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2015年1月 7日 (水)

Trillion Sensors Summit Tokyo 2014 参加報告

1. はじめに
 Trillion Sensors Summitとは、現在の世界が抱える様々な課題を、毎年1兆個のセンサを活用して解決していく“Trillion Sensors Universe”を提唱し、その実現に向けたロードマップの策定等に取り組んでいる組織である。世界各地において定期的に、ビジョンの提唱と最新の関連技術動向の紹介を通して活動への賛同者を募るためのサミットを開催しており、今回のサミットは2014年2月に引き続いて、東京での2回目の開催となる。
 今回のサミットは、TSensors Summit社のCEOであり、活動の提唱者であるJanusz Bryzek氏と、同活動の日本における最大の協力者であるSPPテクノロジーズ社エグゼクテブシニアアドバイザーの神永氏の両名をCo-Chairとして、目黒雅叙園にて2014年12/8~9の2日間にわたって開催された。200名ほどは入ろうかという会場は連日ほぼ満員の聴衆で埋め尽くされ、同活動の日本における関心の高さを伺い知ることができる。
 本稿では、同サミットの概要、および講演内容について紹介する。

 

2. 講演プログラムについて
 2日間に亘る今回のサミットでは、9つのセッションで合計36件の講演(Opening / Closing Remarksおよびディスカッション除く)が行われた。それぞれのセッションの名称および公演数を下記のグラフにまとめる。なお、参考として、本サミットに先駆けて1ヶ月前の11月に米国サンディエゴで開催されたサミットについても、同じように分類した結果を併記する。

 

Graph_7
 今後の新しいセンサのアプリケーション分野として期待されるヘルスケア、車載、農業などに対しては、日米とも熱い視線が集まっているようで、特にヘルスケア分野の講演数は東京、サンディエゴとも6講演と群を抜いている。これらのセッションの講演者のうち、日本人の講演者はほぼ半数を占めており、新規分野における日本の競争力が決して世界に水をあけられている訳ではないことを物語っている。
 一方、センサのアプリケーションとして国内では非常に有力視されている、環境・インフラモニタリングに関する講演は、意外なことにサンディエゴのサミットではセッション化されておらず、東京サミットにおける講演者も5人全員が日本人で占められている。それに対し、サンディエゴオリジナルのセッションとしては、IoE、Imagingに加え、国内では若干コモディティワード化してきた感のあるWearableを切り口としたセッションが組まれている。また、東京では単独セッション化されているエナジーハーベスタの講演(4件中3件が日本人講演者)については、サンディエゴでは1件がEmerging Technology、1件がWirelessのセッションに組み入れられている。こうしたセッション構成の差に、日米における研究トレンドや取り組み姿勢の差が垣間見られ、興味深い。

 

3. 講演内容
 全36件の講演はいずれも聞きごたえのあるものばかりであったが、ここではトリリオンセンサ活動の全般に関する講演、および社会インフラヘルスモニタリング関連の講演に絞り、その内容や質疑応答などの概要を、若干の私観を交えて列挙する。

 

"TSensors Foundation for the Abundance and Third Technical Revolition", J. Bryzek氏
 TSensors Summit社CEOであるBryzek氏による講演は、活動全体の理念から個々のアプリケーション領域における研究活動事例までを広く紹介する内容。
 トリリオンセンサの究極的な目的は“Abundance(潤沢)な社会”、即ち飢餓、医療インフラ不足、環境汚染、エネルギー問題といった現代社会が抱える諸問題が全て解決され、全ての人類が潤沢に暮らせる社会を20年以内に実現することにある。このためには約45兆個のセンサが必要だとされるが、その多くは技術的に実現の目途が立っていないため、世界的なアライアンスを立ち上げてロードマップを共有化し、ビジョンの共有と基盤技術開発の加速を目指すことが活動の柱となっている。
 数兆個のセンサを世界に流通させる上では、センサのコストは数セント~0.1セント/個のレベルまで低減させる必要があり、これには非常にプリミティブな機能のセンサを3Dプリンティングで製造して使い捨てるといった根本的な発想の転換が要求される。こうしたパラダイムシフトは半導体業界を含む多くの既存ビジネスドメインに破壊的な影響を与え、ある予測によると「Fortune 500にランクインされる企業のうち40%は10年以内に新興企業にとって代わられる」「10年以内に全米の労働者の半数はロボットに置き換えられる」一方で「2020年にはIoE(Internet of Everything)関連市場は19兆ドルで全世界のGDPの20%を占め、これにより全世界で1億7000万人の新規雇用が生まれる」とのことである。こうした労働市場の変化に伴う労働者の再教育のために、新しい教育システムが必要になるはずだとも主張している。
 一方、IoEの研究開発活動において避けるべき過ちとして、「ユーザの望まないニーズ不在の機能を付与してしまうこと」「セキュリティやプライバシーの問題を過小評価すること」「事態の推移を慎重に待ちすぎて開発着手のタイミングが遅れること」といったいくつかの行為に対し警鐘を鳴らし、発表を締め括っている。
 質疑応答では、こうした破壊的イノベーションが起きる中で、どのような組織がどのようなエコシステムで生き残っていくのか、トリリオンセンサで得られる莫大なデータを扱う共通プラットフォームをだれがどうやって整備するのかといった質問が為された。これに対し同氏は、複数組織間の連携や適切な政府の支援、労働者に対する新しいスキルの教育支援が重要だと回答した上で、やはりあまりにも変革の規模が大きすぎるため、それなりの時間は要するだろうと述べている。

 

"トリリオンセンサ・ロードマップ - 現状と今後", 神永晋氏
 本サミットの日本側Co-chairである神永氏は、Bryzek氏の提唱するAbundanceな社会実現に向けた理念に触れた上で、飢餓、医療、環境、エネルギー、教育といった個々の問題に対する現状把握と具体的な取り組み事例を紹介している。
 TSensorロードマップの策定に向けて、既に数100のアイディアが集まっているものの、克服すべき課題の大きさに対してはまだまだアイディアが不足している状態であるとのこと。実のところ、ロートマップ策定活動に対する日本のスタンスは、他の地域と比較して決して協力的とは言えないと述べた上で、技術力に優れる日本産業界からの協力者が強く必要とされていることを訴えて発表を締め括っている。
 神永氏は、サミット全体の閉会挨拶においても、日本からの協力者を募りたい旨に改めて言及。日本からの協力者が少ない一因として、長期的な視野で全世界的な課題の解決を目標とするトリリオンセンサの壮大なビジョンと、日本の産業界が抱える諸々の事情(自社の既存ビジネスドメインや社内に現有する技術シーズとの競合、トリリオンセンサ社会において自社の利益となるビジネスモデルが構築できるかどうかを慎重に見極めたい姿勢)との間に乖離があるのではないかとの見解を示し、目先の事情に囚われずに日本企業の協力を取り付けることができるように整合性を取る努力を今後は積極的に行っていきたいとコメントしていた。

 

"Current Status of the TSensor Systems Roadmap", Y.D. Marinakis氏
 米New Mexico大のファカルティであるMarinakis氏は、実際にTSensorのロードマップ策定作業に従事しているメンバーの一人。同氏の講演では、ロードマップの策定に向けた具体的な作業の進め方、および現在までの進捗状況に関する報告があった。
 MANCEFのTSensor Systems Working Groupにて進められているロードマップ策定の作業は、当初は2014年中の完成が予定されていたが、その後完成の時期を2015年の中ごろへとリスケジュールしており、現段階ではまだ基盤技術の洗い出しをしているフェーズ。具体的には、トリリオンセンサシステムを製造し運用するための根本的なインフラとなる基盤技術を、下記に列挙したいくつかのカテゴリに分類し、それぞれの技術が実用化に至るまでのどの段階のレベルにいるか(Technology Readiness Level, TRL)を9段階でクラス分けしている。例えば、まだ基礎研究の段階のものはTRL1、実用化されたシステムとして運用済みの技術はTRL9となる。
 ・3D printing infrastructure
 ・Energy harvesting / energy storage
 ・Ultra low power wireless communication
 ・Network infrastructure / network protocols and standard / operating system
 ・Analysis of big data
 うち、ネットワークプロトコルなど一部の領域についてはある程度実用化の目途がついてきている技術も存在するのに対し、3Dプリンティングやエネハーなどは技術的ハードルが非常に高く、多くはTRL4、場合によりTRL1にランキングされている技術も散見される。
 同グループは要素技術の分類以外にも、Boundary Conditions(プライバシー、セキュリティなど社会的制約からくる要素)、Critical Dimensions(情報通信量、製造コスト、エネルギー消費量などの定量的制約)についても考察を行ったうえで、最終的なロードマップに仕上げていく方針とのことである。
 あくまで私観になるが、世の中にしばしば見られる「あるビジネス、ある研究開発を行いたいがために、そのアリバイ作りとして恣意的に作成されるロードマップ」とは対照的に、最終ゴールに到達するためにどんな技術が必要となるかをあくまでニーズドリブンで抽出し、更にその技術が実用化に至るまでにはまだまだ大きな乖離が存在することを客観的事実として認めた上で、その乖離を埋めるためにどう活動していくべきかを議論するという姿勢には、壮大なビジョンに相応しい真摯さが感じられ、好感が持てる。しかし、そうした姿勢であるからこそ、壮大すぎるビジョンを前にどこから手を付けたらよいか、ロードマップ策定グループ自身がまだ困惑しているのではないかという印象を受ける講演であった。

 

" TSensors Technology: Research, Incubation and Education", A.P. Pisano氏
 かつてUC(カリフォルニア大学)Berkeley校のBSAC(Berkeley Sensor & Actuator Center)に所属し、多くの新規MEMSデバイスの研究開発に携わってきたPisano氏は、現在はUC San Diego校の工学部のトップを務め、同学部をAbundanceの理念推進に向けた研究開発機関と位置付けるための構造改革を進めている。その成果もあってか、同学部はUS News誌における世界工学部ランキングでは20位、National Research Councilにおける全米Biomedical Engineeringランキングでは堂々の1位を誇っている。
 講演では、同学部における研究成果の一部を紹介。例としては、人体の表皮に貼り付け、ICとしてきちんと機能する回路部位を備えたフレキシブルセンサ、1年以上連続使用可能な人体埋め込み型血糖値センサ(これは大学発ベンチャー企業として250名体制で実用化推進中とのこと)、Siナノワイヤ上で網膜細胞を培養した人工網膜、血中の毒素(放射能など)を吸収したのち自然に体外へと排出されるナノスポンジなど、全米Biomedical Engineeringランキング1位に相応しい研究が列挙された。
 質疑応答においては、同学部において開発される技術の数々をどのように実用化へと結び付けていくのかとの質問に対し、これが正しい方針かどうかは分からないが、と前置きした上で、とにかく学生がベンチャーを興すことを推進していると同氏は答えていた。そのため同学部には、ベンチャー企業のスタートアップを指導、支援するための専任コーチが40人程度在籍しており、またフォローアップ資金として5000万ドルを準備している。更に全米でも初の試みとして、知財の管理権を学生自身にゆだねることを許容する制度を開始したとのこと。他方、医療分野に関わるBiomedical Engineering固有の事情として、安全性の確認を行うために研究早期の段階から同大学医学部とのコラボを行い、チームに必ず医師を参加させる形でプロジェクトを進め、可能であれば臨床試験まで実施する方針とのことであった。既存ビジネスドメインに多大な影響を与える「破壊的イノベーション」を遂行することに特化した、ある種の割り切りが感じられる。

 

"環境、インフラ、スマートシティに向けて新しく出現するセンサー", 神永晋氏
 神永氏の再度の講演は、環境、インフラ、スマートシティに関する世界各地の研究動向を紹介した内容。温室効果ガスの排出に起因する地球温暖化や、主として開発途上国の開発優先政策に起因する大気・水質汚染の問題は、喫急に解決すべき世界共通の課題という認識が為されており、世界各所でその解決に向けたセンサ開発、システム開発が行われている。その究極の解決策として、IoEとビッグデータによって支えられたスマートシティが提唱されており、ダブリン、ロンドン、藤沢などで実証実験も始まっている。
 これに対し、主として日本で現在大きなムーブメントが起きているのが、センサネットワークによる老朽化したインフラのモニタリング技術開発である。高度成長期に建設された多くのインフラは今後10数年の間に老朽化による課題が顕在化してくると懸念されてきた中、2012年に発生した笹子トンネルの崩落事故、2013年の京都の鳴滝橋崩落事故など相次いだ事故がこのリスクを世間に知らしめる決定打となり、2013年に国土交通省が「社会インフラ元年」を宣言、一気に研究開発が活性化した。
 但し、こうしたモニタリングシステムは長期的には社会全体に恩恵をもたらすものの、短期的には導入コストに見合ったメリットが感じられにくいという課題もあり、質疑応答でもその点に議論が及んでいた。特にインフラ劣化については、最悪の状況で事故が発生した場合の損害は計り知れないものとなる可能性があり、そうした被害の大きさを定量的な数値として示すことで導入のメリットをアピールできるような良い手法はないか、との質問が挙がっていた。これに対し同氏は、現段階では残念ながらそのような指標は存在せず、もっぱら導入コストの削減をキーとした開発を進めるべきと回答していた。

 

"道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの研究開発", 下山勲氏
 NMEMS技術研究機構における首記研究開発への取り組み内容について、同機構インフラモニタリング研究所の下山所長より講演が行われた。講演内容詳細については省略するが、同機構が取り組んでいる研究の技術的進歩性や社会に与える有用性が、聴衆に対して非常によく伝わる内容になっていたように思う。
 なかでもSA(Super Acoustic)センサを用いた橋梁モニタリングは聴衆の興味を引いたようで、「音を計測するというが具体的には何の音か」(⇒橋梁の亀裂が進展する際に発する音)、「音は常時モニタリングするのか」(⇒将来的にはそうしたい)等、質疑応答ではこの研究テーマに質問が集中していた。また、1Hz~100MHzというSAセンサの潜在的な帯域の広さも驚きをもって受け取られたようで、そのような広帯域が実現できるメカニズムに関する質問も出ていた。

 

"土木構造ヘルスモニタリングにおけるセンサー技術の活用", 西尾真由子氏
 横浜国立大学大学院都市イノベーション研究員の准教授である西尾氏が、土木の構造工学研究者としてセンサを使用するユーザの立場から、センサに求める仕様や技術ニーズについて述べた講演。
 先の神永氏の講演で述べたような背景から、2014年になって国土交通省による「定期点検要領」が初めて策定され、定期点検の結果をインフラ補修の優先度決定に反映させる仕組みが動き出した。しかし、定期点検に必要なコスト負担の増大、点検作業および点検データ分析を行う人材の不足などが課題となっており、安価なセンサシステムによるモニタリング技術への要求は今後ますます高まると予想される。
 センサによるモニタリングの基本的な考え方として、ある入力fに対する出力yを計測し、そこからプラントの状態を推定する逆問題を解くことになる。この際のポイントとして、a)何を入力とするか b)データ取得のタイミング(測定頻度/トリガとなるイベント)はどうするか c)環境からの影響(温度ドリフト、ノイズ等)をどう除去するか d)センサと構造物のインタフェース部分をどうするか、の4点を挙げている。a)に関しては、例えば車の通過を入力とする場合、ある橋において車通過時の実測歪は僅か25μεのみであり、相応の精度スペックを有するセンサでなければ検出できない。また、以前ベトナムで実施したプロジェクトにおいても、諸事情によりスペックが不適当なセンサを使用せざるを得なかったため良好な結果が得られなかったという事例を紹介し、センサ性能向上の重要性を訴えている。また、d)については、センサを構造物に接着した場合には3年程度で接着力が落ちてデータの質が劣化してくるとのことで、こうした接着技術を含めた議論を今後大いに活発化していきたいと述べていた。
 同氏の研究は、橋を構成する材料や部位などローカルな点に着目するのではなく、あくまで橋全体をモニタリングしてビッグデータ解析的に状態を把握することを目的としたスタイル。質疑応答でこの点に言及があった際の同氏の回答としては、特定の部位や材料、破壊モードにフォーカスした研究は、日本に40年程度先駆けてインフラ劣化の問題が顕在化していた欧米で既に多くの研究が行われていたものの、構造物全体として見たときに着目すべき要因や部位が多すぎて“結局良く分からなかった”ため、氏は現在のような研究スタイルによるソリューションを追及しているとのことであった。他に、システムの寿命に関する質問があり、それに対しては少なくとも10年の信頼性保証が必要という意見を持つ人が多い、との回答であった。

 

"センサーネットワーク:プラットフォーム、アプリケーション、および、事例", 小林久浩氏
 NMEMS技術研究機構のメンバーでもあるNTTデータ社の公共システム事業本部長である小林氏の講演は、ICT企業としてセンサネットワークを活用する側の立場から、センサネットワークにおけるプラットフォームの重要性について述べたもの。
 現在、ようやく世界各所でセンサネットワークの実証実験が行われるようになってきたものの、その事例はまだ“点”と言っていいほど少なく、そのいずれも決まった種類、決まった個数のセンサしかつけられない、データの相互利用もできないクローズドなシステムに留まっている。こうした“点”を“面”へと広げ、各企業が利潤を上げられる大規模ビジネスとして成り立たせていくためにはデータの一元的管理が必須であり、そのためのセンサネット用プラットフォームが不可欠であるとのこと。この手のプラットフォームを各企業が個別に作成するのは効率が悪く、誰でも使える共通インフラとして複数の企業や政府がコラボして開発していくべきだと主張している。
 但し、現状では事例が“点”と言えるほど少ないのは前述の通りで、個々の事例も技術的にまだまだ未完成の部分が多いことから、開発すべき共通プラットフォームの確たる将来像が固まっているとは言い難い状況とのこと。質疑応答でこれらの点に議論が及んだ際、同氏はこうした背景からセンサネットワークを非常に足の長い技術として捉えており、できれば数年程度で“点”を“面”にする具体的な算段を得て、10年くらいのスパンでビジネスとして成立させたいと語っていた。しかし一方で、民間企業としてはあくまでビジネス的なニーズの有無を判断せざるを得ず、どのようなエコノミックドライバーがあって(トリリオンセンサが標榜するAbundanceな世界が)実現できるのかを見極めようとしている、とも述べている。先に述べた神永氏の閉会挨拶におけるコメントにも通じる課題であり、議論は尽きない。

 

"インフラ保全に自動車用MEMSの応用", 国見敬氏
 国見氏が新規・センサー事業部担当シニアエキスパートを務める曙ブレーキ工業は、20年前から自動車用のセンサビジネスに参入し、加速度センサでは年間1000万個以上の出荷を達成するなど既に高い実績を誇っている。同氏の講演は、このような高い実績を有する自動車用センサをインフラ保全センサソリューションに展開した事例を紹介したもの。
 自動車用のセンサは信頼性やスペック、コストの全てにおいて非常に要求レベルが高く、例えば信頼性については30万キロ走行もしくは15年に亘って初期性能を保障できること、アラスカからサウジアラビアまであらゆる環境で使用できることが求められる。こうした要求仕様の厳しさは、インフラモニタリング向けセンサに求められるものと同等であることから、同社はこの分野に自動車用センサを転用する取り組みを積極的に行っている。量産品センサの転用であるため量産効果によりシステムが低コスト、上市実績があるため信頼性の担保が容易といったメリットを主張できる点が強み。
 例として同社は、オートバイの転倒検出に用いている傾斜センサを転用した土砂災害の検知システムを開発し、実証実験を行っている。具体的には、崩落が懸念される斜面に複数の傾斜センサ内包ポールを立て、ポールの傾きから崩落を予測するというシステム構成。実験では、センサが出力を検知してから実際に崩落が発生するまで1分~20分程度の猶予があり、この間に事前警告を行うことが可能であると実証。このシステムは2015年より実用化予定とのこと。更に、センサ出力によってポール先端のLEDライトが付き、危険をビジュアル的に近隣に周知するという応用技術についても開発を進めている。
 他に同社では、自動車用角度センサを内包したアルミパイプを地中12m位の深さまで埋め、地滑りが発生した際のパイプの曲りを角度センサで検出することによる地滑り検知システムを開発し、新東名高速の工事の際に実証実験を行った。質疑応答の際の同氏のコメントによると、非常に安価に実現可能なこのシステムは既に全国100カ所で使用されている。リーマンショック直後で低コストのシステムが望まれたことが契機となって新規参入を果たすことができた、とのこと。質疑応答では他にも、「土木業界は非常にコンサバで情報の入手に苦労した」「ユーザがヒアリングの際に測定したいと言っていたものと実際に測定すべきものはしばしば違っている」「例えば地滑りセンサに関しては、地下は温度が安定した環境なので自動車向けより条件は楽だった」「同社はあくまでセンサを売るビジネスに特化し、アナリシスはコンサルや大学に委託する戦略」等、同氏のフランクなコメントが聞かれた。
 トリリオンセンサに関しては、多くの企業がビジネスニーズの見極めやエコシステムの構築に腐心している中、現有ビジネスの強みを生かして同分野に参入した成功事例の一つとして、注目に値する。

 

以上

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