第28回先端技術交流会実施報告
10月16日(木)の午後からマイクロマシンセンター新テクノサロンで開かれたマイクロナノ先端技術交流会を開催しました。
今回のテーマは「原子時計の動向とチップスケールへの最新の取り組み」。同分野の最前線で活躍している産業技術総合研究所・計測標準研究部門時間周波数科時間標準研究室の高見澤昭文先生と首都大学東京大学院理工学研究科准教授の五箇先生を講師に迎え、原子時計の取り組みを中心に最新動向が紹介されました。原子時計とは数万年に1秒も狂わないという高精度なクロックです。このおかげで今日のGPS(グローバル・ポジショニング・システム)があり広く社会に貢献しています。
産総研・高見沢先生は「原子時計のしくみと産総研での取り組み」と題して、原子時計の定義から構造、原理とわかりやすく解説いただきました。1960年代中頃までは時間の定義は地球の時点や公転で定義されていましたが、現在では、セシウム(Cs133)原子に共鳴するマイクロ波の周波数で定義されています。そして、それを正確に測定するための方法について解説いただきました。
後半部では産総研での取り組みとして、原子のレーザ光によるトラップを行い原子の速度を落とし、原子を打ち上げて重力でもどってくる系を用いて、マイクロ波の線幅を細くする取り組みを紹介しておりました。
二番手の首都大学東京大学院・五箇先生からは、チップスケール原子時計の最新の動向を紹介いただきました。高見澤先生の方法はラムゼー共鳴というマイクロ波による共鳴を用いておりますが、チップスケールでは、CPT(コヒーレント・ポピュレーション・トラッピング)共鳴を用いております。
このCPT共鳴を用いることにより従来のような大型な共振器が不要なため非常にコンパクト(数センチサイズ)にできることが特徴になります。時間精度は従来の方法に比べると劣りますが、それでも千年に1秒以下のズレと従来のTCXOやOCXOに比べ高精度であり、アプリケーションがさらに拡がるのではと思います。携帯電話やセンサ端末等に使用される可能性も十分にあると思いました。
<産業交流部 今本浩史>
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