2012年米国MEMS産業動向調査(その2)UC.Berkeley BSAC訪問調査報告
米国MEMS産業動向調査を目的として2012年11月5日にUC.Berkeley BSAC(Berkeley Sesor & Actuator Center)を訪問しましたので、調査内容を報告いたします。
米国のMEMS産業の現況に関し、大手企業は引き続き好調を維持しており、またキラーアプリを目指して多くのファブレスベンチャー企業が今も続々と誕生しています。これらの好業績をサポートするのが米国の大学のMEMS研究機関で、大学でありながら本格的なMEMS試作ラインを備え、長年の蓄積技術をベースに研究開発からプロトタイプ試作まで幅広くサポートできることを特徴としています。その中でもUC.Berkeley BSACは1986年の設立以来常に最先端のMEMS技術開発で世界をリードし、インフラ含めてすべての面で大規模にMEMSの研究開発を進めている代表的な大学です。開発の範囲は材料/プロセス/パッケージング、デバイス及び構造体、システムインテグレーションの各段階において体系的に研究が進められています。今回は、研究開発の方向性、企業サポートのシステムについてヒヤリングを行ってきました。
写真. UC. Berkeley 11月初め 夏の陽気
BSACの研究開発は、企業との共同研究による商品化を目的として行われています。
取組みの基本方針として
・基礎研究と商品開発の間に位置付けられる技術開発
・学際的分野
・商品に結びつく技術開発
・企業との共同研究
・コンソーシアムの形態、をあげています。
BSACが企業と共同で取組んでいる主なMEMS技術、デバイス開発プロジェクトは次の通りです。
・MEMS発振器、高周波フィルタ
・MEMSエネルギーハーベスタ、2次電池
・通信機能を備えてばらまかれた大量のSmart Dust
・危険環境、極限環境でのセンシング
・シリコンフォトニクス
・DNAアレイ
・太陽電池
・光集積回路
・ナノキャビティLED
・磁性応用イムノアッセイ、他多数
狙いの分野の傾向を見ると、情報機器向けRF-MEMS、ナノバイオ等の今後需要の伸びが予測される代表的なMEMSと、昨今の環境エネルギー問題を反映した環境センサ、エネルギーハーベスター等への取組みが多く見られます。その他では光デバイスへの取組みが注目され、ナノ構造、ナノ加工プロセスを応用した太陽電池、LED、光集積回路等、今後巨大な市場形成が確実視されるデバイスにも企業ニーズに合わせて積極的に取り組んでいます。
インフラは、Marvell Nano Fabrication Laboratoryと呼ばれている研究所に導入されている6インチのMEMS試作ラインが使われます。また0.35μmのCMOSラインも備え、集積型素子の試作も可能です。約30人のスタッフで管理され、各プロセスはモジュール化(標準化)されており、そこから選択することができます。
各装置の状態を把握、維持するために月1回モニタウェハによるプロセス条件の検証が行われており、ユーザをそのデータを参照してプロセス条件を決めることができます。
フォトマスクはLabo内部で設計し、パターンジェネレータでマスクを作製するところまでできます。
写真. Executive Director John Huggins と
企業サポートプログラムについて
BSACはコンソーシアム形式すなわち会員制を採用しており、一般会員とコラボレーション会員から成ります。一般会員は参加費用$50,000/年で、BSACの研究テーマに対して委託研究の契約を結ぶことができます。また定期的に開催されているBSACの研究開発成果報告会に出席したり、早い段階でBSACの出願特許情報に触れることことができます。
コラボレーション会員は参加費用$135,000/年で、一般会員のメリットに合わせて企業が望むテーマでBSACと共同研究を行うことができます。そしてその共同研究にUC.Berkeleyの大学院生を参加させることができます。また追加費用が要りますが、企業の社員を研究グループに派遣することができます。
開発費用面でのメリットは、会員企業の年会費はまとめてプールされ、その数倍の連邦、州政府からの研究資金が加算されて、その資金を基に研究開発が運営されます。参加可能な企業は米国に限らず日本や欧州の企業も可能で広くオープンに運営されています。
設立当初は大学内での単独研究であったのが、優秀な研究者達による技術蓄積とオープンな研究所運営が多くの商品開発成功例と多くの企業との共同研究(120プロジェクト)を生み出すに至ったと考えられます。
参考:http://www-bsac.eecs.berkeley.edu/
阪井 淳
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