« 2014年5月 | トップページ | 2014年7月 »

2014年6月

2014年6月18日 (水)

2014年 第20回「国際マイクロマシンサミット」ブラジル、サンパウロ開催報告

 ご存知のように、マイクロマシンサミットは、年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/マイクロナノテクノロジーに関する課題などについて意見交換する場です。通常の学会と異なるのは、各国・地域が代表団を組織して集まるというところであり、質の高いまとまった講演と、影響力のある人々と意見交換できることが特徴となっています。最近では各国の紹介は比較的短時間で終了し、実用化・産業化の状況話題提供はもちろんですが、合わせて全世界で課題になっている環境やエネルギー、スマートシティ(社会インフラモニタリング)、M2Mと言った最新の共有の話題を、具体的なテーマに沿って発表する場になっています。また過去3年は今まで行われてこなかったパネルディスカッションが開催され、参加者が熱心に発言されています。このように当該分野での各国の状況が短期間で鳥瞰できる格好の場となっています。また近年の傾向としてMEMS分野が高成長を継続する産業分野であるとの認識から、産業発展の伸長の目覚ましい国が加わり、企業にとっても新規なマーケットを開拓する良い機会にもなっています。

 本年(2014年度)はブラジルのサンパウロ市にて、5月12日から14日まで開催され、日本の代表団長である東京大学・下山勲教授と事務局として三原が参加しました。今回のサミットのトピックスは、”Sport & Health, Environment and Energy, in addition to Smart System Integration”となります。今回はラテンアメリカではじめての開催であること、第20回と言う記念すべき会であることです。今回のオーガナイザーはカンピーナス( Campinas)大学、FEEC/UNICAMP のJacobus W. Swart教授でした。尚、会場となるサンパウロと最終日のテクニカルツアの開催されたカンピーナスは100km離れていますが、カンピーナスへは事務局が専用バスを用意してくれました。

 最初にサンパウロですが、人口は1,100万人以上でブラジル最大のメガシティです。2011年の統計では、近郊を含む都市圏人口では2,039万人であり、世界第8位、南半球では第1位の都市とのことです。文句なく、南半球のビジネス・人材・文化・政治などの中心で、特にビジネス部門で高評価を得ています。地球上では日本の真反対に位置するわけですが、実際に渡航してみて、これを初めて実感しました。ドバイ経由で渡航しましたが、ドバイでの待ち時間を入れて、自宅からホテルまで実に38時間かかりました。またサンパウロについて時計を全く直す必要がなかったのはちょっと感動です。すなわち時差は12時間です。ご存知のように2014年はサッカーのワールドカップがブラジルの各都市で行われ、サンパウロも中心都市のひとつですが、なかなか日本から情報を得られない都市です。旅行雑誌を探しましたが1冊しかなく、サンパウロに関する記述も4ページくらいしかありません。その意味ではサンパウロは遠くて、あまり身近ではない都市です。

 サミットはサンパウロの中心部(ダウンタウン)から南西に10km程度離れたBlue Tree Morumbiと言う高層ホテルで開催されました。会場(ホテル)にはサミットの前日に着き、そのままレセプションに参加しましたが、もう20年になると本当に同窓会のような雰囲気でみんな和気藹藹に笑談されていました。

S1

写真 1 開催されたBlue Tree Morumbi高層ホテル(サンパウロ市)

S2

写真 2 レセプションの様子

S3

写真 3 サミット会場の様子

 今回のサミットの参加者は18の地域,20ヵ国から58人のデレゲイトでした。各国の概要報告を行うカントリーレビューは初日12日の午前中、13日の午後はセッションテーマHealth and Bio Microsystems として7件、同日の夕刻はMNT for sports and health, environment and energyをテーマとしたパネルディスカッションとバンクエット、13日の午前中は、セッションテーマChemical, Environmental, Pressure and RF Microsystems として7件の講演、休憩を挟んでセッションテーマMNT Applications and Marketsとして7件、13日の午後はセッションテーマMNT Applications and Program and Initiatives として7件の講演、同日の夕刻はMNT Opportunities for Latin Americaと言う題目の第2回目のパネルディスカッション、その後はバスでカンピーナスに向かいました。

S4

写真 4 今回のオーガナイザ Swart教授

S5

写真 5 マイクロマシンサミットの20年 ダリオ先生から

 最初に特別講演として、イタリア団長のPaolo Dario教授がMEMS Microsystems and Micromachine: a Technical and Historical Overview of the World Micromachine Summitと言う題目で講演されました。ご存知のようにこのマイクロマシンサミットは、マイクロマシンセンターが提案して始まった、単なる学会ではなくて各国、各地域の本技術・産業領域に関する国策・政策や教育等も幅広く捉えて行こうとするものです。同時に技術や、産業的なトピックス、最新の学術的な発表にあります。すなわち、2日間で世界中の取り組みが大局から詳細の至るまで鳥瞰できます。第1回から第20回までの開催地を良い機会ですのでリストアップします。


第1回 1995年3月 京都(日本)
第2回 1996年4月 Montreux(スイス)
第3回 1997年4月 Vancouver(カナダ)
第4回 1998年4月 Melbourne(オーストラリア)
第5回 1999年4月 Glasgow(スコットランド)
第6回 2000年4月 広島(日本)
第7回 2001年4月 Freiburg(ドイツ)
第8回 2002年4月 Maastricht(オランダ)
第9回 2003年 キャンセル
第10回 2004年5月 Grenoble(フランス)
第11回 2005年5月 Dallas(米国)
第12回 2006年4月 北京(中国)
第13回 2007年4月 Venice(イタリア)
第14回 2008年4月 Daejeon(韓国)
第15回 2009年5月 Edmonton(カナダ)
第16回 2010年4月 Dortmund(ドイツ)
第17回 2011年4月 Ras Al Khaimah(UAE)
第18回 2012年4月 新竹(台湾)
第19回 2013年4月 上海(中国)
第20回 2014年5月 Sao Paulo(ブラジル)

 初期の頃は、この技術領域のことを日本ではマイクロマシン、欧州ではMST(マイクロシステム)米国ではMEMSと呼んでいたことや、それぞれの地域での技術的な進展等のお話がありました。その中でもボッシュプロセスが開発されて、この分野が技術的にも産業的にも一気に賑やかになったこと、スマートホンによって市場の大きな拡大があったことのトピックス紹介がありました。

 カントリレビューでの幾つか興味を持った講演をご紹介します。まず、ドイツですが、団長は日本に年に3-4回来日されているENAS のThomas Gessner教授です。ドイツはラテンアメリカ、中国に次ぐ6名のデレゲートが参加され、MEMSの活況ぶりをアピールされていました。まず、2012年度はSTマイクロがMEMS売上でトップでしたが、2013年度はBoshが売り上げで1位であったとのことです。Boshは自動車用のMEMSから開始しましたが、最近は国際的な視点にたって、産業用から民生用まで幅広い領域で開発や生産拠点を広げ、確実に売り上げを伸ばしています。またSIEMENSが、その技術的な底力を発揮してセンサー、特殊MEMSからシステムインテグレーションまで幅広く事業を行っています。また開発とファンドリで 存在感を見せるX-FABに関しても、そのOpen Platform Technologiesとの題目で幅広いMEMSに適用できる事例が示されました。

 続いて中国ですが、なんと8名の参加で、ラテンアメリカに次ぐデレゲートを派遣しています。日本と同じ時間がかかる長距離渡航なのに8名の参加があるとは脱帽です。また発表のなかでも大変積極的な投資をMEMS分野で行っているとのことで、6インチが中心の4つの研究開発ライン(蘇州サイエンスパークは1部8インチ)と、製造ラインは4拠点、SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corp.,)は8インチラインを立ち上げたとのことです。また100以上のベンチャー企業が既に巣だっているとのことです。

 ラテンアメリカの紹介では、やはり地元と言うことで14名のデレゲートの参加がありました。ブラジルが14名、メキシコが2名です。ラテンアメリカは5.7億人の人口、中でもブラジルが約2億人、メキシコが1億人です。約6億人の中心はやはりブラジルです。あとでカンピーナスの研究所の訪問の時にもコメントしますが、ブラジルの科学技術や産業技術は、ラテンアメリカ特有の技術戦略がいくつもあって、それを一貫してやり抜くことでラテンアメリカのデファクトスタンダードにすることです。例えば深海での石油探査や石油掘削です。なんと海面下2000mの深さで海面から地中深く7000mの石油探査が出来るということですので驚きです。またブラジルで大きな産業であるバイオエタノールや航空機(世界第三位)の話題もありました。

 米国からの発表は昨年の発表と近いものですが、最近のDARPAが強化しているマイクロシステム関係のプログラムとして、「Laser UV Sources for Tactical Efficient Raman」および「Direct On-Chip Digital Optical Synthesizer」が上がっていました。特に後者は最近注目を浴びている超小型原子時計に関するものと思われ注目されます。またミシガン大学が得意とするマイクロガスクロマトに関しては超小型ポンプを組み込んだようです。ミシガン大学は本当に長期的視野で研究を重ね、かなり実用化に近いデバイスが出来上がってきています。また興味深いデータとして、各国のGDPに占めるRD投資の割合と、研究者、技術者の人口に大変綺麗な相関があることが示されました。GDPに占めるRD投資の割合が高い国は、イスラエル、日本、フィンランド、スエーデン、韓国、米国、デンマーク、ドイツ、台湾、スイスの順です。その中でイスラエルは、極端に科学者人口が少なく、スエーデンは科学者人口が多い国です。

 イタリアは研究開発投資効率が高い国であるとの紹介がありました。イタリアは先進国の中では、GDPに占めるRD投資の割合と科学者人口が少ないと言う統計データがあります。しかし研究者単位の論文数と引用数が世界一となっています。また人口あたりの起業家件数の割合も先進国では最も多く、これらが高い効率の証明であるとするものです。

 日本からの紹介は、社会課題を解決するためのセンサーネットワークの研究開発の状況に関して下山団長からお話がありました。

S6

写真 6 日本団長 下山教授によるカントリーレビュー

S7

写真 7 集合写真

S8

写真 8 ディナー風景 

 サミットMeeting最終日の13日の夕刻は、(殆ど全員)バスに乗り込んでカンピーナスに向かいました。カンピーナスはサンパウロの北西、約100kmに位置する日本のつくば市のような研究学園都市です。ブラジルでは日本や欧州のような高速鉄道はないので都市間交通は大型高速バスとなります。次の14日にカンピーナスの研究施設やカンピーナス大学を見学しました。最初の見学研究所はCPqD通信研究所です。カンピーナスの丘の上の熱帯灌木地を切り開いたような壮大な研究所です。建物は精々3階建ての低層の研究所ですが、最初に軍の研究所を兼ねていたようで地下道で繋がっているとのことです。研究所の規模は博士を450人含めた1300人の規模で、研究開発は政府の予算で行い、技術を企業に移転すること、ベンチャー企業を創出することがミッションです。最初に技術展示室を見せて貰いましたが、一般の方にも興味を持って見て貰えるように大変凝った展示で、鉱山資源が多いブラジルらしく鉱山をイメージした展示室を使って、半導体や光ファイバーの材料である岩石や水晶から説明する徹底ぶりです。技術展示で興味を持てたのは450MHzを用いた高速無線通信インフラであるLTE技術とそのインフラ網でした。現在ほとんどの国ではLTEは、プラチナバンドである920MHzと2.4GHzを使っており、450MHz帯は業務用やアマチュアバンド、リモコン等に使われていますが、ブラジルではこれをインフラ系無線のメインのバンドにしています。これはブラジルを始めラテンアメリカの広大さにあり、少ない無線局でより広い範囲をカバー出来るためです。この方式をラテンアメリカが使っています。すなわち、ブラジルはラテンアメリカの産業のハブであると言えます。これは航空機や鉱山資源、エコ燃料等や資源探査等にも言えることで独自の発展を遂げていると考えられます。

S9c

写真 9 カンピーナス 通信研究所

S10

写真 10 工夫をこらした研究所の博物館

 2番目に見学したのはCNPEMと言うSORを用いた材料・ナノテク研究所です。日本で言えばSpring8やフォトンファクトリーをイメージしますが、このSORはラテンアメリカで最初に建築された施設とのことです。見学コースでは施設の全体を見渡せる場所があって、その構造が良く判ります。

S11

写真 11 SOR施設の入り口

S12

写真 12 SOR利用研究施設

 その後、カンピーナス大学付属のナノテクMEMS研究施設であるUNICAMPを見学しました。今回のMMサミットのオーガナイザーである、Jacobus W. Swart教授は、この研究施設の教授です。ナノテクの研究施設、電子顕微鏡やAFM等の研究施設を一通り見た後、MEMSの実験室で幾つかのセンサーの実演もありました。興味深いものは電子オレンジと言われる無線センサーを組み込んだオレンジ大のボールです。温度センサー、衝撃センサー、加速度・モーションセンサーと無線&電池をモジュール化して、その外側をシリコンゴムで固めた構造です。これを用いてオレンジの流通過程をモニターするものです。電子バナナは無いのか?とのおバカな質問をしたところ、ブラジルではバナナは大きな産業ではないと上手く切り返されました。(笑)

S13_2

写真 13 カンピーナス大学ナノテク研究施設

S14

写真 14 電子オレンジ

 MMサミットでのブラジルのデリゲートである、サンパウロ大学のMorimoto教授(日系三世で日本語は出来ません)にお世話になって、研究所見学の翌日にサンパウロ大学を訪問しました。カンピーナスを早朝に出発して高速バスでサンパウロ大学に向かいましたが、英語表記が無いなかで高速バスに乗るのにMorimoto教授を始め、現地のスタッフの方にも早朝にピックアップして頂いて、バスに乗せて頂く等・・・感謝感激です。サンパウロ大学では、マイクロシステムの研究室、プリント基板の製造工程の他にNishimoto教授の海洋研究所の見学もさせて頂きました。そこは、様々な研究投資を得て、海洋におけるバーチャルリアリティシステムや自由に波を生成可能な大規模な水槽もありました。

S15_s

写真 15 サンパウロ大学

S16_2

写真 16 お誘い頂いたMorimoto教授(左)

S17

写真 17 海洋研究所のNishimoto教授(右)

S18

写真 18 バーチャルリアリティシステム

S19

写真 19 自由な波が生成できる水槽

 以上で、ブラジルの報告は終わりますが、下山団長のチーフデレゲート会議の結果によりますと、来年2015年の開催はドイツのベルリンでチェアはドイツのチーフデレゲートであるThomas Gessner教授、そして2年後の2016年は日本での開催が決まりました。
 日本での開催場所は、まだまだ時間があるのでゆっくり考えたいと思いますが、出来れば沢山の方々が日本に親しんで頂けるような場所が良いと思います。

(MEMS協議会 国際交流部 三原 孝士)

| | コメント (0)

【平成26年6月の経済報告】

 本稿は、マイクロマシン/MEMSを取り巻く経済・政策動向のトピックをいろいろな観点からとらえて発信しています。今回は平成26年6月分の経済報告をお届けします。

図表を含めた詳細版は、以下のPDFファイルをご覧ください。

「2014.6.pdf」をダウンロード

| | コメント (0)

2014年6月16日 (月)

フレキシブルMEMSデバイスにおける曲げ試験及び信頼性に関する標準化可能性調査の開始

 マイクロマシンセンターではMEMSに関する標準化を進めていますが、今年度1年間の予定で(株)三菱総合研究所殿より受託して新たな標準化可能性調査を開始しました。

 屈曲性を備えた薄型MEMSセンサや薄型表示デバイスなどに代表される、フレキシブルMEMSデバイスの研究開発が世界中の研究機関や企業で進められています。このようなデバイスは平面ではない場所への装着・設置が可能なため、今後建築物や生産機械の状態モニタリングなどへの需要が大きく増加することが予想されます。

 本調査では、フレキシブルMEMSデバイスの曲げ試験及び信頼性の評価において、対象デバイスを選定し、標準化すべき特性測定項目及び測定方法を明確化することを目標とします。そして、次年度からただちに規格案開発の作業を実行できる体制を構築してまいります。

 同時に、MEMS関連の国際標準化を審議するIEC/SC47F国際標準化会議に出席して、関連規格提案の情報収集を行い、参加各国との意見交換を通じて将来の規格提案に対する賛成投票及びプロジェクト参加等の協力を要請します。本調査の成果は、フレキシブルMEMSデバイスの生産者及び使用者の間で性能・仕様に関する適正な意思疎通を促し、市場の活性化に寄与すると期待されています。(調査研究・標準部 出井敏夫)

| | コメント (0)

2014年6月13日 (金)

「ナノマイクロビジネス展2014」 TIA N-MEMSシンポジウムMEMS協議会フォーラム開催(2014年4月25日 開催)」

 マイクロマシン/MEMSの総合イベントである「ナノマイクロビジネス展2014」(パシフィコ横浜)の中で、MEMS協議会が主催する同時開催プログラムとして国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムとMEMS協議会フォーラム(アネックスホールF203にて開催)があります。2010年からMEMS協議会がTIA(つくばイノベーションアリーナ)のTIA N-MEMS WGの事務局となってから、MEMS協議会フォーラムをTIA N-MEMSシンポジウム(TIAつくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点運営最高会議の後援)として開催しています。本シンポジウムは、MEMS産業の発展を目的にMEMS協議会が主催する関連諸活動をご紹介し、会場参加者へのPR、意見交換の場を提供するものです。今回はMEMS協議会としてナノマイクロビジネス展2014の企画展示である「MEMSビジネスの新機軸から」の企画と運営に熱心に取り組んできました。このため最初のセッション1では、この企画展示と関連させ、「MEMS産業の新機軸としてのオープンイノベーション、新生産革命」を取り上げることに致しました。またセッション2では昨年に引き続き、「MEMS産業動向・技術動向」といたしました。
 最初にTIA N-MEMS WGの委員長で、MEMS協議会・推進委員会副委員長の唐木幸一から開会の挨拶をさせて頂いたあと、本セッションに入りました。

F1

写真1 フォーラム会場の様子

 セッション1の最初の講演は「MEMS ビジネス新機軸:オープンイノベーションと新製造方法」と題してMEMS協議会の三原(筆者)がMEMS協議会の活動と、今回のシンポジウムの趣旨について、簡単ですが今回のテーマの説明と一般財団法人マイクロマシンセンター・MEMS協議会が実施しているMNOICに関する報告を行いました。

 続いて「TIAにおけるオープンイノベーションの拡がり」と題して(独)産総研・理事 TIA推進本部 本部長の金山敏彦氏から「多岐にわたる研究施設を用いたオープンイノベーションが可能に!」に関する講演でした。ご存知のようにナノテク関係の研究機関が集中しているつくば地区には、産総研、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー研究所と言った世界的規模の研究所が集まっています。これまでは組織的な連携がなかったこれらの研究施設が相互に連携を取り、かつ魅力的な研究施設を産業界に活用して貰う取り組みに関して総括的、かつ詳細な説明がありました。


 次に「世界を変える生産革命:ここまで来たミニマルファブ」と題してミニマルファブ技術研究組合 専務理事の久保内講一氏から「今どこまでできて、これらか何処へ行くのか?新生産機軸ミニマルファブ」の講演でした。皆様ご存知のように、ミニマルファブは拡大を続ける半導体製造拠点の投資額を3桁下げようとする試みです。私も昨年10月、セミコンユーロにて「大半導体製造拠点の投資を、広く半導体の恩恵を受けている国際企業から調達すべき」との講演を聞いて、もうそんな時代になったのかと驚きましたが、このミニマルファブはそのような議論における双璧をなすものであると感じました。既に幕張で開催された今年のセミコン日本にて展示会場に持ち込まれたミニマルファボ装置群にてMOSトランジスタを作成して、MOS特性の評価まで現場で行ったとのことです。またMEMSカンチレバーも産総研・集積マイクロシステム研究センターの4インチMEMSラインとのハイブリッドにて圧電素子を組み込んだシリコンカンチレバーを試作できたという事で、MEMSにおいても高い期待を抱いています。MEMS協議会が推進するMNOICも、このミニマルファボの研究会に参加し、今後の連携を進めています。

 このセッションの最後は「3Dゲルプリンターが開拓する「化学」×「機械」のオープンイノベーション」と題して、山形大学 ライフ・3Dプリンタ創成センター長 古川英光教授から「3Dプリンターの最前線研究者が10年後を予想する」の講演でした。3Dプリンターでは、その機構の完成度に加えて、どのような材料を、どのようなプロセスで構造体を作成するかが重要な技術課題です。3Dプリンター自体は、発明(日本から発明)されてから結構時間が経っていますが、この使える材料の選択が大幅に広がったことも、今のブームの要因と考えています。吉川先生のご発表は、この材料として高強度ダブルネットワークゲルという水分を90%以上包含しているゲルにも関わらず、強度が従来のゲルに比較して40倍から100倍強い破断応力を持っているものを使っています。これを世界初のゲルプリンターで作成し、研究開発をされています。様々な応用が考えられるようですが、特に生体適合性が高いので、医療やライフサイエンスに応用されそうです。

F2

写真2 産総研・理事 金山敏彦氏のご講演

F3

写真3 ミニマルファブ技術研究組合 専務理事の久保内講一氏のご講演

F4

写真4 山形大学 古川英光教授のご講演

 後半のセッション2は、「MEMS産業動向・技術動向」と題したMEMS協議会の活動内容をご紹介するセッションです。この報告は毎年、内容を1年毎に更新しながらご紹介しており、短時間ですが1年間のトピックスが判ることを特長としています。

 最初の講演は「IEC東京大会に向けて、活発化する国際標準化活動についての報告」と題して帝京大学・理工学部、情報科学科・教授の大和田邦樹氏(標準化関連委員会・委員長)から、MEMSの国際標準化に関する最新の状況と、IEC総会が今年度は東京で開催されることから、そのご案内を行いました。講演ではIECの紹介を行ったあと、MEMSの国際規格であり、日本が主導的に進めてきたSC47F規定、更にその標準化において日本が進めてきた戦略の説明、更に現在標準化された項目と現在進めているものに関する説明があったあと、IEC総会および今年東京で開催されるIEC東京総会の概要説明がありました。IEC東京総会は11月初旬に約2週間かけて東京国際フォーラムで開催され、1500名が参加する大きなイベントで、MEMS標準の審議もそこでされる予定です。

 2番目の講演は「MEMS技術動向:世界のMEMS関連学会の発表からビジネス注目分野を推測」と題して、早稲田大学・理工学術院、基幹理工学部・教授 庄子習一氏(国内外技術動向調査委員会・委員長)から、国際的に最も認知されているMEMS2014(2014年1月26日から30日まで、米国サンフランシスコで開催)の学術発表を元に整理した、講演トピックスや統計データから今後の有望ビジネスを展望した報告をして頂きました。 このMEMS2014は、約700名の参加者、900件程度の投稿、その内1/3に当たる約300件が発表されました。 また国際協業の実態を見るために共著者の国際連携数を数値化されていましたが、結果はオランダ-中国-米国-台湾の順に国際協力が熱心なことが大きな刺激になりました。中国は欧米から帰国された研究者が多いのが原因と思われますが、国際協力とMEMS産業の活性化がダブっているような気がします。

 この最後のセッションは「センサは作るから活用へ!社会に浸透するあらゆるセンサー群」と題してマイクロマシンセンター・MEMS協議会の今本浩史から現在の(世界の)技術動向と産業動向から、センサーとネットワークが切り開く新規産業群を紐解き、20年後を予測することを行いました。マイクロマシンセンターの産業動向、産業技術調査は委員会メンバーによる調査および報告書の作成と、マイクロマシンサミット、米国や欧州の国際的な産業フォーラム参加や研究所の訪問による調査、に基づいています。この中で米国を中心に話題になっている1兆個のセンサーを無線で繋いで様々なモニタリングに使う取組も話題にのぼりました。その場合にキーワードは、センサーと無線、そして低消費電力に加えて自立電源(すなわちエネルギーハーベスティング)です。

F5

写真5 帝京大学・理工学部・教授 大和田邦樹氏のご講演

F6

写真6 早稲田大学・基幹理工学部・教授 庄子習一氏のご講演

F7

写真7 MEMS協議会 今本浩史氏の講演
 

 このTIA N-MEMS MEMS協議会フォーラムは終始大勢の聴講者にご参加頂きました。参加者数は約120名でした。唐木WG委員長を始め、スタッフ一同、このMEMSの産業推進に関し皆様の関心の高さを改めて実感したとともに、多くの方々にご参加頂いたことに感謝致します。また来年に向けて更に充実した企画をして行きたいと思いますので、ご気軽にご意見を頂ければと思います。

 (MEMS協議会事務局 三原 孝士)

| | コメント (0)

2014年6月11日 (水)

「ナノ・マイクロビジネス展2014」国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム開催(2014年4月23日)

 既にこの「MEMSの波」で速報としてご紹介していますが、マイクロマシン/MEMSの総合イベントである「ナノ・マイクロビジネス展2014」は、今年は場所をパシフィコ横浜に移して好評のうちに終了しました。また幾つかの併設イベントをMEMS協議会が中心になって実施しました。この中でも、20回と言う長い歴史を持つ「国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム」は、(同時通訳もついて)世界のマイクロマシン/MEMSの産業および技術動向を得ることが出来る絶好の場となっています。今回もシンポジウムの方向をMEMS協議会・国際交流委員会の委員長である、東京大学・下山勲教授(本シンポジウムのチェアマン)を中心に議論を重ね、「新しい応用を目指すスマートモニタリングデバイスとしてのMEMS」と題したテーマで、近い将来に何兆個のMEMS/センサーが全ての工業製品や生体・動物に搭載されると言われているスマートモニタリングデバイスとしてのMEMSセンサーに関し、その新規な応用分野として「社会インフラ、自動車、医療・健康」を取り上げてプログラムを組みました。

Is1

写真1 会場の様子


 本シンポジウムでは技術研究組合NMEMS技術研究機構・今仲理事長の挨拶に続いて、経産省・須藤産業機械課長のご来賓のご挨拶のあと、特別講演と2つのセッションを行いました。 最初の講演は、特別講演としてMEMS Industry Group(MIG)のExecutive Director, Karen Lightman氏によるMEMS and Sensor Trends – Paving the Way for a True Internet of Thingsと題しての講演です。 ご存知のようにMEMSセンサーはかなり長期にわたって2桁成長が続いている産業分野ですが、スマートホンに搭載されるようになって飛躍的に生産量が増え、かつ一般に認知されるようになってきました。そして「スマートホンの次にくる大きな市場は何か」はMEMS関係者が注目しているテーマです。ご存知のようにMIGは米国を中心としたMEMS企業の工業会です。Karen Lightman氏の講演はMEMSの市場特性や最近の状況、製品や使用センサーの推移に関する傾向を鳥瞰的な視点にたった紹介でした。例えば、スマホ用のモーションセンサは複合化が進んでおり、数量や金額では飽和に近づいています。また大きな市場トレンドではセンサー(MEMS)と無線によって、全てがスマートになりつつあると言う点です。これはInternet of Thingsと同意であって、全ての物体がインターネットで繋がる時代が到来するが、その場合はセンサーと無線が必ず搭載されると言う条件があって、それに合わせて情報トラフィックと、MEMS(センサ)が飛躍的に必要になると言う考えです。米国が発端となった1兆個のセンサーの概念も、その考えの延長と考えることが出来ます。

Is2

写真2 MIG  Karen Lightman氏による特別講演


 特別講演の後の最初のセッションは、IVAM特別セッションであって、セッションチェアはIVAMの所長である、Prof. Thomas R. Dietrichでした。皆さんは既にお気づきとは思いますが、昨年までは日独セミナーとして単独で実施していたIVAMの講演会を、今年は国際シンポジウムの1セッションとして取り込みました。このセッションの最初の講演はFraunhofer ENAS, Chemnitz のProf. Dr. Thomas GeßnerによるSmart Monitoring Systemsでした。ドイツのMEMSはLIGAから始まる大変古い歴史があって、特に産業界の為の研究開発を行っている多数のFraunhofer研究所が関与しています。Prof. Thomas GeßnerはFraunhofer ENASの教授ですが、この研究所はバルクMEMSの研究をリードしてきた研究所で、世界標準と言われるMEMSプロセス技術を多数所有しています。トピックスとしてはドイツのボッシュがイタリアのSTマイクロを売上高で抜いたと言うことの紹介や、環境計測やインフラモニタリングを目的とした様々な取り組みも紹介して頂きました。

Is3

写真3 Thomas Geßner教授による講演


 本セッションの2番目の講演は「新規な低価格MEMS製造技術:ポリマーMEMS」と題して独立法人・産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センターの栗原一真氏からドイツ、日本の双方に高い関心がもてる講演がありました。現在の製造業にとって殆どの(コンシューマ)製品のケース等に使用されているモールド技術を、MEMSの製造に取り入れる取り組みで近い将来の量産品にどんどん使われ、更にMEMSの利用範囲が拡大するものと思われます。この技術を使うと、電極配線を完了したシリコン基板やポリイミド基板をモールド型に入れて他のポリマーと一括形成することで、大量に三次元形状を安価に作成できます。また本セッションの最後の講演は「Recent developments regarding optical MEMS and their applications」の題目で、Fraunhofer IPMS, Dresden のDr. Michael Schollesによって行われました。Fraunhofer IPMSは特に光学関連MEMSでは長い歴史と高い技術を持つ研究所です。今回は光スキャナーを駆動回路と一緒に集積化、加工して精密な1次元スキャニングモジュールを作成し、光通信や産業用の機構に利用する取り組みを中心にご紹介がありました。

Is4

写真4 栗原一真氏による講演

Is5

写真5 Dr. Michael Schollesによる講演


 休憩のあと、セッション2として「スマートモニタリングを用いた様々な応用展開とMEMSへの期待」を行いました。その講演1として、「社会インフラ構造物におけるヘルスモニタリングの実際とセンサシステムへの期待」として横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授の西尾 真由子氏から具体的な橋梁センシングに関する講演がありました。コンクリート製の大型橋梁に歪センサーや振動センサー等を設置し、実際にデータを取得して解析された結果を報告されました。何ヵ月にもわたって長期的に計測することで、季節による違いや気温による影響等も議論されていました。構造体モニタリングには最適なセンサー群と辛抱強いデータ解析が必要であると実感しました。 また橋梁は大型で固有振動数も大変小さいのでセンサーの高感度や最適化も必須になります。

 講演2は「Emerging sensor opportunities in mobile consumer electronics」と題してVTT (Finland) のProf. Aarne Oja氏からスマートホン用のMEMS関連のご紹介がありました。 VTTに関してですが、同日(23日)の午前中にフィンランドVTTセミナー「マイクロシステムによるイノベーションを目指して」と言うテーマで、VTTから4件、日本から2件のセミナーがあり、多数の方々にご参加頂きました。そのVTTのOja氏の講演は、今後のスマートホンに搭載される多数のMEMSのうち、VTTが開発中、或いは実用化中のMEMSの紹介でした。例えば10cmの分解能を有するMEMS圧力・高度センサー、CO2を含むガスセンサー、デェスチャーを認識する手段としてcMUTを利用した40kHzの超音波センサー、近接画像を認識するための超小型MEMS光学モジュール、等に関する講演がありました。

Is6

写真6 横浜国立大学 西尾 真由子氏による講演

Is7

写真7 Prof. Aarne Oja氏による講演

Is8

写真8 デンソー・菅原 良一氏による講演


 その後、講演3として「自動車用半導体/MEMSの動向と今後の期待」と題目して株式会社デンソー・半導体先行開発部の菅原 良一氏から自動車用のセンサーやMEMSの動向や開発状況に関する講演がりました。自動車の機能毎に、どのようなマイクロシステムやセンサーが使われているかの判りやすい説明で、自動車は限定されたスペースで極めて使用温度範囲の広いデバイスが、機構部品とハイブリッド的に構成されて使われるとのことです。また最新の運転支援に関しても話題があり、アクティブセイフティに関するセンサーへの期待もありました。特に三次元の距離画像を高速で取得する技術や、ヘッドマウント表示で視認性を改良する取り組みでした。

 講演4として「Multi-layer Silicon MEMS Processes and Devices」との題目で、Micralyne Inc.のVP Engineering, Acting VP SalesのCollin Twanow, P.氏から複雑なMEMS構造を作成する技術に関する講演がありました。紹介のあったバルクMEMS形成方法はMicraGEM-Si(TM)と言われる方法で、2枚のSOIウェハーを別々に加工し、ウェハー接合装置を用いて加工面同士を位置合わせしながら貼り合わせる方式です。この方法によって段差の異なる構造や、より効率的な動作をする櫛歯アクチュエータ・電極等を成型できます。 更にcMUTを使った超音波アクチュエータの紹介等もありました。 このシンポジウムの最後は「超高齢化社会を支える健康機器と求められるセンサー技術」との題目で株式会社タニタ・開発部部長の新藤幹雄氏からセンサーやMEMSに関係の深い健康管理機器に関する講演がありました。新藤氏によると、国家予算の30%を占める国民医療費の高齢者医療にかかる部分が極めて多く、しかもそれは年齢とともに指数関数的に増加しています。これは高齢の方の疾患が複数で、長期間の治療を有するためです。特に寝たきりにさせないことが重要であるが、新藤氏は寝たきりになる原因の第3位の転倒による骨折を防止するために、下肢機能のモニタが可能なシステムに注目しているとのことです。その手法の一つとして金属探知器と同様な手法で、電磁場中での筋の高周波インピーダンス(導電率)の差による渦電流を計測することでモニタする手法を紹介されました。

Is9

写真9 Micralyne Inc.のCollin Twanow, P.氏の講演

Is10

写真10  株式会社タニタの新藤幹雄氏の講演


 この国際シンポジウムは終始大勢の聴講者にご参加頂きました。講演によっては立ち見の方も多く、参加者数は約220名でした。下山委員長を始め、スタッフ一同、このテーマの重要性を改めて実感したとともに、多くの方々にご参加頂いたことに感謝致します。また来年に向けて更に充実した企画をして行きたいと思いますので、ご気軽にご意見を頂ければと思います。
 (MEMS協議会事務局 三原 孝士)

| | コメント (0)

« 2014年5月 | トップページ | 2014年7月 »