2019年11月 7日 (木)

IEC/TC47国際標準化全体会議(2019年10月15~18日)参加報告

IEC(国際電気標準会議)/TC47(半導体分野技術委員会)の国際標準化全体会議が、10月14~18日まで、中国・上海のShanghai EXPO Centre(上海世博中心)にて開催され、関連する10月15~18日の会議に参加しました。

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会場の外観写真

 10月15日には、TC47/SC47E/WG1会議(個別半導体、センサ分野)が開催され、現在審議中の規格案についての意見交換が行われました。日本からは、2015~18年度に経産省の国際標準獲得・普及促進事業としてマイクロマシンセンターがとりまとめて取組みました「スマートセンシング・インタフェースに関する標準化」に関して、提案済み・審議中の2件(IEC60747-19-1「スマートセンサの制御方式」、IEC60747-19-2 TS(Technical Specification)「スマートセンサおよびスマートセンサを駆動する電源の特性表示方法」)について、プロジェクトリーダ(PL)の1人であるセイコーインスツル古田部長から、各国に状況説明が行われました。IEC60747-19-1「スマートセンサの制御方式」については、現在、国際標準発行直前まで到達しており、IECエディターからのエディトリアルな最終確認に対応中であることを報告しました。IEC60747-19-2 TS「スマートセンサおよびスマートセンサを駆動する電源の特性表示方法」については、CD(委員会原案、Committee Draft)投票結果の各国コメント対応状況を議論し、問題無く了承され、次フェーズ(TSの最終フェーズであるDTS、Draft Technical Specification)へ進むことになりました。また、今後提案予定の規格案の内容を各国に報告するFuture work presentationでは、一般社団法人慣性センサ応用技術研究協会梅田章理事長から「Measurement methods for Accelerometers」が紹介されました。 10月16日にはTC47/SC47F/WG1-3&MT会議(MEMS分野)が開催され、29名(日本12、韓国4、中国11、ドイツ1、米国1)が出席し、現在審議中の規格案についての意見交換が行われました。日本からの出席者は、SC47F主査である熊本大学元副学長高島和希教授、同じく主査である次世代センサ協議会大和田邦樹専務理事、PLである神戸大学神野伊策教授、PL名古屋工業大学神谷庄司教授の代理である名古屋工業大学泉隼人助教、SC47F国際幹事マイクロマシンセンター三原孝士をはじめとした12人でした。日本提案であるIEC62047-37「圧電MEMSデバイスのセンサ特性に関する信頼性試験方法(PL:神戸大学神野教授)」のCDV(投票用委員会原案、Committee Draft for Vote)投票結果の各国コメント対応状況を議論し、問題無く了承され、次フェーズ(国際標準発行前の最終フェーズであるFDIS、Final Draft International Standard、最終国際規格案)へ進むことになりました。同じく日本提案であるIEC62047-35「フレキシブルMEMSデバイスにおける曲げ強度信頼性試験(PL:名古屋工業大学神谷教授)」については、現在、国際標準発行前の最終フェーズFDISの投票中であることが報告されました。

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IEC/TC47/SC47F/WG1-3&MT会議の様子

10月17日に開催されたTC47/WG7会議(半導体デバイス エネルギーハーベスタ、エネルギー変換・伝送分野)では、現在審議中の規格案の審議状況について、主査から報告の後、意見交換が行われました。日本からの出席者は、本WGにおいて3人の主査の1人として務めておられる東京大学鈴木雄二教授をはじめ、神戸大学神野教授、兵庫県立大学藤田孝之准教授、産総研山本淳先生、他7名が、各国と活発な議論を行いました。今後提案予定の規格案の内容を各国に報告するFuture work presentationでは、東京大学鈴木雄二教授からは「Measurement method of wrist-won vibration energy harvesting device」(報告済み)に関する最新検討状況が報告されました。また、神戸大学神野教授からは、「Standard test method of energy harvesters under impulsive force for wearable applications」について内容紹介が行われ、各国と議論しました。さらに、産総研山本先生からは、熱電関連で今後日本から提案する規格案(報告済み)に関する最新検討状況が説明されました。

10月17~18日には、TC47/SC47F全体会議、TC47/SC47E全体会議、TC47全体会議が開催され、各WGおよびSCにおいて決議された内容について各主査及び議長から報告が行われ、1週間に渡るTC47全体会議がつつがなく遂行されました。期間中、各国の出席者と交わした密な議論を通じ、各国の規格案開発について深い相互理解が得られ、引き続き審議への相互協力を誓い合うことができたことは大変有意義でありました。

次回の本会議は来年11月にドイツ・フランクフルトで開催される予定です。また、日韓中が持ち回り開催を行っているSC47F(MEMS分野)の夏季WG会議としては、次回日本開催となり、来年6月3~5日に熊本で開催します。同じく、日韓中が持ち回り開催を行っているTC47/WG7(エネルギーハーベスタ分野)の春季WG会議としては、こちらも日本開催となり、来年2月24日に奈良で開催します。

調査研究・標準部長 大中道 崇浩

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2019年10月23日 (水)

第2回SSN-WG3交流会「高精度時刻の社会実装の意義と課題」(10月9日)開催報告

 2019年10月9日(水)14:00~18:15にマイクロマシンセンター会議室にて第2回SSN-WG3交流会「高精度時刻の社会実装の意義と課題」及び意見交換会を開催致しました。
 スマートセンシング&ネットワーク研究会ワーキンググループ3(SSN-WG3)では原子時計の研究開発に関する活動を行っており、2015年~2018年にNEDO道路インフラモニタリングプロジェクトの中で高精度(10ms@30カ月)と低消費電力(60mW)を両立した小型原子時計(ULPAC : Ultra-Low Power Atomic Clock)の開発を行いましたが、さらなる原子時計の高度化に向けたプロジェクト立案活動を行っており、その一環として、小型原子時計が社会実装された時に、どのような社会変革が起きるかを議論する場として本交流会「高精度時刻の社会実装の意義と課題」を開催しております。
 第2回の今回は、放送局や海底で高精度時刻がどのように活用されているかに関して、セイコーソリューションズ株式会社の橋本直也様と国立大学法人東京大学地震研究所海半球観測研究センターの塩原肇教授からご講演を頂くとともに、国立研究開発法人産業技術総合研究所計量標準総合センター物理計測標準研究部門高周波標準研究グループの柳町真也主任研究員を座長として「小型原子時計が革新する高度情報化社会と、そこで求められるスペック」に関した討論会を行いました。この分野に関心のあるメーカ、ユーザ、商社、研究機関を含め42名の参加者があり、活発な議論がなされ、大盛況でした(写真1:会場の様子)。

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写真1 会場の様子

 先ず初めに、主催者の一般財団法人マイクロマシンセンターの長谷川専務理事より、開会の挨拶(写真2:長谷川専務挨拶)がありました。

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写真2 長谷川専務理事挨拶

 その後セイコーソリューションズの橋本氏から「次世代放送局を支える高精度時刻同期技術PTP(Precision Time Protocol)と超小型原子時計CSACを内蔵した製品が必要とされる背景」と題する講演(写真3:橋本氏講演の様子)が行われました。橋本氏の講演では、現在、放送局ではSDI(Serial Digital Interface)システムからIP(Internet Protocol) システムへの大きなパラダイムシフトが起きており、 IP化することでケーブル本数や機器数を大幅に削減できるばかりでなく、リモート制作や機器の共有化等のこれまでにない新機能の実現が期待できるようになっているとのことでした。このIP化ではPTPによる高精度に時刻同期する仕組みが必要であり。そのためには小型の原子時計(CSAC : Chip Scale Atomic Clock)が必要であるが、現状は高価で品質にも課題のある海外製しかなく、国産の安価で高品質のCSACが待望されているとのことでした。

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写真3 橋本氏講演の様子


 続いて、東大地震研の塩原教授から「海底観測での小型原子時計の活用」と題する講演(写真4:塩原教授講演の様子)が行われました。海底地震観測の概要からこれまで東大地震研で実施されてきたオフライン海底地震観測例とその時に使用した内部時計、高精度周波数源の海底観測での活用、CSACの海底観測での国内外の導入例とULPACに期待するポイントのご紹介がありました。海底地震観測のULPACへの期待としては低コスト化と低消費電力化が最も大きいとのことでした。

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写真4 塩原教授講演の様子

 最後に産総研の柳町先生から「小型原子時計が革新する高度情報化社会と、そこで求められるスペック」に関する概要紹介の後、どのようなスペックが高度情報化社会において原子時計に求められるかの討論が行われました(写真5 柳町先生の討論会の様子)。会場から活発な発言があり、大いに盛り上がりました。精度的にはNEDOの道路インフラモニタリングプロジェクトで開発したもので十分であるが、現状海外製品で問題となっている品質等についての要望が多く出されました。
 講演会、討論会の後、ご講演頂いた講師の方々を囲んで、有志で意見交換会が行われ、国産原子時計開発に向け、活発な意見交換がなされ、大いに盛り上がりました。
 次回の交流会は2020年の1月頃に開催を予定しています。

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写真5 柳町先生の討論会の様子

(一般財団法人マイクロマシンセンター 武田宗久)

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マイクロマシン/MEMS分野関連【2019年10月の経済報告】

マイクロマシンセンターでは、マイクロマシン/MEMS分野を取り巻く
経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信しています。

今月号、マイクロマシン/MEMS分野関連【2019年10月の経済報告】をお届けします。
業務の参考として頂ければ幸いです。  
以下アドレスよりPDFをご参照下さい。
 
   2019年10月号(「2019_10.pdf」)をダウンロード
    (http://mmc.or.jp/info/monthly/economic_report/2019_10.pdf

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2019年10月10日 (木)

第38回マイクロナノ先端技術交流会 (第1回医療MEMS研究会(SSN研究会WG5))(9月30日)開催報告

 2019年9月30日(月)の午後、マイクロマシンセンター内にて第38回マイクロナノ先端技術交流会(第1回医療MEMS研究会)を開催しました。

 今回の先端技術交流会は、「ヒトの理解に向けたセンシングの最前線」をテーマに、東北大学 産学連携機構 イノベーション戦略推進センター 特任教授 中村力先生、東京工業大学工学院 研究員 関口武治様、立命館大学 スポーツ健康科学 教授 藤田聡先生にご講演いただき、産業界や大学から42名が出席し大盛況でした。

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会場の様子

 最初の中村先生からは、「飲み込みセンサ」について、ご講演いただきました。内容は、現状の体温測定の課題から深部体温測定の重要性をお話され、それを実現する手段として飲み込みセンサを提案されています。そして、その飲み込みセンサの構造や原理を詳しく紹介いただきました。さらに、深部体温測定が実現する様々なアプリケーションの提案もしていただき、これまで不明であった様々な病気や体調不良のメカニズムの解明が明らかになると大きな期待を抱かせる話でした。

 続いて関口様からは、「多方面での応用が期待されるダイヤモンド量子センサー」について、ご講演いただきました。内容は、固体量子センサの基礎から始まり、関口様が研究されているダイヤモンド中に形成される窒素(N)と空孔(V)からなる格子欠陥を用いたNVセンサの原理や特徴をお話いただきました。また、NVセンサの応用範囲もお話いただき、個人的には今後のヒトの脳の活動を簡便にセンシングできるセンサとして、大いなる期待をもちました。

 最後に、医療MEMS研究会からは、藤田先生より「筋肉の維持・増加に向けた栄養と運動介入」について、ご講演いただきました。内容は、サルコペニア(加齢に伴う筋量と筋機能の低下減少)の概要やその弊害、さらには筋量と筋機能の低下を抑えるための栄養摂取や運動のお話をしていただきました。ヒトが生産的な活動をし続けるには、体力の維持・向上がベースとなり、その大切さを改めて認識することができました。

 講演会後の懇親会では、ご講演いただいた先生方を囲んで、講演内容を中心に多くの意見がかわされました。

(産業交流部 松下智彦 / 医療MEMS研究会 網倉正明)

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2019年9月25日 (水)

マイクロマシン/MEMS分野関連【2019年9月の経済報告】

マイクロマシンセンターでは、マイクロマシン/MEMS分野を取り巻く
経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信しています。

今月号、マイクロマシン/MEMS分野関連【2019年9月の経済報告】をお届けします。
業務の参考として頂ければ幸いです。

  
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2019年9月24日 (火)

TIA連携大学院サマーオープンフェスティバル:第32回MEMS講習会及び第3回学生・若手研究者向けMEMS講座の報告(9月3日)

 2019年9月3日(火)に東京大学工学部5号館56号講義室において、午前・午後の2部制で、第3回学生・若手技術者向けMEMS講座(午前)及び、第32回MEMS講習会(午後)を開催致しました。MEMS講習会は、MEMS協議会に所属するMEMSファンドリーネットワーク企業を中心に企画し、都内と地方都市で年に1回ずつ開催しています。都内でのMEMS講習会が、TIA連携大学院サマーオープンフェスティバルのプログラムとなったのを受け、学生・若手技術者向けMEMS講座も併せて開催しており、講師の方も含めて総勢63名(学生5名)が熱い討論を繰り広げました。今回のプログラムは、次世代医療技術研究会(東京大学)と4大学連携ナノ・マイクロファブリケーションコンソーシアムと共催させていただくことで、TIA連携大学院のプログラムに相応しい学生に寄り添った企画になったのではないかと考えております。

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写真1.講演会会場の様子

 午前中に開催いたしました第3MEMS講座では、企画を取り纏めたMEMSファンドリーネットワークの浅野委員長の挨拶の後、2つの講座を行いました。まず、最初の講座は、東京大学の三宅亮先生より「マイクロ化学システムの高度化のためのマイクロ流体回路解析・設計技術」と題しまして、マイクロ流体の基礎から最新の研究成果までをご講義いただきました。初心者向けにマイクロ化学・流体の基礎に軸足を置いていただいたため、最新の研究成果をもっと詳しく聴きたいという聴講者もいらっしゃったかと思います。特に実機での検証を通して確立された流体回路解析技術は、システム要素間の干渉などの推定を可能としており、システムへ組み込んだリアルタイム制御などの新たな可能性を示した大変興味深い内容でした。今回の講座を機会として、マイクロ化学・流体の分野に興味を持っていただき、研究室の扉を叩いていただければと考えております。

 続いての講座は、慶応義塾大学の田口良広先生より「光MEMSを用いた熱流体システムデザインとバイオ応用」と題しまして、光MEMSを用いた拡散係数計測技術を中心にご講義いただきました。バイオ分野などでは、非測定対象からのノイズを抑制するために微粒子表面を修飾することがありますが、それが微粒子の拡散係数に影響を与えるため、設計時と異なる現象が発生することがありました。田口先生の研究されている熱駆動MEMSミラーを用いた光干渉式マイクロ拡散センサは、表面状態や粒子径に依存する拡散係数の計測を簡単にすることができ、精度の高いシステム設計を可能とします。微粒子が関わる技術分野は多く、様々な応用展開が期待されるため、今後の研究成果が気になる講座となりました。

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写真2.東京大学 三宅先生

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写真3.慶応義塾大学 田口先生

 昼休みを挟みまして、午後からは第32MEMS講習会「超高速・多数同時接続・超低遅延の5G時代が求めるエッジデバイス:―5Gは社会をどう変革していくのか―」を開催いたしました。本講習会は、5Gが生み出す新たな可能性につきまして、その特徴である「超高速」「多数同時接続」「超低遅延」の3つの観点からプログラムを構成いたしました。

 講習会では、主催の一般財団法人マイクロマシンセンター専務理事長谷川英一の挨拶のあと、1件目の特別講演として、日本電気株式会社のネットワークサービスビジネスユニット新事業推進本部の藤本幸一郎様より「社会変革をもたらす5G -革命的技術が切り拓く未来-」と題して、ご講演いただきました。5Gは、現在の4Gの技術的延長に留まらず、非連続・革新的な技術として社会に貢献していくものであり、AI/IoTによる「人」「モノ」「コト」の時代への変化をもたらしていくそうです。この社会の革新をもたらす「超高速」「多数同時接続」「超低遅延」という特徴は、一つのシステムで実現するものではなく、複合的なネットワークにより構築されていくようで、用途に応じたシステム構築を必要としているとのことです。また、NECが様々な事業分野での協業で進められている実証実験のご紹介があり、エンターテイメントだけでなく、地域の見守りや遠隔診療、人がいけない場所での遠隔作業など、IT技術で生活のあらゆる面を向上させていくデジタルトランスフォーメーションの一端を垣間見ることができました。4GWiFiなど各種通信手段の急速な発展により格段に便利になっている日常の中で、5Gで何が変わるのかがピンと来ていませんでしたが、その革新技術のポテンシャルの高さを認識することで、5Gに対する期待とともに新たなビジネスチャンスの息吹を感じさせられるご講演となりました。

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写真4.日本電気株式会社 藤本氏

 次に、古野電気株式会社の酒井暢之様より「5Gを支える社会基盤 -高精度時刻同期への取り組み-」と題して、高精度時刻の重要性についてご講演いただきました。スマートフォンなど移動体通信機器は、基地局を経由してお互いに繋がっていますが、それを使っている人が移動することで、それまで繋がっていた基地局から別の基地局への切り替えが必要になります。しかし、受け渡しをする基地局間の時計が合っていないと切り替えができないため、GNSS(Global Navigation Satellite System)などを利用して時計合わせをしています。古野電気は、このGNSS受信チップの国内最大手であり、5Gを支える高精度時刻同期網の一翼を担われておられます。ご講演では、基地局だけでなく、放送局や変電所など、我々の日常に溶け込んでいる様々な事業分野へ拡大していく高精度時刻の用途につきまして、ご紹介いただきました。このように高度情報化社会の根幹をなす高精度時刻だけに、ひとたびトラブルが発生すれば社会的損失も甚大になります。そのため、GNSSからの高精度時刻の安定供給を担保する技術が必要であり、雷等の自然現象だけでなく、ジャミングやスプーフィングなど人的災害への対策や、トラブル発生時のホールドオーバー機能の強化にも取り組まれているとのことで、人知れず社会を支えている技術集団がいることを改めて認識するとともに、高度情報化社会で生きていく我々にとって、今後の動向が気になるご講演となりました。

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写真5.古野電気株式会社 酒井氏

 ここで休憩を挟みまして、「5Gによる革新に向けた取り組み」に関する3件のご講演をしていただきました。最初のご講演では、慶応義塾大学大学院の南澤孝太教授より「超低遅延が実現する距離のゼロ化 -Haptics(触覚)による人の境界線の拡張-」と題しまして、触覚伝送が切り拓く様々な可能性について、ご講演いただきました。触覚は、モノとヒト、自己と環境、自己と他者など、様々な関係性に大きく関わる感覚であり、この情報を伝送できるようになれば経験の共有という新たな可能性が拡がります。これまでに計測・伝送・提示された感覚情報は、視覚の赤・緑・青の3原色などでしたが、経験の共有に向け、力・振動・温度を3原触とした触覚のフルカラー化に取組まれているとのことです。個人的には、触覚は自己の境界を認識する感覚であり、3原触を伝送できるようになれば、人の境界は無限に拡がっていくという話が印象深かったです。これは遠隔診療や遠隔作業だけでなく、直接逢うことが難しい人との経験の共有手段となる可能性を示しており、特に孫の結婚式に出席できない祖母に、孫に直接逢って「おめでとう」と伝えたかのような経験を与える試みは、大変印象に残りました。ロボットなど産業の高度化だけでなく、人々のQOL向上に寄与できる技術としても期待が膨らむご講演となりました。

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写真6.慶応義塾大学 南澤先生

 2つ目のご講演は、株式会社テクサーの朱強代表取締役社長より、「IoT普及への鍵となるか -ZETAの挑戦-」と題して、LPWA(Low Power Wide Area)の一翼を担うZETAについてご講演いただきました。ZETAの特徴は、超狭帯域による多チャンネル通信、メッシュネットワークによる広域分散アクセス、低消費電力双方向通信の3つで、そのアライアンスにはNTTドコモやソフトバンクなどのキャリアーも入っているそうです。ZETAは、世界のLoRa市場の半分を占める中国での導入が進んでおり、既に上海などで大規模メッシュネットワークが構築されています。国内では、アライアンス企業が、鉄道や農業、スマートビルディングなど様々な事業分野でWG活動を進めており、そのいくつかをご紹介いただきました。個人的に興味深かったのは、低ビット画像データをAIで解析することで人・モノの位置情報のみを価値として提供するIoTカメラです。プライバシーを守りながら待機列の長さや空席情報などの情報を数年間にわたり単三電池で提供できるサービスとして注目されます。また、メーター検針のカメラによる自動化も実現しており、低消費電力無線通信技術の可能性の広がりを感じました。昨今の高画像データのAI分析とは逆を行っており、その発想の柔軟さに眼から鱗の思いでした。このZETAが、日常の様々な不便を解消し、人々のQOLを向上させてくれることを期待させるご講演でした。

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写真7.テクサー 朱氏

 最後のご講演は、東京大学地震研究所の中川茂樹准教授より「5Gが切り拓く地震防災・減災-地震発生メカニズムの解明と予測精度向上への挑戦」と題して、地震観測のご講演をしていただきました。日本には地震観測点が1600ヶ所以上あり、鉄道や自動車などノイズ源の多い首都圏では地下20mに地震計が設置されているそうです。地震観測点は、地震計(含むAD変換)とGNSS(高精度時刻)、通信、電力などから構成されており、山岳部等のは電源確保が難しい地域では、太陽電池などが利用されているようです。この観測点で使われている地震計は機械式で、短周期タイプや広帯域タイプなど地震観測に適したものが使われているそうですが、自動車やスマホなどに搭載されているMEMS加速度センサは使われていないとのことです。これは地震計に求められる長期安定性やノイズレベルなどの仕様を満たしていないためですが、MEMS加速度センサの性能も年々向上しており、その最新技術を導入することで建造物やライフラインなど広範な施設から地震計測ビックデータを収集できるようにし、それに基づくインテリジェント地震波動解析などによる地震観測・予測の質の向上を図ろうとされているとのことです。この動向は、MEMS加速度センサのような安価なセンサからのデータであってもビックデータとして解析することで、どんなに正確なデータでもデータ数が少ないために見出せなかった知見などを得られる可能性を示しており、今後のMEMSセンサの活用法の在り方を考えさせるご講演となりました。

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写真8.東京大学地震研究所 中川先生

本講習会の終了後には、講師の方々を囲んだ意見交換会を開催し、講習会での質疑応答では足りなかった時間を補って余りある有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。最後に、ご講演者を始め、ご参加・ご協力いただいた全ての方々のお陰で有意義な時間を持てたことに対して、御礼申し上げます。

(産業交流部 小出晃)

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SENSOR EXPO JAPAN 2019(2019年9月11日-13日)報告

 SENSOR EXPO JAPAN 2019は、フジサンケイ ビジネスアイ様の主催で、一般社団法人 次世代センサ協議会様の特別共催を得て、測定計測展、第15回総合試験機器展、地盤技術フォーラム2019、第21回自動認識総合展と同時開催されました。本展示会では、経済産業省 製造産業局 産業機械課 課長補佐 池田秀俊様による基調講演「我が国製造業の課題と展望」を始めとして、製品・技術発表会、次世代センサフォーラム展示、技術発表会、次世代センサ総合シンポジウムといった盛り沢山の企画が催され、出展団体63団体、ご来場者(3日間の合計)7,416名の皆様による熱心な技術交流が行われました。

 今回、マイクロマシンセンターは3つのテーマについて出展いたしました。
(1) 道路インフラモニタリング用センサ端末パッケージング技術開発成果
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 殿から技術研究組合NMEMS技術研究機構が受託した国家プロジェクト「道路インフラ状態モニタリング用センサシステム (RIMS) 研究開発」に参画したマイクロマシンセンターのマイクロナノ・オープンイノベーションセンター (MNOIC) が開発したモニタリングシステム用無線センサ端末の高耐久性パッケージング技術として、セラミックスとポリカーボネート樹脂材料からなる新しい高気密性封止パッケージの試作品を出展いたしました。センサのメーカー様とユーザー様から、センサとシステムの実用化時期や価格など、熱心なご質問と技術資料の請求をいただきました。国家プロジェクト終了後は参画企業の自主事業に移行したセンサ及びセンサネットワークシステムの開発に弾みを付けたいと考えております。

(2)MNOICのMEMS研究開発試作支援サービス
マイクロマシンセンターの主要事業のひとつであるMNOICが担当するMEMS研究開発試作支援サービスの活動状況を展示いたしました。本事業は茨城県つくば市にある国立研究開発法人産業技術総合研究所殿の8/12インチ対応MEMSデバイス試作ラインをお借りして展開する事業で、年々右肩上がりのご利用契約をいただいております。MEMSセンサを開発課題としてお持ちのお客様から熱心なご質問をいただき、具体的な打ち合わせもさせていただきました。MNOICでは試作開発のご希望を随時受け付けておりますので、思い立ったらご遠慮なく、私どもの窓口にご連絡をお願い申し上げます。

(3)MEMSセンサ&ネットワークシステム展のご紹介
本展示会はマイクロマシンセンターがJTBコミュニケーションデザイン様と共同で主催する展示会で、2020年1月29日から31日の3日間にわたって、今回の展示会と同じ東京ビッグサイトの西2ホールで実施されます。1990年開始の「マイクロマシン展」から継続開催してきた展示会で、最近はビジネス志向の展示会「MEMSセンサ&ネットワークシステム展」に名前を変えて実施しています。出展申込締切日は9月30日ですが、それ以降でもお申し込みは可能ですので、是非出展のご検討をよろしくお願い申し上げます。
お申込みサイトURL: https://application.jcdbizmatch.jp/jp/nanotech2020/MEMS

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展示会場と説明風景

(MNOIC 原田 武)

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2019年8月23日 (金)

マイクロマシン/MEMS分野関連【2019年8月の経済報告】

マイクロマシンセンターでは、マイクロマシン/MEMS分野を取り巻く
経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信しています。

今月号、マイクロマシン/MEMS分野関連【2019年8月の経済報告】をお届けします。
業務の参考として頂ければ幸いです。  
以下アドレスよりPDFをご参照下さい。
 
   「2019_08.pdf」をダウンロード
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2019年7月24日 (水)

JCK MEMS/NEMS 2019 参加報告(7月16日-18日)

7月16日(火)から7月18日(木)に北海道の旭川クリスタルホールで開催されましたJCK MEMS/NEMS 2019に国際交流活動の一環として、参加するとともに、今年の3月に終了したRIMSプロジェクトの成果広報を行って参りましたので、報告致します。JCK MEMS/NEMS 2019は今年記念すべき第10回を迎えた日本―中国-韓国のMEMS/NEMSに関するジョイントの会議です。 2006年に第1回が開催された中国と日本のMEMS/NEMSのジョイントセミナー(第1回:2006年、北京、第2回:2007年、東京、第3回:2009年、無錫)と2008年に釜山で開催された第1回の日本と韓国のMEMS/NEMSのジョイントセミナーを合体させ、2010年に日本―中国―韓国のジョイント会議として第1回JCK MEMS/NEMSが 札幌で開催されました。それ以降以下のように、日本、中国、韓国が持ち回りで開催し、今回第10回を迎えました。


・第1回:2010年、日本、札幌、(投稿数:34)
・第2回:2011年、韓国、済州島、(投稿数:46)
・第3回:2012年、中国、上海、(投稿数:57)
・第4回:2013年、日本、仙台、(投稿数:60)
・第5回:2014年、韓国、ソウル、(投稿数:23)
・第6回:2015年、中国、西安、(投稿数:38)
・第7回:2016年、日本、札幌、(投稿数:41)
・第8回:2017年、韓国、ソウル、(投稿数:40)
・第9回:2018年、中国、大連、(投稿数:65)
・第10回:2019年、日本、旭川、(投稿数:75)


今回は第10回の記念大会ということもあり、投稿数は過去最多になり、99人(中国26人、韓国17人、日本37人、企業14人、US1人、台湾1人、シンガポール1人、ベトナム2人)の参加がありました。今回のジェネラルチェアは鳥取大学の李教授でした。李教授による開会挨拶の様子を写真1に示します。

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写真1 李教授開会の挨拶の様子


第10回の記念大会ということで、メモリアルトークとして、江刺先生(元東北大教授、現(株)メムス・コアCTO)から「MEMS on LSI for Heterogeneous Integration and Hands-On Access Fabrication」と題する講演(写真2:江刺先生の講演の様子、写真3:会場の様子)がありました。

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写真2 江刺先生のメモリアルトークの様子

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写真3 会場の様子


その他に以下の4件のプレナリートークと4件の招待講演がありました。
【プレナリートーク】
① Moving from IoT to 5G Era - Si MEMS and Flexible Sensors (Chengkuo Lee, National University of Singapore)
② Micro/Nano Manufacturing and Its Applications ? Under One Roof Report ? Part VII (Dongfang Wang, Jilin University)
③ Opportunities and Challenges of Vitro Diagnostic Rapid Tests (Yu-Cheng Lin, National Cheng Kung University)
④Advancement of Micro/Nano Electro-Hydro-Dynamic Printing (Sukhan Lee, Sungkyunkwan University)


【招待講演】
① Flexible and Stretchable Energy Storage Devices (Seung-Min Hyun, Korea Institute of Machinery & Materials)
② Directing and Visualizing Mechanical Motion at the Nanoscale (Zenghui Wang, University of Electronic Science and Technology of China)
③ Current status of Korea’s Additive Manufacturing Technology (Nak-Kyu Lee, Korea Institute of Industrial Technology)
④ Large Scale Production of Metal Oxide Nanoribbons Using Scratch Lithography (Jeong-O Lee, Korea Research Institute of Chemical Technology)


プレナリートーク②ではWang先生(写真4:Wang先生講演の様子)が、これまでの10回のJCK MEMS/NEMSを外観するとともに、他の分野での日本―中国―韓国 (JCK)のジョイント会議にも言及し、工学以外でもバイオメディカル、化学、教育、地理学の分野でも日本、中国、韓国の交流が活発に行われている状況の説明があり、MEMS/NEMS分野でもこの10回の記念大会をマイルストーンに、「一つ屋根の下」として、さらに20年、30年を目指して発展させていこうとの呼びかけがありました。

Fig4_prof_wang

写真4 Wong先生講演の様子


一般セッションでは、24件の口頭発表と41件のポスター発表(写真5:ポスターセッションの様子)がありました。トップの口頭発表としては、慶応大学の三木教授より「MEMS-Based Human Interface Devices」と題する発表がありました。キャンドルタイプのポリマーベースのマイクロニードルにより、髪の毛のある通常の状態での人間の脳の活動計測が可能なことが示されました。武田もNEDO委託事業として実施したRIMS(Road Infrastructure Monitoring System)プロジェクトの紹介を口頭発表(写真6:武田講演の様子)致しました。非常に興味深い発表だとのコメントを多数頂き、RIMSの研究成果の広報ができたと考えます。

Fig5_jck_poster

写真5 ポスターセッションの様子

Fig6_dr_takeda

写真6 武田講演の様子

今回JCK MEMS/NEMS2019に出席して、隣国の中国、韓国の研究者と活発に議論ができ、MMCの国際交流活動の一環としても成果を上げられたと思っています。また、JCK MEMS/NEMSは、最近では3国の研究者のネットワーキングを使って、シンガポールやベトナム等の東南アジアからの参加者もくるようになっており、より大きなコミュニティに発展してきているとの印象を受けました。次回のJCK MEMS/NEMS 2020は2020年7月1日~3日に韓国、高陽市にあるKINTEX(Korea International Exhibition Center)で開催されますが、引き続きMEMS/NEMS分野の国際交流の場として活用していきたいと思います。

(MEMS協議会 国際交流担当 武田 宗久)

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