« 2015年4月 | トップページ | 2015年6月 »

2015年5月

2015年5月29日 (金)

「ナノ・マイクロビジネス展2015」国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムの開催(2015年4月22日)

国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムは、関連分野の最先端技術及びその動向に関して内外の学識経験者と情報交換することにより、我が国のマイクロマシン/MEMS技術の更なる発展に寄与することを目的に、1995年以来、一般財団法人マイクロマシンセンターを主催者として開催して参りました。

最近の当該分野での動向として、米国から「トリリオンセンサ」、欧州から「新製造革命・インダストリ4.0」等の新しい概念が台頭してきました。「トリリオンセンサ」は、半導体産業の次の世代の最先端・大型投資産業として位置付けられ、ネットワーク化した(MEMS)センサーモジュールが兆の単位で大量に必要になること、また「インダストリ4.0」はセンサとIT(情報産業)が連携して、製造業に革命が興るとの概念です。これらから、今後10年以上にわたってセンサの時代が来たことを予感させています。

このように、スマートフォンからウェアラブルシステム、更に1兆個センサ・製造業を支えるセンサへと高い成長が期待されるMEMSですが、この成長を支える新技術が世界中で湧上がっています。今回は更なる成長を約束するスマートモニタリングデバイスを、飛躍的に高機能化する新技術に焦点を絞って、国内の最前線、欧州と米国の最新情報の話題を取上げ、将来のMEMS産業の新たな可能性を探って参ります。

以上から、今年の第21回国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムは「更なる成長へ、スマートモニタリングの進展を飛躍的に強化する新技術」として企画致しました。司会は昨年に引き継き、国際交流委員会の委員長であり、多彩な活躍をされている東京大学の下山勲教授です。最初の主催者挨拶として、マイクロマシンセンターの理事長・山西 健一郎から最近のMEMSを取り巻く状況に関して報告と皆様への挨拶がありました。

I1

写真1 司会の下山勲国際交流委員会委員長

I2

写真2 主催者挨拶マイクロマシンセンター理事長・山西 健一郎

セッション1の最初の特別講演は、GPS衛星等に搭載されている超精密原子時計をチップサイズに小型化することで、現在問題になっているネットワークセンサモジュールの同時性を一気に解決する可能性のある、チップサイズ原子時計の世界最先端研究をされている、米国NIST(ニスト)のKitching(キチン)博士です。

ご存知のように、時計やコンピュータ、通信システムに使われている時を刻む装置は「タイミングデバイス」と呼ばれ、最も重要なコンポーネントの一つです。通常は腕時計に使われている水晶発振器で、精度は10ppm、すなわち1ヶ月に1秒の精度を持っています。これに対してGPS衛星に搭載されているものや、世界標準時計等は原子時計と言われるppbの精度、すなわち10万年に1秒の精度を持つような高い精度を持っています。チップサイズ原子時計は、このような超高精度のタイミングデバイスを指先サイズに小型化する試みですが、このようなデバイスが出来て、センサーネットワークの端末に載ると、今まで問題になって様々な問題が解決されると言われています。

セッション1の2番目の講演は、完全自動運転に使用されるモニタリング素子に関するご講演です。講演は司会の下山勲・東京大学教授からです。自動運転には外界の状態を精密・高速にモニタリングする必要があります。この講演では、微小力を検知可能なカンチレバーを用いた分子慣性ジャイロ、赤外領域で超高感度にスペクトル分光が可能な分光イメージャ、その膨大な(主として画像)データから意味のある行動を抽出できる認識アルゴリズムから成り立っているとのことです。

セッション1の最後の講演は、年吉洋・東京大学教授からトリリオンセンサ(IOT)時代をターゲットにした、従来の100倍の性能を目指すエネルギーハーベスタの話題提供です。トリリオンセンサ時代には、非常に多数のセンサ端末からデータを寄せ集める必要がありますが、これらの端末の電池を入れ替えることは容易ではありません。特にインフラモニタリングではセンサ端末の設置位置も重要であって、簡単には取り外し効かない場所に設置されることを考えると、このエネルギーハーベストの技術がトリリオンセンサの概念の成否の鍵を握っていると考えられます。この講演では2つの大きなブレークスルー技術があります。第一は、絶縁膜を含むシリコン表面に大量の固定電荷を固定して、固定電荷による高電圧化による電力確保をする方法、第二は電極間にイオン液体を用いることで電極間の容量を飛躍的に高めて高い効率の発電を期待するものです。

I3

写真 3 特別講演 チップサイズ原子時計(米国 NIST, John Kitching博士)

I4

写真 4 会場の様子

I5

写真 5 自動運転用の高性能センサ技術(下山勲教授)

I6

写真 6 高性能・高効率エネルギーハーベストデバイス(年吉洋教授)

セッション2として、世界の最先端研究所や工業会からの報告でした。第一の講演はSPPテクノロジーの神永晋氏によるトリリオンセンサの話題です。ご存知のようにMEMSのシリコンドライ深掘り技術がMEMSの技術進化や産業化を牽引したわけですが、神永氏は何時もその立役者であって、世界的にも有名です。このこともあって米国発トリリオンセンサの初期から日本人として密接に関わって来られました。このため、トリリオンセンサの全てを語るには最も相応しい人選と言えます。「楽観主義者の未来予測」から、「日本の製造技術無くしてトリリオンセンサの社会は来ない」等の、日本に取って勇気を頂いた講演でした。

第二の講演は、フランス・CAE-LETIのJulien Arcamone博士からのご講演です。私も昨年LETIを訪問して、そこは間違いなく世界有数の研究施設であり、かつ世界最高水準の研究者を抱える研究所であると実感しました。そのLETIの研究開発最前線を材料、プロセス、デバイスの3つのテーマからの発表がありました。まず材料は、8インチウェハーに成膜できる高性能のSolGel-PZT薄膜です。次にプロセスでは、様々なデバイスのセンシングに利用できるナノワイヤピエゾ抵抗素子です。その大きさは250nmと言うことで、現在のリソグラフィーで十分加工できる範囲とのことです。 LETI発ベンチャーであるトロニクス社にライセンスされ、量産も可能とのことです。最後のデバイスの話題はCMUTです。CMUTは超音波を発振、受信できる静電容量型のデバイスで、多くのポテンシャルを持っています。

最後の講演は、ドイツ・フランホーファ研究所ENASのJoerg Froemel博士です。Joerg Froemel博士は東北大学のVisiting研究者でもあるのでご存知の方も多いと思います。テーマはMEMS用の材料技術と言う内容で、三次元実装や異種材料を接合できるスパッタ法で形成する金属ガラス薄膜や、同じくスパッタ法で形成する磁性薄膜の話題提供がありました。これらの方法でMEMSスピーカデバイスを試作検討しているとのことです。MEMSスピーカはシリコンでは十分な振幅を出せないと言うことが知られています。今後の成果を期待したいと思います。

I7

写真 7 トリリオンセンサの話題提供(神永晋氏)

I8

写真 8 フランス CAE-LETIの最先端技術(Julien Arcamone博士)

I9

写真 9 ドイツ・フランフォーファ研究所ENAS 先端材料(Joerg Froemel博士)

I10

写真 10 経済産業省 佐脇紀代志課長によるご挨拶

この国際シンポジウムは終始大勢の聴講者にご参加頂きました。最後に経済産業省 佐脇紀代志課長による、MEMSへの期待の大きさに言及されたご挨拶と、一般財団法人マイクロマシンセンター・専務理事 青柳桂一による閉会挨拶がありました。参加者数は約180名でした。下山委員長を始め、スタッフ一同、このテーマの重要性を改めて実感したとともに、多くの方々にご参加頂いたことに感謝致します。また来年に向けて更に充実した企画をして行きたいと思いますので、ご気軽にご意見を頂ければと思います。(MEMS協議会事務局 三原 孝士)

| | コメント (0)

2015年5月20日 (水)

【平成27年5月の経済報告】 

 本項は、マイクロマシン/MEMS分野を取り巻く経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信しています。

 風薫る、平成27年5月の経済報告をお届けします。業務の参考として頂ければ幸いです。

内容は、以下のPDFをご参照下さい。
  「2015.5.pdf」をダウンロード


| | コメント (0)

2015年5月19日 (火)

2015年 第21回「国際マイクロマシンサミット」ドイツ、ベルリン開催報告

 マイクロマシンサミットは、年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/マイクロナノテクノロジーに関する課題などについて意見交換する場です。通常の学会と異なるのは、各国・地域が代表団を組織して集まるというところであり、質の高いまとまった講演と、国際的にも影響力のある人々と意見交換できることが特徴となっています。

 ご存知のように最近のMEMSやセンサを取り巻く環境変化が凄まじく、米国発のトリリオンセンサーやIOT、ドイツ発のインダストリ4.0と言ったMEMSを中心としたセンサと、(無線)ネットワーク技術の融合で、生活や製造方法に大きな変化が起きつつある状況です。このような環境変化の震源地であるドイツのベルリンで、今回のサミット(2015年)が開催されました。サミットのテーマも「製造業と工場自動化の為のスマートシステム:Smart System for Manufacturing and Factory Automation」であり、大変タイムリーで正に聞きたい内容が聞ける会合であったと思います。

 今回の会期は、5月11日から12日まで開催され、日本の代表団長である東京大学・下山勲教授と事務局として三原が参加しました。今回のオーガナイザーは日本でもお馴染みの、フラウンホーファ研究所・ENASのThomas Gessner 所長です。また翌日開催された技術ツアは、ベルリンにあるフラウンホーファ研究所・IZM(Reliability and Microintegration)、およびセンサの専門企業であるFirst Sensor AG の施設の見学でした。

 最初にベルリンですが、人口は340万人と人口分散型都市を進めているドイツでも、ベルリン・フランデンブルグ首都圏の中核都市で、産業や観光の中核になっています。ベルリンの歴史地区の建造物は、その殆どが歴史的博物館として保存されていると同時に、郊外には広大な緑地が広がるなど、その都市国家作りがドイツらしいと感じられます。

 サミット会場はベルリンの中心部を通るシュプレー川と、博物館の集まった歴史地区である博物館島に近いメリア(Melia)ホテルでした。このため、シュプレー川の川下りの船着き場にも歩いて簡単にいけます。会場(ホテル)にはサミットの前日に着き、そのままレセプションに参加しました。

S1

写真 1 開催されたメリア(Melia)ホテル(ドイツ・ベルリン市)

S2

写真 2 レセプションの様子

S3

写真 3 サミット会場の様子
 

 今回のサミットの参加者は18の地域,から70人のデレゲイトでした。久しぶりに欧州で開催されたと言うこともありますが、今回は欧州からの参加者が多かったのが印象です。特に開催地であるドイツから12名、イタリアから11名、中国5名、イベリア半島5名、オーストラリア5名、スイス4名、何時は少ない米国が4名と大変賑やかなサミットでした。各国の概要報告を行うカントリーレビューは初日11日に16時までに終わり、そのあと約1時間の特別講演として「Internet of things」をmemsfabのTorsten Thieme氏から話題提供がありました。 
 

 カントリーレビューに関するトピックスを幾つかピックアップします。最初にドイツですが、インダストリ4.0を実現するためには原材料や部品の管理、供給、また製造時点での管理や最適化が大きなポイントとのことですが、具体的な例としてはインテリジェントなキャリアケースやロボットハンドの商品が紹介されていました。概念的なお話が多くて何処まで進んでいるかは判りませんが、ドイツの各地域に製造業を加速するための様々なセンサーネットワークを使う取り組みが紹介されていました。
 次に参加者が多かったイタリアでも製造業の重要さを見直し、製造工程施設の最先端化を進めていました。11名の参加者があったイタリアでは、製造業の重要さ以上に人体に装着するウェアラブルシステムとロボットがセンサのアプリケーション、更に繊維から自動車に至るまで様々な業界でセンシングとネットワークが広がる期待感を表現されていました。
 5名の参加者を数えるオーストラリアの発表は、ナノテクや材料を駆使したセンサの要素技術が多いものですが、オーストラリアらしく人工網膜等の医療工学が進んでいました。
 同じく5名の参加者があった中国の特徴は、MEMSを含む半導体や電子デバイスの産業支援や産業強化が更に進んでいる点です。またナノ・マイクロ製造関係のプロジェクトが863テーマ走っていること、スマートフォンを始め、中国がMEMSの最大市場になっていることも驚きです。更に過去5年間に500のMEMS企業が生まれ、今後5年間で年率24%の成長が見込まれるようです。また中国の製造業に関して、「中国による製造」から「中国による発明」、また「巨大な製造国」から「強力な製造国」への変換が訴えていました。そのために必要な課題もインダストリ4.0に近いもののようです。

S4

写真 4 今回のオーガナイザ Gessner教授

S5

写真 5 日本 下山団長の発表

S6

写真 6 サミット会場の様子
 

 カントリーレビューの最後に特別講演として、「Internet of things」に関しmemsfabのTorsten Thieme氏から話題提供がありました。ここではCyber-Physical Systemの紹介と、実世界とのインターフェイスとしてのセンサの役割を判りやすく説明されていました。これが、製造業から流通、個人までシームレスに存在する状態を将来は考えているようですが、2つの概念が共存する状態は何となく理解し難い部分もあります。具体的な取り組みとしては、送電線センサモジュール、グリースセンサ、スマートシールリング、マイクロTAS等の開発事例がありました。

 初日の夕刻はベルリンの中心部を通るシュプレー川の川下りと、船上でのディナーでした。このシュプレー川の川下りは、博物館の集まった歴史地区である博物館島をかすめて、2本の美しい塔を持つネオゴシック様式の橋オーババウム橋まで約1時間かけて行き、帰りは船内でディナーでした。船上から見る景色はまた格別であったとともに、多くの若い方々が同船に手を振って頂き、何となくドイツの方々の堅いイメージを払しょくすることが出来ました。

S7

写真 7 シュプレー川船下りの船着き場で見つけたプログラムオルガン

S8

写真 8 オーババウム橋

 サミット2日目は、個別のテーマに関する発表です。セッション1は「製造」で5件、セッション2は「産業自動化」で7件、セッション3は「イノベーションセンタ」で7件、セッション4は「MEMS応用」で6件です。その後は、同ホテルでのディナーでした。

S9

写真 9 ディナー風景 

S10

写真 10 ディナー風景、下山団長とGessner先生

 サミットの翌日は、テクニカルツアとして2カ所を回りました。最初はフラウンホーファ研究所・IZM(Reliability and Microintegration)です。ホテルから約30分位の距離で内部は伝統のある煉瓦作りの研究所です。内部には貨物用の線路が残っているので歴史を感じます。全体の説明のあと、3つのグループに分かれて、クリーンルームや実装設備、プリント基板製造工程を見せて頂きました。このIZMは本来集積化システムの研究所で6から8インチライン(但しCMOSラインではない)を持っています。主に3次元実装やTSV工程を研究しています。なお、ドレスデンには12インチラインもあるとのこと。この内部に大規模なメッキ設備やウェハー裏面研磨のラインもあります。またシート実装に加えてプリント基板の実装設備があることも特徴の一つで、日本ならば専門企業に外注に出さないと出来ないような研究も進めています。

S11

写真 11 フラウンホーファ研究所・IZM

S12

写真 12 クリーンルーム展示コーナ

S13

写真 13 フレキシブル基板

 最後にセンサの専門企業であるFirst Sensor AG の施設の見学でした。この企業は1991年にMEMSセンサを事業化するために設立された企業で、現在は830人の従業員と124Mユーロの事業を行う専門企業です。製品は圧力センサ、フローセンサ、光学センサと幅広いと同時に6インチ(最大8インチ)の自社施設を持っていて、柔軟に対応できることも特徴です。研究施設、製造設備も新しく、センサに特化したしっかりとした技術と、綺麗に整備された設備で事業が出来ていることに少々感激です。

S14

写真 14 First Sensor AG の施設

S15

写真 15 Krause副社長の説明

S16

写真 16 対岸の景色

 以上で、サミット2015の報告は終わりますが、チーフデレゲート会議の結果によりますと、来年2016年の開催は(既に報告していますが)東京でオーガナイザは下山勲教授、そして2年後の2017年はオーストラリアでの開催が決まりました。

 日本での開催準備は粛々と進めていますが、沢山の方々が日本に親しんで頂けるような会、また沢山の日本の方々に御参加できるような魅力ある会合にしたいと思います。
(MEMS協議会 国際交流部 三原 孝士)

 なお、サミットで発表されたプレゼン資料はマイクロマシンセンターホームページの会員専用ページより閲覧できますので、会員の方は是非ご利用ください。

| | コメント (0)

2015年5月14日 (木)

DTIP2015海外出張報告

第17回のSymposium on Design, Test, Integration & Packaging of MEMS/MOEMS (DTIP 2015)が2015年4月28日~30日の3日間、フランス、モンペリエのCrowne Plaza Montpellier Corumホテルで開催されました。ガイドブックによれば、モンペリエは観光客として訪れる町ではないそうですが、13世紀創立の由緒あるモンペリエ大学があり、会場はこの大学のキャンパスの一つから目と鼻の先にありました。なお、27日までは雨模様だったようですが、会議開催中の3日間は好天に恵まれました。(写真1:会場からほど近いモンペリエの中心、コメディ広場)

Dtip

                                    写真1 開催地モンペリエの街の様子

DTIPは、今回で17回目を迎えるMEMS/MOEMSの設計製造に関する国際会議ですが、他のMEMS系会議に比べて、設計やテスト・実装に関わる技術者・研究者の割合が高く、それらの発表が比較的多いことが特徴と言えます。シンポジウムは2つの”Conference”、CAD, Design and Test ConferenceとMicrofabrication, Integration and Packaging Conferenceから構成され、それぞれ次のセッションで構成されていました。
CAD, Design and Test Conference
- Co-design for MEMS based Smart Systems
- Measurement
- Modeling & Simulation
- Poster Sessions 1日目、2日目(CAD Conference (& Co-design for MEMS))
Microfabrication, Integration and Packaging (MIP) Conference
- Device & Components I, II
- Integrated Processes
- Manufacturing
- RF Devices
- Device Manufacturing
- Characterization & Reliabiltiy
- Poster Sessions 1日目、2日目(MIP Conferences)
シンポジウム全体としては、パラレルセッション形式になっており、1日目、2日目の午後後半にはポスターセッションが設定されていました。
ちなみにこれまでの開催地は、パリ(1999, 2000)、マンドリュー・ラ・ナプール(2001-2003)、モントルー(2004, 2005)、ストレーザ(2006, 2007)、ニース(2008)、ローマ(2009)、セビリア(2010)、エクス-アン-プロヴァンス(2011)、カンヌ(2012)、バルセロナ(2013)、カンヌ(2014)で、南仏中心に開催されてきたことがわかりますが、次回の有力候補地としてはブタペストが挙がっていました。今回は発表数がポスターを含めて100件程度、参加者は100名程度といったところですが、設計や実装に主眼を置いているという特徴があり、会議自体はフレンドリーな雰囲気の中、活発な意見交換がなされており、今後も続けていってほしいと思いますが、新分野や新たなプレイヤーをどう取り込んでいくかには苦慮しているようです。
基調講演は、次の3件でした。
初日冒頭:Hans Zappe教授(独・フライブルク大学)“Printable polymer integrated and free-space optics”
2日目冒頭:Johannes Eisenmenger博士(独・カール・ツァイス)“Opportunities and challenges of Electronic Design Automation of MEMS-ASIC Systems – A system integrator’s perspective”
2日目午後一番:年吉洋教授(東京大学)“Lateral Spreads of Optical MEMS Technology from Fiber Telecom to Biophotonics”
どの講演も興味深いものでしたが、特に取り上げたいのはZappe教授の講演の前半の内容です。その内容は、ポリマーシート上に2次元的に形成した光導波路を用いて、ひずみ面パターンシートをつくるという試みであったからです。光ファイバーを使ったひずみセンサの原理を使うもので、想定されていた応用は航空機の翼のひずみ分布検出でしたが、比較的大型のものへの応用という意味でも、光素子や周辺回路を集積化シートの実現を目指しているという意味でも、コンセプトとしてはよく似た取組です。逆に言えば、このような光導波路側のセンサが自立電源で動くのであれば、比較検討対象になりますし、プロジェクトで開発している面パターンセンサシートも、航空機メンテナンスなど産業インフラモニタリングへの応用展開も考えられるということでしょう。

Dtip2

                                       写真2 Zappe教授の基調講演の様子

次に一般講演やポスター発表からいくつか面パターンセンサ製造技術に関連する発表を取り上げたいと思います。
発表1:Screen-printed free-standing piezoelectric devices using low temperature process(英・Southampton大学)
シート上などに印刷技術で圧電カンチレバー構造を作ろうというもので、160℃という低温で、d33=29 pC/Nの圧電膜を有する圧電カンチレバーの作製に成功したと報告しています。本講演では、犠牲層プロセスを用いてカンチレバー構造をつくるプロセスに関して報告することを目的としていて、圧電膜の材料や厚みなどについては他の先行報告を参照する必要がありますが、面パターンセンサシートでも動ひずみ用計測用に圧電センサを搭載する予定であり、デバイス化したときの性能等に関して比較したいと思います。

Dtip3

                                           写真3 発表1の講演の様子

・発表2:A FEM Study on Debonding Process for BCB Cap Transfer Packaging(仏・パリ南大学)
ウェハレベルパッケージングに関する報告ですので、直接関係はありませんが、いわゆるBCB蓋構造を転写プロセスによって相手側に形成するという意味では、面パターンセンサ製造プロセスでも参考になるかもしれません。特に本発表は転写プロセスのFEMシミュレーションに関するものですが、面パターンセンサの転写プロセスに関しても、このようなアプローチが必要であると思いました。

Dtip4

                                          写真4 発表2のポスター

・発表3:Laser curing of screen and inkjet printed conductors on flexible substrates(英・Southampton大学)
 スクリーン印刷によってCu配線あるいはCuひずみゲージを形成するプロセスの開発は、プロジェクトでも行っていますが、本発表では、Cuナノ粒子をスクリーン印刷あるいはインクジェット印刷し、レーザーよって硬化させる方法を使って、布を含めた様々な基板にCu配線の形成を行った結果を報告しています。基本的にこの方法で酸化やダメージもなく、うまくCu配線が形成できるとしていますが、導電率など得られている数字については精査し、開発の参考にしたいと思います。

Dtip5

                                              写真5 発表3のポスター

上で紹介した以外にも、低温プロセスで(フレキシブル)シートの上にセンサなどを形成する試みに関する発表(例えば発表4:Moisture sensor feasibility on paper-based substrate(仏・モンペリエ大学))はいくつかありました。DTIPはそれほど大きな会議では無いものの、フレキシブルセンサデバイスの分野が製造技術の研究としても活発化しつつあることを実感しました。

Dtip6

                                      写真6 発表4のショートプレゼンの様子

この会議は、主に設計技術や実装など製造技術を扱う会議ということもあって、具体的な応用分野については必ずしも明示されていない発表も多かったです。IEEE Sensorsなど他の関連会議同様、道路インフラなどの社会インフラモニタリングを対象としたMEMS関連研究はほとんど見られませんが、それだけプロジェクトが世界に先駆けた取り組みをしているとも言えます。ただ、例えばシート上への機能膜の低温形成などは、特に欧州の研究機関で盛んに取り組まれているという印象を持ちました。面パターンセンシングデバイスを実現する上ではそれらの取組を十分に調査しながら、必要に応じて我々の取組にも反映させていく必要があると感じました。

(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 伊藤寿浩)

| | コメント (0)

« 2015年4月 | トップページ | 2015年6月 »