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2015年7月 9日 (木)

AEWG-57参加報告1

2015年5月13日から15日に米・シカゴで開催されたAEWG(Acoustic Emission Working Group)-57th Meetingに参加した。AEWGは、1968年に第一回の会議が開かれ、今回で57回目を迎える歴史ある会議である。大学研究者のみならず、AE事業者や装置・センサメーカーも一堂に会し、研究開発の進捗や応用試験の状況についてディスカッションする機会となっている。今回は、AEに関する基礎研究、センサ・装置の開発や応用検討について33件の報告(全て口頭発表)、装置メーカーによる3件の講演(スペシャルセッション)およびパネルディスカッションが行われた。参加者は約50名強だが、各参加者のAEに関する造詣は深く、中身の濃い議論が行われた。 

Fig1
写真:会場のイリノイ大学シカゴ校。

 口頭発表の中で、特に興味深い発表について以下に詳述する。

■Fiber Optic Based Multi-Point Acoustic Emission Monitoring of Hybrid FRP Post Tensioned Concrete Beams (Y. Liang, Univ. of Illinois at Chicago)     
   ポストテンションコンクリート梁に使用されるハイブリッドFRPロッドの劣化に伴い発生するAEを光ファイバ式AEセンサで検知する手法についての報告であった。FRPロッドの両端にファイバAEセンサを設置し、圧電式のAEセンサと特性を比較検討した。供試体として2種のハイブリッドFRPロッド(ガラスファイバ+カーボンファイバ)を作成した。ひとつはGlassファイバをカーボンファイバでコーティングした構造(コアシェルタイプ)であり、もう一つはグラスファイバとカーボンファイバをランダムに混合した構造(分散タイプ)である。光ファイバ式のAEセンサを用いる利点は、シリアルにセンサを分散配置できることとしたが、FRPロッドの両端のみに配置する場合は、ファイバタイプでなくても可能ではある。実験では引張と4点曲げ試験によりAE検知特性を確認した。コアシェルタイプと分散タイプでは、破壊モードが異なり、コアシェルでは弾性変形と永久変形の二つのモードが観測されるのに対し、分散タイプでは弾性モードのみが観測された。また、圧電式の従来センサとファイバ式では、ファイバ式で有効帯域が狭くなる傾向は見られたものの有効な信号は検知できた。

■The Forward and Backward Problems in Plates - Waveforms and Spectrograms (A. Pollock, Mistras Group)
   板状媒体(プレート)におけるラム波の伝搬解析についての報告であった。プレートの任意深さにおけるモーメントテンソル源によるラム波の伝搬を計算可能なソフトPlotRLQを用いて解析した。プレートの厚さとAE源の深さにより表面に設置したセンサで検知する波形は大きく変化する。AE源が板中の深い位置にある場合には、波形の時間的広がりが大きくなる傾向が見られ、これは解析と実験で定量的な一致を見た。高次モードが連続的に観測されるようなケースでも、数%の誤差で実測に近いシミュレーションが可能ということであった。事前にAE波の挙動を解析で確認しておき、実測のAEを分析するというアプローチが可能であることを示しており、実験と解析の並行した分析により現象を詳細に理解するアプローチが重要となることを示唆している。

■ Multi-sensor MEMS Device: Acoustic Emission and Strain Sensors (H. Saboonchi, Univ. of Illinois at Chicago)
MEMS AEセンサとMEMSひずみセンサを同一チップ上にレイアウトしたセンサの提案である。AEセンサの現状課題であるコストとサイズの問題の解決と、構造物ヘルスモニタリングに良く利用される歪みセンサの1チップ化を可能とするものである。
1cm四方のチップ上に、Out-of-plane AE, In-Plane AE, 歪みセンサ領域をレイアウトした。AE検知は静電容量方式で、歪み検知はピエゾ抵抗方式である。ピエゾ抵抗は350Ωであった。AEで静電容量方式を採用したのは、カンチレバータイプと比べて構造の設計により比較的低域用の設計も可能となるためとのことであった。鋼材の繰り返し引張疲労試験において、従来のバルク圧電素子センサと比較実験を実施した。従来と比較して、検知AE振幅は20dB程度低下するものの、センサ特性自体が従来より狭帯域になっており、狭帯域のSNRではほぼそん色のない結果であった。また、ひずみに関しても従来の金属抵抗型と比較し、やや感度は劣るものの同様の歪み検知結果が得られた。
 RIMSで実現しようとしているセンサと比較すると実現しようとしている振動検出帯域が異なる(RIMSは低域1Hzまでを目標)ものの、大規模構造物で利用価値のある歪みセンサを1チップ化するコンセプトは興味深く、参考になる。

一方、AE試験の適用市場について幾つか報告があった内容を以下に記す。商業ベースで恐らく最大の適用市場は、LPGタンクの検査サービスとみられ、TUV Austriaではこれまでに累計で10万以上のタンクを検査した実績があるとの報告があった。地中埋設型のタンクでは予め定められた使用期間が終了すると、従来は更新していたが、AEによる健全性検査により、適切な延命処置がなされるようになった。インフラ構造物のメンテナンス手法として参考となる。また、米・Mistras Group では、AEによりガスタービンの動作部内部衝突による損傷位置やレベルを同定する試みも実施されているという。AE検査の市場の広がりとして興味深い。

以上

(技術研究組合NMEMS技術研究機構 渡部 一雄)

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