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2011年5月13日 (金)

サウジアラビア研究所訪問2011 報告

サウジアラビア研究所訪問 2011 報告
                                                                         2011年5月13日
                                                                              MMC 三原

  アラブ首長国連邦(UAE)のアラス・アルハイマ(Ras Al Khaimah)にて2011年4月26-28日に開催された第17回マイクロマシンサミット(Micromachine Summit 2011)に前後して、サウジアラビアの研究所をMEMS協議会国際交流委員会委員長の下山東大教授および安達九州大学教授(Life BEANS九州センター長)と一緒に訪問しました。訪問先はサウジアラムコの研究所、およびKing Abdullah University of Science and Technology (KAUST)です。砂漠の真ん中に人工的に作られたオアシスと広大な研究所、最新の設備と世界中で活躍されている研究者のスカウト・・何から何まで驚きの連続でした。
<サウジアラムコ研究所>(4月25日)
 サウジアラムコは、サウジアラビア王国の国営石油会社であり、保有原油埋蔵量、原油生産量および原油輸出量は世界最大規模を誇ります。初期は米国資本でしたが、1973年、サウジ政府が経営参加、1980年に実質的な完全国有化、1988年に現在のサウジアラムコになりました。サウジアラビア(アラビア半島)の東岸(オマーン湾)のダンマン空港から車で約1時間の海岸部にあるザフラーン(Az Zahran)と言う町全体がアラムコの本社と研究所です。今も砂漠の真ん中にヤシを植え、施設が造られていました。研究所の研究者は250人と比較的小規模でした。訪問のきっかけは、サウジアラムコの日本法人が下山東大教授を訪問し、MEMSセンサーに関して情報交換を行ったのが始まりです。研究テーマの特徴ですが、研究テーマをUp Stream ProjectとDown Stream Projectに分類し、前者は基盤技術としてナノテクやロボット技術、後者はサウジアラムコの事業に欠かせない応用技術の研究開発です。研究スタイルは米国的で自由で開放的な雰囲気です。世界中から優秀な研究者を集めると同時に、サウジアラムコの抱える技術的な課題を世界中に発信し、あらゆる共同研究の可能性を探る姿勢は大変優れたオープンイノベーションであると感じました。サウジアラムコの研究者は下山東大教授の開発したMEMSカンチレバーを用いた世界で初めての、実用的なせん断応力センサーに強い興味を示されていました。一見、世界最大級の石油会社にしては基礎研究や新事業の研究が希薄であると感じましたが、もう一つの訪問先であるKAUSTの研究設備はサウジアラムコが独自の予算を使って導入されたと言うことで、基礎研究から応用研究まで国家的な広がりで研究開発が進められている印象でした。

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                               写真1.サウジアラムコ研究センター

<KAUST>(4月29日~30日)
  King Abdullah University of Science and Technology (KAUST)は、サウジアラビア(アラビア半島)の西岸(紅海)のジェッタ空港から車で約1時間の北東部にあるTuwwalと言う場所で、町全体が大学施設です。3年前(2009年9月)に出来た新しい大学ですが、広大な砂漠に僅か1年間で壮大な大学(4km角)、学生や研究員の宿泊施設を作ったとのことでした。4月なのに気温は35度と外は暑いのですが、研究所の中には研究施設、図書館、マーケット、保育園、学校と何でも揃っており、かつ研究設備はサウジアラムコが500億円出資した最新設備が入っています。
  訪問のきっかけは安達九州大学教授が米国の大学教授であったJabbour 教授と懇意にされており、その後KAUSTに異動され今回の招待を受けたものです。このように世界で最も活躍をされ、世界中の企業と共同研究をされている先進的な研究者を迎え、かつ学生も全額奨学金を準備して世界中から集めています。研究設備の充実度も度胆を抜かれます。特にナノ材料の評価関連の設備は充実しており、TEM(透過型電子顕微鏡)は最先端の物が8台もある等、我々の尺度では測れない規模です。今回は、太陽電池用のナノ材料、触媒用ナノ材料、MEMS関連施設を見学させて貰いました。28日はサウジアラビアでは休日でしたが研究所を見学させて頂き、また29日は下山先生、安達先生を含むKAUSTの研究者の研究セミナーを開催して頂く等の最大のホスティングをして頂きました。残念ながら、少なくてもサウジアラビアとUAEの中東の研究所は米国と欧州との連結が強く、MEMSやナノテクの製造・評価装置は欧米の企業製が殆どでした。砂漠の真ん中に石油資本で広大な研究所が1夜にして完成し、欧米の研究者が活躍する研究者が世界的な成果を出していく・・少し疎外感を感じるのは私だけでしょうか?

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       写真2.KAUSTでのランチ、多くの研究者と一緒に(右の奥がJabbour 教授)

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                                          写真3.壮大な研究施設

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