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2013年5月15日 (水)

第19回「国際マイクロマシンサミット(2013年上海)」が開催される。


第19回「国際マイクロマシンサミット」が4月22日-24日の日程で中国・上海市で開催されましたので報告致します。マイクロマシンサミットは、1995年にマイクロマシンセンターが世界に呼びかけて提案、第1回を実施しその後継続的に年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/マイクロナノテクノロジーに関する課題などについて意見交換する場です。通常の学会と異なるのは、各国・地域が代表団を組織して集まるというところであり、質の高い、まとまった講演と、影響力のある人々と意見交換できることが特徴となっています。昨年2012年度は台湾・新竹にて開催されたことは既にMEMSの波ブログにて報告しました。
今回(第19回)は中国(中華人民共和国)の上海市で開催され、サミットの会議は4月22、23日、上海地区の研究施設の訪問は4月24日でした。今回のオーガナイザー(General Chair)は中国・清華大学(Tsinghua University)のZhaoying Zhou教授、また上海地区での実際の運営は上海大学、「Institute of NanoMicroEnergy」のZhiyu (Jerry) Hu教授でした。上海市(Shanghai City)は2400万人の人口を抱える中国最大の都市で、同国の商業・金融・工業・交通などの中心の一つです。またMEMSの研究開発では実績のある、上海大学のShanghai Institute of Microsystem and Information Technology(中国科学技術院南)や上海交通大学のResearch Institute of Micro/Nano Science and Technologyがあり、最近では2012年9月にThe 3rd Japan-China-Korea Joint Conference on MEMS/NEMS が開催され、日本、中国、韓国のMEMS関係者にて合同でコンファレンスが開催されるなど、マイクロナノ領域でも先進的な地域で、日本のMEMS研究者とも交流が深い場所です。

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写真 1 マイクロマシンサミットが開催されたHongta Hotel

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写真 2 マイクロマシンサミットの受付風景

今年は下山勲団長の都合がつかず、私が単身にて参加致しました。上海は長江河口南岸に近代的な高層ビルが林立した都市ですが、サミットの会場は、この上海市の中心部を流れるHuangpu黄浦江(こうほこう)の南にある、美しい大理石のロビーや豪華な会議場を持つ高級ホテルHongta Hotel Shanghai(上海瑞吉红塔大酒店)でした。
 今回のサミットの全体テーマはスマートシティ(Smart City, Better life-Powered by Micro-/nano-technology)です。参加者は17の地域から49人のデレゲイトでした。各国の概要報告を行うカントリーレビューは初日22日の午前中、22日の午後はセッションテーマMEMS application として7件、同日の夕刻は7人のパネラーによるパネルディスカッションとバンクエット、23日の午前中は、セッションテーマMEMS application として6件の講演、休憩を挟んでセッションテーマCurrent Status and Future Prospectとして6件、23日の午後はセッションテーマMarketing: Post, Today and Future として6件の講演、同日の夕刻は6人のパネラーによる第2回目のパネルディスカッション、その後はHuangpu黄浦江(こうほこう)の夜景を楽しむ船ツアでした。

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写真 3 オーガナイザーの清華大学Zhaoying Zhou教授のご挨拶

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写真 4 運営をされた上海大学Zhiyu (Jerry) Hu教授のご挨拶

最初にカントリーレビューの報告を致します。幾つかの印象に残った国(地域)からの発表をあげます。ベネルクス三国で、オランダではナノマイクロホットスポットとして、ツエンテ大学のEnschdeとHTCEのEindhoven,およびLeuvenを挙げていました。オランダは10年強で約100社のベンチャーが、この地方を中心に巣立ったとのことです。最先端設備を持つOpen Innovation研究施設が中心になっていますが、Leuvenでは、新たにKU Leuven(カソリックLeuven大学)が500名の研究者を抱える研究施設 LENA Core-lab facility を、約50億円投資し、2014年から運用を開始させるとのことです。またPhilipsがナノマイクロ領域で特に磁性技術とMEMSを組み合わせて、医療を中心に新規な応用を探す姿勢の紹介がありました。STマイクロを抱えるイタリアでもMEMSの産業化に加えて高齢化都市国家にロボット技術を如何に浸透させるかの紹介がありました。イタリアは日本と同様に高齢化、高寿命の国家で、道路や広場へ掃除ロボットを導入することから開始しています。

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写真 5 サミット会場の様子

ドイツからは、EPOSS(European Technology platform on Smart System integration)の一環として進めている集積化センサーMEMSや、350のドイツの南部の中小企業が連携し、Open Innovationで成功しているMicroTEC Sudwestが印象的でした。
後で、述べますが来年のサミットはブラジルで開催されます。発展著しいブラジルを中心としたラテンアメリカの発表も印象的です。ラテンアメリカは資源、農業が豊富であり、かつ環境計測や健康医療にも大きな関心があります。その全てに於いてMEMSが大きなチャンスを持っています。まだラテンアメリカはMEMSというより半導体を含むマイクロシステムの研究や産業を推進しており、半導体&MEMSでは22の設計ハウス、8つの製造施設、26の研究所があります。
最近は経済発展の著しい国家がMEMSを新規産業への期待を込めて研究開発を加速させているので、サミットへの積極的な参加を呼びかけています。その一つがロシアです。今回ロシアMEMS協会のDenis Urmanov団長が状況を紹介して下さりました。ロシアのMEMS産業クラスターはSt.Petersburg、MoscowとZelenograd、南部のKurskであり、MEMSは研究と産業化を海外の研究所との連携をしながら行っています。特にMoscow に近いZelenogradでは、大学や国立研究所が研究施設を充実させています。豊富なエネルギー資源を背景に充実を図っている様子で、ロシアとの連携は大きなビジネスチャンスがあると感じられました。
ECからの発表は、ECが支援するMEMS関係の投資は規模が大きいものの方向が少し変わってきていました。2008年から2010年は年間100億円程度がデバイス開発に投資され、ここ2年はリーマンショックの影響で減額されたものの、2013年から”Smart System”への投資として年間80億円に戻っています。更に2014年から6年間に渡ってEC予算の8%である10兆円を投資する先も検討中で、その中には集積化スマートシステムや、大面積電子デバイス(有機半導体等)が含まれているようです。

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写真 6 初日ディナーでの上海音楽の演奏会

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写真 7 イタリア団員による熱唱

シンガポールでは、海外の研究開発の受託を進めていますが、益々充実しているようです。スイスではEPFLに80億円かけて600人規模の新たな研究施設を建設中です。米国では大きな研究テーマとして、ナノテク、ロボット、ワイヤレスインフラ、脳機能、ナノ製造、IT医療等が大きな予算を集めているとの報告でした。開催国の中国では、上海に代表される都市部に人口が集中し、高層ビル(商用とマンション)が林立しています。統計データでは1980年から30年間で約4億人が都市部に移り住んだとのことです。そのエネルギーや情報の流通や管理、更に都市部への人口集中による課題、大気汚染や道路渋滞、水資源汚染等をセンサーネットワークで解決しないといけないとの話題提供がありました。
 カントリーレビュー以外の個別セッションでは更に細かい内容報告や技術の説明がありましたが詳細は割愛します。また今回は2回のパネルディスカッションがありました。22日のパネル討論は「Smart City, Better Life」でドイツの団長 Thomas Gessner教授がチェアでした。各国での取り組みをデバイスと応用の2つの側面で紹介することで、議論が深まります。中国からは一人っ子政策によって、豊かになった国民が、子供を如何に生んで、如何に育てるかに多くの資金を割くようになるだろうとの意見、シンガポールでは狭い国家の環境を如何に守るか?米国では医療と健康モニタが本格化、イタリアではロボットが市民権得るための方法等、お国柄でそれぞれ特徴がありました。日本の状況を求められた時は、日本は地震復興や節電に加えて社会インフラのモニタが問題になっている。全てに於いてMEMSを含むセンサーセットワークの重要性が増してきており、社会もその流れを認識してきていると答えてあります。また23日のパネル討論は「Merging Boundaries among Macro-/Micro/Nano-world」で米国の団長 Yogesh Gianchandani教授がチェアです。このセッションは比較的技術的な内容が多く、多くの方が質問に立ちました。私も下山団長の代理でパネラーになりましたが、TIAやMNOICを使ったオープンイノベーションに対する質問も幾つかあり、日本も変わってきたという印象を受けたようです。またトップダウンとボトムアップの技術はコスト、性能、生産性等を含めての最適化が重要であって、多くの技術の品揃えが必要であるとの認識を多くの研究者が持っています。

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写真 8 黄浦江のクルーズと東方明珠電視塔

 サミットの2日間の会期が終わったあと、技術ツアがありました。見学先はランチの場所であった上海交通博物館を含めて6箇所と大変密度の濃いものでしたが、大きくは(1)Jiading Urban)上海嘉定新城と言う人口都市、(2)Tongji大学の世界最大の風洞施設、(3)蘇州工業パーク、(4)蘇州ナノポリスです。このうち(1)(3)(4)は計画的に作られた工業団地です。中国では膨大な土地に道路、鉄道、工業団地、必要な生活基盤を最初に揃えて、その後で企業等の誘致を行う。この為、最初の誘致のための立派な事務所があって、今も博物館のような形で残っています。日本でも馴染みが深い(3)の蘇州工業パークは正確には、中国-シンガポール蘇州工業園区(ちゅうごくシンガポールそしゅうこうぎょうえんく、China-Singapore Suzhou Industrial Park)は通常蘇州工業園区(Suzhou Industrial Park, SIP)と呼ばれ1994年に中国とシンガポール政府が作った工業都市です。今ではハイテク企業が活躍しており、2012年には既に100のナノテク企業や、20以上の大学等の研究機関が設立されています。(1)の上海嘉定新城は日本のつくば学園都市に近く、大学や研究所を中心に作った都市です。(4)の蘇州ナノポリスは(3)の未開拓の森林(と言っても平地)を切り開いて1000億円の投資で作られたナノテク専門の研究施設、及びハイテク企業工業団地(MEMS、センサー、ロボット関係を含む)です。現在、第一期の工事としてサイエンスパーク全体の25%に当たる1.1km平方が工事中で、その中に5000平米の広さを持つ6インチのクリーンルームが建設中であり今年中には完成すると言うことです。投資規模は2010年から開始して5年間で約1000億円とのことですが、初期の投資は建設費に相当費やされると考えられます。既にオランダを始め、海外の研究機関との連携を進めているとのことです。
 展示会場には、幾つかのMEMSデバイスが展示されていました。MEMSの代表格と言える圧力センサー、マイクロ流路から無線センサーシステム、またナノテク関連の材料等も展示されています。
最後に来年2014年のマイクロマシンサミットは、ほぼ同じ時期にブラジル・サンパウロ周辺で開催されることがChief Delegate会議にて決定されました。 今回は日本からの参加は少なかったのですが、世界のマイクロナノ領域の政策・産業・技術マップが鳥瞰出来る貴重な2日間です。皆様の御参加を期待しています。(MEMS協議会 三原 孝士)

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写真 9 蘇州ナノポリスのジオラマ

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写真 10 蘇州ナノポリスでの建設中のクリーンルーム

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写真 11 蘇州ナノポリス内の展示室

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