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2010年6月

2010年6月28日 (月)

独フラウンホーファー研究所 訪問記

 Fraunhofer研究所はドイツ国内に60箇所前後ありますが、今回は、MEMSと関係の深い、ドイツ東部のドレスデンに近い二つのFraunhofer研究所、ENASElectric Nano Systems)とIPMSInstitute for Photonic Microsystems)を訪問しました。ENAS(所在地 ケムニッツ)を624日、IPMS(所在地 ドレスデン)が625日です。

目的は、今後、重要視されるOpen Innovationの必要条件として、世界屈指の技術レベルを誇るFraunhoferの中味について情報収集し、MEMS協議会メンバーの理解を深め、協業の可能性を探ることです。また、Fraunhofer研究所は独立性の強い研究所から構成され、技術領域の重なりが少なからずあるように見えます。協業を探る上では、各々の強みや戦略上、強化しようとしていることを把握し、最適なパートナーが誰かを理解しておくことが重要です。

今回訪問し、情報交換した2つを比較しながら、各々の概要をまとめると以下のようになります。

Fraunhofer-ENAS

  主な取組み領域は、スマートシステム(センサーネットワーク応用と類似でPowerRF、センサー、信号処理を集積化する)、Printed Functionality(考え方はMacro-BEAMSと類似だが、Printed Batteryの開発に成功した)、3Dシミュレーション、信頼性、である。

  プロセス技術の強みがベースにあり、新規なプロセス開発から推進している。顧客の相談により、問題解決のソリューションを提供する。CVD-Cuやピラー同士の接合など、ユニークなプロセスがある。

  提供するサービスは、コンサルテーション、デザイン、設計・試作、信頼性、など、デバイス開発の全てを包含していると言える。少量の生産までは対応するが、量産になれば外にプロセス移転することになる(民業圧迫はできないから)。

  昨年、5月に新しい研究棟ができた。クリーンルームは隣接するケムニッツ工科大学にあり、6インチが基本で、半分くらいは8インチにも対応できるとのことであった。

  Printed Functionalityが加わったこと、ケムニッツ工科大のBaumann教授が行っていた基礎研究と産業ニーズをFraunhoferがつなぐ、という構図になった。MEMSだけに集中するのを避け、研究テーマの多様性を確保するためにGessner所長自らテーマおよび人材を選定したようである。

  信頼性については、試験だけでなく、解析や改善点のアドバイスなど、かなり経験を蓄積している印象がある。内部構造をミクロに見るために、X線トモグラフィ装置を導入している。

  Dシミュレーションは、デバイスだけでなく、パッケージングや集積した場合の熱や電気的なシミュレーションである。

  ポリマーに関する研究もあり、ホットエンボスを活用し、Microfluidicsの研究も行っている。

  ケムニッツ工科大学と密接な関係を持っている。多くの学生が研究に参加しており、単位にもなるので、研究所と学生の双方にとってメリットのあるシステムとなっている。

Fraunhofer-IPMS

  取組み領域は、光MEMSOLED

  MEMSにおいては、スキャニングミラー(1D、2D)、マイクロミラーアレーがあり、少量ながら、フレキシブル露光のための1Mピクセルミラーアレーを生産し、出荷しているとのこと。ここにもX線検査装置がある。

  OLEDについては、世界における3大拠点の一つとのことだが、真偽はよくわからない。照明やマイクロディスプレーの試作品が展示されていた。なお、MEMSとは別のクリーンルームを持っている。

  基本的に外部へのプロセス移転は好まず、できるだけ所内のクリーンルームの稼働率を上げたいと考えている(コスト競争力については考慮していない)。一応、3シフトで週5日稼動である。

  2006年に稼動したかなり新しいクリーンルームは、6インチ対応、クラス10で、0.35umのステッパー、ナノインプリントなど、MEMSに必要とされる装置はかなり充実している印象であった。

  ENASのように、新規なプロセス開発を先取りして進めて、それによって差別化されたソリューションを提供する、というより、一般的なプロセスをしっかり固め、確実なプロセスを有効活用して、その組合せやデザイン、蓄積された経験を生かしてソリューションを顧客に提供するスタイルと思われる。生産に近いことから、自然な印象である。

  ENASほど、はでに多くのプロジェクトを引っ張っていることはなさそうで、地道な試作、研究活動を行っている。

  ドレスデンの大学と関係が深い。ただし、距離的には隣接するというわけではなく、同じ市内で離れている。学生の参画は他と同様にある。

 なお、いずれも728日~30日に開催されるマイクロマシン/MEMS展に出展します。直接コンタクトしたい方は、その機会もご活用ください。(MEMS協議会事務局)

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仏LETI 第12回アニュアルレビュー参加報告

 フランスにおける総合的な研究機関MINATECの年次報告イベントであるMINATEC Cross Road2010の一環として、その中心的研究所であり、MEMS協議会の海外アフィリエートの一つであるLETIの第12回目のAnnual Reviewが、2010622日、同研究所の所在地であるグルノーブル(仏)で開催されました。講演会は、LETI自身の研究成果だけでなく、様々なプロジェクトの協業相手からの講演も含めて構成されていました。マイクロマシンセンターからも、「MEMS R&D Landscape in Japan」と題して、MEMS協議会事務局の片白が講演をしました。

 講演としては、次のトピックが発表されました。参考になるポイントも含め、紹介しておきます。

 (1)LETIの全体状況」CEO Malier

  これまでの300mmラインやMEMS 8インチラインに加え、300mmの3D集積の研究棟を建設する予定であること。

  低消費電力CMOSの取組みで、20nmノードのSRAM試作に成功し、11nmの達成も見えたこと。

  Nokiaとの協業で、高速短距離通信の112Mbpsの伝送に成功したこと。駐車場応用において、位置情報も10-50cmの精度で得られたこと。

  CMOSとの3D集積で、有機LEDによるマイクロディスプレイ(WVGA1cm以下のサイズ、カラー)の試作に成功したこと。

(2)ルノーの電気自動車(EV) ルノー社のエキスパートリーダー

  ルノーとしては、2011年に現在のラインアップのガソリンエンジンを電気モーターに換えることによるEV化を予定していること。さらに2015年までに、全て新規に設計したEVをラインアップする予定であること。

  EVを実現する技術的なチャレンジとしては、電池のモニタリングや管理、社会インフラの整備、短時間充電のための技術革新があること。

(3)脳機能障害のナノテクによる治療 病院での共同研究(グルノーブル) LETIの科学アドバイザーであり病院医師・研究者

  脳に電極を入れて脳機能障害を治療する取組みが紹介された。

  2011年には専用の治療棟ができて本格的な治験が行われること。

  ナノテクによる刺激を与えるユニットの小型化が求められていること。

(4)エネルギーモニタリング LETIの成果

  アプリとして、ホームユース、EVのための電池モニタリング、デバイスのためのエネルギーハーベスティングなどを見ていること。

  電池モニタリングでは、電流センサーが必要であること。EV一台に10個のセンサーが必要である。SOxセンサーも必要。

  ホームユースに対しては、暖房、照明、位置情報、換気などの機能にエネルギーモニタリングが関係すること。換気には、安価なCO2センサーが必要で、現状、LETIでは赤外線センサー(ボロメータ)によるものができているが中期的には、50ドル以下のセンサーが必要であること。

  スマートグリッドには、ワイドギャップの半導体が必要で、GaNに取組んでいること。

(5)光リンク

  CMOSのプロセスを活用したフォトニクスのウエハー試作ができていること。そのフォトニクスのウエハーとCMOSのウエハーの接合、受発光素子、変調素子の3D集積でチップレベルの光配線ができるようになったこと。

マイクロマシンセンターからの講演「MEMS R&D Landscape in Japan」では、伝統的な日本のメーカーであり、部品供給元が日本に多くあるはずの、任天堂Wiiやデジタルカメラの手ぶれ防止ユニットに採用された加速度センサーやジャイロスコープが、ヨーロッパのSTMicroelectronicsや米国のInvenSenseのデバイスであり、日本のデバイスメーカーからのものではないのはなぜか、すなわち、この分野で日本が競争力を失いつつあるのはなぜか、ということを日本のMEMS産業にとっての問題点として捉え、20103月にまとめられた産業動向調査や内外技術動向調査の示す傾向を踏まえて、背後にある原因と課題をいくつか挙げ、解決策のひとつとして、つくばイノベーションアリーナ(TIA-NMEMSについて紹介しました。

 全体としては、ナノエレ、パワーエレ、3D集積、センサーネットワーク応用、医療応用など、TIA-Nanoで取組まれるであろう領域がLETIにても取組まれており、厳しい競争にもなるであろう一方、協業の可能性も感じました。MEMS協議会として、今後も様々なレベルの情報交換や協業のきっかけ作りに貢献したいと思います。(MEMS協議会事務局)

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2010年6月 4日 (金)

広報誌「マイクロナノ」2010年4月号発行

 このたび、広報誌「マイクロナノ」2010年4月号(No.71)を発行しました。マイクロマシンセンターの広報誌ページから閲覧できます。

 下記より直接アクセスすることもできます。
→ http://mmc.la.coocan.jp/info/magazine/71j/micro71.html

================ ≪目次≫ ================

・平成22年度事業計画の概要

【財団法人マイクロマシンセンター事業の動き】
・調査研究・標準化事業の動き
・MEMS協議会(MEMS Industry Forum)の動き
・普及広報等事業の動き

【技術研究組合BEANS研究所事業の動き】
・BEANS研究所平成22年度事業計画概要
・「BEANSプロジェクト」成果・トピックス
・Gデバイス@BEANS開始
・賛助会員・組合員等の活動紹介
  :株式会社日立製作所 機械研究所

    (普及促進部@マイクロマシンセンター)

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