ハノーバメッセ2012参加報告
2012年4月23日から27日までドイツ・ハノーバで開催されたハノーバメッセに参加しました。
ハノーバメッセは産業用機器の展示を主体とし、出展は5,000社を超え、来訪者は20万人を超える世界最大の展示会です。例年、産業機器用マイクロデバイス、マイクロ加工の展示を中心とするホールが設けられ、マイクロマシンセンター(MMC)はその中でブースを設けて展示をしています。本年は賛助会員の中からパナソニックが出展することになり、同じブース内で共同で展示を行いました。
マイクロマシンセンターの展示内容は、MEMS協議会活動紹介、今年7月東京で開催されるマイクロマシン/MEMS展のPR、技術開発プロジェクト(BEANS、NMEMS)の紹介、昨年スタートしたMNOICのPRです。
各ホールにはメインストリート(レッドカーペット)が設けられ注目される展示がそれに沿って並びますので、最も人通りが多くなります。MMCは運よくメインストリートに面したため、多くの訪問者の方に上記内容をPRすることができました。特にマイクロマシン展やプロジェクトの技術的内容について興味を持って頂きました。
同ホール内では本年もマイクロテクノロジーに関する
シンポジウムが開催されました。テーマとして、マイクロ加工技術、マイクロ加工装置、各研究機関のMEMSへの取組み状況、エネルギーハーベスティング、ワイヤスセンサネットワーク、ナノテクノロジーが取り上げられ、MMCはMEMSへの取組みのセッションの中で発表しました。発表内容は、MMCの活動紹介、MMCが現在運営している国家プロジェクト及び次期プロジェクトの紹介、国内外のMEMS産業動向、日本のMEMS産業の課題、それに対応したマイクロナノオープンイノベーションセンター(MNOIC)の設立について報告しました。発表に対し、聴講者からMNOICについて興味を持って頂いたようで、Siemenseの方から海外企業でも使えるかと質問頂き、将来的にはオープンの方向で検討中と回答しました。
他のセッションの中から注目された発表を紹介しますと、
エネルギーハーベスタ関連で英perpetuum社は電磁式振動発電で事業を開始しているパイオニア的企業です。今回は熱、光ハーベスタの紹介があり、特に熱型では30℃の温度差で、3mWの発電を達成し、用途の拡大が報告されました。
独Micropelt社は熱電ハーベスタ昨年いち早く事業化を開始した企業です。熱電素子構造はサーモカップル方式で、マイクロ加工により3.3mm□に540個のサーモカップルを直列に接続して140mV/Kの出力を得ています。(右写真)
独PMDM社はミネベアの子会社ですが、電磁発電を用いたワイヤレス押しボタンスイッチを紹介しました。これは熱電と並び現在最も注目されているハーベスタ応用商品で、押しボタンの1回きりのわずかな動きを電力に変えて、スイッチング信号をワイヤレスで送信する機能を持ち、照明用壁スイッチ等への応用が考えられています。
他のブースからマイクロデバイスに関連した注目技術を紹介します。
Fraunhofer ENASはこれまでもMEMSを応用した小型の赤外分光装置を開発してきました。MEMSミラーとグレーティングを組み合わせた小型赤外分光装置は既にirSys社から商品化されています。
次世代型として、可変赤外フィルタと赤外線センサを積層化した超小型赤外分光センサも開発されています。(右写真)
仕様はフィルタ特性の異なる二つの素子で3~12μmの範囲の赤外スペクトルを検出することが可能です。企業との共同研究で商品化を準備中の段階にあるそうです。
R&D専門のホールが設けられ、世界の企業、大学、研究機関からR&Dレベルの技術が展示されていました。その中で注目されたのは、スイスETH研究所の超高精度インクジェットプリンタです。インクジェットプリンタの電子回路パターンへの応用が進んでおり、既に100μmの線幅の回路を作製することが可能になっています。ETHはこれまでのの技術を大幅に凌駕し、50nmの線幅のメタル線を作製することに成功しました。インクジェットから噴出するインク量の制御はこれまで1ピコリットルだったのを100ゼプトリットル(1ピコの10の7乗分の1)まで制御することに成功しました。また50nmの線を描くだけではなく、径50nmのナノピラーを作製することも可能、つまり垂直に成長させることも可能で、試作品が展示されてました。従来この領域は、EBリソやボトムアップ方式でしかできませんでしたが、インクジェットであれば大幅な低コスト化が期待されます。
阪井
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