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2012年5月

2012年5月17日 (木)

H23年度国内外技術動向調査まとまる

 マイクロマシンセンターでは、国内外の最新かつ詳細なマイクロマシン・MEMSそして近年活発化しているナノ関連の研究開発の情報を収集・分析し、その技術動向を把握することを目的に、各年度2つの国際会議を定点観測して、調査報告書にまとめています。H23年度は上期に隔年開催の"TRANSDUCERS'11"を、下期に毎年開催の“MEMS2012”の調査を行いました。
 "TRANSDUCERS'11"は16回目の開催に当たり、中国の北京にて2011年6月5~9日に開催されました。今回の論文投稿件数は1650件で、前回の1307件より大幅に増加しました。その中から752件が採択され、採択率は45.6%でした。国別発表件数は、多い順に米国76件、日本33件、台湾18件、ドイツ15件、スイス15件、中国14件、韓国11件、シンガポール10件と続いており、中でも中国、韓国の伸びが目立ちます。
 “MEMS2012”はIEEEのMEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 技術に関する国際会議で、今回は25回目となります。2012年1月29~2月2日の日程で、フランスのパリで開催されました。参加者数は事前登録者724名で、前回の事前登録者数560名を大幅に上回りました。一方、投稿件数は978件で、前回の886件を大きく上回り過去最高を記録しました。採択された論文数は全体で346件(前回343件)、採択率は35%(前回39%)という結果でした。国別ではトップの米国121件に続いて日本85件、台湾29件、韓国20件、中国15件、フランス13件という状況です。
 報告書では、それぞれの会議の概要と、各論文を基礎分野、応用分野合わせて18の分野に分類し、注目すべき論文をトピックスとして紹介しています。

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台湾のMEMS関連研究所、および企業訪問2012

 台湾・新竹市にて2012年4月24日から25日に開催された第18回マイクロマシンサミット(Micromachine Summit 2012)に前後して、新竹地区のマイクロ・ナノ関連の研究所、及びITRIから起業し大成功を収めている企業の見学、更にマイクロマシンサミット終了後に追加イベントとして、台南市のITRIサウスのMEMS研究施設の見学と情報交換会を実施しました。参加者はMEMS協議会国際交流委員会委員長の下山東大教授を中心に5名の派遣団です。
<新竹地区の研究所>(4月23日)
(1)Nano Devices Laboratory (NDL)
 Nano Devices Laboratory (NDL)は半導体(ナノテク、MEMSを含む)関連産業の開発者や大学・研究所に最先端の研究用実験施設やデバイスの評価装置の利用を提供することを目的に1988年に設立されたもので、毎年5000人が(セミナーやトレーニングを含めて)利用しているとのことです。所有設備は6インチMEMSと8インチCMOSで、研究から少量生産に最適なサイズで処理しています。ナノデバイスや電極を含む半導体材料の分析、評価、高周波デバイスの評価、光半導体を含むMEMS/NEMSが研究テーマであって、丁度ナノエレクトロニクスとMEMSを融合したような研究所です。驚きはその研究設備の充実ぶりで、例えばHigh Frequency Technology Centerには4つの実験室に各4台、計16台の最高200GHzまでの高周波プローブが並んでいました。それぞれ周波数帯や機能、評価チャンバーが異なっているものの、高価でノウハウが必要な高周波プローブシステム(通常は1研究所に1台を所有)が並んでいる様は、その充実振りに驚きました。

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写真 1 NDLのビル

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写真 2 NDLの記念写真コーナ

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写真 3 NDLの広いCR見学場所

(2)Chip Implementation Center (CIC)
Chip Implementation Center (CIC)は、半導体やMEMSの設計と、実装およびシステム評価を行うために1992年に設立された研究機関で、公益的な研究とサービスを提供する研究所です。スタッフの人数は117名で、研究職は60%とのことです。年間350の利用件数があり、利用の割合は24%が設計、53%が実装・テストとなっています。特に設計を行う、或いはそれを支援するスタッフが多いことも、日本とは全く違います。昨年度は266の設計案件があったようです。また標準的な、TSMCとコンパチのCMOS(0.35um-2Poly、或いは0.18um)の試作、ファンドリサービスもあって、2011年は150種類のチップが試作されたとのことです。

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写真 4 特徴的なITRIのビル

(3)Industrial Technology Research Institute (ITRI)
世界の半導体ファンドリであるTSMCを生み出した研究所で、世界的にも産官学連携が有名なITRIです。1973年に設立された5000人の研究者を有するこの研究者は、その38年の歴史において、10,000の特許を蓄積し、165の新規企業を作り、その中でも最大のベンチャーがUMC、TSMCです。ITRI内の展示コーナを見学するコースが有りましたが、少々驚いたのは、研究テーマは決してハイテクばかりではなく、アイデアさえあれば直ぐに具現化出来そうな技術や、社会ニーズから出てきた技術(例えば100Vで利用するLEDやスプリンクラーのノズル)もありました。これこそITRIの強みであり、産業を生み出す原動力と感じました。何年か前にITRIを訪問したときに、「ITRIには長居は出来ない、早くベンチャーを興して外に出るのがITRIの制度である」と聞いたことがあります。ITRIの電子機器部門の成功は米国でも評価され、調査団が来たようです。尚、ITRIの研究資金は70%が政府系、残りの30%は企業からです。

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写真 5 ITRIの展示コーナ

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写真 6 AMPのLin会長によるランチでのご挨拶

(5)Instrument Technology Research Center (ITRC)
 Instrument Technology Research Center (ITRC)は、ITRIと粗同時期である1974年に創立された、デバイスではなくシステムを志向した研究所です。見学ではリモートセンシングによる環境計測や、分光分析装置、真空技術を使った薄膜製造装置等を見せて頂きました。
<新竹地区の企業>(4月26日)
(1)Asiapacific Microsystems Inc. (APM)
 Asiapacific Microsystems Inc. (APM) はUMC、TSMCのMEMS版というべき存在です。 創立者で会長のLin(林)氏は大阪大学に留学された、日本にも大きなパイプがあり、またIRTIの副所長もされた方です。2001年にITRIのMEMS設備(の一部を)払い下げて作った会社は、当初はITRIのMEMS研究者が中心になって、独自MEMSデバイスを製造・販売する企業でした。設立当初に私も訪問しましたが、当時バブル状態であった光MEMSからRFMEMS、マイクロ流体まで何でも開発されている印象でした。その後、ファンドリーを開始して、徐々にその比率を増やし、3年前に完全にファンドリーに移行したとのことです。その時に技術とスキルを持った重層な技術者を抱えていたので、プロセスを逆提案できるファンドリーとして世界中から引き合いがあったとのことです。2010年度は純ファンドリーとしては世界3位、6インチCMOSコンパチで、年間生産可能量は120,000枚(ホトリソ換算)、ユーザは米国35%,日本12%、欧州と続きます。半導体のノウハウを受け継いで品質管理を完全な形で行なっているようです。
(2)Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. (TSMC)
もう説明の必要がないような、世界中に認知度が高いTSMCは世界トップの半導体ファンドリー企業で、売上は15Bilionドルの規模です。ギガファボと呼ばれる12インチラインが新竹サイエンスパークに3工場あるとのことです。見学会は非常に厳しいセキュリティの中でビデオ説明と、MEMSの責任者によるQ&Aでした。MEMSのファンドリーは10年前から開始したとのことで、0.13umルール、6-8インチのラインを使い、年間13Milionの処理が可能とのことです。MEMS担当のスタッフは200人で、CMOSとの集積化を特徴にしています。CMOSとMEMSの組み合わせは、配線部を可動構造体として使うデバイスや、ウェハー実装で実現する物等様々です。 最近ではMEMSプラットフォームと呼ばれる方法で、2000前半は立ち上がりに5年以上かかっていた開発から量産までの期間が、現在では1年で完了するとのことです。またTSVに関しても進んでおり、CSPやCMPも揃っているようです。
(3)United Microelectronics Corp. (UMC)
 UMCも同じくITRIから派生したファンドリですが、歴史的にはTSMCよりも古く、1980年に設立(TSMCは1987年)とのことです。12インチライン2本を含む、10の工場を持っています。特に顧客は米国45%、アジア46%となっています。また65nm以下の設計ルールが全体の50%以上と最先端施設を使っています。MEMSに関しても、RFMEMS,ジャイロ、カメラ用途、AFMと幅広いファンドリーを8インチ規模で行なっているとのことです。
(4)King Yuan Electronics Co. (KYEC)
今回の企業見学で圧巻だったのは、TSMCやUMCの工場の大きさは当たり前ですが、それ以上に台湾の実装やテスティングといったサプライチェーンの連続性と、その規模でした。KYECはICテスティング受託最大手です。1987年創立から徐々に拡大し、4つの工場に4500人の従業員、売上750Milionドルの規模です。ワンフロアに約300台、1施設に1000台のテスターが並んでいるのは圧巻です。ウェハーは6,8,12インチ対応、ウェハー状態でテストを行なったあと、提携する実装企業でパッケージしたあと、再度IC/LSIテスティングや信頼性評価を行うとのことです。年間100の顧客から約1000種類の評価を委託されているとのことです。
(5)Advanced Semiconductor Eng. (ASE)
 ASEは実装に特化した受託サービス企業です。実装はダイボンディングとワイヤボンディングが中心です。他社に先駆けて銅配線を安定に使い熟すことで、性能価格比が20%以上も上げることが出来て優位に立ち、年間2倍のペースで生産量が増えたとのことです。実装装置がフロアに300台並び、ビル全体で2800台、グループ全体で7000台と世界最大の規模とのことです。全世界に17施設を持って40,000人の従業員、売上は4.4Bilionドル、実装の種類は約300、年間7Billion個実装しています。(単純には平均単価は50セント以上?)
 更に驚いたのは規模だけではなくて、実装は非常に沢山の種類があって、ハイテクの塊であることです。既にウェハーレベル実装やTSVの領域に入っており、このような最先端技術と市場を持っている企業がMEMSのユーザになる日も近いと感じました。

<ITRI サウス>(4月27日)
(1)ITRI-South/ Microsystem Technology Center (MSTC)
MMサミットの4日間の濃厚なスケジュールが終わった後、ITRIのブランチ研究所であり、MEMS研究開発を中心に行なっている台南市のMSTCを訪問しました。台南市は新竹市から台湾高速鉄道で約70分南に下った海岸寄りの都市で、台湾の首府であった時期もあって、「台湾の京都」とも言われる観光都市です。MSTCでは大変な歓迎を受け、研究施設の訪問と、MSTCの研究所長クラス(MEMS、ナノテク材料関連)5名の方々との情報交換会を開催して頂きました。研究施設の見学会では、「窓越しに設備・装置や作成したウェハーを見せて終わり」というケースが多々見られますが、5から6の研究グループ単位で、その研究施設の入口に2帖程度の展示コーナがあって、しかも常設展示のようなMEMSの機能が判るようなモデル展示がされています。即ちMEMSを使って何が出来るのかを実際に体験する場で、研究員が熱心(しかし余り専門的にならない)に説明されていました。例えば、加速度センサーを使ってGPSと連動したナビゲーションの実験等です。これは我々も大いに見習うべきと思いました。理由を聞くと、ITRIでは企業の設計者が使って見たいと思うことから交流がスタートするので、技術を説明するよりも利点を説明するほうが意味が有る、とのことです。研究の内容としては、携帯端末に搭載する加速度、モーションセンサーは勿論ですが、MEMSマイクロホットプレートを用いたガスセンサーでは、ヒータの加熱速度の違いを利用してガスの種類を特定化可能なセンサーも、既に小型システムへ組み込んでデモされていました。

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写真 7 MSTCでの情報交換会

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写真 8 MSTCの皆様との記念撮影

情報交換会では、Chun-Hsun Chu MSTC所長から、挨拶とMSTCの全体紹介、沿線と研究内容のご紹介、またMSTCから起業したベンチャー企業等の話、特に重点施策は①地域産業貢献、②セラミック等のナノ材料の地域産業、③再生可能エネルギー、④研究サービスや試作・初期ファンドリー支援とのことです。 MEMS OpenLabでは、6-8インチ施設、ウェハーレベルPKGと迅速プロトタイピングを売り物にしているとの説明です。またNano-materials CenterのAlbert Shih所長からナノ材料、特にセラミック無機系材料や、自己組織化ナノ材料の研究テーマのご紹介、日本からは下山先生から日本のMEMS関連プロジェクト紹介、今仲MNOIC所長からMNOIC紹介、佐藤氏からMemsONE紹介、三原がMEMS協議会活動の紹介をしました。特にMemsONEはMSTCの研究者の方も良くご存知で、その機能に関しても調査・検討しておられ、英語版が出来れば使ってみたい、連絡して欲しいとのことでした。
情報交換会の席上で、日本企業の台湾への工場や研究開発施設の誘致(TJ-Park)の話題もありました。台湾のMEMSを含むマイクロエレクトロニクス全体の見学を見て感じることは、大学レベルの基礎研究、ITRIを含む公的研究機関の多重的なサポートや人材の確保によるMEMSの設計から機能確認、APMやTSMC/UMCといったファンドリー、更に大規模で多様性のある実装、評価の受託企業群・・・すなわちこの台湾は、決して大きくない国(高速鉄道とタクシーで2~3時間でどこでも行ける)場所に、何でも揃っている・・国家であると、感じました。日本のように一時期大量に作って同じものを世界に販売するよりは、共同開発や受託開発なので少なくても英語が堪能な国際的な人材が多数必要です。(多くは留学、海外Uターン研究者で構成)ドバイやサウジの国際化も驚きでしたが、台湾は別の意味で(より現実的な意味で)大きな感銘を受けました。(一般財団法人マイクロマシンセンター・MEMS協議会 三原 孝士)

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2012年 第18回「国際マイクロマシンサミット」が台湾・新竹にて開催される。

   第18回(2012年)「国際マイクロマシンサミット」が4月23日から26日まで台湾・新竹にて開催されました。ご存知のように、マイクロマシンサミットは、年に1回、世界各国・地域の代表団が集まり、マイクロマシン/マイクロナノテクノロジーに関する課題などについて意見交換する場です。通常の学会と異なるのは、各国・地域の代表団が組織的に集まって、質の高い、まとまった講演と、影響力のある人々と意見交換できることが特徴となっています。今回のオーガナイザーは台湾National Tsing Hua(国立清華)大学のWeileun Fang教授でした。新竹市(Hsinchu City)は、特にマイクロエレクトロニクス分野で世界を牽引する先端技術研究都市であって、Industrial Technology Research Institute (ITRI)に代表される5つの国立研究所に6000人の研究者・スタッフが従業しています。この研究所から生み出される技術や設備を使って、約350のTSMC, UMCのようなハイテク企業を含め、台湾の半導体や液晶関連企業が起業する、世界でも最も注目されるオープンイノベーションのモデル地区でもあります。このことから今回のサミットでは異例とも言える、サミット会合の前後に丸2日間の研究所と、最先端企業の技術ツアがありました。この研究所や企業ツアは別のブログで報告します。日本からの派遣団は、MEMS協議会国際交流委員会委員長の下山東大教授を団長とする5名で、中国(10名)、ドイツ(8名)、台湾(8名)、イタリア(6名)に次ぐ規模でした。

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写真 1 MMサミットが行われた会場

今回は20の地域、75人のデレゲート、13の展示出展者、48の報告がありました。初日の4月24日は開会式として、新竹サイエンスパークのHsiano副所長、APMの創始者で日本にも馴染み深いLin会長、General ChairのFang教授から挨拶があった後、18のカントリーレビューがありました。今回はそれ以外のセッションとして「マイクロ技術におけるエコシステム」と「実用化の現状と将来」「その他」の3セッションが開催されました。特記すべきはFang教授を中心に大学のスタッフに支えられて完璧に近い運営がなされました。

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写真 2  レセプションでの案内図

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写真 3 会場の様子(1)

「マイクロ技術におけるエコシステム」は10の発表テーマがあり、MEMSの研究施設、国家プロジェクト、省エネ等がテーマでした。ドイツからの報告で、2014年から開始されるフレームワーク2020と言う欧州の大型PJの参加者が、中小企業が60%占めることが示され、欧州では最先端分野で中小企業が活躍されている様子が判りました。IMECからは研究紹介トピックスの中でファブリペローを使った光学素子と、MEMSを使った電子鼻の紹介が印象的でした。MEMSを使った電子鼻(electronic nose)は日本では研究が殆どされていませんが、海外の主たる研究所は大変力をいれています。日本からは今仲MNOIC所長からの話題提供がありました。

 「実用化の現状と将来」は産業界からの報告や大学から生まれた新規な技術等が主で、11の発表がありました。ドイツmemsfabから、AIMと言うSOIウェハー不要のエアギャップを低価格で形成可能な技術を用いた加速度センサーの特許、製造、実用化の過程の紹介があり、その製造も含めてmemsfabの最近の売上が飛躍的に伸びている報告がありました。オランダのNMTからはマイクロ流体やバイオMEMSを中心としたベンチャーやSMCの動向がありました。以前から欧州には強大なバイオ、製薬国際企業があって、この分野は日本と違って進んでいる印象がありましたが、2011年には30余の企業が生まれています。統計から最近4年間で100のベンチャーが生まれ、平均7年で失敗し、平均9年で成功し、市場に出せるには10年以上かかることを示され、起業成功には長い時間が必要との報告でした。2011年には15の企業が継続できているとの報告がありました。ECを代表し、シーメンスからは具体的なセンサーシステムのプロジェクト紹介がありました。E-BRAINSと言うRFセンサースマートシステム、MIKOAと言うエネルギーの管理、ASYMOFと言うハーベスティングのPJと、システマティックな構成で、既に多くの成果が出ているようです。ドイツIVAMと言う強力な工業会は、ドイツ、EC、一部海外から300を超える企業からなるものですが、欧州ではマイクロ・MEMSはSMCが中心であることもあって、大変重要な位置付けになっており、交流や広告、ネットワークとして有効に使われています。日本からは唐木TIA N-MEMS WG委員長が日本の超高齢化社会における課題を報告されました。

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写真  4  会場の様子(2)

(私が知る限りでは)今回、始めて導入されたと思われるパネルディスカッションがありました。パネターが全面に並ぶのではなくて、モデレータであるGianchandani氏(米国団長)がMEMS産業化におけるポイントを整理し、各国のデレゲートがコメントを出す形式です。4つの大テーマ①ベンチャー、②ファンドリー、③技術プッシュか市場プル、④国家PJを課題提起し、意見を集約していくものです。①のベンチャーでは、投資額を3年以内に使い切って中断するベンチャーが50%に達し、少なくても3年x3倍の9年必要、英国では1.8Bilionポンド支援している等、②のファンドリーでは如何に優れたプロセスプラットフォームを持っているか?多くのMEMS企業がファンドリーを実施している等、③は興味ある内容ですが、産業領域で異なっていて集約は困難、自動車は100%市場から、技術から開始した商品は上市のタイミングが重要、同時誘発的であるべき、プラットフォーム重視、④ではホライズン2020と言う、欧州にて2020年まで実施される成長と雇用の促進のため800億ユーロの研究・イノベーション投資を提案に付いて意見が出され、中小企業はトライアルのための投資を必要とすること、ハイテク企業に優遇を、クラスターへの投資、集積化や応用展開への投資の必用性、等が議論となりました。

来年は上海で開催される予定です。世界のマイクロ・MEMS領域の状況が鳥瞰できる「国際マイクロマシンサミット」に皆さんも是非ご参加ください。

(一般財団法人マイクロマシンセンター MEMS協議会 三原 孝士)

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CEA-Leti(仏)、デルフト工科大(蘭)訪問による欧州大型プロジェクト調査報告

 現在マイクロマシンセンターではマイクロナノに関する次期プロジェクト企画のための技術調査を行っています。ここでは海外でのマイクロナノ関連プロジェクトの内容を調査して、次期プロジェクトの企画に活用することを目的に、代表的な研究機関を訪問調査しましたので、調査内容を報告させて頂きます。主な調査項目は、狙いのアプリケーション、そのためのマイクロナノ関連プラットホーム技術、プロジェクトの運営他です。Leti

○ CEA-Leti訪問調査
 CEA-Letiは欧州を代表するフランスの研究機関です。場所はフランス・グルノーブルでアルプスに近く、山々に囲まれた広大な敷地の中にあります。いち早くMEMS8インチライン<CMOS12インチラインを導入し、技術開発からプロトタイピングまでをサポートする大規模研究機関として著名です。
 今回はLeti自身の研究開発の取組みとLetiが参加する全欧州プロジェクトEPoSSについてヒヤリングを行いました。面談したのはバイオケミカルセンサの室長であるAndre Rouzaud博士です。Leti2
 Leti全体の運営に関する指標(2010年)は、研究員1700名、年間予算250M€、うち政府交付金は40M€、残りは共同研究企業により資金供出されます。
共同研究企業数は265社、Letiから生まれたスタートアップ企業は37社を数えます。
 Letiの研究開発の取組みは、基本的には企業ニーズ、社会トレンドからのアプリの抽出、それを実現するためのプラットホーム技術の選択となり、ほぼ全分野を包含しています。具体的にはアプリ分野として健康・環境、エネルギー・輸送・住宅、通信、マルチメディア、防衛があげられ、3
プラットホーム技術としてフォトニクス、ナノテクノロジ、MEMS、3次元集積化、バイオ・化学に取組んでいます。(右図参照) これらの分野は国内外の他の研究所においても同様に取組まれており世界共通の課題と言えますが、Letiでは企業との共同研究に基づき実用化レベルまで仕上げるのが特徴です。次期プロでも調査している次世代のイメージセンサに関しては、赤外、テラヘルツ画像センサ、近赤外光を用いた距離画像センサに取組みんでおり、いずれもプラズモニクスアンテナ等の新しい要素技術を取り入れ、具体的なアプリに対して実用化レベルに近い完成度の高いデバイスが出来上がってました。特に距離画像センサは320×256ピクセルから成り、可視画像、赤外画像を補完する形で高精度な人体検出ができるようになります。1_2

○EPoSS:European Technology Plathome on Smart System Integration
 全欧州レベルの集積型デバイスのプロジェクトで、スポンサーの中心となっているのはEuropean Commissionです。European CommissionはFP7(7th Framework programm)をはじめ様々な全欧州プロジェクトをサポートしておりEPoSSもその中の一つです。2008年頃から開始され、2020年までのロードマップに従ってフェーズを区切って実施されます。
 予算は年間約200M€、参画機関は企業はSTMIcroelectronics、Siemence、Philips、Bosch等ヨーロッパ最大手の電子企業の他日系ではHitachi Euroが参画しています。
研究機関はCEA-Leti、Fraunhofer、IMEC、CSEM等欧州の代表的総合研究機関が参画しています。
 EPoSSの骨子は右図に示すようにアプリケーション分野とプラットホーム技術のマトリックスを組み交点のところで必要なデバイス技術が抽出され、この技術開発を希望する企業、研究機関が配置されます。狙いのアプリケーション分野は、航空宇宙、自動車、通信、ネットワーク、医療・健康、セキュリティがあげられ、プラットホーム技術としてエネルギー、スマートパワーマネジメント、化学・バイオセンサ、印刷プロセス、スマートテキスタイル、画像センサがあげられています。プロジェクトを組むにあたっての留意点として、大目的として欧州の産業の発展をあげていること。よって枠組みありきではなく、企業のニーズを集めてそこから枠組みを決めていること、最終的に各企業の発展につながるようにという視点が基本であり、これらは次期プロの企画に参考にしたいと考えます。

○ デルフト工科大学訪問調査Tdu1
 デルフトはアムステルダムの南西約30kmのところに位置する歴史ある街で、デルフト工科大学は旧市街の横にあります。オランダ最大、最古の工科大学で全欧州でも屈指の名門校として知られています。昨年、オランダ政府、デルフト工科大学が中心となってマイクロナノに関連する大型プロジェクト(NanoNextNL)が立ち上がりましたので、その内容を調査しました。面談したのはプロジェクト全体のリーダであるFred van Keulen教授(マイクロメカニクス専攻、写真中央)とプロジェクトスタッフのJeroen van Houwelingen博士です。Tud2
 オランダでもマイクロナノに関連する国家プロジェクトを継続的に運営しており、NanoNextNLはその一環で昨年度スタートしたものです。但しこれまでのプロジェクトより規模が大きく、海外からも参画できるようにしているのが特徴です。
 運営面での指標をみると、予算は2011年~15年で総額250M€、このうちオランダ政府が125M€負担、 企業が約60M€負担、大学、研究機関が約65M€負担となっています。参画機関は企業が約100社、Philips、Bosch等の欧州2_8大企業の他、キャノン、ニコンも参画しています。
 プロジェクト全体の枠組みを右図に示します。
ここでもアプリケーションとプラットホーム技術のマトリックスを組み、交点のところにデバイスがあてはめられます。アプリ分野としてエネルギー、医療は他のプロジェクトと共通ですが、クリーンウォータ、フードが含まれているのが特徴です。これは社会ニーズとして高齢化社会対応を重視しており、その結果抽出されたものです。
 技術はBeyond Moore、これはナノエレクトロニクス、ナノフォトニクスを指します。他にナノマテリアル、ナノバイオ、ナノ加工、センサ&アクチュエータがあげられています。
 このプロジェクトでは産業の発展の他、基本技術のポテンシャルアップ、学生の人材教育も主要課題としてあげられています。これは大学がスタッフの中心になっているためと考えられます。
 Keulen教授からは、日本との協力関係強化の要請がありました。
・日本企業も参加して欲しい。この枠組みの中で途中参画OK。
・技術情報の交換を定期的に進めたい。具体的には双方で定期的に開催される技術シンポジウムにお互いに人を出し合う。
・オランダには日本企業でのインターンシプを希望する学生が多いので紹介してほしい。
・上記内容をスムースに進めるのにMMCとアフィリエート契約を結ぶことが有効ならば締結したい。
これらの要望は今後両者で検討していきたいと考えます。
 ここで得られた取組む技術、アプリケーション、オープンな運営は次期プロにも参考にしたいと考えます。

阪井

 

 

 

 
 

 
 

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メタマテリアル国際会議(META2012仏)参加報告

 2012年4月19日~22日にフランス・パリで開催されたメタマテリアルに関Meta12_0003する国際会議(META2012)に参加しましたので、その内容を紹介します。
 メタマテリアルとは人工的に設計された構造で自然界にある材料ではなし得ない物性を持たせたもの。特に伝搬波の波長以下の周期構造を駆使して伝搬波の進行方向制御、遮断、閉じ込め、遅延等を自由に制御できる構造をさします。10年前はまだ注目度が低かったですが、理論や必要な加工プロセスの研究開発が進歩して現実性が増し、最近注目を集めている分野です。
 この学会で取り扱う分野は、電磁メタマテリアル、プラズモニクス、フォトニック結晶、音響メタマテリアルで、それぞれの分野における理論・シミュレーション、デバイス試作・評価、製法に関する発表がありました。総発表件数は約540件、参加人数は約500人、発表の国別内訳は仏140件をトップに、仏、米、独で260件と半数を占めました。
 一方アジア勢は中国30件、韓国20件、日本15件と発表件数では欧米が圧倒していました。この要因としてメタマテリアルはまだ基礎研究フェーズにあり、欧米の方が基礎研究人口が多いこと、合わせて理論研究が盛んなこと、デバイス開発を目指した場合、電子デバイスの設計技術、ナノオーダの加工プロセス技術が必要になりますが、欧米の大型研究機関、大学では総合的に取り組む環境が整っていること等が考えられます。
 発表内容の全体動向ですが、本分野はまだ基礎フェーズだけ全体に理論や新しいアイデアの原理検証が大多数を占めた。上記4分野中では、プラズモニクス、フォトニック結晶に関しては1970年来研究が進められてきた分野であるため、デバイス試作・評価に関する発表も多く見られました。デバイスの種類としては、光アンテナを用いた赤外光、テラヘルツ波の受光素子に関するものが圧倒的に多く、これらのデバイスが最も実用に近いことが伺えました。

 注目される発表を紹介します。

 英Southampton大からメタマテリアルの動向の紹介がありました。メタマテリアルやメタの定義に関しては決定されたものはなく、人によって、分野によって異なります。ここでは「メタマテリアルからメタデバイスへ」というタイトルで言葉の定義と開発動向を紹介していました。
「メタマテリアル」とは用いる電磁波の波長以下の構造を設計することによって新たな物性を備える人工物質。
「メタデバイス」とは電磁波の波長以下の構造で生まれる新しい機能を備えるデバイスと定義しました。
メタマテ応用デバイスの例として、超電導メタマテ、量子メタマテ、MEMS&NEMSメタマテ、非線形&スイッチングメタマテ、メモリメタマテ、メタマテ発光素子、センサメタマテをあげました。それらを実現するための基本技術として負屈折メタマテ、散乱メタマテ、カイラルメタマテ、人工磁性、変形光空間をあげました。Southampton大ではこれらの分類に基づいて様々なメタデバイスの研究開発を行っています。

 Rice大学からナノアンテナを用いた近赤外スペクトル検出素子の発表がありました。
プラズモン現象は光の波長以下のナノサイズのメタルにサイズに応じた共12_7周波数の光を照射すると自由電子が励起され光電場増強が起こるものです。受光素子として応用する場合、励起した電子を外部に取り出す必要がありますが、Rice大学ではAu/Siショットキダイオードの構造を応用して受光素子として動作させることに成功しました。(右写真)
 またナノアンテナのサイズを変えることによって受光スペクトルのピーク波長がシフトすることも検証しました。(右写真)

 UCBerkeleyから局在表面プラズモン(LSPR)を応用した超高感度ガスセンサの発表がありました。SPRを応用した化学・バイオセンサは実用化されており、さらに応用範囲を広げようとしている。ここでは水素ガスに感応して物性が変化するパラジウム粒子と金のナノアンテナを組み合わせて、水素ガスの吸着によるわずかな光物性の変化を、反射光の波長のシフトとして捉えて、高感度化できることを検証しました。右写真上図はパラジウム粒子単体の場合で、水素の吸着によって反射光がわずか1に減少しています。
一方下図のように三角形の金のナノアンテナをパラジウムに近接配置させることによって光照射した時の電場増強が起こり、反射光のスペクトルの明確な変化として捉えることができます。

阪井

 

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2012年5月15日 (火)

ハノーバメッセ2012参加報告

 2012年4月23日から27日までドイツ・ハノーバで開催されたハノーバメッセに参加しました。
ハノーバメッセは産業用機器の展示を主体とし、出展は5,000社を超え、来訪者は20万人を超える世界最大の展示会です。例年、産業機器用マイクロデバイス、マイクロ加工の展示を中心とするホールが設けられ、マイクロマシンセンター(MMC)はその中でブースを設けて展示をしています。本年は賛助会員の中からパナソニックが出展することになり、同じブース内で共同で展示を行いました。P1090111_2
 マイクロマシンセンターの展示内容は、MEMS協議会活動紹介、今年7月東京で開催されるマイクロマシン/MEMS展のPR、技術開発プロジェクト(BEANS、NMEMS)の紹介、昨年スタートしたMNOICのPRです。
 各ホールにはメインストリート(レッドカーペット)が設けられ注目される展示がそれに沿って並びますので、最も人通りが多くなります。MMCは運よくメインストリートに面したため、多くの訪問者の方に上記内容をPRすることができました。特にマイクロマシン展やプロジェクトの技術的内容について興味を持って頂きました。P1090195_2

 同ホール内では本年もマイクロテクノロジーに関する
シンポジウムが開催されました。テーマとして、マイクロ加工技術、マイクロ加工装置、各研究機関のMEMSへの取組み状況、エネルギーハーベスティング、ワイヤスセンサネットワーク、ナノテクノロジーが取り上げられ、MMCはMEMSへの取組みのセッションの中で発表しました。発表内容は、MMCの活動紹介、MMCが現在運営している国家プロジェクト及び次期プロジェクトの紹介、国内外のMEMS産業動向、日本のMEMS産業のP1090170課題、それに対応したマイクロナノオープンイノベーションセンター(MNOIC)の設立について報告しました。発表に対し、聴講者からMNOICについて興味を持って頂いたようで、Siemenseの方から海外企業でも使えるかと質問頂き、将来的にはオープンの方向で検討中と回答しました。
 他のセッションの中から注目された発表を紹介しますと、
エネルギーハーベスタ関連で英perpetuum社は電磁式振動発電で事業を開始しているパイオニア的企業です。今回は熱、光ハーベスタの紹介があり、特に熱型では30℃の温2_4度差で、3mWの発電を達成し、用途の拡大が報告されました。
 独Micropelt社は熱電ハーベスタ昨年いち早く事業化を開始した企業です。熱電素子構造はサーモカップル方式で、マイクロ加工により3.3mm□に540個のサーモカップルを直列に接続して140mV/Kの出力を得ています。(右写真)
 独PMDM社はミネベアの子会社ですが、電磁発電を用いたワイヤレス押しボタンスイッチを紹介しました。これは熱電と並び現在最も注目されているハーベスタ応用商品で、押しボタンの1回きりのわずかな動きを電力に変えて、スイッチング信号をワイヤレスで送信する機能を持ち、照明用壁スイッチ等への応用が考えられています。

 他のブースからマイクロデバイスに関連した注目技術を紹介します。Img517113129_2
Fraunhofer ENASはこれまでもMEMSを応用した小型の赤外分光装置を開発してきました。MEMSミラーとグレーティングを組み合わせた小型赤外分光装置は既にirSys社から商品化されています。
 次世代型として、可変赤外フィルタと赤外線センサを積層化した超小型赤外分光センサも開発されています。(右写真)
 仕様はフィルタ特性の異なる二つの素子で3~12μmの範囲の赤外スペクトルを検出することが可能です。企業との共同研究で商品化を準備中の段階にあるそうです。
 R&D専門のホールが設けられ、世界の企業、大学、研究機関からR&Dレベルの技術が展示されていました。その中で注目されたのは、スイスETH研究所の超高精度インクジェットプリンタです。インクジェットプリンタの電子回路パターンへの応用が進んでおり、既に100μmの線幅の回路を作製することが可能になっています。ETHはこれまでのの技術を大幅に凌駕し、50nmの線幅のメタル線を作製することに成功しました。インクジェットから噴出するインク量の制御はこれまで1ピコリットルだったのを100ゼプトリットル(1ピコの10の7乗分の1)まで制御することに成功しました。また50nmの線を描くだけではなく、径50nmのナノピラーを作製することも可能、つまり垂直に成長させることも可能で、試作品が展示されてました。従来この領域は、EBリソやボトムアップ方式でしかできませんでしたが、インクジェットであれば大幅な低コスト化が期待されます。

阪井

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