリジナルの橋の下側にだけ、I鋼とモルタルで補強され、過負荷による引っ張り応力耐性を向上させていた。力学的に下部の補強は理にかなったものであり、通路面側オリジナルのままで、景観が維持されている。
また、I鋼の表面は錆などによる腐食は無く、適切なタイミングでメンテナンスされているように見えるが、モルタルに埋もれた内部の状況は目視での確認はできな状況で不安が残る。但し、I鋼の表面が露出している構造であったため、露出I鋼面にAEセンサーを取り付け、常時モニタリングすることで、内部に埋もれた鋼材の亀裂や腐食劣化をモニタリングでる可能性がある。
写真2. トラムが通過する橋の裏側 写真3. トラムが通過しない橋の裏側
(技術研究組合NMEMS技術研究機構 笠原章裕)
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