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2013年5月16日 (木)

発展を続ける中国・MEMS関連研究所の訪問報告

第19回「国際マイクロマシンサミット」が4月22日-24日の日程で中国・上海市で開催され、その様子をご紹介した「MEMSの波ブログによる報告」は先日行いました。このマイクロマシンサミット参加の後に、MEMSの世界的な研究成果を継続的に出されている、上海と北京の研究所を訪問しました。研究所の名前は、National Key Laboratory of Science and Technology (国家重点实验室)「国家重点科学技術研究所と訳せば良いのでしょうか?」と言う日本では産業技術総合研究所に対応するものと思われます。上海地区は南分室、北京地区は北分室となり、今回はこの2箇所を訪問しました。
上海市でのマイクロマシンサミットを終えてその翌日に、サミットのあった同市内中央部から上海虹橋空港のまでの途中に位置する場所にある研究所を訪問しました。周辺は都市部ですが、一旦門を入ると比較的静かな、古いレンガの建物が残る研究所ですが、MEMS関連の研究所は近代的な高層ビルです。訪問先はDirectorのXinxin Li先生です。私はMEMS共振器を使ったセンサーの研究者でしたので、先生の論文は沢山読んでいます。またLi先生は東北大学の客員研究員もされ、日本の大学や産総研とのネットワークも強い先生です。Li先生は早くから、シリコンカンチレバーにp型拡散抵抗製ピエゾ抵抗素子を組み込んで、そのピエゾ抵抗素子のせん断応力の検出によって共振器の面内振動を使うことで感度を上げる研究をされ、その分野での第一人者です。最近では、センサー技術や加工技術を広げ、RF回路とセンサーを集積したサイコロ型のワイヤレスセンサーを作成して応用を探索、更にエナージーハーベスティングのデバイスを作成されています。これらのデバイスは高精度のイオン注入装置、ホトリソ技術、メタルメッキ技術に加えて相当熟練した回路技術が必要です。特にLin先生の出身、および教授をされている上海大学の講座は電子工学と言うこともあって回路技術の検討も大きな研究項目であるとのことです。この先生のオフィスには実験装置はないとのことです。オフィスビルからシャトルバスで約40分程度走った場所に、実験研究施設がありその中も見学させて頂きました。ウェハーサイズは4インチと大きくはないのですが、基礎研究から有る程度少量生産が可能な非常に沢山の装置がありました。イオン注入装置やレーダアブレーション成膜装置、更に様々なウェットエッチング槽、メッキ装置、ウェハー研磨装置と、MEMSに加えて電子デバイスの開発も可能な施設です。ウェハー接合やパーケージも可能です。また非常に特徴的なのは、同じ研究施設で企業からの派遣技術者が少量生産をしていることです。中国では研究所の施設を用いての少量生産が可能な制度が揃っているとのことです。

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写真 1 上海地区の研究所の雰囲気

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写真 2 National Key Laboratory of Science and Technology入口

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写真 3 Xinxin Li先生

次に北京の研究所を訪問しました。訪問先はDirectorのShanhong Xia先生です。この研究室の組織の名前は同じく国家重点科学技術研究所(北分室)ですが、中国科学院電子研究所(电子学研究所)の中にあります。 場所は北京首都国際空港からタクシーで約1時間、北京中心部から北西に20km位の場所で、中关村(中関村)と言うアカデミア地区にあります。この中关村には清華大学や北京大学を始め数多くの大学や、国立の研究所があります。この中关村の中心は中关村电子一条街であって、北京市海淀区の白石橋路・海淀路・中関村路一帯を指し,電子・コンピューター関係のメーカー・販売店が集中し中国のシリコンバレーと呼ばれています。またこの中心には日本のアキハバラと呼ばれる電気製品の巨大デパート街があることでも良く知られているようです。Xia先生の研究室のある中国科学院電子研究所は北に清華大学、西に北京大学、南に電子・IT地区と最良の場所と言えます。

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写真 4 中国のアキハバラ 中关村电子一条街

Xia先生の研究室は、センサーやトランスジューサを中心とした研究が中心です。先生の研究室の中国語表記は传感技术国家重点实验室ですが、この「传感」はセンシングの意味で、国立の研究所の研究室の名前にセンシングを冠している、即ち中国ではMEMS=センサーと言った感覚で、センサーシステムの研究に熱心であることが判ります。Xia先生の研究室はややバイオチップやマイクロTASに重点化しています。研究室の廊下にパネルや試作サンプルが多数展示してありましたが、血液分析チップ、バイオ診断チップ、マイクロ流路デバイス、ガスセンサー、イオンセンサー、表面プラズモンセンサー等のバイオ系、更に圧力センサー、加速度センサー等が並んでいました。実験施設は歩いて2分の隣接するビルにありましたが、上海地区に比較すると場所や建物の余裕、研究内容から言ってより研究志向の設備が多いものの、規模としてはクリーンルームの広さは500平米と世界水準を凌ぐものです。上海もそうですが、利用者は大学からの利用(学生)、研究所のスタッフや研究員、企業からの研究員と、私が入った時も15名程度の研究者が実験・試作されていたので稼働率はかなり高いと思われます。
別のブログにもご紹介致しましたが、蘇州ナノポリスでは大型研究施設が建設され、今後は本格的なナノテク・MEMS産業が興りそうです。しかし本当に強いのは上海地区や北京地区の、このような重点技術研究所で出た成果をベンチャーや専門企業が、同じ重点科学技術研究所で少量生産して、直ちに事業化する仕組みと制度ではないかと思います。事実最近のMEMS産業調査では既に約15社の中国発MEMSベンチャーが出来ていると聞いています。今回の中国出張で印象深かったことに、夕刻の道路の大渋滞の中でどんな小さな隙間でも見逃さず進んで行くドライバーの姿を見て、個人レベルと国家レベルでの両方の側面から大変なMEMS産業勃興エネルギーを感じました。
なお、今回の中国の研究所訪問には産総研の集積マイクロシステム研究センターの研究者の方々からご紹介を受けたもので、MEMS分野では中国との連携に(人材交流を含めて)長い歴史があります。今までのアカデミア中心から、特に産業界から実りある連携が必要であると感じました。来年のマイクロマシンサミットはブラジル・サンパウロ地区で開催予定です。成長を続けるこれらの国々との連携が重要であることは言うまでもないことです。
(MEMS協議会 三原 孝士)
 

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写真 5 中国科学院電子研究所

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写真 6 廊下に展示してあるMEMS群、一部はスマートホンに入っている。

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写真 7 (左から2番目の)Shanhong Xia先生と一緒に

 

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