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2014年12月17日 (水)

2014年度 ナノマイクロ領域での欧州産業技術調査(その2:セミコンヨーロッパ2014および国際MEMS/MST産業化フォーラム)

 2014年10月6日から9日まで、フランス・グルノーブルで開催されたセミコンユーロに参加しました。昨年まで過去数年間はドイツのドレスデンで開催されていましたが、今年からグルノーブルとドレスデンで隔年、持ち回りで開催されるとアナウンスがありました。グルノーブルはフランスアルプスの最南端にあたる山々に囲まれた天空のお城と路面電車でおなじみの古都です。ナノマイクロの関係者のとっては欧州を代表する研究所であるCEA-LETIの本拠地でもあって、多くの方は馴染みが深いと思います。この有名な都市の割には交通が結構不便で、グルノーブルに空港はあるものの、通常は北西にあるリヨンから電車、或いは高速バスで移動します。写真にもありますように意外にもリヨンへの旅客機は比較的小型のジェット機でした。単にローマからリヨンまでの便が小型機だったのかと思いましたがリヨン空港に並んでいる航空機は皆小型機で、なんだか親しみを持てる印象です。リヨン空港からグルノーブルまでは高速バスが一般的なようで1時間に1本以上の割合で出ています。グルノーブルに近くなると固有のメサ型の山が見えてきます。メサは半導体やMEMSでは馴染みのある構造なので、これもまた親近感を感じます。セミコンユーロの会場は、イゼール河のほとりのグルノーブルの古都、ダウンタウンから南に5km程度離れたALPEXPOと言う展示会場で開催されました。ALPと言う名前を冠しているのでどんなに美しい山々を望めるかと期待していたのですが、写真にあるようにちょっと期待外れでした。会期中は天気が悪かったので晴天時にはもっと遠方の美しいアルプスが見えたのかも知れません。

 昨年も同じイベントに参加しましたが、併設されている「国際MEMS/MST産業化フォーラム」は、世界有数の企業や専門企業、および産業技術を主体とする研究所から最先端のデバイス、MEMSを支える最先端の装置や材料技術、世界中のMEMS産業動向調査等が発表され、2日間で全容を理解できるフォーラムであって、私の知る限り(全世界を見渡しても)最も充実しているものと思います。

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写真1. 開催地のグルノーブル近隣のリヨン空港、小型旅客機

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写真2. グルノーブルに近いことを知らせるメサ形状の山々

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写真3. セミコンユーロの開催会場 ALPEXPO

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写真4. 会場から見えるフランスアルプス

 最初に「国際MEMS/MST産業化フォーラム」を報告します。このフォーラムはセミコンユーロ前日の6日と7日の2日間で開催され、20件の講演がありました。

 キーノート講演が最初に2件ありました。まずSEMIのHeinz Kundert氏から, MEMS産業の全体概要の講演です。引き続き高い伸び率でMEMS産業が推移していることを強調されていました。2件目は、直近のMEMSの売り上げがSTマイクロを抜いてBoschなったことを反映してと思いますが、Bosch SensortecのJeanne Forget氏からThe future of MEMS sensors in our Connected Worldと言う演題でした。自動車用MEMSからスタートしたBoschらしく、MEMSの産業推移を第一波が自動車、第二波はコンシューマシステム、そして第三の波はIOTとのことです。またIOTの前にウェアラブル機器が一般的になって沢山のMEMSが利用されると言う展開です。Boschのお得意の集積化モーションセンサーの展開が講演のかなりを占めていましたが、最後に環境センサとして湿度センサーの紹介がありました。1.8V-15μAの低パワーで、1秒の高速応答、しかも3%の精度を確保できると言う優れた性能です。技術的なことには殆ど触れていませんが、写真を見る限りポリマーを用いた静電検出と思われます。お得意の周辺回路を別のチップに作ってハイブリッド構成にしています。集積化センサー技術を知り尽くした専門企業が本気で作った自信作と言えます。

 6件目は、Fingerprint Cards 社のJan Johannesson氏です。これは最新のiPhoneに搭載されている指紋センサーの紹介でした。Fingerprint Cards 社は1997年にスウェーデンの生体認証に特化して創立された企業で、15年以上のタッチセンサーの技術を磨いています。指紋検出は、光学式や超音波式がこれまで多用されてきましたが高価であるとの課題がありましたが、静電容量方式にすることで大幅なコストダウンと大量生産を可能にしたとのことです。

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写真5. MEMS産業化フォーラムの会場

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写真6. チェアのBosh Senontec のLammel氏

 9番目の講演は東北大学の田中先生から、高速通信バスと触覚センサーの集積化の発表です。センサー部はMEMS技術による圧力センサで、個々のセンサーモジュールは薄膜CMOS基板の上にMEMSセンサーを積層した実装となっています。個々のセンサーモジュールに通信プロトコルを含む信号処理回路が含まれ、45MHzのクロックを用いて高速の通信を行うと同時に256個のセンサー信号を高速に検出・送信できる能力があります。

 10番目の講演はNasiri VenturesのSteve Nasiri氏によるMEMSベンチャーに関する講演です。Steve Nasiri氏はInvenSenseの創立者であり、ご自身で6個のベンチャーを立ち上げた強者です。今回の講演は「InvenSenseをどうやって成長させたか」でした。2003年に設立して約10年でSTマイクロやBoschと常に競合しながら売上を増やしています。成長は年率約50%です。InvenSenseは技術的には、CMOSウェハーにMEMSセンサーウェハを直接接合する他社よりも、明らかにチップサイズを小型化可能な技術で競争に打ち勝ってきたとのことです。

 12番目の講演はAlissa Fitzgerald氏で、ご自身の名前を持つAMFitzgerald社ですが、一般財団法人マイクロマシンセンターにも一度訪問されて、米国の大学の施設を用いて安価な研究開発受託サービスをされていました。今回はRocketMEMSと言う概念で、今まで18ヶ月かかっていたMEMS開発を4-5 ヶ月に飛躍的に開発期間を短縮する仕組みの紹介です。その仕組みは、センサーの仕様や性能を物理モデル化して、設計時に性能を精密に予測できるようにしたこと、標準化可能なプラットフォームやプロセスをレディメードにしたことです。最先端の設計理論や仕組むを駆使する所が米国の研究者発ベンチャーらしい取り組みです。

 17番目はオーストリア大:Alexander Nemecek氏による、マイクロホットプレートを用いた集積化ガスセンサーです。CMOS基板上に周辺回路とガスセンサー用のマイクロホットプレートを集積化するもので、大学の研究としては完成度の高いものです。このようなスマートガスセンサーは大手のセンサーデバイス企業が製品化を考えていて、質問が大変活発でした。

 最後にMEMSマーケット予測では、MEMS分野の二大調査会社であるiSuppliとYole Developmentから発表がありました。この「国際MEMS/MST産業化フォーラム」の特徴は、産業化のセミナーとして産業動向・産業技術の最新情報に加えて参加者が特に興味を持ちそうなテーマを挙げ、世界中から発表者を贅沢に集めていること、大学からの講演は少なく、殆どは企業や、産業技術に特化した研究所からの発表である点です。

S7 写真7.セミコンユーロの展示会場

 次に「セミコンユーロ」展示会です。規模としては昨年と同規模ですが、半導体関連製造装置メーカからIMECやフラウンホーファー研究所、LETIのような半導体を含めた国際連携を強力に押し進めている研究機関の広い展示面積があること、更にMEMSを中心に欧州の産業の活況、また印刷電子機器と言った新規な取り組み等の話題性は昨年と同様、多いと感じました。出展者としては、半導体やMEMS、電子デバイスの製造装置メーカ、半導体センサーやMEMS、パワー半導体、三次元実装関連の研究所や企業とバランスの良い展示がされていたと感じています。 日本の展示会と異なるのは、非常に多いベンチャー、専門企業の活力が高いこと、地域性を前面に出して地域単位で展示していることです。 引き続き欧州でのマイクロナノ分野は有望であると感じました。

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写真8. 過去の展示コーナ並べられた懐かしいタイピュータ、テープ読み取り機

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写真9. 日本製の観察顕微鏡

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写真10. イノベーションビレッジと言うベンチャーコーナ

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写真11. WiFiやZigBeeの発明者Cees Links氏

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写真12. トヨタのパーソナルモビィティ

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写真13. このパーソナルモビィティの後部座席に乗せて貰いました。

 今回の展示で新しいと感じたことは、3つあります。最初はイノベーションビレッジと言うベンチャーコーナです。このコーナには30近いベンチャーが展示をしていました。またこのベンチャーが5分程度の告知を行うエレベータピッチセミナーも同時開催されて最新のスタートアップの状況を見ることが出来ました。私の専門であるMEMSカンチレバーを用いた化学センサーのベンチャー企業もそこで巡り合い、LETIを訪問した時に企業訪問を行う約束を取り付けました。何故か?アイデアだけで出展・発表しているベンチャーもありましたが、欧州らしいと思いました。第二は過去の半導体製造装置やコンピュータの展示コーナです。ここでは4インチの研究開発・生産の世代の蒸着装置やウェハーが展示され懐かしさ一杯です。私が学生時代に使ったコンピュータ読み取り紙テープを作成するタイピュータは本当に懐かしいものでした。第三はトヨタのパーソナルモビリテイ(TOYOTA i-ROAD)の実演展示でした。会場の一部をグルグル旋回するこの小型車は、一人乗りですが、転ばない電動バイクと言った感じです。載せて欲しいと懇願しましたが、流石にそれは駄目で、後部の荷物置き場に乗せて貰って、その感覚を楽しむことが出来ました。バイクと同じで狭いですが後部に乗ることはOKのようです。

 最後のトピックスは、セミナーでWiFiやZigBeeの発明者であるCees Links氏に逢うことが出来たことです。今ではその恩恵を受けることがない人はいない、ぐらいWiFiは有名ですが、ルーセントテクノロジーに在籍していた当時は、開発しても殆ど用途はなく、Apple社がコンピュータに搭載して爆発的に広がったようです。ZigBeeはWiFiの信頼性を引き継ぎながらセンサーネットワーク用に超低消費電力を達成した無線システムです。このZigBeeは秋葉原の電子工作屋で購入できる数少ない高度な無線モジュールですが、私も最近使い始めてその性能や信頼性に感動しているこの頃です。このZigBeeの大ファンであることを告げて写真を撮らせて貰いましたが、一緒の写真を撮れなかったことを今も後悔しています。

 このナノマイクロ領域での欧州産業技術調査(セミコンヨーロッパ2014および国際MEMS/MST産業化フォーラム)と欧州の研究所の訪問、ブラジルで開催されたマイクロマシンサミット、幾つかの都市で開催されたトリリオンサミット、米国MIGコンファレンス、国際標準活動等の海外産業技術調査の報告会は、2014年度も来年の年明けすぐ、1月13日(金)に一般財団法人マイクロマシンセンター7F、テクロサロンにて開催予定です。交流会もありますので沢山の方々のご参加を期待しています。(MEMS協議会 三原孝士)

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