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2013年11月12日 (火)

第21回MEMS講習会を開催(2013年10月28日)

 2013年10月28日に一般財団法人マイクロマシンセンター(MMC)新テクノサロンにて第21回MEMS講習会「製造業における製造装置・設備のためのMEMSセンサとセンサネットワーク、それらを用いたモニタリングとメンテナンスの現状、課題とセンサへの期待」を開催致しました。

 今回は会場として、MMCの7F(MMC事務局の階上)に新テクノサロンを設置して初めてIm01
同会場での開催です。新テクノサロンは普段は委員会や打ち合わせに利用しますが、仕切りを取って講演会場として使用すると60名まで入れる大きなセミナールームになります。さて今回のテーマは「製造業におけるMEMS」を意識してのテーマ設定を致しました。テーマ設定の趣旨を説明しますと、MEMSセンサ、それらを使ったセンサネットワークは、今後の社会課題を解決するためになくてはならない「ソーシャルデバイス」として、近年急速にその注目度が上がっています。その中でも特に社会インフラのモニタリングやメンテナンス、農業や畜産、さらに医療や健康領域での社会課題を、これらを用いてどのように解決するかの議論や取り組みが重視されています。一方では日本が長年優位に進めて来た、製造業の製造設備や装置に関しても、これらと同様にセンサ、センサネットワーク、IT技術を用いた更なる活性化が必要になっています。
 本講習会は、この課題に関する議論を(独)産業技術総合研究所にて日々問題意識をお持ちの研究者の方々と、本分野で具体的な活動をされている企業の方々にご参加頂き、最新動向や課題・その将来を紹介して頂くとともに、関係者の方々との交流を深めて、今後の同分野の技術開発の加速に繋げていく布石になればと思い企画致しました。

 最初にMMC専務 青柳による主催者挨拶のあと、課題提起講演として(独)産業技術総合研究所・集積マIm02イクロシステム研究センター長 前田 龍太郎氏から「製造のグリーン化と強靭化を目指すセンサネット技術」と題し、現在のセンサー、センサーネットワークの活動内容を産総研の研究内容や、国/NEDOプロジェクトであるグリーンセンサネットワークシステムの事例を引用した内容でした。また最後にMEMSの製造業としての今後のあるべき姿に関して課題提起がありました。

 そのあと、【特別講演】として産総研ナノエレクトロニクス研究部門 、ミニマルファブ技術研究組合の原史朗氏から 「生産革新としてのミニマルファブ ~ 概念と開発状況、センサー等デバイス生産への可能性」と題する講演がありました。ご存知とは思いますが、ミIm03
ニマルファブは今までの半導体やMEMSの生産設備とは対極のシステムです。特に半導体はメガファボと言われるように5000億円の工場を建設しなければ世界に対応できないと言われています。これに対しミニマルファブで構成された装置群を用いれば2から3桁少ない投資で済み、また使用する材料や電力等も大変少なくてすみます。原氏によれば現在の大規模LSI工場であっても、顧客の様々な要求を満たすために非常に多種類の製品を出荷しており、このために効率を落としているとのことです。
 また製造チップ個数とチップ単価の関係を製造工場のウェハーの大きさでプロットすることで現在の半導体ラインでは1万個x 1万円の逆数の関係に或ことを整理され、ミニマルファブではこの関係を2桁下げることが出来てチップ生産数が100個であってもチップ単価を1万円以下に抑えることができることを示されました。更に集積マイクロシステム研究センターとの共同研究によって、実際のPZT圧電素子を用いたカンチレバーを、ミニマルファブを約30%使って作成することに成功したとのことで、いよいよ現実のものとなりつつあります。

 このあと、「企業の取り組み、製造装置・設備におけるセンサの現状とその必要性」と題して5つの講演を行いました。最初はオムロン(株)PMEMSプロジェクトの積 知範氏から「工場設備のモニタリングのためのセンサ、センサーネットワークの現状、課題とその将Im04来」でした。オムロンはクリーンルームの省エネのために温度や湿度、パーティクル等のデータと空調の制御を統合化して多くの実績を上げていることは既に広く知られていますが、今回の講演では特に重要なセンサである、MEMSフローメータの説明でした。フローセンサは熱容量の少ない精密な温度計とマイクロヒータを組み合わせるMEMSが最も活躍できるデバイスです。更に2次元赤外線センサを用いたセンサ等の紹介もありました。単なるセンサ素子開発に留まらず、回路やシステム、利用方法に関する紹介もありました。

 次は横河電機(株)イノベーション本部の磯崎克己氏から 「製造プロセス管理・制御におけるセンサ、センサネットワークの現状、課題とその将来」です。MEMSの研究者であれIm05ば誰でも知っている横河電機の真空パッケージMEMS振動素子を用いた圧力センサーは高い信頼性を持っていることから産業用に幅広く利用されています。今回は化学工場に使い無線センサーシステムの紹介です。化学工場では防爆と信頼性で特に注意が必要ですが、防爆や安全性にはセンサーを完全にシールドして可燃性ガス等から内部の電子システムに触れさせない工夫です。また信頼性に関しては、特に無線システム特有のデータ欠損や不安定性を取り除くために、センサー、送信、受信、制御コンピュータを全て二重化してあるとのことです。最後の工場等の生産管理に特有のシステムの特徴と10年を超える長い付きあい、更に世界標準に基づいたインターフェース等の必要性を報告して頂きました。

 次は(株)ティ・ディ・シー  取締役・企画営業推進 赤羽 優子さんから「精密機械加工技術のMEMS応用への期待」です。ティ・ディ・シーはウェハーやガラス基板を含む研磨Im06
サービスを行う社員60名の比較的小規模の企業ですが、その技術力は国内外から高く評価されています。その成功の秘訣は「失敗を恐れず、とにかく顧客の要求に沿って試行して見る」とのことです。これによって、1ナノメートル以下の超高精度のナノ表面を研磨すると同時に、その評価のために世界最大水準の計測器を揃えています。更にどんな物体でも、どんな材料でも研磨するという姿勢から多くの研究者から高い信頼を得て、最も小さいものでは一辺が10マイクロメータの立方体、更にJAXA はやぶさ2プロジェクトでも使用されているとのことです。日本のこだわりの精神が生きた素晴らしい企業であると感じ、元気を貰った気がします。

 みずほ情報総研(株) サイエンスソリューション部 岩崎 拓也氏から「シミュレーションツールを駆使したCO2見える化の現状、およびセンサネットワークにおけるビッグデータ処理」です。ご存知のように環境負荷の大きな指標であるCO2放出量(算出量)は研究開Im07
発から試作・量産・デリバリまで統合的に管理されなければ地球規模の継続的な安定と成長の達成はありえません。しかしこのCO2を計算すること、予測することは大変な労力を要します。特にMEMSの様に複雑な製造プロセス、多種多様な薬品等を使う場合はモデル化、データベース化が不可欠です。今回はMEMSの製造におけるCO2の算出システムの紹介と、その実施結果が報告されました。シリコン深堀、金属のドライエッチ、ウェハー洗浄等がCO2の排出が大きいとのことです。

 また(株)東芝 電力システム社 浅井 知氏から「溶接自動化システムにおけるモニタリングの現状、課題と将来」という講演を頂きました。溶接という古くから産業の基礎となるIm08
技術ですが、科学的な管理や制御は困難で自動化が進まない領域です。これに様々なセンサ技術を組み合わせて自動化を推し進める研究です。まず素人でも判るように溶接の原理と課題から始め、センシングの項目や現状の手段を説明して頂きました。溶接の場合は施行部位の表面を視覚的に捉える必要があるので、表面の観察のためCCDカメラの利用、光学手段による断面の推定、更にレーザ励起による超音波診断等が使われています。これらの手法は現在注目されているインフラ系のモニタリングに通じるものがありますが、溶接の場合は遥かに精緻であり、高い品質が求められます。更に設計やシミュレーションデータとの比較や再シミュレーションとの連動と言った高度な技術が必要で大変貴重な講演でした。

 最後に恒例の活動紹介としてファンドリーサービス産業委員会の貫井 晋委員長から、「MEMSファンドリーサービス産業委員会活動紹介」があり、この中でMEMSファンドリーサIm09
ービスのワンストップソリューションであるMEMStationにてMNOICとの連動の紹介がありました。これは従来からMEMStationへの問い合わせに開発行為が伴う場合が多いことに対応するもので、今後は研究開発案件にも積極的に答えていきたいと思います。
講演会の後、ネットワーク交流会を開催しましたが、その準備の間の20分を使ってMEMSファンドリネットワーク企業によるポスター報告会を行いました。
 以上、今回のMEMS講習会は明確なテーマを決めて、産総研と企業の関係者による講演会を中心に設定致しました。(有料)参加人数は40名で、講師やスタッフを含めて60人の規模でした。MEMSやセンサを取り巻く外枠まで含めた中身の濃いセミナーであったと思います。参加者からも(普段は聞けない内容が多くて)好評の声が多く、今後の企画の参考にしたいと思います。
 (MEMS協議会 三原 孝士)

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