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2013年8月

2013年8月26日 (月)

IEC/TC47/WG6日韓会議(8月22日)

P8220001a_2  IECで半導体デバイスを担当するTC47では、半導体デバイスに関連する国際標準化を分野に応じて傘下の分科委員会(SC)で担当していますが、既存のSCの枠にとらわれない新しい分野の提案に対応する分科会(WG6:Incubating WG)を設け、議論を行っています。現在、人体通信及びエネルギーハーベスティングの分野で規格案が審議されていますが、この分科会の主要メンバーである日本と韓国の2カ国で、10月にロンドンで開催されるTC47会議(ロンドン会議)に向けて会合し、提案内容の充実化を図りました。会議には韓国5名、日本4名の計9名が出席しました。
 会議では開催宣言、参加者の自己紹介、議題確認の後、具体的な規格案の内容及び今後の予定などについて議論が行われました。審議中の案件では、人体通信に関する3件の提案に関して、プロジェクトリーダのDr Kang SungWeon(韓国)より各国コメントに対する修正案についての説明が行われました。P8220004a_3 また、エネルギーハーベスティング関連では、圧電型振動発電デバイス及び電磁誘導型振動発電デバイスの2件に関し、プロジェクトリーダProf Park JaeYeong(韓国)より各々修正案説明の後、活発な意見交換が行われ、10月のロンドン会議では各々次の審議段階(CD)への移行を諮ることとしました。また、熱電型発電デバイスに関して、プロジェクトリーダのDr Ryu HoJun(韓国)より次の段階(CD)に向けて修正案の説明が行われました。
 各規格案に対して、マイクロマシンセンターの竹内南主任研究員(SC47F国際幹事)より、IEC規格案文書に用いる用語及び用法について、具体例を挙げながら説明が行われました。
 次回会合は10/8に英国・ロンドンで行われるTC47/WG6会合ですが、再会を約束して会議を終了しました。(調査研究・標準部 出井敏夫)

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2013年8月21日 (水)

NEDO委託事業「社会課題対応センサーシステム先導研究」合同研究会(キックオフ会議)開催

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託しました「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト(④研究開発成果等の他分野での先導研究)社会課題対応常時・継続モニタリングシステムの開発」の第1回合同研究会(キックオフ会議)が8月5日(月)にNMEMS技術研究機構会議室において開催されました。本合同研究会には、経済産業省研究開発課桑山調整官、産業機械課横山課長補佐、NEDO技術開発推進部久木田部長をはじめとする御来賓の臨席を賜り、プロジェクトに参画する①社会・産業インフラ分野、②農業分野、③健康医療分野の3分野の研究者、再委託先の研究者及び事務局を含め総勢93名が参加しました(図1合同研究会会場の様子)。

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図1 合同研究会会場の様子


 技術研究組合NMEMS技術研究機構の今仲理事長の開会挨拶、経済産業省殿及びNEDO殿からの御来賓の挨拶の後、本プロジェクトの研究責任者である下山先導研究センター長からのリーダ方針説明、業務管理者の武田技術開発推進室長からのプロジェクトの進め方の説明がなされ、その後参加者全員から自己紹介とプロジェクトへの意気込みの表明がなされました。下山センター長の方針説明では、本プロジェクトの概要および体制の説明の後、ユーザ機関と連携して真の社会課題を抽出するとともに参加機関が連携して真の社会課題を解決する革新的技術に基づいたセンサーシステムの開発目標、仕様ならびに期待できる効果を明らかにして、MEMSの産業化に貢献しようとのリーダ方針が出されました。今後、原則隔月1回開催するリーダ・サブリーダ会議で全体の方向性ならびに分野間の整合を図りながら、月1回開催する分野毎の研究会で目標達成に向けプロジェクトを推進することを確認して、合同研究会を閉会しました。また、合同研究会の終了後、引き続き交流会(図2交流会の様子)を開催して、3分野の研究者間で活発な意見交換がなされました。今後得られました成果に関しましては、適宜発表していきたいと存じますので、御期待下さい。


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図2 交流会の様子


 社会課題対応センサーシステム先導研究HP
          (NMEMS技術研究機構 武田 宗久)

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2013年8月20日 (火)

MemsONE実習講座の開催報告及び開催案内

MemsONE の使用方法を学習する「MemsONE実習講座」の関東第1回基本操作コースを7月12日(金)に、関東第2回解析コースを8月9日(金)に開催しました。 第1回の基本操作コースでは、定員5名のところ大学生3名が受講されました。 第2回の解析コースでは、同じ大学の先生と学生の計5名が受講されました。 解析コースは、受講者が学習したい2機能を選択できる仕組みを採っているため、1回の開催では4~5機能が限度です。 このために定員を3名としています。しかし、当大学の希望される解析機能が3機能であることから、5名の受講を許可しました。 各実習講座終了後のアンケート結果からは、受講者の殆どが良く理解できた、役に立ったとの回答が得られました。

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          <<関東第2回解析コースの開催風景>>

第1回までは、別建物の会場を利用していましたが、第2回からは、当センター7階の新テクノサロンに会場を移して開催しました。

直近の関東での講習会として、下記を予定しておりますので、ご興味のある方は是非ご参加ください。 受講者1名でも開催致します。

◆関東第3回基本操作コース:    平成25年9月13日(金)

◆第1回MEMS設計解析基礎実習: 平成25年9月27日(金)

詳細・お申込みは、http://www.mmc.or.jp/mems-one/ の「講習会案内」を参照ください。

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2013年8月 9日 (金)

「ナノマイクロビジネス展2013」 TIA N-MEMSシンポジウムMEMS協議会フォーラム開催(2013年7月5日)」

世界最大規模のマイクロマシン/MEMSの総合イベントである「ナノマイクロビジネス展2013」(東京ビッグサイト)の中で、MEMS協議会が主催する同時開催プログラムとして国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムとMEMS協議会フォーラムがあります。2010年からMEMS協議会がTIA(つくばイノベーションアリーナ)のTIA N-MEMS WGの事務局となってから、MEMS協議会フォーラムをTIA N-MEMSシンポジウム(TIAつくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点運営最高会議の後援)として開催しています。本シンポジウムは、MEMS産業の発展を目的にMEMS協議会が主催する関連諸活動をご紹介し、会場参加者へのPR、意見交換の場を提供するものです。今回は2つのセッションで構成され、セッション1「TIA N-MEMS 最新状況と、オープンイノベーション」セッション2「MEMS産業動向・技術動向」と致しました。最初にTIA N-MEMS WGの委員長で、MEMS協議会・推進委員会副委員長の唐木幸一から開会の挨拶をさせて頂いたあと、本セッションに入りました。

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写真1 フォーラム会場の様子

セッション1は、一般財団法人マイクロマシンセンター・MEMS協議会が提供する研究支援サービスであるMNOIC(マイクロナノ・オープンイノベーションセンター)を中心としたオープンイノベーションの現状と紹介です。最初に基調講演として東京大学生産技術研究所 藤田博之教授から「皆で拓くナノテクMEMSの新産業:オープンイノベーションとTIAへの期待」という題目で、MEMS分野の第一人者としてオープンイノベーションの重要性とTIAへの期待を講演して頂きました。講演の内容としては、最初にMEMSの市場動向としてMEMS産業が約13%の年率成長が続いており、2017年には2兆円に達する成長産業であること、最新のTransducers2013の国際会議の報告として、研究の傾向がバイオとセンサーネットワークに移っていることの紹介がありました。今回の論点であるオープンイノベーションでは、海外の例、例えば企業パートナー350社を持つ米国Albany、250社のフランスMINATEC、600社以上のベルギーIMECを例にあげ、海外での成功例のポイントとして、必要な技術を外部に求め、また大学の技術を重視する姿勢が重要であることを強調されました。また特にTIAでは世界的に戦える施設を有効に使って、研究開発から初期生産まで視野にいれるべきとのコメントがありました。

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写真2 基調講演 東京大学生産技術研究所 藤田博之教授

続いて、産総研・集積マイクロシステム研究センター 前田龍太郎研究センター長から、TIA N-MEMSの研究拠点である集積マイクロシステム研究センターで開発中の世界最先端MEMS技術の紹介がありました。産総研(つくば)にあるTIA N-MEMS研究拠点は、わが国でも最先端のMEMS研究施設や研究者が集積している場所です。MNOICはその研究センターとの共同研究契約を交わして、技術開発を行いながら産業界ユーザへの研究支援を行っています。この大きな利点として産総研・集積マイクロシステム研究センターで研究開発された設備やノウハウが毎年のように完成し、成熟しています。その最新の研究テーマを、「MNOICが産業界の皆様のために研究支援を行う」という大変良い好循環ができています。事実2012年度は常温接合技術とナノインプリント技術と言う2つの技術が新たにMNOIC研究支援の対象になりました。これらを踏まえて今回は、その研究センターで行われている最先端の技術をご紹介頂き、今後MNOICで支援可能となる技術を予測して貰いました。特に大口径8インチウェハーに良質なゾルゲルPZT薄膜を自動的に重ね塗りが出来る装置が注目されます。成膜された薄膜はウェハー内の均質性も大変良く、既に多くの試作デバイスができています。またナノインプリント装置では、装置が大掛かりになる真空を使わず、ガスの凝縮を用いて微細パターン転写時に起こりがちなバブルを抑える方法の紹介がありました。

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写真3 世界最先端MEMS技術の紹介 前田龍太郎研究センター長

このセッションの最後に、MEMS領域における日本で始めてのオープンイノベーションセンターMNOICの紹介を「TIA N-MEMSの最先端設備を活用したMNOIC(オープンイノベーションセンター)の紹介」としてMNOIC開発センター・センター長、荒川 雅夫から行いました。MNOICも3年目を迎え、安定した確実なサービスが出来るようになって、有る程度の固定客も増えてきました。年間を通じて常時使っていただけることで経営の安定化と技術やスキルが確実に伸びて行きます。また昨年は殆どなかった仕様書ベースで研究委託を行う案件も増えています。今までは研究支援のできる研究施設のご紹介が主でしたが、最近では「MNOICでどのような加工が可能か」と言った具体的な事例をご紹介出来るようになってきました。


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写真4 オープンイノベーションセンターMNOICの紹介 センター長 荒川雅夫

2つ目のセッションはTIAやMNOIC以外のMEMS協議会の活動の中で、調査研究事業と、標準化事業を中心に皆様に報告する「MEMS産業動向・技術動向」です。最初にマイクロマシンセンターの特別研究員、阪井淳から、「MEMS産業動向:今後のMEMS産業!これで決まり-マイクロ/ナノ革新デバイスの産業動向調査」です。産業動向調査委員会の報告で、これまでMEMSの市場動向の調査を行っていますが、2013年度は社会や産業界にとってインパクトの高い革新デバイスを取り上げ、これを題材にして産業界の取り組みを調査し、その将来性を予測しようとするものです。最初に最近の世界の企業動向と、その中での日本の位置づけがあり、日本はゲームやスマホ向けのセンサでは出遅れ感があるが、旧来から行って来た物理・磁気センサやMEMS等では高い市場を持っているとのこと。また新規に現れている革新デバイスでは、スマホに搭載される高性能で安価なコンボセンサ(集積化センサ)、MEMSマイクロフォン、MEMSアクチュエータを使ったMEMSオートフォーカス付画像センサーモジュール、更に海外で研究の盛んなガスセンサ、マイクロTASやバイオ流路の紹介でした。

 

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写真5 マイクロマシンセンター特別研究員 阪井淳

 

続いて、国内外技術動向調査委員会の委員長である、早稲田大学 庄子習一教授から「MEMS技術動向:MEMS関連学会より最新技術動向を見る」との報告がありました。特に最新動向として台湾・台北で開催されたMEMS2013で発表された論文(口頭、ポスター)の傾向に関する発表がありました。アジアでの開催のため、日本を含むアジアからの発表が多かったのですが、米州、日本、アジア、欧州の順に発表件数が多く、研究件数や発表の品質に関しては、まだまだ日本のステイタスは高いものです。また発表の機関別にみると東大・台湾の国立清華大、東北大、シンガポールのナンヤン大、米国のミシガン大の順です。東大や東北大は世界的に見ても有数の研究センターになっています。また地域別にみると、RFは米国、材料を駆使したセンサや細胞を扱うMEMSは日本、材料はアジア、光学は欧州が強いと思われます。

 

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写真6 国内外技術動向調査委員会・委員長 早稲田大学 庄子習一教授

 

続いて、標準化関連委員会・委員長で、帝京大学の大和田邦樹教授から「MEMS国際標準化最新動向、高まる重要性とビジネス活用」という題目でMEMSの国際標準化が進められているIECの動向について報告がありました。標準化に関するITCやSC47Fの紹介のあと、国内の標準化の組織と、MEMSにおけるわが国の規格開発の戦略が、用語集から試験評価法、デバイスや機器に広がりを見せているとのことです。薄膜材料の引っ張り試験、薄膜材料疲労試験の紹介があって、最後にMEMS国際規格のビジネス活用の方法や、今後の取り組みがありました。

 

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写真7 標準化関連委員会・委員長 帝京大学 大和田邦樹教授

 

本セッションの最後として、(株)数理システムの望月俊輔様から「MEMS設計解析ソフト「MemsONE」を用いた、機構と回路の混在解析」がありました。このMEMS協議会フォーラムでは毎回MemsONEのご紹介をしていますが、回路解析やその混在解析をご紹介するのは初めてです。MemsONEはMEMSの設計、機構解析、プロセス解析と全く同じグラフィカルインターフェースのもとで統一的に処理可能なMEMS統合化システムですが、特に回路解析や、MEMSの要素部品をあたかも抵抗やコンデンサーのように結線・組み合わせて解析できる構造解析-回路解析エンジンを持っています。今回の発表ではMEMS部品の構造パラメータを自由に振りながら最適化設計が可能な連成解析ツールMEMSpiceと、三次元MEMS構造を回路シミュレータに繋げるマクロモデル抽出ツールの紹介がありました。構造解析になれた方には最初は違和感がありますが、慣れてくればかなりの規模のMEMS構造体を瞬時に機構解析でき、しかも回路シミュレータと連携できる点で画期的です。

 

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写真8 (株)数理システム 望月俊輔様

 

 このTIA N-MEMS MEMS協議会フォーラムは終始大勢の聴講者にご参加頂きました。立ち見、或いは会場の隣接したラウンジで聴講された方を含めると参加者数は約250名でした。唐木WG委員長を始め、スタッフ一同、このMEMSの産業推進に関し皆様の関心の高さを改めて実感したとともに、多くの方々にご参加頂いたことに感謝致します。来年は時期、場所ともに変更になりますが、来年に向けて更に充実した企画をして行きたいと思いますので、ご気軽にご意見を頂ければと思います。(MEMS協議会事務局 三原 孝士)

 

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2013年8月 7日 (水)

「ナノ・マイクロビジネス展2013」国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム開催(2013年7月5日)

 既にこの「MEMSの波」で速報としてご紹介していますが、世界最大規模のマイクロマシン/MEMSの総合イベントである「ナノ・マイクロビジネス展2013」(東京ビッグサイト)が好評のうちに終了しました。また幾つかの併設イベントをMEMS協議会が中心になって実施しました。この中でも、19回と言う長い歴史を持つ「国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム」は、(同時通訳もついて)世界のマイクロマシン/MEMSの産業および技術動向を得ることが出来る絶好の場となっています。今回もシンポジウムの方向をMEMS協議会・国際交流委員会の委員長である、東京大学・下山勲教授(本シンポジウムのチェアマン)を中心に議論を重ね、「社会課題対応センサーシステム(インフラ・医療・農業)の現状と未来」と題したテーマで、日本が直面する社会課題を解決するために必須なMEMSセンサーとそのセンサーネットワークシステムに関して、国際的な視野で話題提供を行うことを目的にプログラムを作成しました。この背景には、社会課題先進国である日本において優先順位の高いソーシャル技術としてのセンサーやネットワーク技術が近年急速にクローズアップ・重要視されて来たことがあります。

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写真1 会場の様子

 

 本シンポジウムでは技術研究組合NMEMS技術研究機構、今仲理事長の挨拶に続いて、経産省・須藤産業機械課長からご来賓のご挨拶のあと、2つの特別講演と3つのセッションを行いました。特別講演は「社会を変えるセンサーネットワークシステム」として、海外と国内からそれぞれ1件の講演でした。 

 最初の講演は、欧州Guardian Angels(GA)プロジェクトのChair and CoordinatorであるスイスNanolab, EPFLのAdrian M. Ionescu教授です。GAプロジェクトはスイスEPFLの主導する先導研究プロジェクトでエネルギーハーベストデバイスと超低消費電力デバイス、MEMSセンサー、ナノデバイスセンサー及びそのセンサーシステムを用いて、ゼロエネルギで見守りシステムを構成するとともに、様々な応用に向けて実用化させようとするものです。ここで「何故スイスのナノテク研究の総本山であるEPFLが主導するか?」ですが、このプロジェクトのゼロエネルギ-動作を実現するために、様々な超低消費電力動作ナノデバイスの研究が含まれていることです。例えば、トンネルトランジスターやナノシリコンセンサー、CNTやグラフェンセンサー等です。GAはスイス、欧州(ECや北欧)、アジアや米国、世界を代表するデバイスやMEMS企業、システムや応用先企業が参画しています。また成功のための4つの技術は、1)高効率な処理と通信技術、2)超低消費電力センサー、3)高効率エネルーギーハーベスト、4)エネルギー志向ソフトウェアの4点とのことです。またデバイスの研究者らしく、センサーシステムの電力を決めるのはセンサー感度とADC(アナログデジタル変換)の効率で、現在の100倍の効率化と1変換当たり10フェムトジュールを目指すものです。(現在は1変換あたり、1ピコから1ナノジュールが必要であった。)

 

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写真2 スイスEPFL Adrian M. Ionescu教授

 

 

続いて、特別講演2「社会を変えるセンサーネットワークシステムの未来」として、東京大学 大学院情報理工学系研究科の下山勲教授から、非常に幅広い内容を含む講演がありました。最初に日本の長期的な人口推移として西暦800年から現在まで、および現在から2100年までの予想参考データを出され、2100年にはピーク時の半分に人口が減ると同時に、3人に1人が高齢者となってしまい、今後100年は経済活動を含めて大きな変化が起こるであろうことです。特にその中で老朽化したビルや橋、トンネル等の「社会インフラを如何に整備するか?」が大きな社会課題であり、効率的なモニタリングを行うことで、現在の社会インフラを長持ちさせることが重要であるとの講演でした。更にセンシングとしても新規な技術が出初めており、例えばカンチレバーを使った歪みや圧力センサー、アコースティックエミッションの利用等でです。

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写真3 東京大学 大学院情報理工学系研究科 下山勲教授

続いて、インフラ・医療・農業に対応する3つのテーマを議論するためのセッションです。最初のセッション1は「社会インフラ対応センサーシステムの現状と未来」と題して、東京大学・社会基盤学専攻 藤野陽三教授から「社会インフラ(橋・道路等)に於けるメンテナンスの重要性とセンサーへの期待」と題した講演です。藤野先生は橋の構造解析、強度解析の専門家ですが、社会インフラの管理、整備を科学的に捉えたインフラマネージメントの立場からセンサーやセンサーネットワークへの期待が講演されました。その中でも、どのようにモニタリングして整備に役立てるかとの課題に、モニタリングの2つの方法、移動型インフラモニタリング、および埋め込み型インフラモニタリングの現状と特徴、課題が時に興味ある内容でした。ここで、移動型モニタリングは、広大な国土を持つ地域では特に重要です。

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写真4 東京大学 社会基盤学専攻 藤野陽三教授

 

本セッションの海外からのご講演は、University of California, Berkeley 、Berkeley Sensor & Actuator CenterのAlbert P. Pisano教授「Sensor Cluster for Public Infrastructure」です。本講演では、耐環境デバイス、センサーの技術開発を中心とした話題です。耐環境デバイスは地熱発電等の特に高温・多湿、或いは様々な化学物質の環境中での動作だけでなく、高速で走る車のタイヤ(高温で常時高い圧力や摩擦を受ける環境)、車のエンジンルーム(高温・騒音)、環境モニタリング用のデバイス(例えば地滑り感知用のロッド)等様々な場所で使用できるものです。最も厳しい場合は電気炉やガスタービンの中に組み込む場合もあります。 更にこれらのデバイスはSiCや化合物半導体だけでなく、白金系の金属やセラミック等の耐熱・耐久性材料が必要です。またデバイスは比較的シンプルなものが確実に動作すると思われます。更にこれらは単純であるためにシリコンを用いた常温デバイスに比較すると信号量も小さく、高い回路技術が必要となります。


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写真5 BSACのAlbert P. Pisano教授

セッション2は「医療・ヘルスケア対応センサーシステムの現状と未来」と題して、日本側として自治医科大学、内科学講座循環器内科学部門 、苅尾七臣主任教授から「24時間血行動態モニタリングシステム:臨床的有用性と今後の展望」と題した講演でした。先生のご講演は血圧の常時モニタリングの現状と、その重要性およびその将来です。血圧の常時モニタリングで特に重要な時間帯は、朝の10時前後と就寝時とのことです。血圧は、心臓が必要な酸素やエネルギーを、その心身活動の状態に応じて変化させるために必須な制御システムです。このため外部環境や精神的な変化の影響も受けやすいのですが、朝の時間帯と就寝時の血圧は、特に心臓や血管と言ったハードウェアの状態を顕著にモニター出来て、循環器疾患の把握に非常に重要とのことです。しかしこのような重要な認識があるにも関わらず、連続計測装置が比較的大掛かりで装着感もあるため、常時モニタリングは十分に浸透していません。もしMEMSを用いて小形化され、業務中や就寝中等、何時でも何処でも計測できれば、これまで判らなかったような心疾患の形態を更に詳細に評価でき、成人から高齢者の健康管理に役立つとのことです。

 

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写真6 自治医科大学 苅尾七臣主任教授

 

本セッションの海外からのご講演は、CEA-Leti フランスSilicon Components DivisionのAndré ROUZAUD副VPから「MEMS and Sensors: Some Expected Trends in Medical and Quality-of-life Applications」です。最初に医療マーケットへ向けたMEMSビジネスの概要説明がありました。MEMSを含むセンサーは医療や健康領域で様々な場所で使用されています。また医療全体では全世界で大きな伸びが期待される領域です。しかし医療へ応用を考えると幾つかのハードルがあって、第一は規制や認可の問題、第二は標準化の欠如と、信頼性の確保とのことです。規制に関しては「Continua Health Alliance」という国際的な医療産業団体を組織化して、遠隔医療を中心とした個人健康システムの確立を目指しています。また技術的な進展としては、シリコン上のピエゾ素子によって作成されたマイクロポンプを用いて、分解能150ナノリットルで200毎分マイクロリットルの性能を持つマイクロポンプを作成し、ドラッグデリィバリーシステムを構成した例、6種のイオンセンサーを用いて生体内イオンのリアルタイムモニタデバイスを作成し、人工腎臓、人工肝臓、ポイントオブケアシステム等に利用する例、更に人体表面につけてリアルタイムで汗の成分分析を行う例、アッセイと化学発光を用いた生体マーカ検出を用いたインビトロ診断器、スマートバンドエイドという化学発光の変化を用いて感染症を検出可能なフィルム等の紹介がありました。また環境分析においては、蛍光分析とイムノアッセイを用いた水質汚染分析装置、ナノシリカ材料を用いた超感度揮発性有機物質(VOC)センサー等でした。

 

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写真7 CEA-Leti フランスのAndré ROUZAUD副VP

 

「農畜産業に於けるセンサーネットワークの現状と未来」を議論する最後のセッション3では、最初に海外からの講演としてオランダ大使館・Paul op den Brouw科学技術参事官から「Sensors and sensor networks in high-tech horticulture(plant factory) in the Netherlands」でした。ご存知のように欧州の先進国は農業大国でもあります。特にオランダは狭い国土、農業環境としても低温で日照時間が少ない、しかも農業人口が少ないという悪条件にも拘えらず、農業輸出額はアメリカに次ぐ規模で国際競争力のある農業産業を形成しています。その秘密の一つが「スマートアグリ」、すなわち農業スキルがIT技術によって蓄積され、温度、湿度のセンシング項目、養分その他の情報がセンサーネットワークと連携して自動化させて管理・制御され、更に省エネで再生可能エネルギーなども利用しながら、 (植物工場に代表される)高度に自動化された農業技術を有効に使っていることです。これらは農業に新たな産業革命をもたらす技術と言われています。今回のBrouw科学技術参事官(ご自身も学位をお持ちです)のご講演は、特にスマートアグリに必要なセンサー技術を紹介され大変興味深いものでした。必要なセンシング項目を、その環境変化に応じて、高速(秒から時間単位)応答、中速(時間から日単位)応答、低速(数日から月)に分けて、その観察対象とセンサー手段に分けて分類されています。高速センシングではCO2の濃度、ライシメータや赤外分光による温度変化、また中速センシングでは葉脈フロー、成長状態、顔料分析等、長期センシングでは画像解析、分光解析、土壌を含む栄養分析等です。植物工場では、センシングの対象は極めて幅広く、気象状態(風速、温度、も含む)も含まれています。基本は単位セクション(5000m2)に1個配置されている計測Boxに贅沢にもPt100温度計と相対湿度計、赤外吸収を用いた二酸化炭素センサー、(この二酸化炭素の量は農産物の成長に大きな影響を及ぼすようです)また農園ハウスにおいては温度や湿度を2次元分布で見るために多数のセンサーを配置して計測します。また水の管理や肥料の適正量を計測・制御するのは大きな問題です。水分料のセンシングは温度補正を行った電気抵抗を用いた方法を使います。それ以外にも農園の特殊なセンサー群も必要です。例えば、植物の色、照度、植物自身の温度、画像や分光器を用いた植物の評価、クロロフィルの蛍光イメージ、ステレオ画像による生育の三次元イメージ、植物のソーティング等・・このように多様なセンサーを使いこなすことで実現されています。

 

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写真8 オランダ大使館・Paul op den Brouw科学技術参事官

 

 日本からの報告は産総研・集積マイクロシステム研究センター 伊藤寿浩副センター長から「畜産業に於ける大規模センサーネットワークの有用性とその展望」でした。最初に鶏舎内の鶏のセンシングでは、1997年から問題になり日本を含むアジアで経済的にも大きな問題になったH5N1ウィルス感染による鳥インフルエンザの対応です。鶏舎内の鶏の体温の変化や動体の変化を温度計やモーションセンサーを鳥につけてできるため早期に発見しようというものです。早期に発見して隔離や消毒が出来れば被害は最小限に抑えられます。次の酪農分野では食用牛では年間120万頭が病気で死んでおり、その内訳は地域を限定して発生する口蹄疫等のウィルス性疾患、呼吸器や消化器の病気が多いとのことです。口蹄疫等のウィルス疾患には直腸の体温を計測して無線でデータ送信をします。感染によって体温が1度程度上がるとのことです。またRumen反芻(はんすう)胃の異常をモニターするためには、胃の内部に導入した小形センサーで、温度と胃の加速度を計測し無線でデータを収集するとのことです。鶏用のセンサーでは、MEMSのピエゾ圧電センサーと24Hzの共振周波数を持つMass付きカンチレバーを用いて5-15Hzの動作を検出し、動作を検出した場合のみシステムの通電を行って無線データ送信を行う1マイクロワットの小形軽量のセンサーノードを構成し、これを鶏につけて運用実験をしているとのことです

 

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写真9  産総研・集積マイクロシステム研究センター 伊藤寿浩副センター長

 

 この国際シンポジウムは終始大勢の聴講者にご参加頂きました。立ち見、或いは会場の隣接したラウンジで聴講された方を含めると参加者数は約250名でした。下山委員長を始め、スタッフ一同、このテーマの重要性を改めて実感したとともに、多くの方々にご参加頂いたことに感謝致します。来年は時期、場所ともに変更になりますが、来年に向けて更に充実した企画をして行きたいと思いますので、ご気軽にご意見を頂ければと思います。(MEMS協議会事務局 三原 孝士)


なお、本セミナーは日経BP社の取材を受け、講演の内容について同社サイトに順次掲載されていますので、ご参照ください。

「社会を変えるセンサーネットワークシステムの未来」 東京大学教授 下山勲
 

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20130716/292429/

「社会インフラ対応センサーシステムの現状と未来」 東京大学教授 藤野陽三
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20130722/293460/
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20130722/293546/

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