旨い酒に酔いしれて
■酒に酔った弾みで本当のことをいえば、私は次世代MEMSなんかに興味はないね。だいたい、いくら考えてもMEMSがらみのことに楽しかったことは思い出せない。それどころか、MEMSといえば、さんざんに苦汁を飲まされた苦労ばかりが頭をよぎるくらいだ。もしMEMSをやってなかったらもう少しはましな会社人生だったかも知れぬと思うと泣けてくる。
■そんな私が何故、次世代MEMSをやろうというBEANSプロジェクトに参加しているのかといえば、これも今だから本当のことを言えば“BEANS”という名に惹かれたからだ。Y氏とA氏からこのプロジェクトに誘われたのは、忘れもしない一昨年のクリスマスの日だった。その夜、銀座でご馳走になったことも誘因ではあったが、決定的なのは”BEANS”というプロジェクト名だった。ビーンズがどうのこうのと二人のオジサンから熱い気持ちを打ち明けられたら、私はもうお腹を上にして地べたに仰向けになった犬のように、降参状態だった。
■私がこよなく愛する東北地方ご出身の二人のオジサンは、少年のような情熱で夢を語った。保守層を代表するようなY氏とA氏がそんなヒップな名前をプロジェクトにつけようとは、どうなっているんだ、この世の中は。 “BEANS”は、70年代の古臭い形容をすれば“男のロマン”、或いはとてつもなくバタ臭いユーモアを感じた。ちょうどA氏が厳粛な面持ちで難解なことを言ったはなから、ニヤッと悪戯っぽくウインクするような感じだった。
■MEMSには辟易としている私が“BEANS”に関わっているのはそういうわけだ。 私にとってはBEANSとは、“MEMSのプロジェクト”というより“男のロマン”なのである。 BEANSがもし仮に別の名前のプロジェクトだったとしたら果たして参加していたかどうか判らない。 きっとMEMSは懲り懲りだと言って近寄りもしなかったことだろう。
■自分にとっての“BEANS”はそんな風なものであるのと同様、皆にとっての“BEANS”はそれぞれに異なって当然と思う。 私にとっての“BEANS”はジェリービーンズ、メキシコ料理、コーヒーの香りのただようジャズ喫茶を 連想させる。 今もって“BEANS”からはMEMSはなかなか連想しにくい。
■旨い酒に酔ってしまった。 書き忘れないように書いておくが、写真の酒はY氏が山形県の蔵元に特注で作らせたBEANSラベルがついた純米吟醸酒だ。 豊潤でフルーティな味がした。
■国プロなのに、ユーモアセンス溢れる名称がついていて、
国プロなのに、リーダーに愉快な人々がいて、
国プロなのに、ガムシャラに働く研究員がいて、
国プロなのに、会社みたいに開発”戦略“を考える。
国プロなのに、特許への意気込みが凄い。
■そんなことも魅惑させる要因ではあるが、私にとってはやはりY氏とA氏のやたらに真面目でやたらに愉快闊達な性格、そしてBEANSというプロジェクト名がなんといっても魅力である。 だから、BEANSというプロジェクト名を人に聞かせた時の反応を見るのが一種の快感となった。
■旨い酒にかなり酔ってしまった。 本当を言えば次世代MEMSなんかどうでもいいが、このBEANSプロジェクトにかかわる愛すべき人々とはいつまでも親しくかかわっていきたい。 MEMSは忘れても、BEANSという名前はおそらく一生忘れられないだろう。
(yt)
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コメント
竹井さん、なかなかの名文ですね。エッセイ集を出されたら真っ先に買いたいくらいです。これからも時々BEANSへの想いを綴って下さい。青柳@mmc
投稿: | 2009年3月 5日 (木) 11時06分
読み始めて思わずニンマリ、クスクス笑い、そして愉快な気持ちになりました。こんなにユーモア溢れるある方がBEANSにいるなんて、素晴らしいプロジェクトになりそうな予感がしますね。
投稿: ay | 2009年3月 6日 (金) 09時46分