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2015年5月14日 (木)

DTIP2015海外出張報告

第17回のSymposium on Design, Test, Integration & Packaging of MEMS/MOEMS (DTIP 2015)が2015年4月28日~30日の3日間、フランス、モンペリエのCrowne Plaza Montpellier Corumホテルで開催されました。ガイドブックによれば、モンペリエは観光客として訪れる町ではないそうですが、13世紀創立の由緒あるモンペリエ大学があり、会場はこの大学のキャンパスの一つから目と鼻の先にありました。なお、27日までは雨模様だったようですが、会議開催中の3日間は好天に恵まれました。(写真1:会場からほど近いモンペリエの中心、コメディ広場)

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                                    写真1 開催地モンペリエの街の様子

DTIPは、今回で17回目を迎えるMEMS/MOEMSの設計製造に関する国際会議ですが、他のMEMS系会議に比べて、設計やテスト・実装に関わる技術者・研究者の割合が高く、それらの発表が比較的多いことが特徴と言えます。シンポジウムは2つの”Conference”、CAD, Design and Test ConferenceとMicrofabrication, Integration and Packaging Conferenceから構成され、それぞれ次のセッションで構成されていました。
CAD, Design and Test Conference
- Co-design for MEMS based Smart Systems
- Measurement
- Modeling & Simulation
- Poster Sessions 1日目、2日目(CAD Conference (& Co-design for MEMS))
Microfabrication, Integration and Packaging (MIP) Conference
- Device & Components I, II
- Integrated Processes
- Manufacturing
- RF Devices
- Device Manufacturing
- Characterization & Reliabiltiy
- Poster Sessions 1日目、2日目(MIP Conferences)
シンポジウム全体としては、パラレルセッション形式になっており、1日目、2日目の午後後半にはポスターセッションが設定されていました。
ちなみにこれまでの開催地は、パリ(1999, 2000)、マンドリュー・ラ・ナプール(2001-2003)、モントルー(2004, 2005)、ストレーザ(2006, 2007)、ニース(2008)、ローマ(2009)、セビリア(2010)、エクス-アン-プロヴァンス(2011)、カンヌ(2012)、バルセロナ(2013)、カンヌ(2014)で、南仏中心に開催されてきたことがわかりますが、次回の有力候補地としてはブタペストが挙がっていました。今回は発表数がポスターを含めて100件程度、参加者は100名程度といったところですが、設計や実装に主眼を置いているという特徴があり、会議自体はフレンドリーな雰囲気の中、活発な意見交換がなされており、今後も続けていってほしいと思いますが、新分野や新たなプレイヤーをどう取り込んでいくかには苦慮しているようです。
基調講演は、次の3件でした。
初日冒頭:Hans Zappe教授(独・フライブルク大学)“Printable polymer integrated and free-space optics”
2日目冒頭:Johannes Eisenmenger博士(独・カール・ツァイス)“Opportunities and challenges of Electronic Design Automation of MEMS-ASIC Systems – A system integrator’s perspective”
2日目午後一番:年吉洋教授(東京大学)“Lateral Spreads of Optical MEMS Technology from Fiber Telecom to Biophotonics”
どの講演も興味深いものでしたが、特に取り上げたいのはZappe教授の講演の前半の内容です。その内容は、ポリマーシート上に2次元的に形成した光導波路を用いて、ひずみ面パターンシートをつくるという試みであったからです。光ファイバーを使ったひずみセンサの原理を使うもので、想定されていた応用は航空機の翼のひずみ分布検出でしたが、比較的大型のものへの応用という意味でも、光素子や周辺回路を集積化シートの実現を目指しているという意味でも、コンセプトとしてはよく似た取組です。逆に言えば、このような光導波路側のセンサが自立電源で動くのであれば、比較検討対象になりますし、プロジェクトで開発している面パターンセンサシートも、航空機メンテナンスなど産業インフラモニタリングへの応用展開も考えられるということでしょう。

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                                       写真2 Zappe教授の基調講演の様子

次に一般講演やポスター発表からいくつか面パターンセンサ製造技術に関連する発表を取り上げたいと思います。
発表1:Screen-printed free-standing piezoelectric devices using low temperature process(英・Southampton大学)
シート上などに印刷技術で圧電カンチレバー構造を作ろうというもので、160℃という低温で、d33=29 pC/Nの圧電膜を有する圧電カンチレバーの作製に成功したと報告しています。本講演では、犠牲層プロセスを用いてカンチレバー構造をつくるプロセスに関して報告することを目的としていて、圧電膜の材料や厚みなどについては他の先行報告を参照する必要がありますが、面パターンセンサシートでも動ひずみ用計測用に圧電センサを搭載する予定であり、デバイス化したときの性能等に関して比較したいと思います。

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                                           写真3 発表1の講演の様子

・発表2:A FEM Study on Debonding Process for BCB Cap Transfer Packaging(仏・パリ南大学)
ウェハレベルパッケージングに関する報告ですので、直接関係はありませんが、いわゆるBCB蓋構造を転写プロセスによって相手側に形成するという意味では、面パターンセンサ製造プロセスでも参考になるかもしれません。特に本発表は転写プロセスのFEMシミュレーションに関するものですが、面パターンセンサの転写プロセスに関しても、このようなアプローチが必要であると思いました。

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                                          写真4 発表2のポスター

・発表3:Laser curing of screen and inkjet printed conductors on flexible substrates(英・Southampton大学)
 スクリーン印刷によってCu配線あるいはCuひずみゲージを形成するプロセスの開発は、プロジェクトでも行っていますが、本発表では、Cuナノ粒子をスクリーン印刷あるいはインクジェット印刷し、レーザーよって硬化させる方法を使って、布を含めた様々な基板にCu配線の形成を行った結果を報告しています。基本的にこの方法で酸化やダメージもなく、うまくCu配線が形成できるとしていますが、導電率など得られている数字については精査し、開発の参考にしたいと思います。

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                                              写真5 発表3のポスター

上で紹介した以外にも、低温プロセスで(フレキシブル)シートの上にセンサなどを形成する試みに関する発表(例えば発表4:Moisture sensor feasibility on paper-based substrate(仏・モンペリエ大学))はいくつかありました。DTIPはそれほど大きな会議では無いものの、フレキシブルセンサデバイスの分野が製造技術の研究としても活発化しつつあることを実感しました。

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                                      写真6 発表4のショートプレゼンの様子

この会議は、主に設計技術や実装など製造技術を扱う会議ということもあって、具体的な応用分野については必ずしも明示されていない発表も多かったです。IEEE Sensorsなど他の関連会議同様、道路インフラなどの社会インフラモニタリングを対象としたMEMS関連研究はほとんど見られませんが、それだけプロジェクトが世界に先駆けた取り組みをしているとも言えます。ただ、例えばシート上への機能膜の低温形成などは、特に欧州の研究機関で盛んに取り組まれているという印象を持ちました。面パターンセンシングデバイスを実現する上ではそれらの取組を十分に調査しながら、必要に応じて我々の取組にも反映させていく必要があると感じました。

(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 伊藤寿浩)

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