第22回MEMS講習会:充実した内容の講習会と見学会が終了
2014年3月6日に富山県工業技術センター・中央研究所敷地内の富山県ものづくり研究開発センターにて第22回MEMS講習会を開催致しました。MEMS講習会はMEMS協議会メンバー企業、特にMEMSの試作(MEMSファンドリー)や設計ツール開発をサービスとする企業を中心に企画され、MMCの人材育成事業である「マイクロナノイノベータ人材育成プログラム」との連携を図りながら、地方都市と都内で年2回実施しています。
今回は「MEMS技術を利用した地域活性化」をテーマに、MEMSを重要な産業として育成されている富山県工業技術センター、およびその関連企業とのビジネス交流を目的に、主催:一般財団法人マイクロマシンセンター、共催:富山県工業技術センターとして実施しました。MEMS分野での研究開発をされている研究者による特別講演・招待講演と、富山県、MMCの双方の報告を中心に最先端の技術開発や地域での産業化の課題等を議論する貴重な場となりました。
当日の北陸、上越の天気予報は雪で、越後湯沢からほくほく線の山中での雪景色を見て、富山の吹雪を心配しましたが、夕刻5cm程度の積雪はあったものの、講演会には殆ど影響がない程度の軽い積雪でした。
写真1 高岡市を走る路面電車・万葉線
写真2 富山県工業技術センター
写真3 講演会場の全景
写真4 中央研究所 榎本所長
主催者の挨拶のあと、最初の特別講演として、立命館大学・立命館グローバル・イノベーション研究機構の杉山進教授から「MEMSの活躍の広がりと生産技術の変革:しなやかMEMS[高分子材料を活用した低コスト・高機能MEMS]の未来」がありました。ご存知のように杉山先生は世界発のMEMSと言えるシリコンピエゾ抵抗素子を用いた圧力センサーから始まって、最近ではシリコン以外の材料、特に高分子を用いて機構素子を作成・評価し、デバイスに仕上げる研究で世界の第一人者です。先生はシリコンと高分子を物性面から比較し、高分子でも様々な機構部品が出来ることを理論予測すると同時に、実際にデバイスを構成して実装されています。
続く招待講演は、早稲田大学・ナノ理工学研究機構研究院の水野潤准教授から「MEMS技術の最先端;微細加工・接合技術を融合した新しい技術展開:グリーン・イノベーションMEMSへの応用」です。水野先生は企業にいらした経験から最先端のMEMS微細加工や接合技術を用いて、様々な応用を企業との共同研究として実施され、多くの成果を上げておられます。特に高密度デバイスの三次元実装に必要なキー技術や、最先端の有機ELや有機素子に必要な加工技術、更にマイクロTAS等です。ここから見えてくるのは、もはやMEMS技術は機械加工やモールド技術と同様に、製造業の様々なシーンにおいて、なくてはならない技術になりつつあるいう事です。逆に言えばMEMS技術なしには、もう世界と競争できない程度に重要になっていると言うことです。
写真5 特別講演 杉山先生
写真6 招待講演 水野先生
続いての富山地域からの報告では、富山県工業技術センター・中央研究所の小幡勤氏から「富山県におけるMEMSへの取り組み~MEMSで地域を活性化~」と題する講演がありました。この小幡氏は本講演会の開催にあたり富山県工業技術センターの窓口として企画に携わって頂きました。ここでも前述の水野先生同様に、MEMSの加工技術をあらゆる産業に応用することに力点を置かれ、多くの成果を出されるとともに、富山県の関連産業との強い連携が伺えました。特に最近の研究成果として、異分野研究者との協働にてシリコン細胞チップを作成し、この細胞スクリーニングに利用する研究では海外の研究機関と連携を図る等、国際的な取り組みもされています。MEMS技術を幅広く応用して行くことで、地域社会や異分野、更に国際連携へと広がりのある活動をダイナミックに展開されていることに深く感銘を受けました。更に株式会社オーギャの水島昌徳代表取締役
から「最先端技術を武器にした地域発ベンチャー:「静電容量型フレキシブル触覚フィルムセンサの開発」の話題提供がありました。このオーギャによる技術も、真正面からシリコンMEMSデバイス・センサー企業と競争するのではなく、MEMS加工技術を使って様々な材料を組み合わせて、安価で高性能な接触センサーを開発し、このセンサーを、ロボットハンドを始め今後の新たしい分野へ展開する構想です。このセンサー開発と事業化には、地域性の高いベンチャー産業支援を受けて、更に技術に磨きがかかっています。
MMCからの報告では、産業交流部の今本浩史氏から最先端MEMSを用いた「スマートモニタリングの状況とセンサネットワークへの展開」と題して、現在行われているセンサーネットワークシステム開発の概要説明がありました。また、MEMS協議会およびMNOIC事業の三原から「MEMS協議会、および最先端・大口径の産総研(つくば)・MEMS研究施設を活用した研究支援サービスMNOICのご紹介」、更に直前になってプログラムを一部変更しましたが、BEANS技術研究センター・出井敏夫から「BEANSパテントショップのご紹介」がありました。MMCでは、MemsONEも含めて過去に行った国家プロジェクトの成果を、有効に使って頂く為の様々な取り組みを行っていますが、BEANSプロジェクトの成果普及、特に「国家プロジェトで出願された特許を、維持管理しながらそのライセンス先を探す」と言うこれまで見られなかった活動をしています。また広報担当・内田和義から、「ナノマイクロビジネス展のご案内」がありました。
写真7 富山県工業技術センター 小幡氏
写真8 オーギャ 水島社長
写真9 オムロン・貫井氏
最後のセッションとして、「ファンドリーサービス産業委員会企業からの報告」と題し、ファンドリサービス産業委員会・委員長の貫井晋氏から、「オムロン MEMSファンドリー紹介」、更に「ファンドリーサービス産業委員会企業からの報告」と題し、今回のMEMS講習会の意義も含めて紹介をさせて頂きました。
今回は、年度末の忙しい中、また富山県と言う遠方にも関わらず、首都圏や関西圏も含めて多数の方々にご参加頂きました。関係者も含めて45名の参加者があり、中規模のセミナールームが満杯なる盛況ぶりでした。
また翌日は、富山県工業技術センター中央研究所が主催する施設の見学会が開催されました。この見学会では、今回のイベントの調整をして頂いた企画管理の土肥義治部長に、施設のご説明やご案内を頂きました。最初に富山県工業技術センターの概要説明があったあと、富山県工業技術センター中央研究所のMEMS関連施設、及び富山県ものづくり研究開発センターの見学でした。富山県の地域性が生かされた施設であると同時に、日本の工業技術センターでも此処しかない最先端施設(汗の出るマネキンとその評価設備や、大型電波暗室等)も多数あって、この工業技術センターの充実ぶりや活力を感じることができました。改めて、富山県工業技術センターでお世話になった方々に感謝したいと思います。(MEMS協議会 三原孝士)
写真10 富山県工業技術センター 土肥部長による見学会説明
写真11 電波暗室での集合写真
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