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2015年7月24日 (金)

ET-NDT6海外出張報告

ET-NDT6:
(概要)
 ET-NDTは4年に一度開催される、非破壊検査に関する国際会議である。今回はベルギー・ブリュッセルのVrije Universiteit Brusselにて5/27~29の3日間にわたって開催された。6回目を迎える今回は、欧州を中心に100名強の参加があり、パラレルセッションで多数の講演が行われた。本会議に参加し、AE(Acoustic Emission)技術をはじめとする非破壊検査技術の最新動向について情報収集を行った。

1_4写真 1 左:ブリュッセル市街の様子、右:ET-NDT6会場(Vrije Universiteit Brussel)

 講演のトピックとしては、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの軽量高強度の複合材料を対象とするものが多く、注目度の高さが伺えた。今回は橋梁自体を対象としたモニタリングに関する発表はあまりなかったが、構造物の劣化等を検知するための測定手段としてAEを用いているものはある程度見られた。いくつかの発表では、橋梁以外の分野を対象としてではあるが、AEデータの分析手法が提案されており、今後のAE測定の参考になった。

2_4 写真 2 ET-NDT6会場の様子

(主な発表)
以下に聴講した発表の中からいくつかを紹介する。
1."A condition monitoring methodology for tidal turbines combining acoustic emission and vibration analysis", J. Luis 他, Brunel Univ. , UK
潮力発電設備で、比較的故障率の高い箇所であるギアボックスの損傷を早期に検知するためにAEセンサを用いた。一般的な振動解析のみでは、低速で回転するギアの故障に対して目立った予兆を検知できないため、AEモニタリングによる早期検知を試みた。AE波形のRMS値やInformation Entropyといったパラメータの変化からギアの欠けなどの検知が可能とのことであった。発電設備への応用例として興味深い。また、橋梁のモニタリングでは信号の挙動は異なるとは考えられるが、常時ノイズが生じている中から信号を抽出する考え方の一つとして参考になった。

2."The novel potential for embedded strain measurements offered by microstructured optical fiber Bragg gratings", T. Geernaert 他, Vrije Universiteit Brussel, Belgium
 歪計測のためのFBG(Fiber Bragg Grating)センサとして、バタフライ型のホーリーファイバ(コアの周りに蝶型に穴が並んだもの。)を用いた。ファイバの異方性のためにグレーティングでの反射波長が2つでき、波長シフトと波長間隔から歪の種類を区別できる。90度回転させたファイバを並べることで3次元の歪センサとなる。実験例では接着継手部分にファイバを仕込むことでせん断歪を測定し、劣化の早期検知が可能との提案があった。ただし、会場から接着部の劣化検知であればAEで可能とのコメントがあった。本手法は技術的に興味深いが、実際のセンサ製造や設置が難しいと思われ、AEセンシングの優位性を認識した。

3."Evaluation of Deteriorated RC Deck with Ultrasonics Through the Anchors Used for Steel Plate Bonding", N.Ogura 他, CORE Institute of Technology Corporation, Japan
 コンクリート床版の下面に鋼板を接着して補強した橋梁の非破壊検査手法についての提案であった。下面が鋼板で覆われているため、床版の変状が見えず、打音検査をしても床版自体の損傷が分からない。そこで、鋼板を固定しているアンカーをたたいて発生する弾性波を別のアンカーからAEセンサにより検出した。弾性波は鋼板のみでなくコンクリートも経由して伝わるため、コンクリート経由の波の速度低下を検出することで、床版の損傷度合を推定した。本形態の床版における弾性波の挙動に関する知見として、パッシブなAEモニタリングにおいても活用できると思われる。

アムステルダム現地調査:
 ET-NDT6の開催に先立って、隣国であるオランダのアムステルダムにて現地の橋梁の調査を行った。アムステルダムには多数の運河が流れており、非常に多くの橋梁が設置されている。
運河にかかる橋梁としては、コンクリート床版の橋梁が多く見られ、トラム等による交通荷重の増加に対応して鋼製桁で補強されているものが多かった。
水上の環境で築数十年経つため、一部には表面に石灰の析出や錆が見られる橋梁もあったが、構造的に問題のある症状ではないと見られ、床版の状態は概ね良好で、しっかりしたメンテナンスが実施されている(写真3、4)。桁が低く、水路の交通が発達しているため、点検自体の手間やコストは小さいと考えられるが、モニタリングを導入することで、目視や打音といった簡単な検査に勝る劣化検知性能を低コストで提供できるのであれば、こういった箇所へのモニタリング適用の機会も考えられる。

3_3写真 3 左:コンクリート床版橋の外観、右:同橋の床版

4_3写真 4 各種コンクリート床版の様子

 また、築80年を超えるMagere Brug(マヘレの跳ね橋;写真5)を訪れた。この橋は木造で、50年ほど前に大規模な修繕が行われたそうであるが、現在でも美しい外観を保っていた。両開きの小さい跳ね橋で、重量制限されており、交通の負荷はそう大きくないと思われるが、現在でも頻繁に開閉され現役で活躍しているのは、構造や機構に対する適切なメンテナンスの成果であると推測される。ただ、木の杭を基礎としているものが多いアムステルダムの住宅は、杭の腐食により傾いてきているものが多くあるとのことで、Magere Brugにおいても同様に、水につかっている見えない部分などは腐食が進んでいる可能性はある。木造の基礎に対する早期劣化検知が可能な技術があれば、アムステルダムの住宅、橋双方に対して有効そうである。

5_3 写真 5 左:Magere Brug外観、右:橋入口(重量制限あり)

(株式会社 東芝 高峯英文)

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